自己破産の要点を簡単解説
具体的な対処法を解説する前に、まずは自己破産の要点を簡単に解説します。
自己破産とは、債務者(お金を借りている人)が、自らを「支払不能」であるとして、裁判所に破産の申立をすることです。
申立を受けた裁判所が「免責許可決定」を下すと、債務は税金などの特殊なものを除きゼロになります。
基本的には、「免責不許可事由」がない場合には、3ヶ月程度で速やかに破産手続きが完了します(同時廃止事件という)。
債務者による財産隠しや不誠実な借入など法が定める、免責を認めるのにふさわしくないことがら
ですが、破産者に不動産などの資産がある場合は、「管財(かんざい)事件」といって、およそ半年〜1年以上と時間のかかる破産手続きになります。
裁判所によって管財事件に振り分けられると、「破産管財人」が選任されて、資産を換金して、債権者(銀行など)に配当する手続きをふまなければならないからです。
ちなみに、破産管財人によって、不動産などの資産を換金する際に「競売」や「任意売却」が用いられます。
競売の要点を簡単解説
では、ここからは、自己破産の前後に多くの人が申し立てられる「不動産の競売」について要点を解説します。
競売には、大きく分けて「強制競売」と「担保不動産競売」の二種類があります。
強制競売
強制競売とは、抵当権等を持たない一般の債権者が「勝訴判決」などの「債務名義」と呼ばれる書面を根拠にして、債務者の不動産に対し申し立てる競売のことです。
裁判所又は執行官が、財産の強制執行を許可した公文書
強制競売の具体例
- 無担保のカードローンなどを滞納した債務者の資産を、金融機関が競売にかける。
- 納税を怠った滞納者の資産を、国や自治体が競売にかける。
担保不動産競売
担保不動産競売とは、すでに抵当権を設定している債権者(銀行など)が、債務者の滞納によって、「抵当権の実行」をもって執り行う競売のことです。
イメージしやすいのが、住宅ローンが残っている不動産のケースでしょう。
住宅ローンの融資を受ける際、対象の不動産全体に抵当権が設定されており、債務者が返済を滞ると「不動産全体」が競売にかけられます。
(※共有名義になっていたとしても、不動産全体が競売にかけられる点に注意。)
なお、「担保不動産競売」の場合、競売の段階までいくには、滞納から数か月かかることが通常です。
銀行が不動産の競売を行うことは手間や費用もかかるため、やたらと実行できるわけではないからです。
また、競売では市場相場の5〜7割程度で落札されることが多く、銀行としても、残債務をすべて回収しきれないリスクがあります。
競売でも回収しきれなかった債務に関しては、「無担保の債務」として引き続き債務者が返済を続けなければなりません。
そのため、銀行と債務者が交渉して、「任意売却」を行うケースもあります。
債権者(金融機関)の許可を得て、一定条件のもと不動産を売却する方法
任意売却については後ほど詳しく解説します。
共有持分が競売になったら放置は厳禁
もし、共有不動産が競売にかけられたのであれば、他の共有者は早急に対応しなければなりません。
では、共有不動産が競売になってもそのまま放置してしまったら、どのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。
住宅ローンありの場合は物件から追い出される
住宅ローン残債がある状態で、共有不動産が競売にかけられれば、他の共有者が居住していたとしても、強制的に追い出されてしまうでしょう。
住宅ローンが残っている場合は、通常、不動産の全体に銀行の抵当権が設定されています。
たとえ、ペアローンで夫のみが債務を滞納している場合でも、夫債務の担保は不動産全体ですので、妻の共有持分部分も競売の対象になります(詳しくは後述)。
競売で第三者に落札された後は、もちろん第三者の単独名義となりますので、夫から住むことを許されていた妻であっても物件から追い出されてしまうわけです。
住宅ローン完済後の場合は無関係の第三者と共有状態になる
住宅ローン完済後に共有不動産が競売されるのは、「住宅ローン以外の債務について、夫の持分のみに抵当権がつけられていたため持分のみが競売される」といったケースが考えられます。
このとき、Cが宅建業免許を持った、正規の不動産業者であればまだ良いのですが、不動産ブローカーなどの非正規業者が落札した場合は非常に危険です。
宅地建物取引業(宅建業)の免許を持たずに不動産の取引を行い、収入を得る人
