共有名義の不動産で親子間で譲渡や相続があった場合は名義変更が必要

共有名義不動産

親子の共有名義の不動産について、売買や贈与、相続などで権利に動きがあったときは、名義変更の手続きが必要であり、それぞれの場合に相応しい手続きを進める必要があります。

例えば、親から共有持分を譲ってもらったときには、売買契約書や贈与契約書を作成する必要があります。そして、親が亡くなって相続人が複数いる場合で、法定相続分の通りに相続することを望まないときには、遺産分割協議書の作成が必要です。

どちらの場合も、内容に不備があると手続きが進まず、修正ができるとしても時間や手間がかかってしまいますので、正確に作成しましょう。

活用されていない不動産を共有名義のままにしてしまうのは、後に活用したいと考えたときに、共有者の意志の統一が困難となる可能性がありますので、おすすめできません。

今後も活用する可能性が極めて低いのであれば、不動産の共有名義を解消することを検討し、共有持分専門の買取業者に売却の相談をすることをおすすめします。

本記事では、親から子への名義変更が必要なときの各種手続き方法や、かかる費用等を解説します。

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親子共有名義の不動産の名義変更が必要なケース

親から共有持分を譲渡してもらったときや、親が亡くなって相続により承継したときは、名義変更が必要です。

一例は、次の通りです。なお、相続で例にあげる「遺産分割協議」による承継は、遺言書もなく、法定相続分での承継を望まない場合に、相続人の全員による話し合いで承継する人を決める方法です。

必要書類 税金
親からの譲渡 売買契約書 売主:譲渡所得税
買主:不動産取得税
贈与契約書 受贈者:贈与税と不動産取得税
親の死亡(相続) 遺産分割協議書 相続人:相続税

親から共有持分を譲渡してもらったとき

名義変更するにあたっては、売買契約書や贈与契約書を作成し、その他必要な書類を揃えて、共有名義の不動産の所在地を管轄する法務局に登記手続きの申請を行う必要があります。

親から共有持分を購入したときと、贈与してもらったときの名義変更の必要書類やかかる税金を解説します。

親から共有持分を購入したとき

親から子へ共有持分を売買する場合も名義変更の手続きが必要です。この場合は売買契約書が必要となりますが、不備があると後のトラブルにつながる可能性がありますので、間違いがないように記載しましょう。

不動産の名義変更手続きをするにあたっては、以下の必要書類を準備します。

売主 登記識別情報情報(登記済権利証)
印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
買主 住民票
その他 売買契約書
固定資産評価証明書
納税通知書に同封される課税明細書

売買契約書のひな型

売買契約書

売主〇 〇(以下「甲」という。)と 、買主△ △(以下「乙」という。)とは、甲乙間の売買契約に関して、以下のとおり合意した。

(売買契約)
第1条 甲は、乙に対し、甲が所有する別紙物件目録記載の目録の土地(以下「本件土地」という。)及び建物(以下「本件建物」という。)(以下、本件土地及び本件建物を総称して、「本件不動産」という。)を売り渡し、乙はこれを買い受ける。

(売買代金の額)
第2条 本件土地の売買代金の総額は、金〇万円(消費税込)とする。内訳は、以下のとおりとする。

【内訳】
本件土地 金〇万円(消費税込)
本件建物 金〇万円(消費税込)

(実測による売買代金の修正)
第3条 甲は、本契約締結後、直ちに本件土地を実測する。ただし、測量費用は、甲の負担とする。
2 本件土地は、公募面積に基づく数量指定売買とする。ただし、前項の結果が公募面積と異なるときは、1平方メートルあたり金〇万円の割合で売買代金の修正を行う。

(売買代金の支払時期及びその方法)
第4条 乙は、甲に対して、次の各号のとおり第2条の売買代金を支払う。
1 契約日に、手付金として金〇万円を支払う。
2 残代金のうち、金〇万円を、令和〇〇年〇月〇日までに支払う。
3 残代金〇万円は分割して〇回払いとし、令和〇〇年〇月から令和〇〇年〇月まで、毎月〇日までに金〇万円を支払う。
2 前項2号及び3号の支払いは、甲が指定する金融機関の指定口座に振り込む方法により行う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。

(引渡し)
第5条 甲は、乙に対して、令和〇〇年〇月〇日までに、第4条第2号の金〇万円の支払いと引換えに、本件不動産を引渡す。

(所有権の移転時期)
第6条 本件不動産の所有権は、本件不動産の引渡し時に、甲から乙に移転する。

(所有権移転登記)
第7条 甲は、乙に対して、令和〇〇年〇月〇日までに、売買代金の支払と引換えに、乙の名義にするために、本物件の所有権移転登記申請手続に必要な書類を交付する。
2 前項の所有権移転登記手続に要する費用は、乙の負担とする。

(残置物の所有権放棄)
第8条 本件不動産の引渡し後に、本件不動産に残置する造作設備、備品及びその他の物があるときは、甲はその物の所有権を放棄したものとみなす。
2 乙は、前項について、任意に処分することができる。

