共有物分割請求訴訟とは
「共有物分割請求訴訟」とは裁判所を通して、他の共有者に共有解消を求める訴訟のことです。
不動産を共有していると、共有者1人1人でできる行為が限られます。単独名義の不動産と違い、共有名義の不動産はリフォームや賃貸として貸し出すにも制限がかかります。共有不動産全体の処分(売却)となると、共有者全員の合意が必要です。
このような管理や処分に手間のかかる共有状態を解消する手段の1つが「共有物分割請求訴訟」です。
共有物分割請求訴訟にまつわる専門用語は分かりづらくややこしいので、ここで定義しておきます。
共有物分割請求 | 他の共有者に対して共有状態の解消を申し出る行為 |
---|---|
(共有物分割)協議 | 個人間(共有者間)で共有状態の解消方法を話し合うこと |
(共有物分割)調停 | 裁判所が間に立って、共有状態の解消方法を話し合うこと |
共有物分割請求訴訟 | 裁判所に不動産の共有状態を解消する方法を決めてもらうこと |
原告 | 訴訟をおこした人 |
被告 | 訴訟をおこされた人 |
「(共有物分割)協議」「(共有物分割)調停」「共有物分割請求訴訟」の流れは以下の通り。
ただ、共有物分割請求訴訟を起こすためには、「共有者間で話し合いを行った」という前提があればいいので、個人間での「協議」か、裁判所が間に立った「調停」のどちらかを行えば差し支えありません。
- 協議(個人間で話し合う)→訴訟(裁判所に解消を委ねる)
- 調停(裁判所を通して話し合う)→訴訟(裁判所に解消を委ねる)
ここから解説していく共有物分割請求訴訟のメリットとデメリットをしっかりと把握したうえで、実際に訴訟を起こすかどうか判断しましょう。
また、他の共有者から分割請求を受けている方は後述の「共有物分割請求の通知が届いた場合のとるべき対処法」を参考にしてください。
共有物分割請求訴訟のメリット
共有物分割請求訴訟を行うメリットは「強制的に共有状態の解消方法が決まる」「共有状態の解消方法に納得しやすい」の2点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
裁判所が強制的に共有状態の解消方法を決定してくれる
基本的に共有不動産は、他の共有者との合意がなければ、共有状態の解消はできません。
一方で共有物分割請求訴訟を起こした場合、裁判所が共有状態の解消方法を強制的に決定するため、他の共有者の合意は必要ありません。
そのため、共有者間で意見が対立し、協議がまとまらない場合でも共有状態を解消できます。
共有状態の解消方法に納得しやすい
共有物分割請求訴訟では、裁判で決定した共有状態の解消方法に、納得感があります。
共有者間の言い値による協議と異なり、裁判では不動産鑑定士等による適正価格に基づいて裁判所が共有状態の解消方法を決定するからです。
そのため、共有者間で不動産の適正価格についてもめている場合でも、裁判所の公的な判断によって他の共有者も首を縦に振ってくれる可能性があります。
共有物分割請求訴訟のデメリット
共有物分割請求訴訟には「人間関係」「時間」「費用」等の面で大きなデメリットがあります。これから紹介するデメリットをしっかりと把握したうえで、共有物分割請求訴訟に進むことをおすすめします。
訴訟を起こした際のデメリットを回避したいという方は、「共有状態の解消が目的なら他の手段も検討しよう」を参考にしてください。
共有者との関係が悪化する
裁判となると、「共有者間での話し合い」から「公に対立して争う」ことになるので、人間関係が修復不可能なほど悪化する可能性が十分に考えられます。
すでに関係が悪化しきっている場合は、裁判になっても構わないと思いますが、話し合いの余地があるうちは、なるべく共有者間の話し合いで解決しましょう。
共有解消まで時間がかかる
共有物分割請求訴訟は、共有状態の解消までに最低半年、長ければ数年単位という時間が掛かります。
共有者同士で判決に納得できない場合や事実確認が必要になると、複数回にわたって口頭弁論(法廷で意見を述べる場)が行われるため、その分裁判の期間が延びます。
