共有名義の不動産を占有する共有名義人を「追い出す」ことはできない
結論から申し上げると、共有名義の不動産を単独で占有する共有名義人を「追い出す」ことはできません。それはいったいなぜなのか、詳しく見ていきましょう。
「追い出す」=「明け渡し請求」
まず、「追い出す」という手段には具体的にどういう方法があるのかを解説していきます。
不動産において「追い出す」という表現を使う時、大抵は「建物明け渡し請求」を意味します。明け渡し請求とは、居住者を強制的に(かつ物理的に)不動産から退去させるために行う手続きのことで、強制的に退去させる「強制執行」を行うには、裁判所の判決が必要です。
つまり、明け渡し請求とは「訴訟の提起」を必要とする手続きです。多くの場合、明け渡し請求は即座に出すものではなく、事前に占有者(居住者)との交渉が必要になります。
典型的な建物明け渡し請求の流れは以下の通りです。
2.内容証明郵便での賃料請求および交渉(証拠を残すため)
3.占有移転禁止の仮処分(詳細は後述)
4.建物明渡訴訟(賃料請求に応じないもしくは連絡が取れない場合)
5.強制執行
単独占有する共有名義人に明け渡し請求はできない
先の例のように賃貸借契約を結んでいながら賃料支払いの滞納を行っている居住者の場合では、明け渡し請求を出すことができます。しかしながら、共有名義人が単独占有している場合は、明け渡し請求を出すことができません。
なぜなら、共有名義人は不動産に対する共有持分を持っており、共有持分を少しでも持っていれば、共有名義の不動産を使用できる権利があるからです。
(共有物の使用)
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
過去の判例では、明け渡し請求をする側の共有名義人の持分が過半数を超える場合であっても、少数の持分しかない共有名義人に対して(正当な理由なしに)明け渡し請求は出来ないと判断されています。
共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである。
以上の判例により、過半数の持分を所有し、共有物の管理に対し決定権を持つ多数持分権者であっても、少数持分権者への明け渡し請求は正当な理由を立証しない限りはできないのです。
なお、明け渡し請求を行う側の共有名義人が少数持分権者である場合も、明け渡し請求はできません。この場合、共有名義の不動産の管理に関する決定権が、占有している側にあるからです。
民法第252条には以下のような規定があります。
(共有物の管理)
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
つまり、持分の過半数を持つ多数持分権者に決定権があるため、少数持分権者が多数持分権者の単独占有に対して明け渡し請求を行うことはできないのです。
基本的には、事前に共有名義人全員で使用方法を協議し、「共有持分に応じた使用」の方法に関して意思決定することが必要になります。
しかし、単独占有のトラブルが起きる場合、大抵は親族同士の共有名義で、事前に使用方法について協議していない場合が殆どです。むしろ、特定の共有名義人による単独占有は、事前に使用方法を協議していないからこそ起こるトラブルともいえます。
不法な占有の場合は共有名義人でも「追い出す」ことができる
共有名義人が不動産を単独で占有する場合、基本的には明け渡し請求をするなどして「追い出す」ことはできません。しかし、先に紹介した判例に基づき「明け渡しを求める理由を主張し立証」すれば、共有名義人による占有であっても明け渡し請求が認められる可能性があるのです。
共有名義人の「明け渡し請求」が認められる例外
共有名義人による占有であっても、占有の方法によって明け渡し請求が認められた判例があり、現在もその判例に従って明け渡し請求が認められることもあります。
過去に明け渡し請求が認められたのは、前掲の判例に基づき「明け渡しを求める正当な理由」を立証出来た場合に限られます。ここでは、裁判所が認める「正当な理由」とは一体どういうものなのかを紹介します。
共有名義の土地に家を建てようとしている場合は「完成前」に明け渡し請求を
共有状態の土地を所有していると、他の共有名義人が勝手に建物を建ててしまいトラブルに発生するケースがあります。
