共有者の持分が差し押さえられた場合の対処方法

共有名義不動産
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ある日突然、共有者の持分が差し押さえられるケースがあります。

あなたご自身は借金していなくても共有者が借金返済を滞納したら、共有者の債権者が共有者の持分を差し押さえて競売にかけることができるのです。

そのまま放っておいたら共有者の持分が知らない人に落札されて、あなたの持分の買取りや売却を求めてくるかもしれません。そんな状況になったら、どうして良いかわからなくなりますよね。

もしも共有者の持分を差し押さえられたらどのように対応するのが良いのでしょうか?

今回は「共有持分差押え」の意味や対策方法を解説していきます。

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監修者
元弁護士福谷陽子

元弁護士福谷陽子

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京都大学在学中に司法試験に合格し、不動産トラブル、多重債務、離婚問題や交通事故、相続などの案件を担当し、自身で弁護士事務所を運営。その後体調不良により弁護士事務所を一時閉鎖し、現在は10年間の弁護士経験を元に執筆に専念。

「共有名義の不動産差押え」の意味とは?

そもそも共有名義の不動産が差し押さえられるとはどういう意味で、どのようなケースで起こるものでしょうか?

差押えは、借金を滞納して裁判をされても支払わないときや、土地建物を抵当に入れたにも関わらずローン返済をしないときに行われます。

返済を滞納すると債権者は債務者の財産を差し押さえることができますし、抵当権者は抵当不動産を差し押さえられるからです。
不動産が差し押さえられたら、引き続いて競売にかけられます。

借金などの滞納で差押え

「不動産の共有持分」も差押え対象になります。
共有持分とは、不動産を共有している場合の共有者1人1人に認められる「不動産の割合的な所有権」です。
全体の「〇分の〇」などの共有持分割合が認められます。

共有持分は単独で売買も可能な独立した権利で価値があるので「差押え」の対象になるのです。

共有者の共有持分が差し押さえられたら、どのような影響が及ぶのか?

共有者の共有持分が差し押さえられた場合、差押えや競売の対象になるのは「共有者の共有持分」だけであり、あなたの持分は差押え対象外です。

共有持分の差押えと競売が行われても「不動産全体」が売却されることはありませんし、あなたの持分が失われる心配は不要です。

ただし競売によって共有者の共有持分が落札されたら、まったく知らない落札者との共有状態になります。
落札者が専門業者などの場合、あなたに対して強硬に共有持分の買取りを求めてきたり、反対にあなたの持分を低額な金額で売却するよう求めてきたりするので不利益を受ける可能性が高くなります。

共有名義不動産を差し押さえられるケースの具体例

実際、共有者の共有持分を差し押さえられるケースとしてどのような状況が考えられるのでしょうか?

兄弟が不動産を共有していて兄の持分が差し押さえられた

たとえば兄弟で親から相続した不動産を共有しているとします。

兄は借金をしており、弟には借金はありません。
兄が借金を滞納してしまい、兄の債権者が兄に対して裁判を起こしたため、支払い命令の判決が下りました。

兄は支払えないために放置していると、債権者が兄の共有持分を差し押さえました。

競売が申し立てられて、兄の共有持分は業者に落札され、弟と業者の共有状態になってしまいました。

差押え~競売で第三者と共有状態に(兄弟)

 

夫婦で自宅を共有していると夫の持分が差し押さえられた

夫婦で自宅不動産を共有しているとします。

夫は再婚で前妻に養育費と分割払いの慰謝料を払っていましたが、長期滞納して滞納額が多額に膨れあがりました。

養育費や慰謝料については公正証書で支払いの約束をしていたので、前妻は夫の自宅不動産共有持分を差し押さえて競売にかけました。

競売が進んで業者が夫の共有持分を落札し、自宅は妻と業者の共有となりました。
業者は妻に自宅土地建物の高額な金額での買取を求めてきており、夫婦は大変困惑しています。

共有者の共有持分が差し押さえられると、上記のような問題が現実化する可能性があります。

差押え~競売で第三者と共有状態に(夫婦)

共有持分を競売で落札する人はいるの?