「共有状態までに時間を掛けたくない」という方には共有物分割請求訴訟はおすすめできません。
弁護士への報酬がかかる
裁判手続きを個人で行うのは困難なため、専門知識を持つ弁護士に依頼することになり、弁護士費用が発生します。
弁護士費用は不動産全体の価格によって変動しますが、50万円程度から、時には100万円以上となるケースも少なくありません。
弁護士費用を含めた、共有物分割請求訴訟にかかる費用は後ほど詳しく解説します。
当事者が望まない判決になる可能性がある
共有物分割請求訴訟を申し立てたからと言って、自分が望む結果になるとは限りません。
裁判所が中立的な立場から、様々な条件を加味して解消方法を決定するからです。
裁判所の判決によっては、
- 不動産を手放すことになる
- 共有者全員が金銭的に損する
このような結果になる可能性があります。
後ほど解説しますが「換価分割」という判決になった場合、共有不動産が競売に出されて、安価で落札される可能性があるからです。
共有物分割請求訴訟はこんな人におすすめ
共有物分割請求訴訟が望まれるケースを紹介していきます。
他の共有者が不動産の共有解消の話し合いに応じない場合
共有不動産の共有解消について話し合いを申し入れているのに、他の共有者が話し合い自体を拒否するような態度であれば、最終手段として共有物分割請求訴訟を起こすのも有効です。
共有物分割請求訴訟に対して無視を続けたとしても、裁判所の判決には逆らえないので、強制的に共有状態を解消できます。
物件に住んでいる共有者をどうしても追い出したい場合
物件に住んでいる共有者を追い出すことは原則としてできません。不動産の各共有者には、「不動産全体を使用する権利」があり、これに対して明け渡しを請求する権利は他の共有者にはありません。
ですが、共有物分割請求訴訟では、あなたが不動産を単独所有とすることを主張できます。認められない場合もありますが、もし認められれば、居住している共有者は物件に住み続けられなくなります。
結果的に物件に住んでいる共有者を追い出し、あなたが居住できます。
不動産を現金化したい場合
他の共有者が不動産の売却に反対しているが、どうしても不動産を現金化したいという場合には、共有物分割請求訴訟が活用できます。
裁判の判決にもよりますが、不動産が競売に掛けられれば、他の共有者の意思に関係なく強制的に現金化できるからです。
ですが、競売では不動産が安価で落札されることが多く、市場価格の5~7割程度が競落相場です。不動産が競落された後に、売却益をさらに共有者と持分割合に応じて分配するので、あなたの手元に入る現金は想像よりもかなり少額となるでしょう。
それよりも、自分の共有持分だけを専門の不動産買取業者に買い取ってもらった方が高く売れるかもしれません。
そのため、訴訟を起こす前に、共有持分専門の買取業者に一度査定を依頼することをおすすめします。
専門の買取業者であれば、あなたの持分のみを買い取ってもらうことで、すぐにでも共有関係から抜け出せます。提示された査定額と競売時の競落価格を天秤にかけて、どちらが得か慎重に検討しましょう。
弊社でも、無料での査定を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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共有物分割請求訴訟求を起こす手順
ここまで、共有物分割請求訴訟のメリットやデメリットについて解説してきました。共有物分割請求訴訟の利点もリスクもしっかりと理解できたところで、ここからは全体的な流れを解説していこうと思います。
前述の通り、共有物分割請求訴訟を起こしてから、共有解消できるまでには最短で半年、長ければ数年単位で時間がかかります。
共有物分割請求訴訟を起こす際は、争いが長丁場になるかもしれないという心構えが必要です。
事前に共有者間で協議を行う
まずは他の共有者に話を持ち掛けて、不動産の共有状態を解消する方法を話し合います。
