共有名義とは
共有名義とは、複数人で1つの不動産を所有している状態を指します。
この記事で使用する専門用語を定義します。
共有者 | 不動産を共有している人 |
---|---|
共有持分 | 共有不動産に対して各共有者が持つ割合的な所有権 |
持分割合 | 各共有者が持つ共有持分の割合。2分の1など分数の形で表す |
共有名義については以下の記事で分かりやすく解説しておりますので、詳しく知りたいという方は参考にしてください。

共有不動産のリスク6選|共有状態はなるべく早く解消しよう
共有名義の不動産には、所有しているだけで様々なリスクがあります。共有不動産のリスクを回避するには、共有状態を解消する以外に有効な手だてはありません。
この記事では、不動産の共有状態を回避する方法を余すことなく解説しますので、安心して読み進めてください。
いち早く共有状態の解消方法が知りたいという方は「共有不動産の共有状態の解消方法6選」へ読み飛ばしましょう。
それでは共有名義の不動産が抱えるリスクを解説していきます。
リスク① 自由に売却できない
共有名義のままだと、共有者は不動産全体を自由に売却できません。
共有不動産全体を売却するためには、他の共有者全員から合意を得る必要があるからです。
このことは民法251上で定められており、以下が実際の条文です。
第251条
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
つまり、共有者のうち1人でも売却に反対していれば、不動産全体の売却は不可能です。
リスク② 自由に貸し出せない
共有名義のままだと、共有者は不動産を第三者へ自由に貸し出すことができません。
共有不動産を賃貸利用するには、共有者の共有持分の過半数から合意を得る必要があるからです。
例えば、兄弟3人で不動産を「3分の1」ずつ共有している場合、不動産を賃貸利用するためには、兄弟のうち少なくとも2人以上が合意している必要があります。兄弟2人の共有持分を合計することで持分割合が「3分の2」となり、過半数を満たし賃貸活用が可能になるからです。
このことは民法252条で定められており、以下が実際の条文です。
第252条
共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
リスク③ 自由にリフォームできない
共有名義のままだと、共有者は不動産に対して自由にリフォーム工事が行えません。
先ほどの賃貸利用と同様、軽微でないリフォーム工事にも、共有者の共有持分の過半数から合意を得る必要があるからです。
共有者間で意見が対立することで、適切なタイミングでリフォーム工事が行えず、不動産の価値が低下するケースもあります。
リスク④ 子どもや孫がトラブルに巻き込まれる
不動産の共有状態を放置していることで、将来的に自分の子どもや孫がトラブルに巻き込まれる可能性があります。
共有者のうち誰かが死亡して、複数の相続人へ持分が受け継がれる度に、共有持分が細切れになっていき、合意形成が困難になるからです。
例えば、度重なる相続によって10人以上で共有している不動産の場合、不動産全体を売却しようと思ったら、10人の意見を一致させる必要があります。
つまり、不動産の共有関係をそのままにしておくことで、自分の子どもや孫に面倒事を押し付けることになりかねません。
リスク⑤ 固定資産税がかかり続ける
対象の物件に住んでいなくても、不動産の各共有者は固定資産税を払い続けねばなりません。
共有不動産にかかる固定資産税は、共有者全員が持分割合に応じて納税する義務を負っているからです。
このことは地方税法第10条にて定められており、以下が実際の条文です。
(連帯納税義務)
第十条 地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第四百三十六条、第四百三十七条及び第四百四十一条から第四百四十五条までの規定を準用する。
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。引用元:e-Gov「地方税法」
具体的には、毎年4~6月ごろに共有者のうち代表者1人に対して「納税通知書」が送られてきます。代表者は納税を済ませた後に、他の共有者へ持分割合相当の金額を請求できます。
そのため、対象の物件に住んでいない場合でも、物件に住んでいる他の共有者から固定資産税の支払いを請求される可能性があります。
リスク⑥ 赤の他人との共有状態になることもある
他の共有者が持分を第三者に売却することで、あなたが赤の他人と共有関係になる可能性もあります。