ここまで聞いて「共有持分が競売にかかったとして、そんなものを落札する人などいるのだろうか?」と疑問を感じた方がおられるでしょう。

確かに共有持分のみを取得しても、一般の方にとって利益は小さいものです。
不動産を共有していると、ほとんどすべての管理処分に関する事項について「共有持分権者の合意」がないと進められません。
たとえば長期の賃貸借、リフォーム、リノベーション、不動産を抵当に入れるローン借入、売却など、すべて共有持分権者と足並み揃えて行わねばなりません。
意見が合わないと不動産の活用ができないので放置されるケースも多く、一般には「できれば共有不動産には関わりたくない」と思われています。

しかし共有持分のみを専門に買い取る人業者があります。
プロの投資家や、共有物件を専門で扱う不動産業者です。
不動産業者の中には共有持分のみをターゲットにしている業者も存在します。

プロの不動産業者はどうやって利益を出せるのか?

プロの投資家や専門業者は一般に利用しにくいとされる共有持分を買い取って、どのように利益を出そうとしているのでしょうか?

それは、以下のような仕組みです。

  1. 共有持分を安値で買い取る
    まずは競売などにかかっている不動産の共有持分を安値で買い取ります。一般的に「競売」になると市場価格よりも不動産の価格が下がります。また利用しにくい共有持分ということで、さらに価格が下がります。共有持分のみであれば、一般的な不動産価格の相場よりも相当低い金額で買い取ることができます。
  2. 共有持分権者へ連絡する
    共有持分を買い取ったら、他の共有持分権者へ連絡をします。
    その後は2つのパターンがあります。
  1. パターン「共有持分権者へ高値で売却する」
    1つ目のパターンは、共有持分権者へ取得した持分を売却するものです。
    このまま共有状態にしていると共有持分権者と業者との共有状態が続き、共有持分権者にとっては不安な状態となります。
    上記で紹介した例のうち、夫婦の自宅が業者と共有になったケースを想像してみたらわかると思います。
    見も知らない業者と不動産を共有するよりも、「自分たちで買い取った方が良いのではないか?」と迫り高値での買取を求めます。
    共有持分権者としては、足元を見られるので高値での買い取りに応じざるを得ないケースも少なくありません。
    業者は安値で落札した共有持分を高値で他の共有持分権者に売却できるので、充分な利益を得られます。
  2. パターン「共有持分権者からも安値で買い取る」
    もう1つのパターンは、共有持分権者からその持分を買い取り、業者が不動産全体の所有者となる方法です。
    たとえば先の例のうち、兄弟が不動産を共有していて兄の持分が競売にかかり、業者と弟の共有になった方を考えてみてください。
    弟にしてみたら、見も知らない業者と不動産を共有している状態は気持ちが悪いですし、早々に共有関係を解消したいと考えるでしょう。
    業者が共有持分の売却を持ちかけてきたら、多少低い金額でも売却に応じる可能性が高くなります。
    このようにして業者は共有持分を落札したら他の共有持分権者に交渉を持ちかけ、その持分を売却させます。
    他の共有持分権者からも共有持分を取得したら、業者は不動産の完全な所有権を取得できます。
    もともと共有持分は市場価格とは比較にならない安値で買い取っていますが、完全な所有権になったら通常の高額な市場価格で売却できます。
    業者としては、安値で共有持分を買い集めて完全な所有権を取得し高値で市場売却できるので、充分な利益を得られます。

不動産業者の利益

プロの不動産業者との交渉は一般の方には不利

上記のようにプロの業者が共有持分を取得すると、他の共有持分権者へ売却や買取の交渉を持ちかけてくるのが通常です。
想像がつくと思いますが、一般の方が不動産業者と交渉をすると不利になる可能性が非常に高くなります。

結局は自分の持分を安値で買い取られてしまったり、反対に業者の持分を高値で買い取らされてしまったりして、釈然としない気持ちになります。
後悔しないためには、共有者の持分が差し押えられる前やその直後に適切な対応をとる必要があります。

共有者の持分が差し押さえられた場合の対応方法 共有者の持分が差し押さえられたとき、具体的にはどのように対応すれば良いのでしょうか?