前述の通り、裁判に発展するとデメリットが多いため、訴訟も視野には入れつつ、基本的には共有者間の話し合いで解決を目指しましょう。
また、後日訴訟を起こした際に、相手から「協議をしていない」と言われる可能性もあるので、協議の申し入れには「内容証明郵便」を活用するべきです。
内容証明郵便を活用すれば、発送日や郵送物の内容、相手の受取日等を証明することが可能です。
また、「共有者間で上手く話し合いをまとめられるか不安」という方は、ここから「共有解消に向けた話し合いのコツ」をご紹介しますので、参考にしてください。
共有解消に向けた話し合いのコツ
まずは、不動産の共有状態を解消することによる、他の共有者のメリットを伝えましょう。
例えば、
「あなたも不動産の管理から解放されるよ」
「現状だといちいち話し合いが必要で面倒じゃない?」
と相手方にメリットを感じせるのがおすすめです。
メリットを伝えた後は、このまま不動産を共有し続けるデメリットを伝えましょう。
例えば、
「このまま共有状態を続けていたら、相続が発生するたびに共有持分が細切れになる」
「子供や孫の代には、誰と共有している不動産かわからなくなって、管理も処分もできなくなる」
と不安感をあおるのも手です。
メリットとデメリットを伝えても共有解消に乗り気でない場合は、万が一訴訟に発展した際のリスクを伝えましょう。
例えば、
「裁判になったら、数十万円の弁護士費用を共有者全員が支払わなければならなくなる」
「裁判で不動産が競売に出されれば、市場価格の半額程度で落札されてしまうかも」
と裁判になれば共有者全員が損するという可能性を理解してもらいましょう。
弁護士に相談する
共有者間の協議での解決が難しい場合は、弁護士に共有者の間に入ってもらいましょう。
弁護士を間に入れて再度協議を行うことも可能ですし、調停や訴訟に進む場合は裁判所での手続きが必要になるので、個人で行わず弁護士に代理してもらいましょう。
また、「どの弁護士に相談したらよいか分からない」という方もいるかと思いますので、ここからは信頼できる弁護士の特徴を解説していきます。
信頼できる弁護士の特徴
- 最も重視すべきなのは自分との相性
- 弁護士費用の安さよりも、自分と相性の良い弁護士を選ぶようにしましょう。弁護士は自分の代理人であり、コミュニケーションを取って協力することで裁判が良い結果に繋がります。相性の悪い弁護士を選んでしまうと、裁判の期間ずっとストレスを抱えることになりかねません。
- 必要な情報を聞き出そうとしてくれるか
- あなたから必要な情報を聞き出す姿勢のある弁護士を選びましょう。実際、弁護士の中には依頼人へのヒアリングを早々に切り上げてしまう人も一定数います。しかし、裁判は情報戦でもあるため、必要な情報が揃っていなければ、良い成果はあげられません。
- 共有物分割請求訴訟の相談実績が豊富か
- 弁護士ごとに得意分野があります。そのため、共有物分割請求訴訟の相談実績が豊富で、不動産関連の事案を得意とする弁護士を選ぶようにしましょう。弁護士事務所のHPや、電話で相談する際に確認してみると良いです。
共有者間で調停を行う
共有者間のみで共有状態の解消方法を決定できない場合、裁判所の調停員を間に入れて、公に話し合いを行いましょう。
- 調停員
- 裁判所が選任した一般の有識者。
裁判の当事者の間に入り、問題解決のアドバイスを行う。
調停の段階では、裁判所から強制的な判決が下されることはなく、目的はあくまで共有者間での合意です。
また、すでに共有者間で協議を行っている場合には、調停を行わずそのまま訴訟を申立てることも可能です。
地方裁判所に訴訟を申し立てる
協議や調停でも共有解消方法が決定しないのであれば、いよいよ共有物分割請求訴訟の申立てを行います。
共有物分割請求訴訟の申立て先は共有不動産の所在地、または被告(訴訟を受けた人)の住所地を管轄する地方裁判所です。
共有物分割請求訴訟の申立時に必要となる書類は以下の通りです。
訴状の正本および副本 | 訴訟内容を記載した書面。弁護士が作成する |
