事故物件の売却・賃貸契約時には告知義務がある
瑕疵(欠陥や不具合)を抱えた物件を貸す・売るとき、売主・貸主は、告知義務を負います。
告知義務とは、売買・賃貸契約前に売主・借主が負う義務で、買主・借主に瑕疵の内容を伝えなければなりません。
瑕疵には下記4つの種類があります。
心理的瑕疵 | 近隣に自殺や殺人事件、事故死等がある場合や、嫌悪施設(環境的瑕疵でもある)があるなど |
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環境的瑕疵 | 近隣に騒音や振動、異臭など生活に支障をきたす施設がある場合や、 暴力団関連施設、宗教施設等があるなど |
物理的瑕疵 | 雨漏りやシロアリ被害、建物が傾いているなど、本来の機能を発揮できない欠陥など |
法律的瑕疵 | 再建築できない、自由に活用できないなど、法令上の建築制限があるなど |
これらのうち、人の死によって主に心理的瑕疵を抱えた物件を「事故物件」と言います。
告知義務が発生する事故物件は、主に以下のような物件です。
- 自殺や他殺などがあった物件
- 事件により人が亡くなった物件
- 災害により人が亡くなった物件
なお、自然死(老衰や病死)や住宅内での事故死(階段からの転落や入浴中の溺死他)があった場合は、事故物件に含まれません。
ただし、遺体の発見が遅れ腐敗したことで、壁や床等に染みや汚れが定着し、特殊清掃が必要になった物件は、物理的瑕疵があるとされ、事故物件に含まれる場合があります。
長期間放置されて遺体の腐敗が進んだことで、壁や床に染み付いた腐敗臭や血液、体液等を取り除く特別な清掃のこと。
ガイドラインで定められた告知義務の時効
令和3年(2021年)10月、『宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン』が定められました。
このガイドラインは、これまで明確化されていなかった告知義務の基準について、不動産取引に関わる宅地建物取引業者や、裁判の判例をもとに作成されています。
中でも注目すべきは、事故物件の売却・賃貸時の告知義務について、時効となる期限が新たに定められたことです。
新たに定められた告知義務の期限
- 売却の場合は時効無し
- 賃貸の場合は基本的に約3年(例外アリ)
それぞれ見ていきましょう。
売却の場合は時効無し
売買物件の場合は、告知義務の時効が定められませんでした。
そのため、人の死があってから何年経過していようと、売却する際には買主に告知しなければなりません。
賃貸の場合は基本的に約3年(例外アリ)
賃貸物件の場合は、およそ3年が告知義務の時効と取り決められました。
1以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった1の死が発覚してから概ね3年間
を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい。(※1とは自然死を指す)
ただし、下記のような例外もあります。
- 入居希望者から心理的瑕疵について問い合わせがあった場合
- 近隣住民の記憶に深く刻まれるほどの事件等があった場合
- ニュース等で大々的にとりあげられ、社会的影響力が強い場合
事故物件は「借主がどう感じるか」が重要であり、事故から何年経っても心理的抵抗を感じる借主もいるからです。
そのため、3年以上経過しても、告知義務の一切が不要になるとは限りません。
告知事項は募集広告を出す時点で明記しなければならない
事故物件を売却・賃貸する場合、告知事項は募集広告を出す時点で明記しましょう。
告知事項を明記していない広告を見て購入希望者が現れたとしても、瑕疵の内容を伝えれば、結局購入してもらえないおそれがあります。
そのため、初めから告知し、告知事項を了承したうえで購入・借用を検討している方に時間を割けるようにしましょう。
例えば、スーモに物件情報を掲載するときは、以下のように「告知事項あり」と明記します。
引用元:スーモ「告知事項ありの物件情報」
ただし、事故物件は買主・借主希望者が現れにくいのは事実です。
実際に、弊社が独自に行った「事故物件かどうかを気にする人」のアンケート調査では、87.4%の人が「気にする」と答えています。
事故物件を「とても気にする」「やや気にする」と答えた人が合わせて87.4%。
前述した通り、賃貸物件であれば、原則およそ3年程で告知義務が時効となるため、いずれ事故物件でない場合と同様の金額で賃貸に出せる場合もあります。
一方、売買物件の場合、瑕疵の原因となった「人の死」から何年経過しても、告知義務は無くなりません。
とはいえ、所有し続けたところで、年数が経過するほど家屋は古くなり資産価値が無くなってしまいます。
よって、「事故物件の買い手が見つからない」とお困りの方は、後述する買取での売却を検討してください。
告知義務を怠ると損害賠償を請求される
告知事項があるにも関わらず、買主(借主)に伝えないまま事故物件を売却・賃貸した場合、売主(貸主)は買主(借主)から損害賠償を請求されるおそれがあります。
改正民法(2020年4月施行)の「契約不適合責任」に違反するからです。
不動産売却(賃貸)後、契約書に記載が無い瑕疵が発見された場合、売主(貸主)が買主(借主)に対して負う責任。
また、告知したとしても、瑕疵の内容が買主(借主)に正確に伝わっておらず、のちに損害賠償に繋がるケースも少なくありません。
たとえば、事故物件の売却時、「過去に孤独死があった」という内容で告知し、買主が了承して契約を結んだとします。
その後、居住中に近隣住民から「孤独死後、遺体が見つかったのは3ヶ月後の夏場だった」という新事実を知った場合、買主はどう思うでしょうか。
ただ孤独死があっただけではなく、夏場にかけて死亡後数ヶ月放置されていたとなれば、ご遺体はひどく腐敗していたはずです。
買主は「その事実を知っていたら購入しなかった」ともなりかねません。
