【空き家所有者必見!】日立市の空き家対策について徹底取材

不動産特集記事

近年、増え続ける空き家が社会問題となっています。

平成30年時点で、日本全国の空き家の数は約848万戸に達しており、住宅総数に占める空き家の割合は13.5%にのぼります。

参照元:平成30年住宅・土地統計調査 特別集計

空き家の増加は、家屋の倒壊や火災の延焼などの危険があり、国や自治体にとっても非常に深刻な問題です。

そんな中、茨城県日立市は令和4年9月30日に、第2期となる空家等対策計画を公表し、増え続ける空き家に終止符を打つべく対策に乗り出しました。

今回は、そんな日立市の空き家対策について、市の担当職員の方に直接お話を伺いました。

管理の煩わしい空き家にお困りの所有者様にも、解決の糸口となる内容となっておりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

今回の対策決定に至った日立市の空き家問題の現状を教えてください。

下記は総務省統計局が公表している日立市の空き家数の推移です。

引用元:第2期日立市空家等対策計画

国の調査結果(住宅・土地統計調査)
平成25年 空き家17,010戸 → 平成30年 空き家15,640戸

この数字を見てわかるとおり、総務省の調査結果では平成25年から平成30年にかけて空き家数が減少しています。

住宅・土地統計調査における、空き家には、「賃貸用の住宅」、「売却用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つの種類が定義されており、賃貸物件における空室も含まれています。
例えば、全部で10戸の一棟アパート内で4戸が空室なら、空き家数が+4戸になるということです。

人口減少に伴い、入居者がいなくなった賃貸アパートなどが取り壊されたことにより、数値上空き家数が減ったものと考えられます。

加えて、上記した「総務省の住宅・土地統計調査」による空き家数のデータは、あくまで標本抽出による推測値に過ぎません。

標本抽出とは
代表的な一部のデータを取得し、それを参考に全体の数字を算出する統計の手法。

そのため、日立市では、平成28年と令和3年のこれまでに計2回、職員が現地に足を運んで、市内の空き家数を調査しました。その調査結果は以下の通りです。

市独自の調査結果(空き家実態調査)
平成28年:空き家2,878戸 → 令和3年:空き家4,214戸

このデータには、総務省の調査と異なり、一部が空室状態の賃貸物件は含まれていません。単純に所有者が放置していたり、所有者が不明であったりする建物や売却中の建物などの数値です。

上記の数字から、空き家が、5年間で約1.5倍と急速に増加していることがわかります。

引用元:第2期日立市空家等対策計画

なお、上のグラフは、調査対象の物件が空き家になってから経過した年数の割合を表しています。

上記の通り、平成28年調査から令和3年調査にかけて、空き家になってからの期間が「5年以上10年未満」「10年以上」の割合が増加しており、空き家期間が長期化していることが読み取れます。

この結果は、平成28年の前回調査で見つかった空き家が利活用や除却されず、そのまま令和3年の調査まで年数が経過してしまっていることが大きな要因です。

今回の新空き家対策の要点を教えてください。

平成29年に公表した空家等対策計画と、今回公表した第2期空家等対策計画で大きく異なる点は、対策するべき空き家をその状態に応じて3つのフェーズに分けたことです。

  • フェーズ1 空き家になる前
  • フェーズ2 空き家になった後
  • フェーズ3 管理不全になっている空き家

の3フェーズに分けて、それぞれに異なる対策を効果的に行う必要があると考えています。

というのも、空き家が発生し、放置される要因やそこから生じる課題は多岐にわたっており、居住している状況から管理不全な状況までの各段階で対応は異なってくるからです。

空き家のフェーズごとの具体的な対策内容をお聞かせください。

空き家になる前の予防対策では、戸建て所有者の方などに向けて、住まいを適切に引き継いでいくことの必要性や、空き家を放置するリスクを伝える出前講座を地域の集会所などで開催する予定です。

