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共有物分割請求を起こして権利濫用になるのはどんな場合か、わかりやすく解説

共有物分割請求を起こして権利濫用になるのはどんな場合か、わかりやすく解説共有持分
西岡容子司法書士
西岡容子司法書士
熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、不動産関連登記の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。

不動産を夫婦や親子、兄弟などで共有している事例は少なくありません。

平和に過ごしている間は特に問題も起こらないかもしれませんが、関係が悪化した場合、その関係から離脱したいと考える人が出てくることもあります。

では、共有を解消したいと考えた人はいつでもそのような請求をすることができるのか、それが権利濫用として認められないことはないのか等を考えてみましょう。

共有物分割請求とは

共有物分割請求とは、共有者の1人が何らかの方法で共有状態を解消するため他の共有者に申し入れをして話し合いをしたり、それが整わなければ訴訟を起こしたりすることです。

共有物分割請求で裁判を起こす方法と手順については以下にまとめています。

共有物分割請求とは?実際に裁判を起こす方法と手順
不動産の共有状態を解消したいときには「共有物分割請求」をしなければなりません。 他の共有持分権者と話し合っても分割に合意できない場合、裁判所で「共有物分割訴訟」という裁判を起こす必要があります。 共有物分割訴訟をするとどのような結果...

訴訟の流れについては以下をご覧ください。

不動産の共有状態を解消する裁判「共有物分割請求訴訟」を丁寧に解説
不動産を共有していると、自由に活用や処分もできないので不便です。 共有状態を解消したいとき、他の共有者と話し合って解決できればよいのですが、協議が整わない場合には共有物分割訴訟という裁判をしなければなりません。 今回は共有不動産を分...

 

共有物分割請求とは

 

分割を希望する側には「売却して現金が欲しい」「他の共有者との関係が良くないので解消したい」など色々な理由があります。

共有物分割請求訴訟

共有物分割請求訴訟とは、共有物分割の方法のうち、裁判所を通じて共有状態の解消を行う訴訟のことを指します。

共有物分割をしたい人が他の共有者に話し合いを申し入れても、どうしてもうまくいかないこともあります。

例えば分割の方法について、Aさんは全部を売却してお金で分けるのが公平と考えている、Bさんは土地を分筆(物理的に分ける)ことを望んでいる、Cさんは他の人に自分の持分を買い取ってほしいと思っている、などです。

また、そもそも相手方と話し合いができない、連絡が取れないといった状況も考えられます。

そのような場合には最終的に「共有物分割請求訴訟」をせざるを得ないことになります。

共有物分割を希望する人は、話し合いを試みる前にいきなり共有物分割請求訴訟を起こすことはできません。

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民法第258条1項

共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる
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とされていますので、必ず前提として協議を尽くさなければならないのです。

ただ、この条文については、必ずしも全員が席について話し合いをすることが要件というわけではなく、解釈の仕方がいくつかあります。

・協議をしたが合意できなかった。

・協議の申し入れを受けた他の共有者が協議を拒んでいる。

・協議が成立したがその内容が実行に移されない。

こういったパターンが考えられ、一度も実際の話し合いをしていないケースでも訴訟を提起することができる場合もあります。

共有物分割請求

共有分割請求のタイミング

不分割特約がない限り、共有持分権者はいつでも共有物の分割請求が可能です。

なお、当事者同士が合意すれば、共有不動産を分割しないという約束をしておくこともできます。

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民法第256条第1項

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない

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となっています。

共有状態は基本的にあまり好ましくないものであり、最終的には解消されるべきであるため分割を制限できる期間は5年となっていますが、分割禁止の特約を結んだ場合、5年を最長として更新することができます。

もし自動的に更新すると定めた場合であっても、分割を望む当事者が反対すれば分割禁止特約は終了します。

権利濫用とは

これは共有物分割請求に限らず、日本の民法に基づいた行為全般にあてはまるのですが、正当な権利を持っていても「これを濫用してはならない(民法第1条第3項)」というルールがあります。

権利があるからといって、状況に関係なくむやみにこれを行使されてしまうと社会の秩序が乱されるなど、不都合な状況もありえます。

例えば、隣家との境を目隠しするという必要性以上に、単なる嫌がらせで高い塀を建てて隣家の日照を遮るなどの行為は、たとえ違法ではなくても権利の濫用ということになります。

権利濫用

権利濫用の概要

権利濫用とは、
正当な権利であっても、行使することによって他者に多大な損害を与える場合、権利の行使が許されないとされるものを指します。

そのため、共有不動産の分割を行いたい当事者は不分割の特約がない限り、基本的にいつでも共有物分割請求を行うことができます。

上に述べたとおり、共有状態はそもそも望ましいものではなく、最終的には解消されるべきものであるとの考え方が法の根底にあるからです。

実際、ある共有者が裁判を通じて他の共有者に対して「共有状態を解消したい」と申し入れた場合に、その相手方(被告)が「権利濫用である」ことを理由として拒む事例があります。

では、その主張が認められるかどうかは別として、具体的にどのようなケースで「権利濫用」という考え方が入り込む可能性があるのでしょうか。

共有物分割請求で権利濫用になる可能性があるケース

権利濫用が問題になってくる典型的なケースを見てみましょう。

不分割特約がある場合

上記のように共有者間で合意がされれば5年を最長として「共有物不分割特約」を結んでおくことができます。

特約がある場合になお共有物分割請求がされた場合、そもそも契約で分割しないことになっているからという理由で分割請求が許されないのであって、このケースでは権利濫用の問題とはなりません。

遺産相続

相続が発生したことにより不動産が共有となっている状況というのは珍しくないことです。

例えば、不動産の所有者山田太郎さんが亡くなり、妻の花子さんと子の一郎さんが法定相続人だとします。

相続

まだ「遺産分割協議」を行っていない状況では「法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員の潜在的な共有」になっているというのが法的な理屈です。

