不倫されたら絶対に離婚すると回答したのは13.4%にものぼる
アンケートでは、「不倫されたら離婚したい」と回答した既婚者は73.8%にものぼった。
しかし、その中で「絶対に離婚する」と回答したのは13.4%と大きく減少。
「離婚したくてもできない理由(複数選択可)」として、「子ども(60%)」や、「経済状況(52%)」は上位に挙がったものの、意外と見落とされていたのが、本記事で取り挙げる「住居問題(25%)」だ。
離婚とは切っても切り離せない住居問題。離婚時、住居に関するトラブルにはどのようなものがあるのだろうか?
今回は、離婚トラブルに詳しい弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の阿部栄一郎弁護士にお話を伺った。
阿部栄一郎(あべ えいいちろう)※弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所HPより引用
平成22年7月21日に、東京にある他の法律事務所から移籍して、本事務所で勤務し始めました。本事務所にいる弁護士と同じように、依頼者の意見や話をできる限り聞いたうえで、依頼者の悩みや問題の解決に当たるよう努力いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
(中略)人は、問題を抱えると精神的に不安定になることや感情的になることもあると思います。このようなとき、弁護士に相談することで、精神的に落ち着くこともあると思いますので、そんなときは、まずは当事務所にご連絡ください。
意外な盲点!離婚時にトラブルとなる代表的な住居問題とは
離婚に関する住居問題には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
離婚の際に発生する住居関連の問題で特に多いのは、
・二重生活による支払い地獄
・溶けていく固有財産
の2つです。
どちらも中々のパワーワード……!
長引けば長引くほど地獄!二重生活による支払い地獄とは?
まず、二重支払いの方から教えていただけますか?
簡単に言ってしまえば、「2つの家庭に対してお金を支払っている状態」です。
よくあるのは、夫が住宅ローンを組んでいるものの、実際に家に住んでいるのは妻と子どもだけ。夫は家を出て住んでいないにもかかわらず、ローンだけを支払い続けている、といったケースです。
自分が住んでいないにもかかわらず、ローン(家賃)を払っている……。
なぜそのような状況になってしまうのでしょうか?
まず、婚姻関係が続いている限り、片方(夫)が単独で住宅ローンを組んでいたとしても、基本的にもう片方(妻)や子どもを無理矢理追い出すことはできません。
というのも、自宅のローン名義や所有名義は夫でも、婚姻期間中に同居をしていた場合、別居とともに夫と妻との間に自宅に関する使用貸借契約(無償で居住することを認める契約)が成立したと考えられるからです。
たしかに「不倫された側が家を出ていかなければならない」のはオカシイですもんね。
また、使用貸借契約とは別に、例えば、立ち退きを求める側が有責配偶者(婚姻破綻を招いた主たる責任のある者)である場合などは、立ち退きを求めることが信義則に反する、権利濫用などを理由として立ち退きが認められないことがあります。
そのため、このケースで言えば夫が家を出て行ったとしても、妻と子どもにはその家に住む権利があります。しかし、ローンは夫名義なので支払い義務は夫にしか発生しません。
もちろん、不倫など明らかに片方(このケースで言えば妻側)に原因がある場合は追い出し可能な場合もありますが、それ以外は例え家に住んでいなくても支払いは続ける義務があります。
このような場合、結婚後、夫の名義で4000万円の自宅を購入して住宅ローンを組んだとしても、離婚時の財産分与は「夫2000万円:妻2000万円の財産」となるのでしょうか?
はい、その通りです。また、プロ野球選手や開業医など、収入が非常に高い例外的なケースを除いて、収入の差は関係ありません。
あと、住宅ローンの残っている自宅の場合、別居時に残っている住宅ローンを控除した後に、原則、2分の1で分けます。
また、別居後に夫が住宅ローンを支払っている場合には、別居後の住宅ローンの支払い分は夫の財産として評価されます。
素人目からみると、ローンを組んだ方(=金銭的な負担が大きい方)はかなり損をしている気がしますが、そういうものなのでしょうか?
