株式会社AlbaLinkは東京プロマーケット市場に上場している不動産会社です。「家を子どもに残すべきか？」という問いに、決まった正解はありません。
今の時代は家についての価値観やライフスタイルも多様化しているからです。
今回は子どものいる500人を対象に「今住んでいる家を子どもに残したいか」について聞きました。
- 調査対象：子どもがいる人
- 調査期間：2025年4月23日～27日
- 調査機関：自社調査
- 調査方法：インターネットによる任意回答
- 有効回答数：500人（女性367人／男性133人）
- 回答者の年代：20代 7.2％／30代 45.2％／40代 27.8％／50代 14.4％／60代以上 5.4％
今住んでいる家を子どもに残したい人は48.2％
子どもがいる500人に「今住んでいる家を子どもに残したいか」を聞いたところ、「思う」と回答した人は48.2％でした。
今は、実家を相続して困ったといった体験談がネットメディアやSNSなどで盛んに発信されています。
残したいと思う人がやや少数派になった背景には、「家を残すことが必ずしも子どものためにならない」という認識が広がっていることもあると考えられます。
今住んでいる家を子どもに残したい理由は「資産価値がある」
「今住んでいる家を子どもに残したい」と答えた241人に、残したい理由を聞いたところ、圧倒的1位は「資産価値がある（44.8％）」でした。
2位「住宅費が節約できる（24.9％）」と答えた人も多くなっています。
「いい条件で、十分に活用できるだろうから残したい」と考えている人が多いとわかります。
思い入れがあるからなど、感情的な面で残したいと考えている人は比較的少なくなりました。
1位 資産価値がある
- いずれ栄えてくる場所だと思うので、土地だけでも財産になるから（30代 女性）
- 駅近で、間違いなく資産価値はあるから。現金は残せなくても家を残せればいいと思っている（40代 女性）
- 23区内で70坪の一戸建てで、資産価値があるので（50代 男性）
1位は「資産価値がある」です。
今の家は、子どもにとってプラスの資産であるという自信があり、子どもに譲りたいと考えている人が多数。
資産価値に自信がある理由は「駅近や都心などで、立地がいい」が多数。
なお「子どもに住んでほしい」「所有を続けてほしい」と考えている人だけではなく、「譲ったあとに売って現金化してもOK」という声もありました。
資産価値はあるので、子どもの希望に沿うかたちで活用してほしいという親心が見えます。
2位 住宅費が節約できる
- 田舎に家があるため、子どもが住むことを望まなければ売って資産にしてもらってもいい。ただ住みたければローンを払い終わっているころなので、子どもの生活費が浮く（30代 女性）
- 今の家は中古で購入したので古いが、建て替えなどをして長く住める場所。建て替えしても土地代がかからないことを考えると、住宅ローンなどの負担も少なくなるため、本人が住みたいと言えば残したいと思う（40代 女性）
- 子どもの家賃負担をなくしてやりたい（50代 男性）
2位は「住宅費が節約できる」でした。
家を残すことで、子どもが支払う住宅費を軽減したいという親心が背景にあります。
賃貸に住むなら家賃がかかる一方、ローン完済後の実家に住むなら家賃はかかりません。
古くなった実家を建て替えて住むにしても、土地代はかからないので、土地を新たに買うよりは費用を抑えられます。
「子どもが住む場所に困らないように」「子どもの負担を軽くしてやりたい」という親心が見える回答です。
3位 立地がいい
- 駅から近く通学通勤に便利だから、残したいと思います（30代 女性）
- 都心から近く環境もいいので、基本的には子どもに残したいと思っています（40代 男性）
- 狭い家ですが、住みやすい地域で環境もそれなりにいいと感じるので、子どもが希望するなら住んでほしいと思います（40代 女性）
3位は「立地がいい」です。
「駅近や商業施設のそばで便利」「子育てしやすい環境」といった場所に持ち家があり、立地がいいため子どもに残したいと考えている人も。
立地がいいと土地の資産価値が低下しにくく、売却や賃貸物件化しても利益を得やすいと考えられます。
「いい立地で不動産を買おうと思うと、自分たちが買ったときよりお金がかかると思う」「手放すのがもったいない」などの意見もありました。
立地がいいので、どうせ家を買ったり建てたりするなら、実家のある場所を活用すればいいという考え方です。
4位 十分に住める
- 家の性能がいいから、子どもたちや孫たちに使ってほしい（30代 女性）
- まだ建てたばかりで、10年ぐらい経ってもきれいなままだと思うから（40代 女性）
- それなりにお金をかけているし、まだまだ耐用年数もある（60代以上 男性）
