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不動産の保存行為に共有者の同意は必要?注意点をわかりやすく解説

不動産の保存行為に共有者の同意は必要?注意点をわかりやすく解説 共有持分
元弁護士福谷陽子
元弁護士福谷陽子
京都大学在学中に司法試験に合格し、不動産トラブル、多重債務、離婚問題や交通事故、相続などの案件を担当し、自身で弁護士事務所を運営。その後体調不良により弁護士事務所を一時閉鎖し、現在は10年間の弁護士経験を元に執筆に専念。

不動産を共有していると、各共有者は自分1人の判断で不動産を処分したり変更を加えたりできません。

ただし「保存行為」については各共有者が単独でできます。

今回は共有不動産の「保存行為」とはどういったことなのか、みていきましょう。

共有と共有持分

共有とは

遺産相続などにより、不動産が「共有状態」になってしまうことがあります。

共有状態とは、1つの不動産の所有権を複数の人が共同で所有している状態です。

たとえば実家の土地建物を3人の子どもたちが相続したとき、遺産分割協議で相続人を定めないと実家が「3人の共有状態」になります。

不動産の共有

共有持分とは

共有者にはそれぞれ「共有持分」があります。
共有持分とは、それぞれの共有者の「権利の割合」です。

物は1つなのに複数の人が共同で所有するので、1人1人には完全な所有権が認められません。
それぞれの共有者の権利は割合的なものとなり「共有持分」が割り当てられるのです。

共有持分割合の数字はケースによって異なりますが、合計すると1になるのが通常です。

たとえば不動産を3人で共有している場合、それぞれの共有持分割合が「3分の1ずつ」となったり、「1人が2分の1で他の2人が4分の1ずつ」になったりします。

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共有持分権者の権利

不動産を共有している場合、それぞれの共有持分権者に不動産に対する「権利」が認められます。

共有持分権者の権利

処分行為

共有持分権者に重大な影響を与える行為は、全員の合意がないとできません。

たとえば売却抵当権設定などの行為が該当します。

持分を少しでももっている共有持分権者が売却に反対したら、大きな持分割合を持つ共有者が売却を望んでも勝手に売却はできません。

こういった行為を「処分行為」といいます。

管理行為

不動産を「管理」する行為であれば「持分割合の過半数」の持分権者の同意があれば可能です。

たとえば不動産を長期にわたって賃貸したり、賃貸借契約を解除したり賃料を変更する合意をしたりするとき「管理行為」となります。

管理行為の場合、過半数の持分を持っている人が合意できたら対応を進められます。少数の持分権者が反対しても、多数派の意見が優先されるイメージです。

管理行為

以上のように共有不動産の場合、個々の共有持分権者にできることが大きく制限されるので、まずはこの基本を押さえておいてください。

保存行為

共有不動産であっても「保存行為」については各共有持分権者が単独でできます。

保存行為とは、物の現状を維持するための行為」。

わかりやすくいうと、このまま放っておくと不動産の価値が低下してしまう場合に、不動産の価値を維持するための行動と考えましょう。

不動産の保存行為は、共有持分権者全員にとって利益となるので、他の持分権者の同意は不要とされます。

 

不動産の共有に関する民法条文のまとめ【保存行為、変更行為、管理行為とは?】
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具体例