不動産の共有者は各自の持分のみであれば自由に売却でき、他の共有者が赤の他人に持分を売却することも可能だからです。
赤の他人との共有状態は、共有者同士で意思疎通が図れないので不動産の売却や活用が非常に困難になります。
また、あなたが対象の物件に住んでいる場合は、赤の他人から急に家賃を請求されるリスクもあります。
赤の他人との共有状態を解消する方法は以下の「赤の他人との共有状態になっている場合」を参考にしてください。
共有不動産の共有状態の解消方法6選
ここからは共有状態の解消方法を6つご紹介します。
自分に合った方法が見つかったら、以下の記事で「共有解消までの流れ」や「必要書類」について確認しましょう。

方法① 共有者全員の合意のもと共有不動産全体を売却する
共有者全員の合意のもと不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて各共有者に分配することで、共有状態を解消できます。
この共有状態の解消方法を「換価分割」と言います。
具体例をもとに説明します。
換価分割の具体例
- 市場価格5,000万円の共有不動産
- 夫婦で不動産を「2分の1」ずつ共有
- 共有不動産全体を市場価格通り「5,000万円」で売却
このとき、売却によって得た「5,000万円」を夫婦で「2,500万円」ずつ分配します。
メリット
- 相場通りの価格で不動産を売りに出せる
- 共有不動産とはいえ、全体として売却するので、通常の不動産売却になります。
そのため、一般市場で取引される相場に近い価格で共有不動産を売りに出せます。 - 全員の手元に現金が残るので公平
- 共有者全員の手元に持分割合に応じた現金が入るため、比較的公平感のある解消方法です。
デメリット
- 不動産を手放すことになる
- 不動産全体を売却するため、思い入れのある不動産であっても手元に残すことができません。
- 他の共有者を説得しなければならない
- 共有者全員の合意を得られなければ、共有不動産を全体として売却できないため、換価分割での共有解消は行えません。
こんな人におすすめ
- 他の共有者と足並みをそろえて売却を進められる方
- 相場通りの金額で不動産を売却したい方
方法② 共有者間で持分を売買して共有持分をまとめる
共有者の誰か1人が不動産を単独所有し、その他の共有者に持分割合に応じた金額(代償金)を支払うことで、共有状態を解消できます。
簡単に言えば、共有者のうち1人が他の共有者の持分を買い取るという方法です。
この共有状態の解消方法を「代償分割」と言います。
具体例をもとに解説します。
代償分割の例
- 市場価格5,000万円の共有不動産
- 夫婦で不動産を「2分の1」ずつ共有
このとき、夫が不動産を取得するのであれば、妻に対して「2,500万円」の代償金を支払います。
もし共有状態の解消が一番の目的であったとしても
「なるべく高く売りたい」「なるべく安く買い取りたい」
と思いますよね。
代償分割を行う際の共有者間での交渉術は以下の記事を参考にしてください。

メリット
- 単独名義となれば不動産を自由に活用できる
- 共有者のうち誰か1人に資金的な余裕があれば、他の共有者へ代償金を支払うことで、共有不動産を単独所有できます。
不動産が単独名義となれば、当然その所有者が好きなように不動産全体を活用できます。 - まとまった現金を手に入れられる
- 共有持分を手放す共有者には、持分割合に応じた現金が手元に入ります。
デメリット
- 共有者の誰かに代償金の支払い能力がないと行えない
- 不動産の取得者が他の共有者へ代償金を支払う必要があるため、共有者のうち誰か1人に資金的な余裕がなければ、代償分割での共有解消はできません。
- 共有者間で取引価格を巡ってトラブルになる
- 共有不動産の取得者が支払う代償金は、共有者間の話し合いで決定するため、不動産価格を巡って共有者間トラブルになることもあります。
こんな人におすすめ
- 代償金を支払ってでも不動産を単独所有したい方
- 自分の持分を手放し、まとまった現金を手に入れたい方
方法③ 共有名義の土地を物理的に切り分ける
共有名義の土地を「分筆登記」によって物理的に切り分けることで、各共有者が単独で所有する複数の土地となり、共有状態を解消できます。
1つ(1筆)の土地を、複数の土地に切り分ける登記手続き。
この共有状態の解消方法を「現物分割」と言います。
ただし、建物は物理的に切り分けられないため、共有不動産に建物が含まれている場合は現物分割による共有状態の解消はできません。