---|---|
固定資産評価証明書 | 所轄の役所で取得可能 |
全部事項証明書(登記簿謄本) | 法務局で取得可能 |
収入印紙 | 訴状に貼付する。郵便局やコンビニで購入可能。 |
郵便料金 | 訴状を裁判所、被告へ郵送する料金。 |
基本的に訴訟の申立ては弁護士に任せておけば良いので、書類の取り寄せなどの指示に従うだけで手続きが完了します。
裁判所から呼出状が送付される
訴訟の申立てから1か月程度で、裁判所から共有者全員に対し「呼出状」が送られてきます。
- 呼出状
- 裁判所から送付される、当事者全員に対して裁判期日を伝える書面。
原則、呼出状が送られてきた人は、書面に記載の期日に「口頭弁論」あるいは「答弁書の提出」を行わなければなりません。
どちらも行わない場合、裁判所から「訴訟に対する主張」を放棄したとみなされます。そのため、相手方の主張がそのまま判決結果になり、一方的に損する可能性があります。
口頭弁論とは
口頭弁論とは法廷で当事者が言い分を公平・平等に述べる機会のこと。
口頭弁論では、訴状の内容に間違いがないかを、裁判所が原告(訴訟を申し立てた人)に対して確認します。
答弁書とは
答弁書とは呼出状に同封されている書面のこと。
訴訟に関する認否や意見を記載し裁判所に提出することで、口頭弁論への出席の代わりになります。
口頭弁論に出席する
裁判期日に担当の弁護士が「口頭弁論」に出席します。あなたが出席したい場合には、弁護士と一緒に裁判所へ行っても差し支えありません。
もし他の共有者から反論があったり、再度事実確認が必要であったりする場合は、複数回にわたって口頭弁論が行われます。
裁判所から判決が下される
口頭弁論または答弁書の内容を受け、適切な不動産の共有状態の解消方法を裁判所が決定します。
共有解消方法は裁判所判断になるので、必ずしもあなたの望む結果にはなりません。競売などの判決が下れば、共有者全員が金銭的に損をする可能性もあります。
そのため判決が下される前に、共有者間で落としどころを見つけた方がよいでしょう。裁判所から下される判決内容について次項で解説していきます。
共有物分割請求訴訟による判決は3パターン
共有物分割請求訴訟による裁判所の判決は以下の3つの分割解消方法から選ばれます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
基本的には訴訟前の共有者間での協議の段階から、3つの方法を視野に入れて落としどころを探ります。
どの方法も理解するのは難しいですが、具体的な数字を交えつつ分かりやすく解説していきますので、頑張ってついてきてください。
不動産を物理的に切り分けて分割する「現物分割」
現物分割とは、不動産を「分筆登記」によって物理的に分割する方法です。分割した土地は、各共有者が単独で取得できます。
原則として共有物の分割方法は「現物分割」が優先されます。
ただし、建物は物理的に分けられないため現物分割を行うことはできません。そのため、分割対象の共有不動産に建物が含まれている場合は、後述の2つの方法どちらかとなるケースが多数です。
市場価格3,000万円・面積100㎡の土地をAとBで「2分の1」ずつ共有
→土地を50㎡ずつに切り分けて、それぞれAとBの単独所有とする
1人が不動産を取得して現金で賠償する「代償分割」
代償分割とは、不動産を共有者のうち誰か1人が取得し、他の共有者に対して持分割合に応じた「代償金」を支払うことで分割共有状態を解消する方法です。
5,000万円の不動産を共有者Aと共有者Bで「2分の1」ずつ共有
→不動産をAの単独所有とし、AがBに対して「2,500万円」を支払う
ただし、代償分割をおこなうためには、共有者に代償金の支払能力があることが必須です。
そのため、共有者全員に支払能力がない場合、次項で紹介する「換価分割」での判決が下されるケースが多数です。
不動産を競売にかけて現金を分割する「換価分割」
換価分割とは、共有物を競売にかけて得た売却代金を持分割合に応じて分配する分割方法です。