保存行為の具体例としては、以下のようなことがあげられます。

共有物の修理修繕

不動産が朽ちそうになっている場合の「修理や修繕」は保存行為なので、各共有持分権者が単独の判断で可能です。

ただし、各共有持分権者が自由にリフォーム、リノベーションできるわけではありません。

不動産が特段傷んでいないのに「オシャレにしたい」「高級感を出したい」などという考えで持分権者の趣味によるリノベーションを行うことは保存行為になりません。

不動産に変更を加える行為といえるので、共有持分権者全員の合意が必要になる可能性があります。

処分行為

不法占拠者への明渡要求

共有不動産が第三者によって不法占拠されているときには、各共有持分権者が単独で明け渡し請求できます。

不動産が不法占拠されている状態はすべての共有持分権者にとって不利益しかないからです。

たとえば賃貸借契約を解除したのに賃借人が明け渡さずに居座っていたら、他の共有持分権者の同意をとらなくても明け渡し請求できると考えましょう。

保存行為

一方、共有持分権者のうち誰か1人が独占利用している場合などには不法占拠ではないので明け渡し請求できません。

無権利者名義の抹消登記請求

ときおり、不動産の名義が実態とそぐわないケースがあります。

無権利者が勝手に自分の名義にしてしまっている場合を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

こういったケースでは、不実の登記を抹消することが共有持分権者全員の利益になるので、共有持分権者単独の判断で抹消登記請求ができます。

法定相続登記の申請

不動産を複数の相続人が相続すると不動産は自動的に「法定相続人の共有状態」になり、遺産分割をしない限り、不動産の共有状態は継続します。

この場合、各法定相続人には自分1人で「法定相続登記」を申請する権利が認められます。
法定相続登記をすると、不動産の登記は「法定相続分に従った共有登記」となります。

たとえば不動産を3人の子どもが相続した場合、長男や次男などの子どもたちはそれぞれ単独で「兄弟それぞれ3分の1ずつ」の法定相続登記の申請ができます。

法定相続登記も保存行為の一種と考えられています。

不動産を相続したのに登記せずに放置するとリスクが高い!

このことは、遺言書がある場合や遺産分割協議で不動産の相続人を決めたときに問題になる可能性があります。

たとえば遺産分割協議で長男が不動産を相続することが決まっても、単独登記申請をせずに放置していたとしましょう。

この場合、次男などの他の相続人が法定相続登記を申請すると、不動産は「共有」名義になってしまいます。

そうすると、他の相続人が「自分の持分」を第三者へ勝手に売却してしまうリスクも発生します。

トラブルを避けるため、遺言書や遺産分割協議をしたら、早めに単独名義の登記申請をしましょう。

地役権設定登記の請求

地役権とは、他人の土地を使わせてもらう権利です。

たとえば道路に接していない袋地の所有者が、道路へ出るために周りの土地を使わせてもらうケースを考えるとわかりやすいでしょう。

使われる土地(通行に利用される土地)を「承役地」、使わせてもらう方の土地(通らせてもらう方の土地)を「要役地」といいます。

囲繞地通行権と通行地役権の違い
「住んでいる住宅が袋地になっていて、難しい不動産用語に困っている」 「囲繞地通行権と通行地役権の違いがわからない」 「囲繞地通行権と通行地役権はどのように使い分けたら良いか悩んでいる」 道路に接していない土地を保有していたり、道路...

 