不動産ブローカーは免許を持たず、事務所も構えていないので、他の共有者に対し、違法行為スレスレの取引を持ちかけてきます。
具体的には、夫B持分を買い取ったブローカーCが、共有者である妻Bに対して、
- 「自分の落札したAさんの持分を(法外に高い金額で)買い取ってくれ」
- 「Bさんの持分を(法外に安い金額で)譲ってくれ」
と交渉してくるでしょう。
ひいては、「交渉に応じないなら裁判を起こす」と脅しをかけてくる恐れもあります。
現に、不動産の各共有者には、「共有物分割請求訴訟」と呼ばれる強制的に共有名義を解消する裁判を起こす権利があります。
参照元:民法258条1項
このような状況に追い込まれると、ブローカーもその道のプロなので、一般の方はかなり不利です。
すでに、第三者と共有名義になっている場合は、早急に弁護士などに助けを求めましょう。
なお、弊社でも共有トラブルの解決に強い弁護士と提携がありますので、ご相談頂ければ、助言させて頂けるとかと思います。
共有者が自己破産した場合の対応策
では、ここからは、共有不動産において、共有者のうちの一人が自己破産した場合の対処法を解説していきます。
なお、この項では、夫婦で不動産を共有しており、離婚後に妻が住んでいる設定で進めます。
住宅ローンが残っている際の競売対策
では、住宅ローンが残っている場合に共有不動産を競売にかけられたらどのように対処すればよいのでしょうか。
基本的に、夫婦や親子で住宅ローンを利用して共有不動産を購入した場合、抵当権は不動産の全体に対して設定されています。
このことは、以下のいずれのパターンでも同様です(詳しくは後述)。
- 住宅ローンの債務者は夫のみ(逆もしかり)
- ペアローンを利用し夫も妻も主債務者
- 連帯債務を利用し夫が主債務者で妻が連帯債務者(逆もしかり)
要するに、夫か妻どちらかの滞納であっても、共有不動産全体が競売にかけられることになるのです。
不動産全体が競売にかけられたら、当然ですが、離婚後に妻が物件に残るなどと決めていようが、強制的に出ていかなければなりません。
では、共有不動産が競売されてしまう、あるいはされそうな状況で考えられる対策を確認してみましょう。
対策1:任意売却でなるべく市場価格に近い金額で売却
他の共有者の自己破産手続きが開始する前であれば、「任意売却」を検討する余地があります。
任意売却とは、不動産の売却代金では住宅ローンを完済できない場合に、債権者(銀行)に交渉し、抵当権を抹消してもらって不動産を売却する方法です(前述)。
通常、ローン残債のある不動産を売却する際は、先にローンを完済しおえて、抵当権を抹消する登記手続きを踏む必要があります。
ただ、現に返済を滞っている人が、自力で返済資金を工面するのは、現実的に考えて難しいでしょう。
銀行側からしても、担保物件を競売にかけたところで残債務額を回収しきれないのは同じにも関わらず、競売手続きには費用や手間がかかります。
そのため、銀行側も交渉次第では、任意売却を承諾してくれるわけです。
しかし、共有不動産に関しては、銀行への交渉だけでは任意売却は行えません。
民法上、共有名義になっている不動産を売却するには、共有者全員の合意が必須だからです。
夫婦ABの例で考えると、夫Bが自己破産の一歩手前で任意売却を検討する場合は、妻Aと夫Bが売却に向けて足並みを揃える必要があります。
なお、任意売却後に残った債務に関しては、「無担保の債務」として返済し続けなければならない点にも注意してください(競売の場合も同様)。
対策2:居住者(占有者)が買取or入札
共有者のうちの一人が、ローン返済が困難になった共有者の持分を買い取り、債務者の代わりにローンを完済すれば、不動産全体の競売を回避できます。
夫婦ABの例で、夫Bがローンを払いきれなくなり、妻Aには物件に残る意思があるとしましょう。
このとき、妻Aが夫Bの共有持分を買い取り、残りの残債務を肩代わりして返済します。
ただ、共有持分を買い取れるだけの資金力がなければ、そもそもこの方法は使えません。
また、すでに競売手続きが開始している場合でも、他の共有者が不動産を落札できる場合があります。
基本的に、担保物件が競売にかけられた場合は、「債務者(連帯債務者)自身」からの入札は認められません。
参照元:民事執行法第68条
ですが、妻が連帯保証人になっている場合や、そもそもローン契約に含まれていないのであれば、入札自体は可能です。
住宅ローン完済後の対策