競売による落札相場は不動産市場価値の5~7割程度であるため、共有者全員が金銭的な損失を受ける可能性があります。
5,000万円の不動産を共有者Aと共有者Bで「2分の1」ずつ共有
不動産が競売により「2,500万円」で落札、AとBで「1,250万円ずつ」分配する
実際の判例
ここからは実際の判例を紹介していきます。
東京地裁昭和39年7月15日判決
土地の共有解消について争われた事案です。
対象の土地は複数の人に貸し出されており、複数の建物が建造されていました。
そして地代(土地の賃料)は共有者のうち1人が受け取っていましたが、そのことに不満を持った原告(共有者)が訴訟を起こしました。
裁判で原告は土地の「換価分割(競売)」を求めましたが、被告はそれを拒絶しました。
裁判所は建物が乱立している状況で、現物分割(土地の切り分け)を行うと、土地の価値が著しく低下する恐れがあると判断しました。
その結果、原告側の主張が認められ「換価分割(競売)」での分割が行われました。
参照元:弁護士法人みずほ中央法律事務所
【最高裁平成25年11月29日判決】
もともと共有地だった不動産の共有者の1人が死亡し、相続が発生したケースです。
相続が発生した時点において、もともと大部分の持分割合を持っていた共有者が相続人らに対し、代償分割(自分たちが買い取る)を求めて共有物分割訴訟を起こしました。
本件では「相続によって共有になった部分」と「もともと共有だった部分」の2種類の共有関係があったという特殊性があります。
裁判所はこのように遺産共有部分がある場合でも共有物分割請求訴訟は有効であると判断し、原告らの請求通り、代償分割の方法による分割を認めました。
すなわち大部分の持分割合を持っていた共有者が相続人らから共有持分を買い取る方法での共有物分割が行われました。
参照元:弁護士法人阿部・楢原法律事務所
共有物分割請求訴訟にかかる費用
共有物分割請求訴訟にかかる費用相場には合計50万円~150万円と幅があります。
内訳は主に「裁判費用」「弁護士費用」「不動産鑑定費用」の3項目です。それぞれ詳しく解説していきます。
裁判費用は5万円程度
裁判の際は、原告側が裁判所に印紙代(訴状に貼付する)と郵便切手代(裁判所が当事者に書面を郵送するため)を支払わねばなりません。
印紙代は不動産の固定資産税評価額によって変動しますが、3~5万円となるケースが一般的です。
郵便切手代は相手方が一人の場合に6,000~8,000円程度、2人以上の場合は人数が増えるたびに約2,000円ずつ加算されていきます。
弁護士費用は40万円~60万円程度
共有物分割請求訴訟は弁護士に依頼するため(前述)、裁判費用とは別途に弁護士費用が発生します。弁護士費用は「着手金」と「報酬金」に分かれており、どちらも20〜30万円程度が相場です。
- 着手金
- 依頼の際に支払う手出し金
- 報酬金
- 裁判が成功した際に支払う成功報酬
この報酬金は、争いの解決によってあなたが受ける「経済的利益」の額によって変動します。
経済的利益の算定方法は、弁護士事務所によって異なるため、複数の事務所に見積もり依頼することをおすすめします。
不動産鑑定費用は20万円~30万円程度
共有物分割請求訴訟では裁判官から不動産鑑定を命じられ、別途鑑定費用がかかるケースがあります。判決を下す判断材料として、裁判官が不動産の価格を知っておかなければならない場合があるためです。
不動産鑑定士に依頼する場合の鑑定費用は「建物のみ」「土地のみ」「土地建物両方」のいずれかによっても変動しますが、20~30万円が相場です。
ですが、実は不動産鑑定士でなく、不動産業者が出した査定書で代用できるケースもあります。
弊社なら無料での査定が可能ですので、裁判で不動産鑑定を命じられた場合は一度ご相談ください。
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権利濫用となり訴訟棄却となるケースもある
