不動産を共有名義で相続する時の遺産分割協議書の書き方や注意点

共有名義不動産

遺産分割協議書は、相続分の割合を協議で決める場合に必要です。遺言書の内容通りに相続する場合や、相続人が1人の場合には必要ありません。

遺産分割協議書は、間違いのないように記載することが大切です。

内容に不備があると、共有者間で再度遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成し直すことになります。再度協議をする場合、共有者間の考え方も変わり一度まとまった内容と変わってしまうこともあるので、遺産分割協議書は間違いないよう慎重に作成しましょう。

また、不動産を共有名義で相続してしまうと、今後共有者間で活用方法の意思統一が困難になるため、おすすめできません。

本記事では遺産分割協議書の不備がないよう、書き方や注意点を紹介しているのでご確認ください。

共有持分の売却は「訳あり物件買取プロ」へ!

トラブルが付きものな共有持分も高額で売れる!

無料で共有持分の高額査定を試す

遺産分割協議書の役割

遺産分割協議書に記載された内容は、法的に効力があります。

相続人同士が、相続財産の取分の争いや、不動産の共有者が多くなると発生するトラブルなどのリスクを防ぐために、遺産分割協議書を作成する必要があります。まずは、遺産分割協議書の役割を解説します。

法定相続分ではない割合で遺産分割する場合に作成

不動産を法定相続分と異なる割合で相続する場合や、遺言書と異なる内容で遺産分割する場合は、相続人全員の同意によって遺産分割協議を行う必要があります。

遺言書がある場合でも、その記載どおりに分割することで、相続人同士の争いが生じたり、相続税において不都合が発生する場合には、遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議書は、相続登記時に提出を求められます。相続登記は、被相続人から相続人へ、登記簿の所有権名義を移転する手続きのことです。

遺産を法定相続分で相続したり、遺言書のとおりに相続するときには、遺産分割協議書は不要です。

法定相続分の割合については次のとおりです。

相続人 相続する割合
配偶者のみ 相続財産のすべて
配偶者と子(第1順位) 配偶者1/2、子(全員で)1/2
配偶者と父母(第2順位) 配偶者2/3、父母(全員で)1/3
配偶者と兄弟姉妹(第3順位) 配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4

共有持分の割合を記載

遺産分割協議書は、不動産を誰がどのくらいの割合で相続することになったのかを記載します。

持分割合を正確に記載しないと、後で変更があった場合に修正が大変になることや、共有者同士で揉めるリスクがあります。相続税の申告もあるため、持分割合を正確に把握しておかないと持分割合に応じた相続税を支払うことができません。そのため、遺産分割協議書には正確な持分割合を記載する必要があります。

遺言書の内容と異なる内容にする場合

被相続人が遺言書を残していれば、遺産分割協議書の作成は不要です。しかし遺言書に記載のない財産や、そもそも遺言書が無効になる場合であれば、遺産分割協議が必要になります。

遺言書が無効になる場合は、次のとおりです。

・公正証書遺言以外(家庭裁判所による検認が必要)
・自筆ではない
・作成日が特定できない
・署名・押印がない
・訂正方法が違う
・内容が不明瞭
・共同で書かれている
・意思能力のない人が作成

共有名義で不動産を相続する場合の遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書に不備があると、後々相続人同士でトラブルが発生する原因にもなります。

相続登記をする場合の資料としても遺産分割協議書が必要となるため、不備があると資料として認められないこともあるため間違いないよう記載するよう注意しましょう。

実際に遺産分割協議書の記載の仕方を解説します。

遺産分割協議書のひな型

遺産分割協議書

被相続人   〇 〇(昭和〇年〇月〇日生まれ)
死亡日    令和〇〇年〇月〇日
本籍地    〇県〇市〇町〇丁目〇番地
最後の住所地 〇県〇市〇町〇丁目〇番地〇号

被相続人の遺産について、共同相続人の全員において分割協議を行った結果、下記のとおり遺産を分割することに同意した。

1. 相続人〇 〇が取得する遺産
【土地】 2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:〇.〇㎡

【建物】 2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
家屋番号:〇番〇
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階〇.〇㎡
2階〇.〇㎡

2. 相続人△ △が取得する遺産
【土地】 2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:〇.〇㎡

【建物】 2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
家屋番号:〇番〇
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階〇.〇㎡
2階〇.〇㎡

3. 相続人◇ ◇が取得する遺産
【現金】 〇〇,〇〇〇,〇〇〇円

4. 本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人〇 〇がすべて相続するものとする。

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名捺印のうえ、各1通ずつ保管する。

令和〇〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
〇 〇  (実印)