(危険負担)
第9条 本契約締結時から本件不動産の引渡し時までに、甲の責に帰することのできない事由により、本件不動産が滅失又は毀損した場合は、乙の責に帰すべき事由によるときを除き、その危険は甲の負担とする。

(契約不適合責任)
第10条 甲は乙に対し、本契約に関して一切の契約不適合責任を負わないものとし、乙は甲に対して、本件不動産の種類、品質または数量が本契約に適合しないことを理由として、履行の追完、売買代金の減額、損害賠償請求または本契約の解除をすることができない。

(公租公課)
第11条 本件不動産に関する固定資産税等の公租公課及びその他の賦課金について、名義人の如何に関わらず、第6条に規定する所有権移転の日までは乙の負担とし、その翌日以後は甲の負担とする。

(解除)
第12条 甲又は乙のいずれか、または両方が本契約の義務の履行を怠った場合には、1週間以上の相当期間を定めた催告の後、本契約を解除することができる。
2 前項の場合において、解除権者は、相手方に対し、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

(合意管轄)
第13条 本契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、〇〇地方裁判所を専属管轄裁判所とする。

(協議)
第14条 本契約に関して、疑義が生じた場合、または定めのない事由が生じた場合には、両当事者は、信義誠実の原則に従い協議を行う。

以上のとおり、本契約の締結を証するものとして、本契約書を2通を作成し、署名捺印のうえ、各1通ずつ保管する。

令和〇〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
売主 〇 〇  (印)

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
買主 △ △  (印)

(税金)売主:譲渡所得税、買主:不動産取得税

親の共有持分を譲渡すると、売買契約の締結にかかる「印紙税」、不動産の名義変更にかかる「登録免許税」の他に、売主である親には「譲渡所得税(所得税・住民税)」が、買主である子には「不動産取得税」がかかります。

よって、売主である親は、譲渡をした翌年に確定申告を行う必要があります。

譲渡所得税は、不動産の売却した年の1月1日時点を基準とすると、所有期間によって税率が変わります。

所有年数が5年以下であれば短期譲渡所得として、所得税率30%と住民税率9%が課税されます。所有年数が5年を超えるものであれば長期譲渡所得として、所得税率15%と住民税率5%の課税となります。

また、それぞれ東日本大震災の復興特別所得税として2.1%が併せて課税されます。

不動産取得税は、土地や建物の固定資産税評価額の4%とする規定があります。そのうえで、土地建物ともに2024年3月31日までに取得したものは、4%から3%になる軽減税率が適用されます。また、この日までに取得した場合の宅地等(宅地及び宅地評価された土地)については、固定資産税評価額を2分の1として計算する旨の規定があります。
(※免税の決まりもありますので、税理士に確認をするようにしましょう。)

親に共有持分を贈与してもらったとき

親から子へ名義変更するにあたって、贈与契約書が必要となりますが、贈与契約書にも収入印紙が必要です(印紙税がかかります)。

また、受贈者である子には、贈与税と不動産取得税の両方が課税されます。(非課税・控除の規定もありますので、税理士に確認をするようにしましょう。)

不動産の名義変更手続きをするにあたって、以下の必要書類を準備します。

売主 登記識別情報情報(登記済権利証)
印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
買主 住民票
その他 贈与契約書
固定資産評価証明書

贈与契約書のひな型

贈与契約書

贈与者〇 〇(以下「甲」という。)と受贈者△ △(以下「乙」という。)は、以下のとおり贈与契約を締結した。

第1条 甲は、その所有する不動産(以下「本件不動産」という。)を乙に贈与し、乙はこれを受諾した。

【土地】
所在:〇市〇町〇丁目
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:〇.〇㎡

【建物】
所在:〇市〇町〇丁目
家屋番号:〇番〇
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階〇.〇㎡
2階〇.〇㎡

第2条 甲は、乙に対し、令和〇〇年〇月〇日までに、本件不動産の引渡し、かつ、所有権移転登記手続を行う。ただし、所有権移転登記手続に必要な一切の費用は乙の負担とする。

第3条 本件不動産の公租公課については、所有権移転登記完了の日を基準として、登記の日までに相応する分は甲、その翌日以降に相応する分は乙の負担とする。

以上のとおり、贈与契約が成立したので、これを証するため、本契約書を2通を作成し、署名捺印のうえ、各1通ずつ保管する。

令和〇〇年〇月〇日

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
贈与者 〇 〇  (印)

〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号
受贈者 △ △  (印)

(税金)受贈者:贈与税と不動産取得税

親の共有持分を贈与すると、贈与契約の締結にかかる「印紙税」、不動産の名義変更にかかる「登録免許税」の他に、受贈者である子には「不動産取得税」「贈与税」がかかります。