具体例をもとに解説します。
現物分割の具体例
- 合計面積100㎡の共有地A
- 夫婦で共有名義の土地を「2分の1」ずつ共有
このとき、共有地Aを「50㎡の土地X」と「50㎡の土地Y」に切り分け、それぞれ夫と妻で単独所有します。
現物分割については以下の記事で詳しく解説しております。

メリット
- 共有者全員が土地を自由に活用できる
- 分筆登記で切り分けたそれぞれの土地は各共有者が単独所有する土地となるため、それぞれが自由に活用できます。
- 共有者間で別々の方法で土地を活用できる
- 共有者間で土地の活用方法について意見が分かれている場合でも、各自が別々の用途で好きなように土地を活用できます。
デメリット
- 土地の利用価値が低下する可能性がある
- 分筆登記によって「狭くなりすぎる」「いびつな形状になる」ような場合、土地の使い勝手が悪くなり、利用価値が低下する可能性があります。
- 建物が建てられなくなる可能性がある
- 建築基準法上、道路に2メートル以上接していない土地には原則として建物が建てられません。
そのため、分筆後に道路と接しない土地には、新築住宅を建てて居住する等の活用はできません。
こんな人におすすめ
- 共有者間で土地の活用方法について意見が割れている方
- 建築基準法の制限を受けずに分筆できる土地を持っている方
方法④ 共有物分割請求訴訟により強制的に共有状態を解消する
共有物分割請求訴訟とは裁判所を通して、他の共有者に共有解消を求める方法です。
共有物分割請求訴訟を行うと、裁判所が強制的に共有状態の解消方法を決定するため、他の共有者の合意なく共有状態を解消できます。
具体的な解消方法は前述した、
以上の解消方法から適切な方法を裁判所が決定します。
共有物分割請求訴訟については以下の記事で解説しておりますので、詳しく知りたい方は参考にしてください。

メリット
- 共有者間で意見が対立していても共有解消できる
- 先述の通り、共有物分割請求訴訟では、他の共有者の合意がなくとも共有解消できるため、共有者間で意見が対立している場合にも有効な手段です。
- 共有状態の解消方法に納得感がある
- 国家資格を持つ不動産鑑定士による適正な鑑定額に基づいて、裁判所が判断を下すため、解消方法に納得感があります。
デメリット
- あなたの望まない解消方法になる可能性がある
- 裁判所が中立の立場から、最適な解消方法を決定するため、自分が望む解消方法になるとは限りません。
判決の内容によっては、不動産全体が競売に出されて、安価で落札されてしまう可能性もあります。 - 弁護士費用がかかる
- 一般の個人で裁判手続きを進めるのは困難であり、手続きを弁護士に依頼することとなるため、「30万円~100万円」程度の弁護士費用が発生します。
- 共有解消に時間がかかる
- 裁判手続きに最短で半年、長ければ数年単位で期間を要します。
こんな人におすすめ
- 裁判所による公正な判断に基づいて共有状態を解消したい方
- 他の共有者との関係が悪化しており訴訟を起こしても構わない方
- 長期にわたって他の共有者と争う心構えのある方
方法⑤ あなた自身の持分を放棄する
あなた自身の持分を放棄することで、あなただけが共有関係から抜け出せます。
この共有状態の解消方法を「持分放棄」と言います。
持分放棄を行った場合、あなたの共有持分は他の共有者へ帰属(所有権が移る)されます。
このことは民法255条にて定められており、以下が実際の条文です。
第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
持分の「放棄」と聞いて、何にもしなくても楽に共有関係から抜け出せるような印象を持つかもしれませんが、実際は楽ではありません。
持分放棄するために「持分移転登記」を行う必要があるのですが、この登記申請は他の共有者と共同で行わねばならないからです。
他の共有者と関わらずに共有関係から抜け出したい方は、次項の「あなた自身の持分のみを第三者に売却する」を参考にしてください。
メリット
- 共有状態を解消できる以外にメリットはない
- 持分放棄を行った人には何の対価も得られないため、財産を処分する方法としてのメリットはありません。
デメリット
- 他の共有者と協力して手続きを行わねばならない
- 共有者間の関係が悪化している場合でも、他の共有者と協力して登記申請を行わなくてはなりません。
そもそも共有者同士で協力できるのであれば、他の方法で共有状態を解消したほうがよいでしょう。 - 現金が手元に入らない
- あなたの持分を放棄したところで、あなたの手元に現金は一切入ってきません。