4位は「十分に住める」でした。
工法や住宅性能にこだわって建てた家や、新築で建ててまだ新しい家について、まだ十分住めるから残したいと考えている人もいます。
使えるなら使ったほうが、経済的に合理的です。
「80年住める家をコンセプトに、家を建てた」「二世帯を見越して建てた」など、そもそも子どもの代も住むことを前提に建てた人もいます。
5位 思い入れがある
- せっかく建てた家なので、親のエゴですが住んでほしいです（30代 女性）
- 老後の資金がないので何とも言えないが、思い出が詰まっているのでできれば残したいです（50代 男性）
- 長年住んだ家には、子どもたちの成長や家族の大切な思い出がたくさん詰まっているから（60代以上 男性）
5位は「思い入れがある」でした。
子どもの気持ちや利便性を重視するよりも、親の思いが強い考え方です。
子育て期に住んでいた家には、「子どもの成長」「家族で楽しく過ごしたこと」などの思い出が詰まっています。
親のエゴかもしれないと思いつつも、家がなくなるのは寂しく、できれば子どもに受け継いでほしいと考えている人もいるとわかります。
今住んでいる家を子どもに残したくない理由は「好きな家に住んでほしい」
続いて「今住んでいる家を子どもに残したくない」と答えた259人に、残したくない理由を聞きました。
その結果、1位は「好きな家に住んでほしい（30.1％）」、2位は「子どもに負担をかけたくない（23.2％）」でした。
子どもを実家に縛りつけることや、子どもに負担をかけることは避けたいという気持ちが強く感じられる結果です。
立地が悪かったり古かったりして子どもが家を活用しにくい場合、子どもの負担になるという認識をもつ人が多いと伺えます。
親世代は、子どもの自由と経済的な不安の軽減を重視しているのですね。
1位 好きな家に住んでほしい
- 子どもがどんな職種に就くかもわからないので、あえて子どもに残さないことで、子どもの行動範囲を自由にしておきたい（30代 女性）
- 子どもが今の家に住みたいと思うかは、子どもが決めることだから。「家を継ぐ」のように家に縛られる人生は好きではないので、子どもたちがしたいようにしたらよいと思っています。ただ、住みたいと言ったら住めるようにはしておきます（50代 女性）
- 今の暮らしにちょうどよい家だけれど、子どもには子どもの価値観で住まいや環境を選んでほしいと感じているからです（60代以上 男性）
1位は「好きな家に住んでほしい」です。
子どもが持ち家の実家を相続すると、「実家に住み、実家から通える範囲で仕事する」「遠方に住みながら実家の管理をする」といった制限がかかります。
実家や地元に縛られてほしくないという気持ちで、残さないことを選択する人も多くなりました。
また、時代や世帯構成によって住みやすい家は変わるので、子どもに家を残しても使いにくいと感じられる可能性もあります。
子どもの気持ちを重視する考え方なので、もちろん子どもが住みたいと言えば、譲るつもりでいる人もいます。
2位 子どもに負担をかけたくない
- 管理が大変だと思うから、売って少しでもお金にしてほしい（20代 女性）
- 子どもが住むころには、家のメンテナンス代がたくさんかかりそうだから（30代 男性）
- ずっとこの場所にいるとは思わないので、別の場所で住んでいた場合に家は荷物になると思うから。引き継ぎたいと言ってくれるのであれば嬉しいですが（40代 女性）
2位は「子どもに負担をかけたくない」でした。
家を残すことが子どもの負担になると考えている人も多数。
負担には、金銭的な負担とメンテナンスの負担があります。
子ども自身が家に住まなくても、固定資産税や都市計画税はかかります。
さらに家が古くなってくるとメンテナンスの手間や費用が増えるため、「古くなる前に売って、家は残さないほうがいいのでは」と考えている人が多くなりました。
3位 立地が悪い
- 立地的に津波や浸水の可能性が高い場所なので、あまり住んでほしくないです（20代 女性）
- 地方の一軒家のため、今後の人口減少を考えると、明らかに上京して生計を立てたほうがいいためです（40代 男性）
- 周りにはバス停も何もなく、駅まで車で15分かかり、交通の便が悪いからです（50代 女性）
3位は「立地が悪い」です。
具体的には「災害リスクが高い」「利便性が悪い」「人口減など、地域全体が衰退している」などがありました。
子どもが快適に暮らせないエリアなら、家を残す価値はないと感じている人が多いことの表れです。
「残しても、立地の問題で結局住まないのでは」という見立てをしているケースもあります。
立地が悪いと、結局住まなくて売りたい場合にも、なかなか売れない可能性があり、子どもが困ってしまうことも。