では、住宅ローン完済済みの共有不動産が競売にかけられた場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。
今回は、夫婦ABが不動産を共有しており、夫Aのカードローン滞納による差し押さえが原因で起こった、不動産競売を例に考えていきます。
共有不動産の住宅ローンを完済しており、不動産を担保に入れていないのであれば、夫の滞納を原因として競売の対象となるのは「夫の持分のみ」です。
(※このことは、夫が自己破産をした際も同様です。)
そのため、住宅ローン滞納のように、物件に残された妻が無条件に追い出されることはありません。
しかし、この記事の「住宅ローン完済後の場合は無関係の第三者と共有状態になる」で解説した通り、夫持分が悪質な第三者に落札されてしまうと、非常に危険です。
では、他の共有者の持分のみが競売にかけられた、もしくはかけられそうな場合に取るべき対処法を見ていきましょう。
対策1:競売前に分かれば居住者が買い取る
共有者である夫Aが自己破産手続きを開始しており、夫持分が競売にかけられることを、妻が事前に知ったとしましょう。
この場合、自分(妻)が破産者(夫)の持分を買い取ることで、競売を回避することが可能です。
まず、今回のように、債務者が不動産(持分)を持っていれば、「債務者にめぼしい財産がある」として、裁判所は破産申立を「管財事件」に振り分けます。
管財事件では、自己破産手続きが開始する前に、裁判所が破産管財人(通常は弁護士)を選任します。
破産管財人は、競売にむけて現実的に可能かつ、最適な財産の処分方法を考えるため、妻Bへ{破産する夫Aの持分を買い取ってもらえないか」と交渉を持ちかけてくることがあります。
どうしても自宅を守りたいなどであれば、妻が夫の共有持分を買い取ることで、妻Bが単独名義の不動産として居住し続けられるわけです。
ですが、手元にまとまった現金がなく、実家などの援助も受けられないのであれば、買取代金を用意することは困難でしょう。
対策2:居住者(占有者)が競売に入札
夫Aが自己破産手続きを開始したなどの理由で、夫持分が競売にかけられてしまったとしましょう。
この場合、共有者である妻Bが、夫持分を入札することに問題はありません。
妻に、「この物件を手放したくない」という強い意志があるのであれば、夫Aの共有持分を落札し、妻単独名義の不動産として自由に住み続けることが可能です。
なお、競売にかけられた物件は、条件にもよりますが、市場相場の5~7割程度で取引される傾向にあります。
不動産の共有持分のみであれば、そもそもの需要が低いので、さらに半額ほど値下がりすることが考えられます。
市場相場4,000万円の共有不動産を、夫婦ABが「2分の1ずつ」で共有している。
この場合、市場相場は、5,000万円×1/2(持分割合)で「2,000万円」。
競売物件の落札相場は半額程度(1/2)なので、1,000万円に下落。
さらに、不動産の共有持分のみなので半額程度となり、最終的な落札相場は、「500万円程度」。
対策3:自身の持分を専門業者に売る
上記した対策2つはいずれも、他の共有者に債務者の持分を買い取るだけの資金力がなければ、取ることのできない対策でした。
もし、資金を用意できない、そこまでして自宅を守る意思はない、という場合は、あなたの共有持分のみを専門の買取業者へ売却してしまうのが得策です。
民法上、共有持分のみであれば、各共有者が自由に好きなタイミングで売却できます。
しかし、基本的には、一般の不動産屋や個人は購入してくれません。
共有持分だけを持っていても、不動産を自由に使えませんし、持分を買い取ることにより、第三者の権利トラブルに巻き込まれる原因になりかねないからです。
ですが、共有持分を専門に取り扱う不動産買取業者であれば、権利調整のノウハウがあり、あなたの持分のみであっても、買い取ってもらえます。
共有持分を買い取ってもらえれば、競売によって第三者と不動産を共有するリスクもありませんし、まとまった現金を手にすることもでき、一石二鳥です。
もちろん、宅建業法に則って営業している正規の不動産業者ですので、秘密厳守で安全にあなたを共有状態の外へ誘導してもらえます。
(中には、共有持分買取業者を装った、悪質な不動産ブローカーも存在しますので、業者選びは慎重に行ってください。)
当サイトを運営する「株式会社AlbaLink」も、共有持分に強い専門の買取業者です。
買取前提のお話でなくても大歓迎ですので、気兼ねなくご相談ください。
万が一第三者に落札されてしまった後の対策