- 他の共有者に贈与税がかかる
- 持分放棄を行うとあなたから他の共有者への共有持分の贈与とみなされて、他の共有者に贈与税が発生します。
こんな人におすすめ
資金的余裕があり共有持分を現金化することに興味がない方
方法⑥ あなた自身の持分のみを第三者に売却する
あなた自身の持分のみを他の第三者に売却することで、あなただけが共有関係から抜け出すことが可能です。
あなたの共有持分は、あなたの完全な所有物であり、他の第三者へ自由に売却できるからです。
ただし、共有持分のみを買い取っても不動産を自由に活用できないため、一般の個人や一般の不動産屋はまず買い取りません。
一方、共有持分を専門に取り扱う買取業者であれば、共有不動産の豊富な活用ノウハウを有しているため、あなたの持分のみでも買い取ってもらえます。
優良な共有持分買取業者の選び方は以下の記事で詳しく解説しておりますので、気になる方は参考にしてください。

弊社でも共有持分のみの買取で、共有解消のお手伝いをさせて頂いております。お困りの方はお気軽にご相談ください。
メリット
- 他の共有者と一切かかわらずに共有関係から抜け出せる
- 他の共有者の合意を得なくても、あなたの持分を自由に売却できます。
そのため、共有持分買取業者なら、他の共有者と一切かかわらずに共有関係から抜け出せます。 - どの方法よりも最短で共有状態を解消できる
- 共有持分買取業者であれば、業者が買手となり、直接あなたの持分を買い取ります。
そのため、あなたが買取業者の査定額に納得できれば、すぐにでも共有関係から抜け出せます。 - 買取後もトラブルの心配がない
- 一般の不動産屋は共有持分のみの取り扱いに慣れておらず、あなたの持分を買い取った後に、他の共有者へ強引な交渉を持ち掛けてトラブルを起こす可能性があります。
一方、共有持分買取業者であれば、共有者間の話し合いに慣れているため、円滑に交渉を進めトラブルを起こしません。
デメリット
- 買取価格が相場より安価になる
- 共有持分買取業者は買い取った共有不動産を再活用することで利益をあげているため、買取後に他の共有者と交渉を行う必要があります。
その結果、共有者との交渉に時間や費用がかかり、その分市場相場より安価での買取となります。
こんな人におすすめ
- 他の共有者と関わらずに共有関係から抜け出したい方
- 最短で共有状態を解消したい方
- 楽に共有関係から抜け出したい方
【ケース別】特殊な状況下で不動産の共有状態を解消する方法
ここまで紹介してきたのは、あくまで基本的な共有状態の解消方法です。
ですが、時には特殊な状況によって、ここまで紹介してきた解消方法が使えない場合も考えられます。
ということで、ここからは以下のような特殊なケースにおける共有状態の解消方法について解説していきます。
他の共有者が認知症を発症した場合
他の共有者が認知症を発症し、判断能力を失ったと診断されると、その方は売買契約等の法律行為が行えなくなり、結果的に不動産の共有解消が困難になります。
他の共有者が認知症を発症した場合は「成年後見制度」を活用しましょう。成年後見制度を活用すれば、判断能力を持たない方に代わって「成年後見人」が不動産売買等の法律行為を代理することができ、共有状態の解消が可能になるからです。
成年後見制度に基づき、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人の代わりに、法律行為(財産管理や売買契約等)を行う代理人のこと。
成年後見制度の利用を検討している方は、以下の相談先へ相談することがおすすめです。
- 各市区町村の地域包括支援センター
- 地域の社会福祉協議会
- 地域の地域包括支援センター
- 地域の法テラス
また、成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。
上記の2つは認知症の進行度合い(判断能力があるかどうか)によってどちらを活用できるかが異なります。
判断能力があるうちは「任意後見制度」
認知症の進行状況が軽度で、他の共有者に判断能力があるうちは「任意後見制度」を活用しましょう。
本人に判断能力があるうちに、本人自らが選んだ人を成年後見人(任意後見人)とする制度。
任意後見制度では、過去に破産や後見人を解任されたことがある人を除き、本人が信頼できる人を任意後見人に選定できます。
具体的な任意後見制度の手続きは、公証人役場で「任意後見人に選ばれた人」と「本人」で任意後見人契約を締結します。