そういうものですね。
繰り返しになりますが、結婚後に家庭で利用することを目的に購入したものは基本的にすべて「共有財産」とみなされ、収入の差は関係ありません。
なるほど……。
家から出ていき、新しいパートナーとの生活をスタートしたはいいものの、元のローンがのしかかってくるんですね。
そうです。
例えば新しいパートナーと家庭をスタートさせたとしても、そこでの支払いに加え、前の家庭でのローン支払いもある。そのため、結果として「二重支払い」になる、というわけです。
なお、家を出ても新しいパートナーがいない方は、経済的な負担を少しでも軽くするため、実家に身を寄せるケースも多数見受けられます。
ということは、ローンを支払っている側からすると、なるべく素早く離婚した方が経済的な負担は抑えられるんですね。
離婚まではどのくらいの期間がかかるのでしょうか?
千差万別です。弁護士に依頼が来る場合、そもそも当事者間でこじれていることが多く、短ければ1〜2ヶ月、長ければ5年あるいはそれ以上かかるものもあります。
私が担当した案件で一番長引いたのは、別居から離婚まで15年かかったケースです。
15年???
なぜそんなに長引くのでしょうか?嫌ならすぐ別れてしまえばいいのに、と思ってしまうのですが……。
離婚をしたいと思っても、法律上なかなか離婚が認められないことがあります。
そして、離婚成立まで長期化する一番の原因は、有責配偶者からの離婚請求です。
実務上もっとも多い例は「不貞をした夫が妻に対して離婚を求める」という場合でしょう。この場合、不貞をした夫は、婚姻関係を破綻させた主たる責任のある配偶者ということで、離婚が制限されます。
最高裁の判例上、
①同居と比べて長期の別居
②未成熟子がいないこと
③離婚を求められた配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況に置かれないこと
といった要件を満たす必要があります。
このように有責配偶者からの離婚請求は、離婚が認められるハードルがとても上がるわけです。有責配偶者が早期の離婚を目指す場合には、離婚を求められている側が離婚に合意をする必要があります。
たしかに、「不貞しておきながら自分の好きなタイミングで離婚したい」はあまりも都合が良すぎますよね。
他方で、離婚を求められている側が別れたくても別れられない一番大きな原因は「経済的な問題」です。
よくあるのが、稼ぎのある夫と、専業主婦の妻の組み合わせです。この場合、妻がそのまま家に住みたいと思っても、別れてしまうと自宅を出ることになりかねません。
また、夫に代わって自宅を取得して住宅ローンを支払おうとしても、専業主婦の場合、住宅ローンの審査に通らないことがほとんどです。また、別れてからの収入の保障もありません。それに対して、別居中、婚姻関係を継続していれば自宅にも住むことができますし、婚姻費用(※)を受け取れます。
となると、妻側としては「生活や子どものことも心配だから、住む家のローンを夫が支払ってくれる今の状態をなるべく維持しよう」と考えるのは当然の話です。
このように、夫が有責配偶者であり妻が専業主婦。かつ生活のために婚姻関係の継続を望む場合、離婚までの期間が長期化する傾向にあります。
※婚姻費用(弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所HPより引用)
別居中の夫婦の間で、夫婦や未成熟子の生活費などの婚姻生活を維持するために必要な一切の費用のことです。具体的には、衣食住にかかる費用、交際費、医療費、子供の養育費等が含まれます。
(中略)
離婚前の別居中、離婚の協議中、離婚調停中、離婚訴訟中であったとしても、夫婦は同程度の生活を続けるために、お互いを扶養する義務があります。
そこで、離婚が決着するまで、収入が多い側が少ない側の生活費を分担することになります。
たしかに、生活のことを考えるとそう考えるのは当然ですね……。
ふと思ったんですが、これって例えば、
「自分が100%所有権(=家のローンを100%支払いっている)を持っていて、別居している10年間は婚姻費用も支払い続けた。その間に子どもは成人済み。にも関わらず、相手が無償で住み続ける権利主張して、自分はひたすら不動産を持たされ固定資産税を支払わされ続ける」
といった地獄みたいなケースもあり得るんでしょうか?