この「共有名義の土地に勝手に建物を建てる」行為は、民法251条の規定による「変更」行為にあたるため、他の共有名義人の同意がなければできません。つまり、共有物に変更を加える行為は、単独名義の権限を越えているため法律上認められないのです。
(共有物の変更)
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
すなわち、上記行為を理由とした他の共有名義人が明け渡し請求を求める場合、前述した判例の「正当な理由」として認められる可能性があります。しかし、「必ず認められる」というわけではありません。
正当な理由として認められるには、過去の判例から基準となった以下の内容を確認しましょう。
上記請求が認められた判例要旨は以下の通りです。
・建物の建設が着手されていない or 完成していない場合:工事の差止請求および原状回復請求(実質上の明け渡し請求)が認められる
・建物の建設が完了している場合 :上記請求が認められない
共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合には、他の共有者は、特段の事情がない限り、変更により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることができる。
逆に、「建物の建設が完了している場合に、明け渡し請求が認められなかった」判例もあります。
判例要旨が長いため要約しますが「共有名義の土地に建てた建物を相続した相続人に対し、建物の収去および建物敷地部分の明け渡しは認められなかったが、単独占有者に対し自己の持分に応じた使用を妨げられていることにかかる不当利得返還請求ないし損害賠償請求は認められた」という判例です。
こうした判例により、共有名義の土地に建物を建てられそうになったら、完成前に明け渡し請求をする方が認められやすいと考えられます。
共有名義人全員で定めた使用方法と違う場合
共有名義の土地全体に対する使用や変更は、共有名義人同士による協議と合意が必要になります。そのため、仮に、単独で占有する共有名義人が、協議合意した使用方法と異なる使用をした場合には、「正当な理由」と判断されやすいです。
ただし、前述の「正当な理由の立証」を求める判例は、あくまでも「多数持分権者から少数持分権者への明け渡し請求」についてのものなので、明け渡しを請求する側が多数持分権者である場合にのみ当てはまると考えられます。
そのため、正当な理由の立証によって明け渡し請求をする場合、請求する側が多数持分権者、つまり共有持分の50%以上を保有していないといけない点に注意が必要です。
使用方法の協議を拒否して住み続けている
共有名義の不動産に対する使用方法を決めるには、共有名義人全員の協議により、共有名義人が保有する持分割合の過半数の合意が必要です。過半数の持分を持たない共有名義人が協議を拒否して勝手に占有することは、法律的に認められません。
また、共有名義人全員による協議を拒否した者に対する明け渡し請求が認められた判例(東京地裁昭和35年10月18日)も存在します。
単独占有する共有名義人が、使用方法の協議を拒否して占有を続けている場合には、明け渡し請求がまず認められる可能性があります。
実力行使で占有している場合
共有名義のある不動産に対し、「バリケードを設置して侵入を妨害する」「他の共有名義人の家財を勝手に処分する」「勝手に鍵を交換する」等、強引な実力行使によって単独占有をしている場合には、共有持分権の濫用にあたるため明け渡し請求が認められます。
過去の判例としては、仙台高等裁判所の平成4年1月27日判決があります。
占有状態に異議を出さないと「乗っ取られる」リスクがある
共有名義人による単独占有の過程には色々な事例がありますが、たとえそれが不法な占有であったとしても、占有状態を放置しておくのは高いリスクがあります。
特に占有権を行使しているのが共有名義人であった場合は、他の共有名義人は放置してはいけません。
なぜなら、占有者には「占有権」があり、長年単独で占有し続けると、特定の条件を満たした場合に所有権を取得できるという法律があるからです。特に、共有名義の不動産を単独占有する共有名義人の場合、長年の占有によって単独での所有権が認められた判例もあります。
つまり、共有名義の不動産で登記されている状態だからといって安心して、単独の占有状態を放置していると、占有している共有名義人によって当該不動産を丸ごと「乗っ取られる」リスクがあるのです。
