共有名義の不動産売買に必要な委任状の作成方法と書式例

共有名義不動産
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親子、夫婦、兄弟や他人など、誰かと1つの不動産を「共有名義(2人以上の名義)」で持っている場合は、売買の手続きが通常より若干大変になります。

なぜなら、不動産の権利移転は重大な法律的行為であり、共有者といえども勝手に一部の共有者が全体を売買することはできないからです。

ただ、共有者の一部が売買に携わることができない場合には、その人が他の共有者に正式な委任を行えば委任を受けた人が代理で手続きすることもできます。

代理人

では、その際に必要となる委任状について、作成のポイントや書式例を見てみましょう。

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監修者
西岡容子司法書士

西岡容子司法書士

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熊本にて夫婦で司法書士事務所を営む。10年以上の実務経験で、不動産関連登記の経験も豊富。現場での経験を活かしてユーザーのためになる確かな記事を執筆中。

共有不動産の売却には共有者全員の立会いが必要

不動産の売買は、売主にとっては「権利を失う」重大な行為です。

もちろん、売却代金が入るというメリットはあるのですが、純粋に「不動産登記」という観点だけで考えると「売主は不利な立場」という位置づけがされています。
(売買による所有権移転登記をする際に売主は「義務者」という名称で呼ばれます。)

共有者の1人は「自分の持分のみ」であれば自分の判断、自分だけの手続きで売却できますが「不動産全体」を売却したいのであれば共有者全員が合意し、実印や印鑑証明書、権利証(所有権取得の時期によっては登記識別情報)を準備しなくてはなりません。

印鑑証明書、権利証

そして、基本的には「売買契約、重要事項説明」「代金決済」など、重要な場面で共有者全員が立ち会わなくてはならないのです。

立ち会えない共有者がいる場合は委任状を作成

ただ、仕事の都合がつかない、遠方に居住しているので契約場所に出向くことができないなど、共有者がさまざまな事情を抱えていることもあります。

そのような場合、当然ですが「売却に合意していること」を前提にして、出席できる他の共有者に「委任状」を出して手続きを託することもできます。

代理人の委任状と司法書士への委任状

注意したいのは、
「他の共有者に手続きを依頼する委任状(契約行為や決済に関する手続き)」と「司法書士に登記を依頼する委任状(登記手続きの代理)」は別物ということです。
出席できない当事者は通常、共有者への委任状の他に司法書士への委任状も提出します。

また、所有権移転登記がされる前に司法書士からの事前意思確認を受けなければならないことになります(基本的には一度司法書士と面会します)。

不動産取引を代理人に委任する場合の委任状

本記事では、他の共有者への委任状についてのみ解説します。

では、具体的に委任状はどのように作成したらよいのかを見てみましょう。

委任状作成方法

委任状には、必要な項目が盛り込まれていなければなりません。

万一、委任した事実が争いになったような場合に証拠として機能するものでなくてはならないからです。

決まった書式はなし

特に「絶対この書式でなくてはならない」というものはありません。

ただ、法的観点から見て「これが入っていなければ委任状とはいえない」というポイントだけは押さえて置かなければならないのです。

※(例)ABの共有不動産で、BがAに手続きを依頼する場合
(このような時、Bは「委任者」、Aは「受任者」と呼ばれます)

記載するべき内容を項目で見ると、このようになります。

  • 委任事項(下記不動産を〇〇に売買するにあたり売買契約、代金決済・・など今回依頼したい具体的内容)
  • 不動産の特定
  • 売主、買主の特定(住所氏名)
  • 委任日付
  • 委任者(B)の署名または記名捺印(認印でも法的効力はあるものの、実印で印鑑証明書を添付することが望ましい)

委任状の書式例

実際の委任状記載例は次のようになります。

============================================
委  任  状

受任者 住 所____________
氏 名 ____________

私は、上記の者を代理人と定め、下記の権限を委任する。

後記物件について土地売買契約および残金決済当日の金銭(残代金)の授受並びに登記手続きの依頼を為す等、契約上の履行に関する一切の件。

以下余白

・当事者の表示
買主__________
売主__________

・不動産の表示
(土地)
所在 〇〇市〇〇 〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇㎡
(建物)
所在 〇〇市〇〇 〇丁目 〇番地〇
家屋番号 〇〇番〇〇の〇
種類 居宅
構造 木造
床面積 1階 〇〇㎡ / 2階 〇〇㎡