最悪の場合は「こんな所に住むことはできない」と売買契約を破棄され、退去費用や新居の購入費用の請求を受けてしまう可能性があります。
このように、心理的瑕疵の感じ方は人それぞれであるため、告知はなるべく正確に伝わるよう、詳しく説明する必要があります。
次項では、実際の判例についてみていきましょう。
告知義務に関する判例【売買編】
事故物件を売却する際、売主が心理的瑕疵に関する告知をせず、売買契約成立後に瑕疵が発覚し、買主が訴訟を起こす場合があります。
そのため、事故物件を売却する際には必ず告知事項を伝えてください。
買い手が何年も見つかっていないなど、売却できずに困っている方は、後述する買取業者への依頼を検討しましょう。
それでは、実際の判例を見ていきます。
自殺があった住宅を告知なく売却したケース
居住を目的とした住宅で自殺があった事実を告知せず、事件から6年経過した物件を売却した事案です。
この場合、居住目的という点から心理的瑕疵の程度が大きいと判断され、買主の損害賠償請求が認められました。
参照元:横浜地裁H1.9.7
他殺疑惑があったマンションを告知なく売却したケース
8年9ヶ月前に他殺疑惑の死亡事件があったマンションを、事件について告知せず売却した事案です。
その後売主に対し、告知義務違反にあたるとして、買主の契約解除と違約金請求が認められました。
参照元:大阪地裁H22.1.15
焼身自殺があった更地(元住宅)を告知なく売却したケース(棄却)
8年前に焼身自殺があった住宅を更地にして、駐車場として使用されていた土地を、宅地として売却した事案です。
買主から告知義務違反の提訴がされましたが、事件の影響がみられないと判断され、売主の瑕疵は無いとして、訴えが棄却されました。
参照元:東京地裁H19.7.5
告知義務に関する判例【賃貸編】
事故物件を賃貸する場合、告知義務違反として借主が貸主を訴えるケースだけでなく、貸主が借主に対して訴訟を起こすケースもあります。
借主が専有部分において自殺をした場合は、当該専有部分が心理的瑕疵によって一定期間、通常の家賃で賃貸できなくなるからです。
そのため、借主は賃貸物件で自殺しないことも「賃借人(借主)の善管注意義務」の対象に含まれるという解釈が行われます。
賃借人(借主)が社会通念上、善良な管理者としてできる注意を払い、物件を正しく管理する義務。
実際に、貸主の主張が認められ、自殺した借主(遺族)に対して損害賠償金が請求された判例もあります。
それでは、賃貸物件における判例をいくつかご紹介していきましょう。
ワンルームアパートで自殺されたケース
都心のワンルームアパートで自殺した借主に対して、貸主が訴訟を起こした事案です。
貸主が借主に対して、1年目の家賃の全額、2年目・3年目の家賃の半額を損害賠償請求し、およそ家賃2年分の損害賠償請求が認められました。
判例では「次の借主には事件を告知する義務がある」とされましたが、「その次の借主には告知する必要がなく、同じ建物で事件のあった部屋以外を貸し出す場合には告知する義務はない」と判示された結果です
参照元:東京地裁H19.8.10
自殺があったマンションを告知なく賃貸したケース
賃貸契約した専有部分で、およそ1年半前に自殺があったことを入居後に知り、借主が貸主に対し告知義務違反を訴えた事案です。
自殺事故があったことを知っていた貸主は当然、告知する義務があったとして、借主からの損害賠償請求が認められました。
参照元:大阪高裁H26.9.18
共同住宅の階下で起きた自殺を告知なく賃貸したケース(棄却)
階下の部屋で自然死があったことを知らなかった借主が告知義務違反の提訴をした事案です。
しかし自然死については、「社会通念上、嫌悪すべき心理的欠陥に該当するものではない」とし、借主の訴えを棄却しました。
参照元:東京地裁H18.12.6
事故物件の売却は専門の買取業者に直接依頼しよう
前述したように、事故物件を売却する場合、「人の死」があってから何年経過しても告知義務はなくなりません。
そのため、「告知事項があるせいで家を売却できずにいる」とお困りの方は、専門の買取業者に買取を依頼しましょう。
事故物件専門の買取業者に依頼することで、所有者は下記メリットを得られます。
- 1週間から1ヶ月程度で売却できる
- 契約不適合責任を免責にしてもらえる
- 特殊清掃をしていないまま売却できる
そのほか、詳細については下記記事で解説しております。

なお、弊社は告知事項のある事故物件を専門に扱う買取業者で、全国の事故物件を積極的に買い取っています。
最短3日で買取も可能ですので、所有する事故物件が売れずに困っている場合は、気軽にご連絡ください。
※「物件住所・氏名・メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。
※査定のみ、相談のみのお問い合わせでも大歓迎です。
まとめ
事故物件を売却・賃貸する際は、告知事項を必ず事前に買主・借主へ伝えなくてはなりません。
告知義務を怠れば、買主・借主から多額の損害賠償金を請求されてしまいます。
賃貸物件であれば、およそ3年で告知義務が時効になる場合もありますが、瑕疵の内容によっては3年を超えても告知義務を負います。
また、売買物件は告知義務に時効がありません。
そのため、事故物件が売れずにいる方は放置せず、専門の買取業者に買取を依頼してください。
専門の買取業者であれば、告知事項のある事故物件でもそのままの状態で確実に買い取ってくれるからです。
なお、弊社アルバリンクも、告知事項のある事故物件を専門に扱う買取業者です。
年間300件以上の買取実績とノウハウを元に、一般の買主が嫌がるような告知事項のある事故物件でも積極的に買い取っており、「フジテレビ」を始めとする各メディアにも取り上げられています。
弊社は「全国対応」ですので、「告知事項が原因で事故物件が売れずに困っている」という場合は、まずは弊社へ一度ご相談ください。
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