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
△ △  (実印)

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
◇ ◇  (実印)

後日判明した財産の内容

次のように記載します。

「本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人〇 〇がすべて相続するものとする。」

後書

遺産分割協議が成立したことと、相続人の人数分の遺産分割協議書を作成したことを記載します。

「以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名捺印のうえ、各1通ずつ保管する。」

協議書の成立年月日と相続人の署名捺印

遺産分割協議が成立した日付、相続人全員の住所の記載と、署名捺印をします。捺印は実印を使用する必要があります。

遺産分割協議書を作成する7つのポイント

遺産分割協議書には決まったフォーマットがないため、手書き作成やパソコンによる作成など、どの方法でも構いません。ただし記載する上で必要なポイントがあるので、下記にて解説いたします。

タイトル

「遺産分割協議書」と記載します。

被相続人の表示

被相続人の氏名、生年月日、死亡日、本籍地、最後の住所地を記載します。

前書き

相続人全員で遺産分割協議を行ったことを次のように記載します。

「被相続人の遺産については、共同相続人の全員において分割協議を行った結果、下記のとおり遺産を分割することに同意した。」

各相続人が承継する相続財産の内容

相続財産の内容と相続する人の名前を記載します。預貯金の場合、銀行名や、支店名、口座番号、金額の記載です。株式の場合は、株式会社名と保有株式数の記載になります。

共有名義の土地を相続する場合の遺産分割協議書への書き方

登記簿謄本や登記事項証明書の「表題部」の内容にしたがって、次のように記載します。

相続人〇 〇が取得する遺産
【土地】 持分2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:300.00㎡

共有名義の建物を相続する場合の遺産分割協議書への書き方

土地の場合と同様に「表題部」の内容にしたがって、次のように記載します。

相続人〇 〇が取得する遺産
【建物】 持分2分の1
所在:〇市〇町〇丁目
家屋番号:〇番〇
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階85.00㎡
2階85.00㎡

共有名義のマンションの1室を相続する場合の遺産分割協議書への書き方

マンションは区分所有となるため、登記簿謄本や登記事項証明書の「表題部」にある、一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示を次のように記載します。

相続人〇 〇が取得する遺産
【区分建物】 2分の1
一棟の建物の表示
所在:〇市〇町〇丁目〇番〇

専有部分の建物の表示
所在:〇市〇町〇丁目〇番〇
家屋番号:〇番〇の〇〇
種類:居宅
構造:鉄筋コンクリート造6階建
床面積:5階部分20.00㎡

敷地権の表示
土地の符号:1
所在及び地番:〇市〇町〇丁目〇番〇
地目:宅地
地籍:1800.00㎡
敷地権の種類:所有権
敷地権の割合:100000分の199

遺産分割協議書を作成する時の注意点

遺産分割協議書を作成する場合、いくつか注意しなければならない点があるため、それぞれ解説していきます。

諸費用は持分割合に応じて支払う

遺産分割協議が終わって共有不動産として複数の相続人が相続した場合、それぞれの持分割合に応じて諸費用を支払わなければなりません。

例えば、共有不動産の登記を司法書士に依頼する場合に、5万円がかかったとします。その場合、持分割合が1/2であれば、2万5,000円ずつ支払うことになります。

遺産分割協議書のやり直しは原則できない

遺産分割協議書を作成した場合、協議内容に法的効力が発生します。

ただし、一部の相続人が、遺産分割協議書に記載した持分割合を間違えて表記してしまった場合、全員の合意によって解除することで再協議ができます。

持分の割合の合計は必ず「1」にすること

遺産分割協議書において、持分割合を誤って記載してしまうと、相続税の課税額が他の相続人と異なってしまい、本来納めるべき税金が少なくなることや高くなることがあります。

また間違って登記をしてしまった場合、登記を修正する更正登記を行います。もし金融機関において不動産を担保として抵当権を設定していた場合、金融機関の承諾も必要となるため手続きに時間がかかることや、場合によっては金融機関から拒否されてしまうこともあります。

未成年者や障がい者など意思能力がない人が相続人にいる場合

もし意思能力がなく判断能力が不十分な人が遺産分割協議に参加すれば、その遺産分割協議の内容が無効と判断されるので、後述する内容を確認しましょう。

未成年者の場合

相続人の1人が未成年の場合、親が法定代理人となるため、未成年者に代わって遺産分割協議に参加します。しかし相続の場合、親自身も相続人になり、親の立場を利用して未成年者の利益相反が生じてしまうため、遺産分割協議に参加することができません。