では、すでに他の共有者の共有持分が第三者に落札されてしまった場合に、取るべき対処法を見ていきましょう。
ここでは、夫Aの持分を第三者Cが落札した場合に、共有者である妻Bの取り得る対策を考えていきます。
対策1:落札者へ持分の売買を交渉
第三者が共有持分を落札すれば、他の共有者へ持分の売買について交渉してくるでしょう。
このとき、妻Bに資金力があれば、第三者Cが落札した持分を買い取る(買い戻す)ことができますが、なければ逆にBはCへ持分を売却するしかなくなります。
Cが正規の宅建業者であれば、無茶な交渉はしてこないでしょうが、悪質な不動産ブローカーが落札していた場合は、不当な条件を突きつけてくる危険性があります。
対策2:自身の持分を専門業者に売る
もし、第三者の購入した持分を買い取る資金がなければ、トラブルに発展する前に自身の持分を売却するのが一番現実的で堅実な方法です。
問題は「誰に売却するか」という点です。
前述したように、悪質な不動産ブローカーなどに安価で買い取られてしまう前に、「持分買取を専門とする不動産業者」へ適正な価格で売却するのが得策でしょう。
共有持分の適正な取引価格については、後ほど解説します。
共有持分買取業者であれば、相談から最短数日で決済・登記を済ませ、即時に売主を共有状態から離脱させられます。
弊社では、共有持分のみであっても積極的に買い取っております。
今までに数多くの共有トラブルを解決してきたノウハウを活かし、全力でサポートさせていただきますので、安心してご相談下さい。
共有持分の適正価格とは
共有持分のみの売買では、買主側に、他人の権利トラブルに巻き込まれる危険性や、不動産の活用・利用にかかる制限があるため、取引価格は安価になります。
共有持分のみの売買において、適正な取引価格は「市場価格の半額程度」が目安です。
正規の共有持分買取業者へ、あなたの持分を売却する際は、上記が買取価格の相場と言えます。
具体例をもとに見ていきましょう。
共有持分の買取相場の例
- 市場価格が4,000万円の共有不動産
- 「1/2」の持分(市場価格は2,000万円)を共有持分買取業者へ売却
この場合、共有持分の買取相場は「4,000×1/2×1/2=1,000万円」と計算されます。
もし、共有持分の落札者が、悪質なブローカーであれば、上記よりさらに安い買取金額で交渉してくるでしょうから、正規の共有持分買取業者へ相談するのが賢明です。
共有不動産の住宅ローンにおける債務者の自己破産
では、共有不動産において、住宅ローンの債務者が自己破産した際の流れを確認しましょう。
その前に、住宅ローンについて簡単に解説していきます。
夫婦などで共有不動産を購入する際は、以下の3種類の住宅ローンを契約するのが一般的です。
- 連帯債務型
- 連帯保証型
- ペアローン型
ではそれぞれの住宅ローンについて、簡単に見ていきましょう。
連帯債務と連帯保証とペアローンについて
住宅ローンの組み方の種類である「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」について解説します。
- 連帯債務
- 夫婦(親子などのパタ―ンもある)のうちどちらかが「主たる債務者」としてローン契約を行い、もう片方が「連帯債務者」となる方法。法的には二人とも「連帯債務者」として対等の立場であるが、引き落としをどちらか一方の口座に決めて返済する。なお、金融機関の抵当権は1本のみ設定する。
- 連帯保証
- 夫婦(親子などのパタ―ンもある)のうち片方がローン契約を行って債務者となり、もう片方が「連帯保証人」となる方法。夫が債務者となった場合に夫の返済が滞ると、連帯保証人である妻に返済請求される。厳密に言えば、法的には連帯保証人に先に請求してもよいためほぼ債務者と同じ責任を負うが、実務的には債務者を補充する立場となっている。金融機関の抵当権は1本のみ設定する。
- ペアローン
- 夫婦それぞれが独立の借入を行い、お互いに連帯保証人になる方法。金融機関の抵当権は同順位で2本設定されるが、それぞれの持分に対してのみ及ぶのではなく、2本の抵当権が両方とも不動産全体に及ぶことになる。
3種類のローンの特色を整理するとこのようになります。
債務者 | 団信 | ローン控除 | 共有持分 | 収入合算 | |
---|---|---|---|---|---|
連帯債務 | 夫:主債務者 | 加入可 | 適用可 | ある | 合算可 |