住まないのなら築年数が浅いうちに売ってしまい、現金化したほうがのちのち楽だと考えられます。
4位 築年数が古い
- 家自体がだいぶ古く老朽化しているため、子どもの代まで引き継ぐことが難しい（30代 女性）
- 祖父の世代から半世紀以上住んでおり、外壁はきれいでも、老朽化していて耐震性がないので（40代 女性）
- 今住んでいる家は築30年を超え、お金がなくてリフォームもできないボロ家です。こんな家を子どもに残してやりたいとは思いません（60代以上 男性）
4位は「築年数が古い」でした。
築年数が古い家はメンテナンス費用がかさむうえに、建てられた年によっては現行の耐震基準を満たしておらず不安があることも。
子どもの負担になり安全性にも不安があることから、「今の家を残すのは心苦しい」と考える人もいるとわかりました。
築数十年などかなり古い家に住んでいる人からは、「あまりに古いので、もういいかな」という声も。
古いことで、相続してもらわなくていいという諦めがつきやすい面もあると考えられます。
5位 子どもが欲しがらない
- 私と夫で間取りなどを決めた家で、子どもは気に入っているかわからないため、家を残すつもりはない（40代 女性）
- 子どもが必要とせず、自分の老後資金にするつもりだから（60代以上 男性）
5位は「子どもが欲しがらない」でした。
子どもが相続を望んでいないなら、家を残しても意味がないという考えを反映した結果です。
家を残すことに執着するのではなく、子どもの意思を尊重する価値観ですね。
なお子どもが家を欲しがらない理由としては「立地が悪い」「遠方に生活拠点があり、地元に戻る予定がない」「間取りが特殊」などが考えられます。
今住んでいる家の希望の活用方法は「子どもが住む」
「今住んでいる家の希望の活用方法」として最も多かった回答は、「子どもが住む（32.4％）」でした。
2位「賃貸にする（15.6％）」、3位「売却して現金化する（14.0％）」、4位「売却して老後資金にする（10.6％）」の結果でした。
「子どもに住んでほしい」という希望が1位でしたが、全体的には賃貸や売却など、子どもが住まない活用法を考えている人が多い傾向にあります。
とくに売却して「現金化」「老後資金にする」「子どもにお金を残す」「住み替え」など、売却を前提とする回答が多くなっています。
家をお金に変えて、別のことに使いたいという人が多いのですね。
また「子どもに任せる」という意見もあったように、子どもの希望を優先して決める傾向も。
実際に「子どもが住むなら住んでほしいが、いらないなら売却」など、子どもの希望が前提にある意見が多くなっています。
1位 子どもが住む
- 自分たち夫婦がいなくなったあとは、子どもが老後にUターンして住むことが理想と考えています（40代 女性）
- 子どもが住んでくれると、家も傷みにくくなると思うので嬉しいです（50代 女性）
- 子どもが住んで、家賃を浮かせる（60代以上 男性）
1位は「子どもが住む」です。
子どもに住んでほしいと考える意図としては、大きくふたつあります。
ひとつは「家を大切に思っており、残したいので子どもに住んでほしい」というパターン。
もうひとつは「子どものためになるはずだから住んでほしい」というパターンです。
子どもが実家に住めば家が空き家にならず維持され、子の生活費も抑えられるため、家に思い入れのある親にも子にもメリットがあります。
つまり、経済的な合理性と感情のどちらも満たせる活用法です。
ただし子どもが「実家に戻りたくない」「住み続けたくない」と考えている場合は、反発を受けてしまうことも考えられます。
2位 賃貸にする
- 建築年数の面から見て、賃貸で貸し出す運用が最適だと思います（30代 女性）
- 賃貸で定期収入になればありがたい（40代 男性）
- 別荘や宿泊場所として貸し出すのが理想です（50代 女性）
2位は「賃貸にする」でした。
家の所有権は手放さないまま、賃貸に出すのも活用法のひとつです。
家族や親族が誰も住まない場合でも、賃貸に出すことで家賃収入を得られ、人が住むことにより劣化スピードも抑えられます。
もし家に戻りたくなった場合は、借主同意のもとで賃貸契約を解除して、家に戻ることも可能。
賃貸の期間を決めておく「定期借家契約」を結ぶ方法もあります。
住居用ではなく、宿泊施設や別荘として貸し出すなど、柔軟な発想も見られました。
3位 売却して現金化する
- 値段がつくなら売却して資金にしたい（20代 女性）
- 売却して家族全員で分ける（50代 女性）
- 売却すればあとが楽です（60代以上 男性）
3位は「売却して現金化する」でした。
「売却して現金化する」は、シンプルかつ実用的な活用法です。
自分や子どもが住む予定のない場合、家を現金に換えておくことで、使い道の自由度が高まります。