占有状態が続くと「取得時効」により所有権が認められる
もし他の共有名義人が今後も不動産の所有権を主張したいなら、たとえ面倒であっても単独の占有状態に異議を申し立てないといけません。
先程も申し上げた通り、占有者には「占有権」が認められます。
(占有権の取得)
第百八十条 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
引用元:e-Gov法令検索
そして、占有権には「時効」があり、他の共有名義人が一定期間異議を申し立てないまま占有状態を放置しておくと、占有者は時効を迎えて所有権を取得できてしまうのです。
これを「取得時効」といいますが、民法では以下の通り規定されています。
(所有権の取得時効)
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
引用元:e-Gov法令検索 第百六十二条
共有名義人の一人が単独所有者としての自主占有が認められた判例
特に、共有名義の不動産の共有名義人が単独占有している場合には注意が必要です。
何故なら、長年の単独占有と国や地方自治体に収める金銭の負担により、単独占有状態から「単独所有」が認められた過去の判例があるからです。
つまり、上記の時効期間を過ぎてしまうと、判例主義の日本では占有者単独による所有権が認められる可能性が高いのです。以下に当該判例要旨を引用します。
共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかつた等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、前記相続人はその相続のときから相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。
当該事例は、「単独占有者以外の共有者が共有状態を知らなかった」「単独で相続したものと強く思い込んでいた」「公租公課(固定資産税等)の負担を自分でずっと行っていた」「単独で相続したと思い込んだまま占有していた不動産を法定相続人が相続していた」といった特異な状況が重なった結果ではありますが、それにしてもこうした事態はいつ起こっても不思議ではありません。
知らなかったならともかく、単独占有に不満がありながらも放置しているといった場合には、早めに異議を申し立てましょう。そうすれば法律における「平穏に、かつ、公然」と占有される状態は防ぐことができます。
不法な占有でも「占有の移転」をされると明け渡し請求ができなくなる
なお、「占有権は移転できる」点にも注意しなければなりません。民法ではこれを「引渡し」といい、民法182条に規定されています。
(現実の引渡し及び簡易の引渡し)
占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
引用元:e-Gov法令検索 第百八十二条
たとえ、先述の「実力行使」を用いた不法な占有であっても、もし占有者に「占有の移転」をされてしまったら、明け渡し請求にかかる強制執行はできなくなります。何故なら、明け渡し請求は「訴訟」であり、訴訟の相手は訴訟時点での占有者になるからです。
もし判決が出る前に占有権を別の人物に移転されると、再度占有権が移転した別の人物に対して訴訟を提起しなければならなくなります。
こうした事態を防ぐには、明け渡し請求を行う前に「占有移転禁止の仮処分」の手続きを行う必要があります。この手続きにより占有者は占有権を自由に移転できなくなり、もし明け渡し請求をした側が勝訴した場合、占有者は強制執行に従わざるを得なくなります。
占有移転禁止の仮処分の手続きには、共有名義の不動産の登記事項証明書や占有者の住民票、明け渡し請求権を行う側の共有名義人による報告書など、占有の証拠となりうる書類を提出する必要があります。詳しくは司法書士や弁護士に相談しましょう。
共有名義人の持分割合に応じた賃料相当額の請求は可能
これまで見てきたように、単独占有を続ける共有名義人を「追い出す」ことは相当難しいと考えられます。
しかし、その代わりに他の共有名義人は、賃料相当額の請求を行えます。何故なら、他の共有名義人は単独占有によって「持分割合に応じた使用を妨害されている」と判断されるからです。