不動産を維持し続けたい(たとえば自宅などで住み続けたい)か、もしくは売却しても良いかで対応方法が異なります。

以下でそれぞれにおける具体的な方策をご紹介します。

維持したい、住み続けたい場合

差し押さえられる前に他の共有持分権者から買い取る

共有物件が自宅なら、通常は失いたくないはずです。
その場合、共有者の持分が差し押さえられる前に自分で相手から買い取ってしまう方法があります。差し押さえられる前であれば不動産の取引が自由にできるので、共有者から直接買い取ることが可能です。

ただし「詐害行為取消」の対象になる可能性はあります。
詐害行為取消とは、無資力な債務者が唯一の資産を売却処分したときなどに債権者がその取引を無効にできる制度です。
あまり切羽詰まったタイミングで取引をすると、債権者が詐害行為取消を主張して取引を無効にされてしまうリスクが発生します。

共有不動産を買い取る場合の価格は?

共有持分を共有持分権者から買い取るとき、どのような価格設定にすれば良いのでしょうか?具体例で考えてみましょう。

3000万円のマンションを2分の1ずつ共有している場合、一般的な感覚なら共有持分の価格は1500万円となります。
ただ当事者同士で交渉する場合、それにこだわる必要はありません。7割程度やそれ以下に設定しても違法ではありません。

ただしあまり低くしすぎると「贈与税」が発生する可能性もあるので、注意が必要です。

代わりに負債を支払う

詐害行為取消などのリスクのない方法もあります。
それは債権者と交渉をしてあなたが負債を払う方法です。

この方法なら差押え前はもちろんのこと差押え後でも対応可能です。
もちろん負債は支払い損ではなく、後に共有持分権者へ返還請求できます。
相手にはお金がないでしょうから代わりに共有持分を譲ってもらうと良いでしょう。
そうすればあなたが不動産の完全な権利を取得できます。

リスク無しで不動産を守れるのでお勧めの方法です。

不動産を維持(差押え前)

自分で落札する

債務の支払いと引換えに差押えを取り下げてもらう交渉をうまく進められない場合、あなた自身が不動産を競落する方法もあります。
業者が入札してもあなたの方が高い価格をつければあなたが優先して落札できるので、不動産を守れます。
たとえば先の例でいうと、夫の持分が競売にかかったとき妻が入札して夫の持分を落札するイメージです。

不動産を維持(差押え後)

不動産を売ってもいいと思う場合

一方、不動産を売却しても良いと考えるケースでは以下のように対応を進めましょう。

差押前に不動産全体を共同で売却する

共有者の持分が差押えを受ける前の段階であれば、共有者と相談をして不動産全体を売却するよう検討してみて下さい。

相手は借金返済に困っているでしょうから、不動産を売却してお金を取得し債権者への返済に充てるという提案に魅力を感じるはずです。
二人で協力して市場で売れば、共有持分のみ競売にかかるよりよほど高く売れますし、債務を完済できる可能性も高くなります。

たとえば先の例では兄弟が不動産を所有していたケースを考えてみてください。兄が借金に困っているのを弟が知り、兄に「一緒に不動産を売ってお金にしよう」と持ちかけます。
不動産を売却して弟は充分なお金を手にし、兄は得たお金で借金を返してお互いがハッピーになれます。

まずは共有持分権者に対し「2人で協力して不動産を売ろう」と話を持ちかけましょう。

自分の共有持分だけ先に売る

共有持分権者と話しても共同での売却に応じてくれないケースでは、あなた単独の共有持分を先に売却する方法があります。

相手の持分の落札者から足元を見られて安値で買い取られたり高値で売りつけられたりするよりは、先に自分の意思で納得できる価格で売却する方が有利です。

たとえば当社でも、共有持分の買取に対応していますので、関心がありましたらぜひご相談下さい。

不動産を売却(差押え前)

差し押さえられた後の対処方法

もしも売却が間に合わず相手の共有持分が差し押さえられてしまったら、どうしたら良いのでしょうか?

その不動産と関わり合いたくないなら、やはりあなたの持分のみを先に売却してしまうようお勧めします。
相手の共有持分の競売手続きが進んでいる最中でも、差押え対象になっていない他の共有持分権者の持分の売買は自由にできます。

ただでさえややこしい共有不動産で競売トラブルが発生したら、もはや共有持分を持ち続ける意味はほとんどなくなります。
早めに持分売却を検討されると良いでしょう。

共有者の持分が差し押さえられた場合の対処方法・まとめ

当社は不動産の専門コンサルタントであり、共有物件の買取、売却、交渉、ご相談など歯倍広く対応しております。お困りの際にはお気軽にご相談下さい。

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