マンションで共有となる権利
マンションにおいて共有となる権利は3種類あります。
区分所有権を複数人で共有
区分所有権は、マンションの1戸1戸の「専有部分(部屋)」を所有する権利です。
区分所有権が共有となるのは、購入や相続で自ら選択した場合に限られます。
敷地利用権を住民で共有
マンションの敷地は、区分所有者全員の共有物です。
また、各所有者が土地に対して持っている権利(共有持分)を敷地利用権と呼びます。
多くのマンションは、敷地利用権と、区分所有権とを分離して処分(売買等)することが出来ないよう一体化して登記された権利形態(敷地権)となっています。
持分割合は原則的に専有部分の床面積(専有面積)割合になりますが、マンションの規約で変更も可能です。
共用部分を住民で共有
共有部分は区分所有者全員の共有であり、各々が共有持分を持っています。
持分割合はこちらも専有部分の床面積(専有面積)に応じて決められます。
マンションの権利を分かりやすく
区分所有権 | マンションの専有部分を所有する権利 |
敷地権(敷地利用権) | マンションの敷地に対する権利 |
共用部分の共有持分 | マンションの共用部分に対する権利 |
ただしマンションは「専有部分(区分所有権)」だけではなく土地がないと維持できません。
マンションの部屋と敷地権はセットになっているので、別々には売却できません。
なお、マンションには駐車場の権利がついている場合もあり、その場合には駐車場も一緒に売却するのが一般的です。
マンションの共有持分の決め方
まずは区分所有権を複数人で共有する場面についてお話します。
マンションの共有持分割合を自分たちで決めなければならない場面があります。
- 夫婦などの複数人でマンションを購入するときと
- 被相続人の死亡により複数の相続人がマンションを相続するとき
それぞれについて、共有持分の決め方をみてみましょう。
ただし、大前提として、不動産を共有名義で所有することはおすすめしません。
どうしても共有状態を避けられない方に向けて書いています。
マンション購入時の共有持分の決め方
マンションを複数人でお金を出し合って購入する場合、共有名義となります。
共有持分割は「出資割合」応じて決めるのが一般的です。
遺産相続時の共有持分の決め方
遺産相続の際には、遺産分割するかどうかで持分割合が異なります。
遺産分割を行わずそのままマンションを相続する場合には、それぞれの相続人の「法定相続分」に応じた共有持分割合となります。
遺産分割する場合、相続人が話し合って自由に持分割合を定められます。
マンション共有持分を適当に決める税金リスク
マンション購入の際、出資割合を無視して適当に共有持分を決めると税制面でリスクが発生します。
出資額が少ないのに共有持分を与えると「贈与」とみなされて贈与税が発生してしまう可能性があるのです。
夫婦などで共同でマンションを購入する際には、お互いの出資割合を計算してなるべく正確に共有持分へ反映させましょう。
なお遺産分割の場合には共有持分割合を自由に定めて良いので、贈与にはなりません。
マンションの共有持分割合の計算方法と具体例
マンションの共有持分割合の計算の具体例をみてみましょう。
持分割合の計算例①購入時
夫婦で3000万円のマンションを購入する際、妻が頭金を1000万円、夫が住宅ローンを2000万円組んだケース。
妻の持分割合を3分の1,夫の持分割合を3分の2とします。
遺産分割時 持分割合の計算例
子どもたち3人が法定相続人
遺産分割協議をしない場合、3人が3分の1ずつの共有持分を取得します。
遺産分割協議で合意した場合には合意した方法で共有持分割合を設定します。たとえば長男が2分の1、次男と三男が4分の1ずつなどとしてもかまいません。
なお遺産分割協議によってマンションを分割するなら、共有にはしない方が得策です。
共有状態にすると全員の同意がないと売却できず、管理や費用負担などの面でもトラブルが生じるケースが多いからです。
できるだけ単独の相続人がマンションを相続するようにしましょう。
すでに共有状態となり、他共有者との話し合いがうまく行っていない場合は弊社にご相談ください。
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マンションの共有持分の確認方法
マンションの共有持分割合がどうなっているか調べたいときには、以下の方法で確認できます。