あり得ますね。
なんちゅう世界。
もしそうなった場合、最終的に解決するにはどうしたらいいんでしょうか?
私たち弁護士などの専門家を間に入れて交渉して、任意に相手方に立ち退いてもらったり、場合によっては、相手方の了承を得たうえで離婚の前に自宅を売却したりということもあります。
また、状況によっては、共有物分割訴訟を提起して、夫婦間の共有関係や占有関係を解消するということもあります。
トラブルになりそうなときは、当事者間だけで解決しようとせず、なるべく早めに専門家を頼った方が得策です。
いざというときは何卒よろしくお願いいたします!
こちらこそよろしくお願いします(笑)。
逆に、共働きで同程度の収入の夫婦の場合、揉めることは少なく、離婚もスムーズな印象があります。共働きの収入を前提に住宅ローンを組んだ場合などは、離婚すると片方だけでローンの支払いを維持できないので、パッと売ってしまう方が大半です。
あとは、収入の多い側が「全額残りのローンを支払って家もあげる」といったケースだとスムーズに離婚までいくことがほとんどです。ただ、ここまで相手方に譲歩するケースは稀ですが……。
収入に差があるケースが泥沼化しやすい、と。
傾向としてはそうですね。
たしかに、自分が収入の少ない側かつローンの名義人でもない場合、ローンを支払ってもらえる上に婚姻費用ももらえるなら、別居したまま婚姻関係を受け取り続ける方が圧倒的お得ですね。
そうなります。
ただ、収入の少ない側が明らかに離婚の原因(例:不倫、DV等)を作っている場合は、婚姻費用の満額はもらえず、子どもの養育費相当額しか支払い義務は発生しません。
不倫ダメ、絶対。
<参考>
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
自分で貯めたお金が相手のものに?溶けていく固有財産
次に、「溶けていく固有財産」について教えていただけますか?
固有財産(特有財産)とは、その名のとおり名義人固有の財産で、離婚の際に財産分与で分けなくても良い財産のことです。
例えば、
・結婚する前の10年間個人で貯めた貯金
・親から相続で受け継いだ遺産
などは固有財産と評価されます。離婚の際、共有財産は夫婦でわけあう形になりますが、固有財産はそのまま自分に残ります。
もちろん、固有財産と証明するためには「結婚前の入出金履歴を記帳した通帳」など、客観的な証拠が必要です。
結婚をすると、なぜこの固有財産が溶けていくのでしょうか?
個人と家庭の財布のキッチリわけることが困難になるからです。
言い方を換えれば「固有財産だったものが共有財産に取り込まれていく、見分けが付かなくなる」といったイメージでしょうか。
具体的にいうと、パートナーから「今家計に余裕がないから、子どもの入学金を個人の財布から一旦出してもらえないか?」と言われ、それを断れるか、という話です。
理想は定期預金などで個人のお金は個人のお金でしっかり管理しておけば、固有財産が溶けていくことがありません。
ただ、そこまでキッチリ管理してしまうと、上記のようなケースで軋轢を生む恐れが出てくるわけです。
そのため、離婚時には「元は固有財産だったお金が共有財産として推定される」といった事態が発生します。
たしかに、子どものこととなると断れませんね……。
はい。あとは単純に「管理しきれるか」という問題もあります。
金融機関から入出金履歴を照会してもらえる期間は決まっているため、いつ来るかわからない離婚に備え、記帳した通帳を何十年にも渡って保管しておく必要があるわけです。
そこまでキッチリ管理できる人が、果たしてどれだけいるのか、という話になってきます。
ちなみに先生はどうされているんですか?
正直、私自身キッチリわけることはできていません(笑)。
個人の財布からお金を出すときは、返ってこないことを前提に出す、というのがもっとも現実的でしょう。
弁護士の方でも無理なら、一般人には相当ハードルが高いですね。
結論「○○するな!」泥沼離婚を避けるためにするべきたった2つの対策
住居問題で泥沼離婚を避けるために、何かできることはあるのでしょうか?