地役権は「登記」できます。

登記すれば地役権を第三者にも主張できるので、要役地の所有者にとっては利益になります。

そこで地役権の設定登記も保存行為の一種として、要役地の共有持分権者なら誰でも可能です。

保存行為に他者の同意は不要

共有不動産というと「他の共有持分権者と話し合わないと何もできない」不自由なイメージがあるでしょう。

しかし、保存行為に関しては、共有者の同意は不要です。

保存行為は「共有持分権者全員にとって利益になる行為」なので、個別に同意をとる必要がありません。

但し、保存行為と管理行為や処分行為との境界はあいまいなケースもあります。

先にも説明したように、「他の共有持分権者も喜ぶだろう」と思って勝手に共有建物をリノベーションすると、権限逸脱となってしまう可能性が高いでしょう。

権利侵害すると、他の共有持分権者から原状回復請求や損害賠償請求される可能性があります。

自己判断で「これは保存行為」と決めつけて行動すると危険なので、迷ったときには専門家へ相談する方が安心です。

保存行為の注意点

共有不動産に手を加えたいとき「保存行為」以外の行為には他の共有持分権者の同意が必要です。

たとえば以下のような行為は単独ではできないので、注意しましょう。

共有不動産の売却

不動産の売却は「処分行為」に該当します。

共有持分権者へ大きな影響を与えるので「全員の合意」が必要です。

不動産の価額が上がっていて「今売ると得だから」と思っても、単独で売却を進められません。

不動産仲介業者との契約や買い主との売買契約でも、共有持分権者全員の署名押印が必要になります。

不動産を売却したいときには、他の共有持分権者へ話を持ちかけて全員の合意をとりましょう。

処分行為

共有不動産への抵当権設定

アパート建築などのため、共有不動産に抵当権を設定したいときにも注意が必要です。

抵当権の設定は「処分行為」に該当するので、共有持分権者が全員合意しなければなりません。

金融機関と抵当権設定契約を締結するときには、共有持分権者全員の署名押印が求められます。

「土地を遊ばしておくのはもったいないから収益化しよう」などと考えても、単独では抵当権を設定できません。

共有不動産を活用したいときには、他の共有者へ具体的なプランを提案して承諾をもらう必要がありますし、1人でも反対すると実現は困難となるでしょう。

賃貸借契約の解除

不動産を賃貸しているとき、賃借人が賃料を滞納し続けるので「解除」したいケースがよくあります。

この場合、解除した方が共有持分権者全員の利益になるので「保存行為として単独でできるのでは?」と考える方がおられるでしょう。

しかし賃貸借契約の解除は「管理行為」です。

処分行為ほどの重要性はありませんが、各共有持分権者へそれなりに大きな影響をもたらすと考えられています。

そこで賃貸借契約の解除には「共有持分の過半数の合意」が必要となります。

過半数の共有持分を持つ共有者なら単独でできますが、半数に満たない共有持分権者は意見の合う共有持分権者を探して「過半数」にしなければなりません。

管理行為

共有持分の管理や処分に困ったら

確かに共有不動産であっても「保存行為」なら単独でできますが、法律上「保存行為」と認定されるケースは多くはありません。

自分では保存行為と思っていても、実際には「管理行為」や「処分・変更行為」に該当してしまうと、他の共有持分権者との間で大きなトラブルになってしまうリスクも高まります。

また共有持分をもっていると、収益を得ていなくても税金や管理費用がかかるものです。

毎年固定資産税を払っているだけでは、せっかく不動産の権利があっても意味がありません。
かといって他の共有持分権者に売却や持分買取の話を持ちかけても、頑なに拒絶されるケースもあるでしょう。

その場合「共有持分の売却」が有効な解決方法となります。

共有持分の売却

共有持分の売却とは

共有持分の売却とは、自分の持分だけを売却することです。

共有不動産全体を売却するには共有持分権者全員の合意が必要ですが「共有持分だけ」であれば各共有持分権者が単独の判断で売却できます。

他の共有持分権者の承諾は不要ですし、知らせる必要すらありません。

たとえば3分の1の共有持分をもっている方であれば、3分の1の権利だけを売却できるのです。

共有持分を売却すれば、面倒な共有関係から外れられますし、これ以上固定資産税を負担する必要もありません。

それどころか売却金も手元に入ってくるので、経済的にプラスになります。

持分の売却価格

共有持分のみを売却する場合、不動産全体を売却するときよりも売却価額が低くなるケースが一般的です。共有持分には1個の不動産のような流動性がなく、需要が少ないためです。

たとえば3,000万円の不動産の3分の1の共有持分をもっている場合、理屈としては共有持分を1,000万円で売れるはずです。

しかし実際には800万円やそれ以下になってしまう可能性があります。

ただ、共有持分を持ち続けていても他の共有持分権者が合意しなければ現実に不動産を売れませんし、お金も入ってきません。

固定資産税や管理費用も支出も発生します。

そういった現実を考えると、たとえ多少売却価額が低くなっても持分を売却するメリットがあるといえるでしょう。

他の共有持分権者とのトラブル

共有持分の売却に際し、他の共有持分権者の同意は不要ですし知らせる必要もありません。

ただし何も言わずに売却すると、後に発覚したときにトラブルになる可能性があります。
親族同士が険悪になってしまうケースもあるので、注意しましょう。

当初から折り合いが悪いなら気にする必要はないかもしれませんが、仲良くしている共有持分権者がいる場合にはひと言断っておくようお勧めします。

その人も共有持分売却に関心があれば、一緒に持分を売却することも可能です。

まとめ

共有持分を売却するときには、一般人を相手にするのは困難です。

持分には流動性がないので、普通の人は購入を望みません。

売却するなら持分買取専門の不動産会社を探す必要があります。

当社では共有持分の買取に積極的に取り組んでいます。
お見積もりから売却、決済まで1ヶ月程度の短期でも対応可能です。

面倒で費用のかかる共有関係にお悩みの方がおられましたら、ぜひともお気軽にご相談ください。

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