共有名義人全員が持分割合に応じた賃料等の使用料を受け取る権利がありますから、単独占有を続ける共有名義人に対し、他の共有名義人は権利を行使することで持分割合に応じた賃料相当額の請求を行うことができるのです。
なお、賃料相当額の請求は、単独占有者に対する交渉、ないし訴訟によって行うことが可能です。交渉して解決するのが一番ですが、交渉が進まない・交渉を拒否する場合には、内容証明郵便による督促を経て、「不当利得返還請求」の訴訟の提起を行います。
不当利得返還請求
不当利得返還請求とは、法律上の正当な理由なしに不当に利益を得た者に対して、その利益分の返還を要求する手続きのことです。この記事の場合では、共有名義人による単独占有が「不当利得」にあたると判断されます。
不当利得返還に関しては、訴訟ではなく交渉でも請求できます。しかし、相手が交渉に応じない場合には、登記事項証明書等の証拠を揃え、弁護士に依頼し訴訟の提起をしましょう。

5年(従来は10年)の「時効期間」を過ぎると請求できなくなる
不当利得返還請求は債権の一種ですので、民法167条によって規定されている通り「消滅時効」があります。
従来は「権利(不当利得返還請求権)が発生してから10年」が消滅時効でしたが、2020年4月1日施行の改正民法で、「権利行使できることを知ってから5年」に改められました。
(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:e-Gov法令検索 第百六十六条
従来の消滅時効期間(10年)は2項に残っていますので、どちらを当てはめるかは法解釈に委ねられますが、一般的にはこの2項のうち早い方が適用されます。そのため、不当利得返還請求は5年以内にしなければなりません。
賃料請求ができない場合もある
ちなみに、単独占有の状況によっては、賃料相当額の請求ができない場合もあります。それは、以下のような場合です。
共有名義人全員の合意がある場合(使用貸借)
共有名義人全員の協議によって、単独占有に際して「使用貸借」の合意が取れている場合には、賃料相当額の請求はできません。
第六節 使用貸借 民法第593条~第600条
使用貸借は主に親族間など身内同士で行われることが多く、口約束となっていることも多いため、契約書がないことによるトラブルが起きやすいものです。
トラブルを回避するには、きちんと共有名義人全員で合意を取ってから使用貸借を行いましょう。とはいえ、通常は合意さえ取れていればトラブルにはならないでしょう。
相続前から同居していたケース
実際に共有名義の不動産で使用貸借がトラブルになりやすいのは、相続時です。
たとえば、親と同居していた息子・娘などの法定相続人が、遺産分割協議前から相続対象になっている親の実家に同居を続けているケースが代表的です。
もし親と同居していた法定相続人以外に兄弟がいた場合、実家の相続に関しては平等に持分があるはずなのに「親と同居していた相続人だけが単独で実家を占有している」事実。これがトラブルになるのです。
他の兄弟からしてみれば「共有名義の実家に一人で住んでいるのなら、他の兄弟に持分割合に応じた家賃を払え」という理屈です。
しかし、これは認められません。何故なら、親の死の前から親と実家に同居していた息子・娘には、親子間での使用貸借契約が発生しており、その使用貸借契約は「遺産分割協議が終わるまで効果が継続する」からです。これは過去の判例からも明らかとなっています。
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。
ただし、当然ですが遺産分割協議が終われば、他の共有名義人による賃料相当額の請求ができるようになります。そのため、遺産分割協議が終わるまでに、適切な遺産分割をして共有持分を整理しておく必要があるでしょう。
単独占有を続ける共有名義人に対する「明け渡し請求」以外の解決手段
これまで、明け渡し請求ができる場合とできない場合を含めて、できうる対処について詳細に解説しました。明け渡し請求は相手を強制的に「追い出す」ための訴訟ですし、強行的な手段のためどうしても穏やかでない状況になってしまいますので、なるべく避けたいですよね。
それでは、単独占有を続ける共有名義人に対して、「明け渡し請求」以外の解決手段はあるのでしょうか。考えられる手段としては以下の通りです。
共有物分割訴訟(代償分割)