親が未成年者に代わって遺産分割協議に参加ができないため、特別代理人を家庭裁判所で選任してもらい、その特別代理人が遺産分割協議に参加します。

障がい者や認知症の場合

意思能力がない場合や不十分な場合など、家庭裁判所において成年後見人などの選任をしてもらいます。本人の代理人として成年後見人が遺産分割協議に参加します。

もし成年後見人が相続人になる場合、未成年と同様に特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。

相続のトラブルを防ぎたい場合には公正証書で作成する

公正証書で遺産分割協議書を作成するには、今後相続のトラブルの可能性がある場合や、紛失や改ざんなどを防ぎたい場合に活用ができます。

公正証書は、遺産分割協議の内容などの一定の契約について、公証人が書類を作成し、内容を証明する文書のことです。遺産分割協議書を公文書化したものが公正証書になるため、遺産分割協議書よりも証明力が高くなります。

紛争予防

公正証書で作成すれば、公証人が遺産分割協議書の作成の際に関与することになるため、相続する際の「証人」になります。

例えば、すでに終わった遺産分割協議を蒸し返してくる共有者が出てきた場合に、公正証書で作成しておけば防ぐことが可能です。

偽造や変造を防ぐことができる

作成した遺産分割協議書の原本が公証役場で保管されます。そのため共有者間で持っている遺産分割協議書が偽造や変造されても、公証役場で原本の確認ができるため安全に管理ができます。

作成後の手続きがスムーズ

遺産分割協議書として、内容に間違いがなく公文書となるため証明力が高くなるため、次に行う不動産の相続登記や相続税の申告などの手続きがしやすくなります。

共有名義の不動産を相続で取得したら相続登記を行う

相続登記は、不動産の名義を被相続人から相続人に移転する手続きです。

現在では、必ず登記しなければならないものではないものの、被相続人の名義のままの不動産を担保にした借り入れや、売却、融資を受けてリフォームすることができなくなる問題が発生してしまいます。

なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されるため、今後は不動産を相続で取得した場合、登記を行わなければなりません。

相続登記の流れ

相続登記に必要な書類を準備し、登記する不動産の所在地を管轄する法務局に申請を行います。

法務局には、直接窓口に持参して申請する方法や、郵送、ホームページからのオンライン申請で行うことが可能です。

もし、手続きに不安がある人は司法書士に依頼しましょう。

必要書類

相続登記をするにあたり、必要となる書類は次のとおりです。

登記申請書 法務局のホームページにサンプルがあるため、サンプルをもとに作成
遺産分割協議書 遺産分割協議の内容をまとめた書類
相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書を押印した実印を証明する書類。市区町村の役所で取得が可能
被相続人の出生から死亡までの除籍謄本 被相続人の本籍地を所轄する役所の窓口または郵送で取得が可能
相続人全員の戸籍謄本 各相続人の本籍地を所轄する役所の窓口または郵送で取得が可能
相続人の住民票 不動産を相続した人の住民票で、市区町村の役所で取得が可能
被相続人の住民票の除票 被相続人の最後の住所が登記簿上の住所と異なる場合に、最後の住所までを証明するために必要。市区町村の役所で取得が可能
被相続人の戸籍の附票の除票 登記簿上の住所から2回以上移動している場合に必要。市区町村の役所で取得が可能

まとめ

ここまで、共有不動産を相続によって取得した場合の遺産分割協議書の書き方や注意点などを解説してきました。もし遺産分割協議書の内容に不備が見つかると、再度遺産分割協議が必要になったり、何度も顔を合わせることで相続人の間で意見が合わなかったりして揉めるケースもあります。

遺産分割協議書の内容は、本記事を参考にしながら正確に記載しましょう。

また遺産分割協議時に、持分割合を間違えてしまい相続登記を行ってしまうと、後で訂正が必要になります。手続きに時間と労力や、費用がかかるため持分割合は間違わないように記載する必要があります。

確実に遺産分割協議書を作成したい場合は、弁護士や司法書士に相談することで不備をなくすことが可能となります。

監修者

長谷川聡 司法書士

プロフィールページへ
「相続手続き」「終活コンサルティング」専門の司法書士・家族信託専門士。特に【家族信託】についてはそのスキームを説明し、実践している数少ない法律家の一人。

共有名義不動産を高額売却できる無料の買取査定を依頼する

    物件種別必須
    物件住所必須

    お名前必須
    電話番号
    メールアドレス必須
    備考

    個人情報の取扱いについて」に同意の上、送信してください。

    簡単入力30秒
    訳あり物件の売却は
    今すぐご相談ください
    共有名義不動産
    この記事をシェアする
    facebook twitter
    訳あり物件買取プロ
    タイトルとURLをコピーしました