以上

令和  年  月  日
委任者 住所_______________
氏名______________印

============================================

とりわけ、物件の特定についてはとても大切な部分です。
特定の仕方がいい加減だと委任状の効力自体にも影響が出てきますので注意しなくてはなりません。

委任状の書式

登記簿謄本の冒頭にある「所在」と「地番(土地)」「家屋番号(家屋)」を見ながら間違いのないよう、注意深く記載することです。

必要な添付書類

契約書や委任状などの書類は、そこに押印されているのがたとえ認印であっても、法的効力があることには変わりありません。

ただ、やはり不動産の売買など高額、重要な財産の取引になると、各当事者が実印を押すことが通例です。

実印

また、登記委任状については「不動産登記法」で「売買の売主は必ず実印」など、場合に応じて必要な印鑑が法定されているので司法書士の指示に従って押印します。

実印を押印する場合にはそれが実印であることを証明するため「印鑑証明書」の添付が必要です。

印鑑証明書は「取得から3カ月以内」であることを求められることが多く、なるべく委任状作成が済んでから新たに取得する方が望ましいといえます。

印鑑証明書は登録者の住所地の地区町村役場や市民センター等の出張所、また、最近ではコンビニで取得することもできます。

印鑑証明書サンプル

  • 印鑑カード
  • 手数料(自治体により200円のところ、300円のところがあります)
  • 運転免許証などの身分証明書

印鑑カードは印鑑登録をした際に交付されるものであり、自治体により異なりますがこちらは一例です。

印鑑カードサンプル

印鑑カードがあれば実印そのものや委任状を持参しなくても代理人が印鑑証明書を取得することができます。それだけに、くれぐれも管理には注意しなければならないのです。

また、近年色々な銀行、役所等の手続きについて「本人確認」が厳格になっていることを感じている人も多いのではないでしょうか。

運転免許証などの身分証明書となる書類は、役所で印鑑証明書や戸籍などを取得する際も必要ですし、不動産業者や司法書士からも提示を求められます。

運転免許証やパスポートなど写真付きの身分証明書は一番効力が強い(確実性がある)書類であるため通常、一点を提示すれば足ります。

必要書類

しかし、これら以外の書類(健康保険証等)は、どのような手続き・場面で提示するかによって必要な点数が異なりますので提示を求めてきた専門家や役所等の指示に従うことが必要です。

作成時の注意点

では、委任状を作成する際に注意したい事項を確認しておきましょう。

あまり内容についての知識がない人は言われるがままに押印してしまうこともありますが、内容をよく確認するというのは基本中の基本です。

内容の意味することがわからない場合は不動産業者に(司法書士への委任状は司法書士に)確認し、明確にしてから押印することが必要です。

また、下記の点も大切です。

委任内容を空白にしない

委任内容が明記されていないものは、「白紙委任状」などと呼ばれます。

受任者が「こちらで書いておきます」などと言っても、そのままの状態で押印することは避け、先に全文の記入を終えることを求めた方が良いでしょう。

委任内容というのは委任状の要となる部分であり、ここを丸投げしてしまうと後から好き勝手に書かれてしまうことがあるからです。

「以下余白」の文言を挿入する

委任内容の下に、委任状提出後勝手に別の事項を書き加えられることがないように「以下余白」と記入しておく方が安心です。

捨印を押さない

「捨印」とは、氏名を記入した後ろに押す印鑑の他にどこか余白部分にもう一つ押す印鑑のことです。

これを押す目的は、委任状の内容を訂正する際に「確かに訂正しました」という証明として押されるものです。

つまり、捨印が押してあると受任者側で訂正がされてしまうおそれもあるため、押さない方が良いということです。

委任状の注意点

範囲は限定的に

委任事項の範囲をあまり大雑把に書きすぎてしまうと、範囲が広く解釈できてしまうため、状況によっては悪用のおそれがあります。

たとえば、「〇〇所有の土地に関する一切の件」とすると、今回売買対象になる土地以外の部分も売却の代理権を与えられたように見えてしまいます。

なるべく委任事項は範囲を絞って、しかし不足のないように記載しておかなくてはならないため、不動産業者や司法書士などが準備したものがあればそれを利用した方が無難でしょう。

委任状では対応できないケース

他人に手続きを委任すること自体も法律行為の一種です。

つまり、委任者となる人は自分の真の意思を表示できなくてはならないのであり、形式的に委任状さえ調えればどんな状況の人でも代理人によって取引ができる、というわけではありません。

代表的な例が「認知症」を患っているなどで判断能力を失った場合です。

共有持分を持つ人の中に認知症の人がいたとすると、基本的にはその不動産全体の売買をすることはできません。

どうしても取引をしなくてはならない状況なのであれば「成年後見人」を選出することを家庭裁判所に申し立てて成年後見人が代理する必要があります。

成年後見人とは、本人に判断能力がない場合に代わって法律行為をする代理人のことですが、そもそもこの制度の趣旨は「成年被後見人(認知症などの本人)の法的利益を保護すること」です。

成年後見人は、親族の就任が認められる場合もあれば、家庭裁判所によって弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選ばれることもあります。

気をつけたいこととしては、成年後見人を立てた場合であっても周囲の親族や他の共有者が思ったとおりの取引ができるわけではなく、その取引が本人のために有益である、害のないものでなければなりません。

居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可が必要になりますし、居住用でなかったとしてもそれを売却することで本人に重大な影響が出るような取引であれば家庭裁判所に黙って取引することは避けるべきです。

繰り返しますが、成年後見制度は周囲の人のために制度ではなく、あくまでも「本人」を保護するための制度だからです。

成年後見人でもう1つ大切なことは、いったん就任したら目的となった行為が終了しても被後見人の死亡まで原則として業務が続くということです。

定期的な家庭裁判所への報告や本人の財産の管理などの業務があり、「意外と大変だったのでやっぱり申立てなければ良かった」という人もいるのですが、いったん就任するとやむを得ない事由がある場合以外はむやみに辞任することもできません。

子供といえども親の通帳からお金をおろせなくなるなど、色々と不便になる場面も予想されます。

本当に成年後見人を立ててまで不動産取引をしなければならないのか、最初の段階で慎重に検討することが大切です。

共有者が認知症を患っている場合の不動産売却方法については以下にまとめています。

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まとめ

・共有名義の不動産を売買するには全員が同意し手続きに協力しなければならず、一部の共有者が契約や決済に欠席する場合には代理人への委任状が必要である。

・委任状を作成する際は、不動産を登記簿通り正確に特定することや委任事項をなるべく詳細に記載することなどが注意点となる。

・認知症などで意思表示ができない人は成年後見人を立てれば代理での取引もできるが、成年後見制度には家庭裁判所が関与するため、必ずしも親族や他の共有者の思った通りに取引できないこともあることに注意しなくてはならない。

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