共有物分割請求訴訟に限らず、正当な権利を持っていても「これを濫用してはならない」というルールがあります(民法第1条第3項)。権利があるからといって、むやみに行使されてしまうと社会の秩序が乱されるなど、不都合な状況が考えられるからです。
共有物分割請求訴訟が「権利濫用」と認められた場合、訴訟自体が棄却、つまりは裁判所に訴えを却下されてしまいます。
これからご紹介するようなパターンでは、権利濫用が認められ、訴訟が棄却される可能性が考えられるため注意しましょう。
不分割特約を共有者間で締結している
不分割特約とは共有者間での「共有物を一定期間の間は分割しない」という約束のこと。
この特約は、民法256条で定められています。
第256条
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない
引用元:Wikibooks「民法256条」
共有者間で合意がされれば最長で5年間、不分割特約を結んでおくことができます。
この特約が有効である限り、権利濫用になる以前の問題で、そもそも共有物分割請求を行うことができません。
共有物分割により一方に経済的不利益が生じる
比較的経済力のある共有者が、経済力のない他の共有者に対して起こした共有物分割請求訴訟は、権利濫用となる可能性があります。
共有状態の解消により一方に明らかな経済的不利益が生じることは、裁判所により不公平だと判断されるためです。
例えば、夫から別居中の妻に対して、訴訟を起こす等のケースがこれに該当します。
共有状態の解消が目的なら他の手段も検討しよう
繰り返しになりますが「共有物分割請求訴訟」とは裁判所を通して、他の共有者に不動産の共有状態の解消を求める訴訟のことです。
不動産の共有状態を解消することが主な目的である場合は、訴訟以外の方法も視野に入れて検討することをおすすめします。裁判になると年単位で時間もかかりますし、その間ずっと精神的ストレスを抱えることになるからです。
一方で、これからご紹介する方法であれば「時間」「裁判費用」「ストレス」のどれもかからずに、共有状態を解消できます。
持分放棄
裁判によるリスクを避けたいのであれば「あなたの持分を放棄」する方法があります。持分放棄を行うと、あなたの持分は他の共有者に引き継がれるので、共有状態から解放されます。
持分移転登記には共有者全員の協力が必要なため、他の共有者と関わらずに共有関係から抜け出したいという方にはおすすめできません。
また、あなたの持分を放棄するのですから、あなたの手元に現金は一銭も入りません。
単に共有状態の解消が目的の場合、次項で紹介する「自分の持分のみを他の第三者に売却する」方法であれば、まとまった現金も手元に入るのでおすすめです。
自分の持分のみを他の第三者に売却
裁判以外で共有状態を解消するには、自分の持分のみを他の第三者に売却するという方法がおすすめです。
あなたの共有持分は、あなたの完全な所有物であり、売却するために他の共有者から合意を得る必要はありません。そのため、他の共有者と一切関わらずとも、共有関係から脱することが可能です。
ただし、共有持分のみを買い取ったところで不動産を自由に活用できないため、一般の個人や一般の不動産屋はまず購入しません。
ですが、共有持分を専門に取り扱う買取業者であれば、独自の活用ノウハウがあるので、あなたの持分のみでも買い取ってもらえる可能性があります。
共有物分割請求を起こすのではなく、専門の買取業者に依頼するメリットは以下の通り。
- ストレスなく共有状態を解消できる
- 専門の買取業者であれば、他の共有者と関わらずに共有状態から抜け出すことができます。
そのため、裁判について頭を抱える心配もありません。 - 最短で買い取ってもらえる
- 専門の買取業者であれば、業者が直接買取を行うため、あなたが査定額に納得できれば、すぐにでもあなたの持分を現金化できます。
弊社でも共有持分のみの買取を積極的に行っております。共有不動産にストレスを抱えている方は一度ご相談ください。
共有物分割請求の通知が届いた場合のとるべき対処法