登記簿を取って調べる
法務局で登記簿(登記事項証明書)を取得する方法です。
登記事項証明書は、全国の法務局で申請取得できます。
登記事項証明書交付請求書(申請書)を法務局に持参するか郵送すれば証明書を交付してもらえますし、オンライン上でも交付申請が可能です。
登記事項証明書が届いたら、「権利部」の「権利者その他の事項」の欄を見てください。
そこに各共有持分権者名と共有持分が記載してあります。
固定資産評価証明書を取得
共有持分権者と共有持分割合については、固定資産評価証明書にも記載してあります。
不動産の所在する市区町村役場へ申請して取得しましょう。
固定資産税の納付書にも記載してある
毎年届く固定資産税の納付書にも共有持分割合の記載があります。
ただし、一般的に納付書は共有持分権者の代表者1名にしか届かないので、その他の共有者が持分を確認したいときには固定資産評価証明書か登記事項証明書を申請するのがよいでしょう。
マンションの土地の権利2種類
マンションの下の土地の権利には「敷地利用権」と「敷地権」の2種類があるので、それぞれの違いについてみてみましょう。
敷地利用権
敷地利用権は、各区分所有者がマンション敷地を利用する権利です。
すべての区分所有者の共有となり、それぞれの区分所有者には共有持分が認められます。
土地と建物が別々に登記されているため、区分所有法によって敷地権制度が作られる前は別々に売買することも可能でした。
敷地権
敷地権は、敷地利用権を区分所有権と一体として登記した権利です。
1983年以降は区分所有法により、マンションには必ず「敷地権」を設定しなければなりません。
そこで今はほとんどのマンションで敷地権の登記が行われています。
別々に登記していると、悪意のあるブローカーや単純な登記ミスなど、建物の権利はあるのに、土地の権利は別の人になるトラブルが発生してしまいます。
そこで区分所有法により敷地権制度が作られ、土地と建物を別々に売買することができなくなりました。
1983年より前からあるマンションでも、きちんと管理されていたらその後の敷地権の登記をしているのが一般的です。
敷地権の登記がされている場合、区分所有権と敷地権の登記が一体化しているので、登記事項証明書の申請が1回で済みます。
敷地権の設定のないマンションとは
1983年前に建築された古いマンションは、敷地権の設定がされていない場合も多々あります。
相当築古のマンションで、現在では少数と考えられるでしょう。
敷地権の設定がないマンションのリスク
敷地権の設定がなく敷地利用権がそのまま登記されているマンションを購入すると、以下のようなリスクがあると考えられます。
管理組合が機能していない
一般的に、1983年前に建築されたマンションでも、管理組合が機能していれば、その後に敷地権を設定されているでしょう。
しかし、未だに敷地権設定せず放置しているようなマンションは管理組合が機能していない可能性があります。
土地所有権移転だけ放置される
敷地権化されていないマンションだと、専有部分だけ移転登記して土地所有権が放置されているケースも少なくありません。
司法書士に頼まず自分で登記を行うような方に多いミスです。
登記簿を取りにくく表記も複雑
敷地権の設定があれば、区分所有権と敷地権の登記が一体となっているので登記事項証明書の申請を一度で済ませられます。
しかし、敷地権の設定がなければ敷地利用権の登記事項証明書を別途取得しなければならず、手間と費用がかかるでしょう。
また、敷地利用権の登記事項証書には共有持分権者全員の記載があり、非常に見づらくなっています。
資産価値が低い
敷地権が設定されておらず敷地利用権がそのままになっているマンションでも、売買は可能です。
ただし、築年数も経過しており上記のようなリスクがあるので、買手が見つかりにくく、価格も安くなりがちです。
マンションの敷地権割合の計算方法
マンションの敷地は各区分書有権者の共有になるので、敷地権にも「割合」があります。
それを「敷地権割合」といいます。
敷地権割合は、以下の計算式で算定できます。
たとえばマンションのすべての床面積が2000平方メートル、専有部分の床面積が100平方メートルの場合、敷地権割合は100分の5となります。
マンション共有持分を持ち続けるリスク
マンションの区分所有権が共有となっている場合、以下のようなリスクが発生します。