元の下記登記簿の「順位番号1」までしか登記されていない(被相続人名義のまま)段階がそれに当たります。

よって、その場合に

・法定相続分で相続することを合意により明確にしたい

・法定相続分(民法で定められた相続分)と異なる割合を決定したい(誰かの単有または相続人の一部の共有等にする)

ということであれば他の相続人に対して「遺産分割協議」を請求することになります。

協議が成立しそれを実現するために登記申請すると「順位番号2番」の登記が入ります。

もしこの状態からさらに、共有者になった1人から他の人に共有の解消を申し入れたいのであれば「共有物分割請求」ということになります。

この登記簿例で言えば、山田一郎が山田花子に共有物分割請求をする、ということです。

判例でいくつかこれと似たようなものがあります。

父が亡くなり、母と子供が共有状態にすることで遺産分割協議を終えた。実際には母が亡くなるまで居住できることを条件にしており、母が単独居住する代わりに子供には金銭を多めに分配するなどの手当をしていた、という背景です。

この状況で、子が母に対して「事業がうまくいかないので物件を売却して金銭で分け、自分の持分相当の現金が欲しい」と要求することが許されるのか?ということです。

 

このような事例に関しては、

「母にとって唯一の生活拠点であること」
「母から子への月々の家賃はきちんと支払われている」

などを理由に裁判所が「子からの共有物分割請求は権利濫用である」との判断を示した判例がいくつか存在します。

別の事例では、「子供はちゃんと仕事をして収入を得ているため、現金を必要としてはいないはず」との理由で権利濫用と判断したものもあります。

離婚

共働き家庭の増加などの事情で夫婦が不動産を共有することも多くなっています。

ただ、いったん夫婦関係がこじれて別居などの状況になった時、片方から共有物分割請求がされることもあり、そのようなことが許されるのか?という話です。

離婚

こちらも判例でいくつか似たようなものがあります。

共有不動産に妻が居住しており、夫が出ていって別居状態だが、夫は自分の事業がうまくいかないため妻に対して共有物分割請求をし、「不動産の持分を妻に買い取ってもらう」「全体を売却して金銭で分ける」のどちらかにしたいという要求をしてきました。

妻側は買い取るお金もないし、生活拠点であるため売却も考えられないという状態です。

そのような事例で裁判所が

「まだ離婚に至っていないのであれば夫婦が同居して協力する義務もあるため、家族の住居を確保することも義務のうちである」

「離婚であれば財産分与で妻が単独所有者となる余地もあるが共有物分割によるとそれができなくなる」

などを理由にして権利濫用との判断を下したものがあります。

共有通路

住宅地ではしばしば見られるのですが、下図のように、いくつかの家が周囲にある状況でそれらに接した私道が共有されていることがあります。

このような場合に例えばAが「この道路を分筆して五者それぞれの単有にしたい」と言ってきた場合であっても、(何か特殊な事情がない限りは)権利濫用であってそれに応じる必要はないと考えられます。

そもそも、この私道は全員が全体を通行可能となっていることが一番利用形態に馴染む、つまり共有にしておく方が実態に沿うと解釈できるからです。

具体例

上記に判例を挙げましたが、権利濫用であるため共有物分割請求が認められにくいと思われるケースをまとめます。

相共有者が住む家を失い、一方的に不利益を受ける場合

共有者の1人が共有物件を生活拠点としており、そこを処分してしまうと他に引っ越すことも難しいなど、一方的に共有物分割請求をされた側が不利益を受けるケースでは権利濫用と解釈されやすい傾向があります。

上記のように法定相続人のうち1人が居住するケースや、別居している夫婦などがこれにあたります。

その他

その他にはこのようなものが考えられます。

・上記の道路共有のケースのように、分割することで本来の用途が果たせない状況になる場合

・共有物分割請求をした側に、とりわけ金銭の必要に迫られているような事情がない場合

・共有者の中に、共有物の使用を継続したいので売却したくないと考える人がいる場合

例えば、分割方法として現物分割(不動産自体を物理的に割る)や価格賠償(共有者の一部の者が取得して他の共有者に金銭を支払う)ができる状態ではないが、第三者への売却をしてしまえば使用を継続したい者もそれが不可能になるようなケースです。

物件の状態や当事者の人間関係、経済状態といったすべての事情を総合的に検討した上で共有物分割請求が認められるかどうかが決まってくるため、単純には判断できず、結局はケースバイケースということになります。

困ったときは自己判断せず専門家に相談を

共有不動産については共有者の数、規模や質、背景にある人間関係など、それぞれの不動産がまったく別の事情を抱えています。

仮に上記と類似の事例があったとしても、必ずしも共有物分割請求が認められるとは限りません。

請求したい側、されたい側それぞれに事情があるでしょうが、できるできないということを決めつけてしまわず、迷ったらまず不動産を得意とする弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

裁判より前の「協議」の段階であっても、相手方に対してどのように話を持ちかけるのが良いのかなど、第三者の意見を聞いておくことも大切だからです。

困ったときは専門家に相談

まとめ

・基本的に共有者の1人からでも、いつでも他の人に対して共有物分割請求をして共有状態を解消する申し入れをすることができる。

・話し合いを試みても解決策が得られない場合、最終的には「共有物分割請求訴訟」を起こして裁判所主導で判断してもらうこともできる。

・ただし、居住者の事情や分割請求した者の経済的事情、物件の現状などを考えて「共有物分割請求が権利濫用である」などとして認められない可能性もあるため、不安がある人はあらかじめ弁護士などの専門家に相談しておく方がよい。

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