(1)不倫やDVなど自ら離婚の原因になるようなことはしない
(2)家を購入する場合は持分の数%だけも確保しておく
この2つに集約されます。
理想はこれに「個人の財布と家庭の財布を厳密にわける」も入りますが、現実的ではないため省きました。
不倫やDVなどは道徳的にも経済的にもリスクが大き過ぎますよね。
本当にその通りですね。
明らかに離婚の原因が自分にある場合、慰謝料も発生しますし、例え相手に比べて収入が少なかったとしても婚姻費用ももらえなくなります。いいことはひとつもありません。
そして、家を購入するときは少しでもいいのでお金を出して持分を確保しておくことも大切です。
どうしてお金を出しておくことが大事なのでしょうか?
本当に稀なケースですが、家を出ていった所有者(例:夫)が勝手に家を売り、それを買い取った業者がと住んでいる非所有者(例:妻、子ども)に立ち退きを要求することもあるからです。
えっ、人が住んでいる家を売ることができるんですか?
はい。所有権名義人(=100%をお金を出している側)であれば可能です。
ただ、実際には人が住んでいる家はその後の立ち退き交渉を含め色々と面倒なことが多く、中々売れませんし、売れたとしても相当買い叩かれます。
先に話したケースは、夫と業者が元からの知り合いだったそうです。
可能性としては極めて低いとはいえ、最悪の場合を想定するとマイホーム購入時やローンを組むときは少しでもお金を出しておくことが大事なんですね。
はい。1〜2%でもいいので、自分がお金を出していれば勝手に家を売られることはありません。
また、購入時はお金を出していなくても、あとから「共有持分が欲しい」といってお金を出せば、家の何%は自分の持分となります。
ただ、この項目はその方の立場(収入が多い方か、少ない方か)によってメリットにもデメリットにもなります。
収入の多い方からすれば、「離婚のときに揉めたくないので100%自分が支払う」となるのは当然ですから。
大切なのは、マイホーム購入時には事前に夫婦間でよく話し合い、慎重にそれぞれの持分(=お金を出す割合)を決めることです。
たしかに、自分がどちらの立場かによってだいぶ変わってきますね。
大切なのは、事前の入念な話し合い。了解です!
あと、「もし相手方の不貞で離婚するなら、なるべく早いうちに切り出した方がいい」ということは、知っておいた方がいいですね。
具体的には、どういうことでしょうか?
不貞からあまりに長い期間が経過していると、その不貞は許されたものと評価される可能性があるからです。
例えば、20年前に不倫をされ、子どもが成人になるまで離婚するのをずっと我慢していたとします。
その後、実際に子どもが成人してから当時の不貞が原因で離婚しようとしたとしても、「不貞があったにも関わらず20年間も婚姻関係を継続できていたのであれば、その不貞は風化しており、離婚の直接的な原因とはいえない」と裁判所に判断され、慰謝料等が発生しなくなります。
えええ。
我慢したけど意味がなかったと……。
ご本人の経済状況や人間関係など、人によって状況が異なるため、一概に意味がなかったと判断することはできません。
ただ、不貞が発覚したときに離婚できる状況であれば、なるべく早めに弁護士に相談し、アドバイスしてもらった方がいいでしょう。
肝に命じておきます!
まとめ
離婚時、住居に関するトラブルを避けるためには、
- 自ら離婚の原因をつくらない(例:不倫、DV等)
- 住宅を購入する際は少しでもお金を出しておく(購入時には持分についてよく話し合っておく)
- 個人と家庭の財布をキッチリわけておく
の3つを徹底しておく必要があるだろう。
ただ、記事にもある通り、実際に生活していく中で個人と家庭の財布を厳格にわけることは困難だ。
やはり、身も蓋もない結論だが、離婚時の泥沼化を避けるために言えることはただひとつ。
「不倫ダメ、絶対」
おまけ
とはいっても、起こってしまうときは起こってしまうのがトラブル。
そんなときは、本記事で「ごく稀なケース」として紹介された
- 共有者とすでにトラブルになっている物件
- 自分は家を出ており共有者のみが家に住んでいる物件
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お客様の問題解決にむけて、精一杯対応させていただきます。