空き家になった後の対策では、建物の状態が悪化する前に、売却や賃貸など流通による活用が促進されるような対策に重点を置いています。

具体的には、

  1. 空き家の解体やリフォームに関する補助制度を継続実施する。
  2. 移住希望者などへの受皿としての空き家活用の方策を検討する。
  3. 不動産事業者などと連携し、空き家の需給マッチングを強化する。

といった対策を行っていきます。

[1]の「空き家の解体やリフォームに対する補助金」については、現在3つの制度を用意しています。
空き家解体補助金(利活用型)
旧耐震基準(昭和56年5月31日以前の建築)の空き家を解体し、跡地を売却等した場合に最大50万円(工事費の1/3まで)を補助する制度
空き家解体補助金(宅地再生創出型)
旧耐震基準の空き家を解体した場合に最大30万円(工事費の1/3まで)を補助する制度
空き家リフォーム補助金
新耐震基準(昭和56年6月1日以降の建築)又は耐震改修工事を行った旧耐震基準の空き家をリフォーム後に売却等した場合に最大30万円(工事費の1/3まで)を補助する制度

上記の各種補助金制度が策定された令和元年度では、12件の交付実績がありましたが、 令和3年度には84件に増加しており、市の広報誌やホームページなどの各種広報媒体を通じて、空き家所有者などに効果的なPRを続けている成果が現れています。

[2]の「移住希望者などへの受皿としての空き家活用の方策」については、日立市への移住を希望する方や検討している方向けに情報発信をしています。

引用元:日立市移住ポータルサイト「ひたちぐらし」

日立市移住ポータルサイト「ひたちぐらし」では、日立市の魅力や暮らしやすさをPRするとともに、不動産情報サイトのリンクを貼って、中古住宅などの流通促進に取り組んでいます。

また、長期にわたって管理が行き届いておらず、危険性の高い空き家の対策として、特定空家等に認定し、行政指導や行政処分による問題解決を図っています。

具体的には、空き家所有者へ適切な管理をするよう助言・指導や勧告、命令を行い、それでも特定空家等の状態が改善されない場合は、市が強制的に解体などを行う行政代執行へと踏み切ることになります。

特に老朽化した空き家や危険な空き家については、先述した解体補助金制度により解体や宅地の再生・創出を進めているところです。

空き家が増えてしまう原因はどこにあるのでしょうか。

令和3年調査で判明した、空き家が発生する原因は所有者の死亡や高齢者施設などへの入所が、全体の5割以上を占めています。

引用元:第2期日立市空家等対策計画

このことから、空き家の増加には、高齢化はもちろん、子ども世帯が実家に住まない核家族化の影響が大きいことが読み取れます。

また、空き家を利活用する上で、どのようなことが課題になっているかについても調査しました。

引用元:第2期日立市空家等対策計画

多く挙げられた課題は、次のような空き家所有者の悩みです。

  • 売却したいが購入希望者が見つからない
  • 固定資産税等の負担が大きい
  • どうしたらいかわからない
  • 家財等の撤去ができない

空き家を売却したいと考えている所有者が多い傾向にありますので、空き家を利活用したい方と所有者をつなぐマッチング体制を強化していくことや、相談体制の充実を図っていくことが必要であると考えています。

まとめ

今回は増え続ける空き家問題へ、対策の強化に乗り出した日立市へお話を伺いました。

空き家の発生予防に向けた対策や、流通・利活用の取組を積極的に行っていくなど、期待の感じられるお話が伺えました。

中でも、空き家の利活用に対する補助金や需給マッチングの強化、移住希望者向けの情報発信は、日立市内の空き家を利用したい方にとっても嬉しい取組でしょう。

今後も日立市の空き家対策を応援していきたいと思います。

監修者
株式会社AlbaLink代表取締役の河田憲二です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「訳あり物件買取プロ」の運営者も務めています。同社は東京証券取引所東京プロマーケット市場にも上場している不動産会社になります。

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