もう住まないと思ったら早いうちに売却しておくことで、管理の手間もなくなります。
相続してから子どもが売却するのは、相続手続きがさまざまあるなかで負担になるもの。
親世代が早めに売却しておくことで、子どもが手続きで困ることも防げます。
4位 売却して老後資金にする
- 売却して、サ高住や老人ホームの入居資金にする（30代 女性）
- 売却を考え、私たち夫婦の老後資金・介護施設入居費用として使いたい（50代 男性）
- 売却して老後の資金として使用する（60代以上 男性）
4位は「売却して老後資金にする」でした。
売却後の使い道が決まっているパターンでは、老後資金に充てたいという意見が目立ちました。
「サービス付き高齢者向け住宅」などの介護施設や介護付きマンションへ入居するには、まとまった初期費用がかかりますし、月額料金も必要です。
家を自分の人生を支えるための財源として位置づけており、ライフステージに合わせて活用しようとする人が多いのですね。
5位 売却して子どもにお金を残す
- 私たちが老いて動けなくなってしまったら施設などに入所して、家を取り壊し、土地代を子どもに贈与したい（40代 女性）
- 売却して、子どもたちのマンション購入の頭金にしてほしいと思っています（50代 女性）
- 私たちがいずれかの時点で家を処分して、得たお金を平等に相続財産として子どもたちに残してあげたいと思います（60代以上 男性）
5位は「売却して子どもにお金を残す」でした。
家ではなく現金として、子どもに資産を残したいという人も多くなりました。
子ども（相続人）が複数いれば、現金化しておくほうが均等に分けやすくなり、トラブル回避にもつながります。
また相続税は現金で納付することになるので、納税を考えても現金にしておくほうが楽です。
子ども間の平等性や手続きの楽さを考慮した活用法と言えます。
6位 子どもに任せる
- 売るなり貸すなり、子どもの好きなようにしてもらいたい（30代 女性）
- 子どもの判断に任せる。子どもが住んでもいいし、いらないからと売却してもいいと思う。子どもにとって一番いい方法で活用してほしい（40代 女性）
- 子どもが自由に判断していいと思っているので、子どもの好きなように活用するのが理想です（60代以上 男性）
6位は「子どもに任せる」でした。
親が判断せずに、子どもに任せるという人もいます。
家をどう活用するかを親が一方的に決めず、子どもの人生や価値観を尊重しようという姿勢です。
「住んでもいいし、売ってもいい」など、親世代が家にあまり執着しておらず、こだわりのないことが伺えます。
7位 売却して住み替える
- 土地の価格は悪くないと思うので、子どもがいるうちなら売却して広めの家に住み替える。子どもの独立後なら、夫婦だけで住める大きさかつ、スーパーや病院などに徒歩で行ける範囲の家に住み替える（30代 女性）
- 駅近マンションなので自分たちの代で売却し、住み替えをすることも想定している（40代 女性）
- 売却してコンパクトな暮らしをする（60代以上 男性）
7位は「売却して住み替える」でした。
今の家を終の棲家としては考えておらず、ライフステージに合わせて住み替えを考えている人もいます。
住み替えのタイミングは、例えば「子どもが巣立って、家が広く感じたら」「車の運転が難しくなって、駅近に住みたくなったら」などですね。
売却によって資金が手に入るので、住み替えの原資にできます。
リセールできる家に住んでいることが前提となります。
今住んでいる家をどのように活用してほしいか子どもに伝える人は57.0％
「今住んでいる家をどのように活用してほしいか子どもに伝えるか」という問いには、「伝える」と回答した人が57.0％と多数派でした。
多くの親が、自宅の将来的な扱いについて子どもに意思を伝えたいと考えています。
背景には、「相続のトラブルを回避したい」「親の思いを尊重してほしい」「あらかじめ子どもと話し合っておきたい」という気持ちがあると考えられます。
住宅は大きな資産であり、将来の管理や処分には大きな手間がかかるため、子ども側にも心づもりが必要。
そのため親世代の意思を、子どもに伝えておくことは重要です。
まとめ
今回のアンケートでは、「家を子どもに残すことは、必須ではない」と考えている親世代が多いとわかりました。
子どもに引き継ぐ場合にも、「子どもがほしいと言うなら譲る」という声が多く、子どもの意思を尊重する傾向が強く見られます。
本音では住んでほしいと願っていても、自分の気持ちより子どもの気持ちや負担を考慮する人が多いのですね。
「家に対する思い入れがあっても、押しつけず、子どもの幸せを第一に考える」という親心が伺えるアンケート結果となりました。
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