任意後見人契約を締結する際は、任意後見公正証書を法務局で登記する必要があります。契約書の作成や申請手続きを専門知識のある弁護士や司法書士に相談しましょう。
他の共有者に判断能力があるうちに、任意後見人をたてることで、将来のリスクに備えることが可能です。
判断能力が失われた後は「法定後見制度」
認知症の進行状況が重度で、すでに他の共有者の判断能力が失われている場合は、「法定後見制度」を活用しましょう。
本人の判断能力が低下し、契約や財産管理に不都合が生じはじめた場合に、家庭裁判所が成年後見人(法定後見人)を選定する制度。
両制度の違いは、現状の問題を解決するか、将来の不安を解決するかという解決したい問題の違いといえます。
法定後見人は本人の親族だけでなく、弁護士や司法書士も選ばれます。
具体的な法定後見人制度の手続きは、本人の家族や親族が家庭裁判所に審判の申立てを行います。
申立て自体は個人でも行えますが、自分で行えるか不安な方は弁護士や司法書士等の専門家へ相談しましょう。
共有者間で離婚した場合
夫婦で不動産を共有していて、離婚が成立した場合、共有不動産は「財産分与」に基づいて分割します。
財産分与
婚姻期間中に夫婦共同で築いた財産(共有財産)を、離婚に伴って分配する制度(民法768条1項)。
財産分与に伴って共有不動産を分割する場合、持分割合に関係なく、夫婦で折半となるのが一般的です。
共有不動産を夫婦で折半する方法を3つに分けて解説していきます。
共有財産の価値を均等に折半する
共有財産全体で見たときに価値が均等になるように折半します。
この方法を「現物分割による財産分与」と言います。
具体例をもとに解説します。
共有財産は「5,000万円の共有不動産」「4,000万円の預貯金」「1,000万円の自動車」
上記の例で、夫が共有不動産を単独所有するのであれば、
- 夫 「5,000万円の共有不動産」=5,000万円
- 妻 「4,000万円の預貯金」+「1,000万円の自動車」=5,000万円
このように価値を均等に折半することが可能です。
均等にならない分を「代償金」で清算する
上述した「現物分割による財産分与」のように、共有財産をきれいに折半できるとは限りません。
このような場合、均等にならない分を現金(代償金)で清算することで共有財産を折半することが可能です。
この方法を「代償分割による財産分与」と言います。
具体例をもとに説明します。
共有財産は「5,000万円の共有不動産」「4,000万円の預貯金」
上記の例で、夫が共有不動産を単独所有するのであれば、夫から妻に対して代償金「500万円」を支払うことで、
- 夫 「5,000万円の共有不動産」-「支払った代償金500万円」=4,500万円
- 妻 「4,000万円の預貯金」+「受け取った代償金500万円」=4,500万円
このように価値を均等に折半することが可能です。
代償分割による財産分与では、夫婦のどちらかが、現状のまま家に住み続けられるメリットがあります。
不動産全体を売却し現金を折半する
離婚に伴って、今まで住んでいた不動産を手放したいという場合は、不動産全体を売却して売却代金を夫婦で折半します。
この方法を「換価分割による財産分与」と言います。
具体例をもとに解説します。
換価分割による財産分与の例
- 市場価格5,000万円の共有不動産
- 不動産全体を市場価格通りの「5,000万円」で売却
この場合、売却により得た「5,000万円」を夫と妻で「2,500万円」ずつに折半します。
換価分割による財産分与では、共有不動産を現金化して分与するので、どちらが不動産を所有するかでトラブルになる心配がありません。
複数の相続人で遺産相続を行う場合
あなたの親族が亡くなり、相続が発生した場合、相続不動産が共有名義となることを回避するためには「遺産分割協議」を行いましょう。
相続人(遺産を受け継ぐ人)全員で話し合い、遺産(不動産)の相続方法を決定すること。
相続人全員で遺産分割協議を行うことで、
- 相続人のうち1人が不動産を単独名義で相続する
- 不動産全体を売却し、代金を分配して相続する
このような相続方法を指定できます。
亡くなった方が遺言書を用意している場合でも、相続人全員で合意が得られれば、合意の内容に沿って不動産を相続できます。
先述の通り共有名義の不動産にはリスクが存在するため、なるべく相続人間の話し合いで共有名義を回避しましょう。
相続後でも遺産分割協議をやり直せる場合もある
中にはすでに共有名義で不動産を相続してしまった人もいるのではないでしょうか。
実は共有名義として相続が完了していても、遺産分割により、現状の共有不動産を単独名義で登記しなおせる場合があります。