前述の通り、「共有物分割請求訴訟」とは裁判所を通して、他の共有者に共有解消を求める訴訟のことです。ここまで共有物分割請求訴訟によって不動産の共有状態を解消するための様々な情報をお伝えしてきました。
ですが、この記事を読んでいる方の中には
「他の共有者から共有物分割請求の通知が届いた」
「どんな対応を取ったら損せずに済むのだろうか」
と分割請求を受けて困惑している方もいるでしょう。
ここからは、あなたに他の共有者から共有物分割請求の通知が届いた際の取るべき対処法について解説していきます。
通知を無視することは厳禁
他の共有者からの共有物分割請求の通知を無視することは厳禁です。無視していても裁判になれば必ず判決が下されますし、あなたにとって不利な判決になる可能性があるからです。
例えば、あなたが不動産を手放したくないと考えていても、無視している間に競売が決定してしまうなんてことも考えられます。
他の共有者から共有物分割請求を受けている場合は、次項の通りに共有者間での話し合いで落としどころを見つけましょう。
共有者間での協議で落としどころを見つける
他の共有者から分割請求を受けている場合、まずは共有者間の話し合いで落としどころを見つけるのがベストです。
訴訟まで発展した場合、共有者は裁判所の判決に逆らえませんが、協議段階であれば各共有者の意向を反映させることが可能です。
具体的には「今後不動産は誰が所有し続けるのか」あるいは「不動産全体で売却するのか」について話し合いましょう。
不動産を手放してもいいなら2つの選択肢がある
もしあなたが
「現状も今後も不動産を活用する予定はないし、手放しても問題ない」
というのであれば、共有者間での協議には2通りの進め方があります。
それぞれ解説していきます。
他の共有者も不動産を手放したい場合
他の共有者も不動産を手放したいと考えている場合は、「共有者全員で協力して不動産全体を売却する」という方法がおすすめです。
売却で得た代金は、持分割合に応じて共有者間で分配します。
裁判で不動産が競売にかけられるよりも、自分たちで一般市場に売り出したほうが高値で売却できるので、共有者の誰も損しないですみます。
他の共有者が不動産の取得を希望する場合
一方で他の共有者が不動産の取得を希望している場合は、「あなたの持分のみを相手方の共有者に売却する」方法がおすすめです。
あなたは持分に応じた現金が手元に入り、買手の共有者は不動産を所有し続けられるので双方にメリットとなります。
ですが「可能な限り高値で買い取ってもらいたい」と思うものです。
「共有者間であなた自身の持分を高く買い取ってもらうための交渉術」は、以下の記事で解説しておりますので、参考にしてください。

裁判にもつれ込みそうなら専門の買取業者に査定を依頼
協議が上手くまとまらず、裁判にもつれ込みそうなら「共有持分専門の買取業者に査定だけでも依頼しておく」ことをおすすめします。
事前に自分の共有持分がいくらで売れそうか確認しておくことが可能です。そのため、裁判に突入して競売に掛けられるリスクを取るか、提示された査定額で自分の持分を売却するのか天秤にかけて判断することができます。
弊社でも共有持分のみの無料査定を行っておりますので、他の共有者との協議段階でお困りの方はお気軽にご相談ください。
>>【共有持分の無料査定】共有物分割請求訴訟でお困りの方はこちら!
まとめ
本記事では「共有物分割請求訴訟」について、流れや費用、受けた際の対処法について解説してきました。
他の共有者が不動産の共有解消の話し合いに応じない場合、あなたは対応できずに困ってしまうでしょう。
ですが、解説した通り「共有物分割請求訴訟」を活用すれば、裁判所を通して強制的に共有状態を解消できます。
しかし、裁判になると「時間がかかる」「費用がかかる」「競売になる」等のリスクがあります。
裁判のリスクを回避したい場合は、持分専門の買取業者に依頼をして、共有関係から抜け出すことをお勧めします。
弊社ではあなたの持分のみを買取り、共有脱出のお手伝いをさせていただくことが可能ですので、お気軽にご相談ください。