妻:連帯債務者 | 銀行により | 適用可 | ある | ||
連帯保証 | 夫:主債務者 | 加入可 | 適用可 | ある | 合算可 |
妻:連帯保証人 | 加入不可 | 適用可 | ある | ||
ペアローン | 夫:債務者 | 加入可 | 適用可 | ある | 個別 |
妻:債務者 | 加入可 | 適用可 | ある |
※妻が頭金を出資しているなどで、連帯保証人が持分を持つ場合もある。
主債務者が支払いを滞納してから競売までの流れ
「主たる債務者の滞納」によって不動産が競売になる場合の流れや、競売が連帯債務者や連帯保証人に与える影響、自己破産との関係などを考えてみましょう。
連帯債務者や連帯保証人にも支払い請求
主たる債務者が滞納した場合は当然、連帯債務者や連帯保証人に滞納分の請求が来ます。
どちらも支払いをできず放置するとその後は「一括での支払請求」となり、分割払いをする権利自体を失ってしまいます(=期限の利益喪失)。
一括で払えなければ夫婦ともに自己破産
競売された代金で住宅ローンを完済できなかったり、住宅ローン以外の債権者もいて「全体として支払不能」に陥っている場合は自己破産となることがあります。
住宅ローンのみであれば、競売された代金で住宅ローンを完済できれば自己破産まではしなくて済みます。
仮に夫が自己破産しても、連帯保証人だった妻の連帯保証債務が免責されるわけではないため、妻も支払えなければ夫婦両方が自己破産手続きをしなくてはなりません。
なお、自己破産を避けられない場合、不動産の売却代金がそのまま債権者への配当になるため、不当に安い金額で売却されることがあってはなりません。
そのため、破産手続中に選ばれた破産管財人が売却を進めるケースも少なくありません。
競売となれば自己破産を伴う場合もそうでない場合も、物件から退去しなくてはならなくなります。
一括返済しても主債務者の持分は競売
もし夫が滞納し、連帯保証人である妻が住宅ローンを一括で返済したとしても、カードローンや消費者金融など他の債権者がいれば夫は自己破産手続をせざるを得ず、そうなれば夫の持分は競売されたり任意売却で処分されます。
住宅ローンを返済すると単にその銀行が債権者ではなくなり抵当権が消えるだけであり、その後不動産の持分は他の債権者への配当のための財産となるからです。
逆に、住宅ローンの債務のみであれば、一括返済により夫の持分は処分されずに済むこととなります。
主債務者の自己破産への対応策
連帯保証人や連帯債務者が主たる債務者の滞納、そして自己破産の危機が迫っている際にどのような対応策があるのかを考えてみます。
ただし、あくまでも住宅ローンの肩代わりによって自己破産を避けるという方法は「債権者が住宅ローンのみ」の場合に当てはまります。
他の債権者もいる場合は住宅ローンだけを返済しても自己破産手続きが進み、住宅ローン以外の債権者への配当を行うため、不動産持分の処分を避けられないのが原則である点に注意が必要です。
分割払いの交渉をする
主たる債務者または連帯保証人や連帯債務者が「分割払い」の相談をし、債権者が認めればそのまま現状の共有状態を維持し、自己破産を避けられることになります。
任意売却する
夫婦が揃って不動産を「任意売却(※上記解説参照)」した場合、売却代金だけで完済しきれなかった部分を今後返済していければ不動産自体は失うものの、自己破産を避けることは可能です。
ただし、任意売却した後に残った債務を返済しきれなければ自己破産となる余地もあります。
一括返済する
連帯保証人や連帯債務者が債務を肩代わりして「一括返済」できれば、住宅ローン債務のみの場合は確実に自己破産を避けることが可能です。
まとめ
この記事では、他の共有者の自己破産などによって、共有名義の不動産が競売にかけられた際の対処法を解説してきました。
もしも、他の共有者の持分が競売にかけられてしまった場合は、早急に対応しなければなりません。
持分を落札した第三者が悪質な不動産ブローカーだった場合、半ば強引な交渉を持ちかけてくる危険性があるからです。
共有者であるあなたに、まとまった手元資金があれば、他の共有者もしくは落札者から共有持分を買い取ることで、リスクを回避できます。
万が一、手元資金や実家からの援助がなく、買取代金を工面できなければ、専門業者に相談してあなたの共有持分のみを買い取ってもらうのが得策です。
当サイトを運営する株式会社AlbaLinkも、共有持分に強い専門の買取業者です。
買取前提のお話でなくても大歓迎ですので、気兼ねなくご相談下さい。