具体的には
- 相続時に遺産分割協議を行っていない
- 相続時に法定相続分に基づき不動産を相続した
以上の前提条件が必要です。
民法上定められている相続割合の目安
この方法には専門知識が必要になるため、遺産分割協議をやり直す際は、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
他の共有者が行方不明の場合
他の共有者が行方不明の場合、合意形成が取れないため共有状態の解消が困難になります。
調査しても他の共有者の所在が判明しない場合は、「不在者財産管理人」を選定することで、共有状態を解消できるかもしれません。
行方不明者の代わりに、財産の管理や処分を行う代理人。
不在者財産管理人の選定は、所轄の家庭裁判所へ申請が必要です。また、不在者財産管理人に認められるのは保存・利用・改良等の「管理行為」のみであり、実際に財産を処分する「処分行為」を行う場合は家庭裁判所の許可が必要となります。
参照元:国税庁 | 不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合の申告
不動産の共有者が個人で申請することも可能ですが、自分で申請できるか不安な方は、司法書士や弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。
他の共有者の生死が不明の場合
他の共有者の行方が分からず、7年以上生死不明の場合は、所轄の家庭裁判所へ「失踪宣告」を申し立てましょう。
行方不明者の生死が7年以上不明な場合に、その行方不明者を法律上死亡したとみなす制度。
失踪宣告が認められれば、通常の死亡時と同様に、行方不明者の持分を相続人が受け継げるようになります。
失踪宣告の申立ては個人で行うことも可能ですが、手続きを進められるか不安な方は司法書士や弁護士等の専門家へ相談しましょう。
利害関係のある個人との共有状態になっている場合
利害関係のある個人との共有状態となっている場合は、早めに共有状態を解消したほうが良いでしょう。
先述の通り、あなたが対象物件に住んでいる場合は、他人同然の共有者からいつ家賃の請求が来てもおかしくないからです。
しかし、顔も知らないような共有者同士で、協力して共有状態を解消することは困難でしょう。
このような場合は、共有持分を専門に扱う買取業者へ相談することをおすすめします。共有持分専門の買取業者であれば、他の共有者と一切かかわらずにあなただけ共有関係から抜け出せるからです。
弊社でも共有持分のみの買取を行っており、共有関係解消のお手伝いをさせて頂くことが可能です。赤の他人と共有状態にあり、リスクを抱えている人はお早めにご相談ください。
共有持分専門の買取業者ならどんなパターンでも共有解消可能
ここまで、特殊なケースも交えて、共有状態の解消方法を解説してきました。
実は、共有持分を専門に取り扱う買取業者にあなたの持分を買い取ってもらえば、ご紹介してきたどんなケースであっても、共有状態を解消できます。
どのような状況であっても、あなたの持分はあなたの所有物であり、持分のみを売却することで、あなただけが共有関係から抜け出せるからです。
また弁護士と連携している共有持分買取業者であれば、持分の売却だけでなく、共有者間の面倒なトラブルについても相談できます。
以下の記事で、共有持分買取業者の選び方や、弁護士と連携している等について解説しておりますので、参考にしてください。

弊社でも弁護士等の士業と連携して、共有持分のみの買取を積極的に行っておりますので、不動産の共有関係でお困りの方は是非ご相談ください。
また、共有持分買取業者の選び方について知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

まとめ
この記事では、共有不動産の共有状態を解消する方法を網羅して、分かりやすく解説してきました。
記事内でお伝えした通り、共有名義の不動産には様々なリスクが存在します。
共有名義のリスクを回避するためには不動産の共有状態を解消する他に有効な手だてはありません。
しかし、本記事で解説してきた共有状態の解消方法から、あなたにあった方法を選ぶことで、後悔なく共有不動産のリスクを回避することができます。
不動産の共有状態でお困りの方は、共有持分専門の買取業者に持分のみの買取を依頼することもおすすめです。
弊社でも、あなたの持分を買い取ることで、共有関係解消のお手伝いができます。不動産の共有関係でお困りの方はお気軽にご相談ください。