よって、受贈者である子は、贈与を受けた年の翌年に確定申告を行う必要があります。
※控除の決まりもありますので、税理士に確認をするようにしましょう。

贈与税は、年間に基礎控除額110万円を差し引いた金額に対して、10%〜55%の税率をかけた後、税率に応じた控除額を差し引いた金額です。

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

不動産取得税の計算方法は、共有持分の売買の際に買主側に課税される額の計算方法と同じです。

相続で取得した共有名義の不動産の名義変更

名義変更するにあたって、相続人が複数人いる場合であって、法定相続分での承継を望まない場合には、遺産分割協議書を作成して、その他の必要書類とともに、不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記の手続き申請を行います。

必要書類

相続登記手続きの申請をするにあたって、以下の必要書類を準備します。

被相続人 除籍謄本(出生から死亡までの連続したすべてのもの)
住民票の除票 または 戸籍の附票の除票
相続人 相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に添付)
住民票(新しく名義人になる方)
その他 遺産分割協議書
固定資産評価証明書

遺産分割協議書のひな型

遺産分割協議書の書き方については別のページで紹介しています。

不動産を共有名義で相続する時の遺産分割協議書の書き方や注意点
遺産分割協議書の役割 遺産分割協議書に記載された内容は、法的に効力があります。 相続人同士が、相続財産の取分の争いや、不動産の共有者が多くなると発生するトラブルなどのリスクを防ぐために、遺産分割協議書を作成する必要があります。まずは...

税金:相続税

相続税は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に所轄税務署に申告して、一括で納税します。

ただし、被相続人から受け取る遺産が基礎控除額の「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えなければ、納税の必要はありません。

名義変更に関する注意点

生前に名義変更を行うにあたっての注意すべき点を解説します。

親が認知症になると名義変更が困難になる

親が年齢を重ねることで認知症になってしまうことがあります。もし親が認知症になってしまったら、成年後見制度の利用を検討するようにしましょう。

認知症などの判断能力が低下した人を保護する制度で、任意後見制度と法定後見制度の2つがあります。

任意後見制度
認知症などで判断能力が低下する前に後見人を決めて代行してもらいたい事務内容をあらかじめ契約しておく制度
法定後見制度
認知症などで判断能力が低下した後に後見人を定めて代理業務を行うことができる制度

本人の症状によって軽い順から、補助、補佐、後見の3つに分けられています。

親の家を相場より安く買取る名義変更の場合はみなし贈与税が課税される

不動産を相場よりも低い価額で譲り受けた場合、みなし贈与と扱われることがあります。相場より低い価格に明確な基準があるわけではなく、一般的には、市場価値の評価額が指標となります。

名義変更をした場合にかかるその他の税金

名義変更の際の登記手続きには、登録免許税を納める必要があり、また、売買契約書などには収入印紙を貼付する必要があります。

登録免許税

不動産登記に際してかかる税金は、法務局に支払わなければなりません。以下の登録免許税がかかります。

売買の場合
不動産の固定資産税評価額×売買する共有持分の割合×2.0%
※軽減税率の決まりもありますので、司法書士に確認するようにしましょう。
相続の場合
不動産の固定資産評価額✕被相続人の共有持分の割合✕0.4%
※免税の決まりもありますので、司法書士に確認するようにしましょう。

印紙税

売買契約書などの一定の文書を作成した際に課税される税金のことをいいます。コンビニや郵便局で収入印紙を購入して、売買契約書などに貼付します。

共有持分の贈与税を安くするには

贈与税の課税方法は、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの制度があります。

暦年課税制度を利用した持分の贈与

暦年課税制度を利用する場合は、贈与するにあたって基礎控除額として110万円が非課税となり、非課税を超える分に対して10%〜55%の税率をかけた後、税率に応じた控除額を差し引いた金額が課税されます。

3,000万円を超えると55%の税率となり、このように贈与の対象物の価額が高い場合には、それに伴い税金も高額になりますので、暦年課税を利用しない選択が望ましいといえます。(※一般贈与財産の場合)

参照元:贈与税の計算と税率(暦年課税)

相続時精算課税制度を利用した持分の贈与

相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度を利用した場合は、生前贈与について2,500万円までを非課税とし、非課税額を超えると一律20%の贈与税が課税されます。また、贈与者が亡くなったときには、生前贈与分と合わせて相続税として課税されることになります。

贈与者は、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母または祖父母、受贈者は、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の者のうち、子や孫とされています。

一度この制度を選択すると、暦年贈与に変更することができなくなりますので注意が必要です。

まとめ

親から子へ共有持分の譲渡がなされた場合や、相続により承継があった場合の注意点などを解説してきました。

名義変更を行うにあたって、売買契約書、贈与契約書や遺産分割協議書の内容に不備がある場合、修正や再提出が必要になりますので、本記事を参考にして正確に作成するようにしましょう。

また、親から子への持分の売買の場合には、譲渡所得税や贈与税がかかり、相続であれば相続税がかかります。

名義変更や納税の手続きを間違いなく行うには、弁護士・司法書士・税理士等の専門家に相談して進めることが確実といえるでしょう。

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監修者

佐藤知江 司法書士

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司法書士晴色(はるいろ)事務所の代表。当事者の気持ちに寄り添いながら、解決までの道を全力で伴走するスタイルで執務にあたっている。

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