もちろん、敷地権や共用部分の共有状態は問題ではありません。
敷地権や共用部分はもともと他の区分所有者との共有なので、こちらが共有になっているのは当然です。
心配する必要はありません。
活用しにくい
共有名義マンションは売却・賃貸・抵当権設定の場面で、共有者全員の合意が必要です。
マンションが共有の場合、「売却したい」と思っても一人で決められず、全員の同意を得ないとできません。
費用負担でトラブル
マンションを共有にしていると、固定資産税や修繕積立金、管理費なども共同で負担しなければなりません。
共有者同士で費用の精算がスムーズにできずトラブルになるケースが多々あります。
相続発生
共有不動産で相続が発生すると、さらに共有者が増えてしまい、活用や処分がより困難となります。
複数の相続が発生すれば、共有者がお互いに知らないかったり、連絡先を知らなかったりと権利調整どことではないでしょう。
なお上記はあくまで「専有部分の区分所有権」を共有にするリスクであり、敷地権や共用部分の共有の話ではありません。
避けるべき状況は「区分所有権(専有部分、マンションの部屋の部分)」を共有状態です。
マンションの共有状態を解消する方法
マンションの共有状態を解消するには、以下のような方法があります。
他共有者の持分を買い取る
まずは他の共有持分権者の持分を買い取る方法です。
すべての共有持分を買い取れば、自分ひとりの完全な区分所有権を得られるので、自由に売却やその他の処分ができるようになります。
一人で住んでいても文句を言われる可能性はありませんし、人に賃貸することも自由です。
他共有者に自分の持分を売却
自分が買い取りたくない場合、他の共有持分権者に買い取ってもらう方法もあります。
他の共有持分権者がマンションに住んでいる場合などには買取交渉をしやすいでしょう。
他共有者と協力して100%区分所有権として売却
他の共有持分権者全員と話し合って合意の上、区分所有権を敷地権ごと売却する方法です。
全員の合意があれば、マンションの売却は可能です。
この場合、買い手を見つけるのも比較的容易でしょうし、時価で売れる可能性が高いので比較的高額な値段をつけても売れやすいでしょう。
共有持分を放棄
共有持分は放棄できます。
放棄すると、共有持分は他の共有持分権者のものになります。
共有状態から離れたいときには、共有持分を放棄すれば関わらずに済むでしょう。
ただし共有持分には本来経済的な価値があるので、対価なしに放棄すると損失となることを忘れてはなりません。
また、実務上、放棄する側と放棄される側の両者が協力して登記する必要があるので、勝手に放棄することが出来ません。
共有物分割請求
他の共有持分権者と交渉しても買取や売却の合意ができない場合、裁判所で共有物分割請求(裁判)ができます。
共有物分割請求とは、合理的な共有状態の解消方法を裁判所に判断して貰います。
具体的な解消方法は、以下の通りです。
- 現物分割…物理的に共有物を分ける方法。建物は物理的に切り離せないのでマンションで行われることはない。
- 代償分割(価額賠償)…マンションを取得する1人が、他の共有者に代償金を払う方法です。支払い能力があるかどうかがポイントです。
- 換価分割(代金分割)…共有物を売却して、売却代金を分け合う方法です。共有者同士の話し合いがまとまらに時に競売が下されるため、分け合うお金も少なくなります。
裁判費用や手間もかかりますし、希望通りの判決になるとは限りません。
訴訟は最後の手段と考えましょう。
共有持分を第三者に売却
共有持分を専門業者へ売却する方法もあります。
この方法なら、売却代金をすぐに得られ、訴訟のように手間暇も時間も弁護士費用もかかりません。
もちろん、赤の他人と共有しているマンションに住みたい人などいませんから、市場価額よりは低い買取金額となります。
とはいえ、他の共有持分権者が買取にも売却に応じてくれないなら、極めて有効な対処方法となるでしょう。
なお理論的には一般の人にも共有持分を売れますが、実際に共有持分に関心を持つ一般人はほとんどいません。
実質的には共有持分買取業者へ売却するのがもっとも確実で現実的ですし、相手はプロなので安心です。
弊社でも共有持分買取を積極的に進めています。
マンションが共有状態になっていて面倒に感じている方、すぐに現金化したい方は、お気軽にご相談ください。