「共有物分割訴訟(共有物分割請求訴訟)」は、文字通り共有物を分割するための訴訟です。共有物分割訴訟を提起することで、最適な分割方法により共有物を分割することができます。
しかし、最適な分割方法の判断を行うのは、当事者ではなく裁判官です。そのため、自身の主張を相手に認めさせるというよりは、話し合っても解決しないトラブルに対して訴えを起こすことで、裁判官による公正な判断を下してもらうという、少し変わった特徴を持っています。
共有名義の不動産を単独占有されている他の共有名義人は、自身の持分割合に応じた使用権を侵害されています。少なくとも、この状態を解消するために、裁判所の判断により強制的に何らかの分割方法が判断される共有物分割訴訟は効果があります。
過去の判例によれば、共有名義人による単独占有に際しての共有物分割訴訟において、「占有している共有名義人の単独名義にしたうえで、他の共有名義人に対して持分の価格を賠償させる」という分割方法が認められています。
一 民法二五八条により共有物の分割をする場合において、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許される。
この判例における全面的価格賠償は、「代償分割」の1つの方法ですが、競売を避け不動産を残す方法でもあります。そのため、占有を受けている側にとっては持分相当の金額を受け取ることで自己の権利に相当する代価を回収できますし、占有者が単独占有のために持分を買い取りたいと考えている場合にも、不動産を残したまま単独名義に変更できます。双方にメリットのある解決方法といえるでしょう。
しかし、この分割方法は上記判決要旨の前半にもあるように、一定の要件に当てはまる時にしか認められません。そして、明け渡し請求程ではありませんが、あまり穏やかではない解決手段ですし、裁判費用もかかるので、あまりおすすめはできません。
どうしても自分の持分を確保したい場合にだけ、最終手段として検討しましょう。
手っ取り早く共有状態を解消するなら売却も検討しましょう
共有名義人による単独占有をはじめとする共有名義の不動産に関するトラブルを避けたい、共有状態を一刻も早く解消したいという場合には、自分の共有持分の売却も検討しましょう。
自分の共有持分の売却方法には以下のようなものがあります。
・第三者(投資家・専門買取業者)に売却
占有を続ける共有名義人に買取ってもらう
自分の共有持分のみを売却するだけなら、他の共有名義人の同意を得ずに自由に行えます。
今回の記事のような状況で最も理想的なのは、単独で占有を続ける共有名義人に共有持分を買い取ってもらうことです。もし、どうしても単独で占有したいのであれば、そうした交渉をちらつかせれば乗ってくる可能性もあります。
とはいえ、関係が険悪である場合や、買取の意思がないまま単独占有だけは続けているといった場合も十分考えられます。そうした場合には共有持分専門の買取業者や投資家など第三者への売却も検討しましょう。
共有持分の売却について詳しくはこちらの記事を参照ください。

まとめ
以上、「共有名義の不動産を単独で占有する共有名義人を追い出せるか」をテーマに、明け渡し請求ができる場合とできない場合についてや、明け渡し請求以外の対処法も含め詳細に解説しました。
原則として、単独占有を続ける共有名義人に対する「明け渡し請求」は、特別な理由がない限りは認められないと考えられます。強硬な手段を用いての「実力行使」による占有でない限りは、まず明け渡し請求はできないとみて間違いありません。とはいえ、占有状態を放置しておくと、所有権までも奪われてしまうリスクがあります。
そのため、明け渡し請求ができない場合は、まずは共有持分割合に応じた賃料相当額の請求を交渉してみるところから始めましょう。どうしても支払いに応じない場合は、穏やかではないですが共有物分割請求訴訟を行うか、占有者に自分の共有持分の買取を交渉してみましょう。
それでも話が進まない場合や、もうトラブルに巻き込まれたくないといった場合には、自分の共有持分のみの売却を検討してみることをおすすめします。共有状態におけるトラブルから解放されたいのであれば、売却先は共有名義の対応に長けた教諭持分専門の買取業者がおすすめです。
当社では買取から販売まで一貫して自社で賄っており、弁護士や司法書士とも提携しております。高額買取からアフターフォローまで、安心してお任せください。