共有状態を解消する全てのパターン別に「流れ」や「手順」を完全網羅

共有名義不動産

「離婚に伴い、夫婦共有名義の不動産の共有状態を解消したい」
「土地を兄弟の共有名義相続したが、活用できないので共有状態を解消したい」
このような悩みを抱える方が多数います。

なぜなら、共有名義の不動産は管理や処分に共有者との話し合いが必須であるため、売却や相続でトラブルが起こりやすいからです。

実は、不動産の共有状態を解消する方法には、7つの種類があることをご存じでしょうか。
共有者間の希望によって、選ぶべき方法は異なります。

本記事では、7つの方法ごとに不動産の共有状態を解消するまでの詳しい流れを解説しています。
読み終えていただければ、ご自身のシチュエーションに応じた方法で、不動産の共有解消が可能です。

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  1. 共有状態の解消前に必要な2つの手順
    1. 共有者の調査
    2. 共有者全員で共有解消方法について話し合う
      1. 共有者全員の合意が必要な解消方法
      2. 特定の共有者との合意が必要な解消方法
      3. 共有者単独で可能な解消方法
  2. 方法1 「共有者全員の合意のもと不動産を全体売却」の流れ
    1. 共有者間で売却費用の負担割合を決める
    2. 複数の不動産仲介業者へ相談・査定依頼
    3. 媒介契約締結
    4. 売却活動
    5. 内覧
    6. 売買契約締結
    7. 引き渡し・決済
  3. 方法2 「土地の分筆登記」の流れ
    1. 土地家屋調査士に依頼
    2. 現地調査
    3. 分筆案の作成
    4. 分筆登記
    5. 所有権移転登記
  4. 方法3 「他の共有者の持分を買い取る」の流れ
    1. 買取価格の交渉
    2. 司法書士へ依頼
    3. 売買契約
    4. 決済
  5. 方法4 「自身の持分を他の共有者に売却」の流れ
    1. 売却価格の交渉
    2. 司法書士へ依頼
    3. 売買契約
    4. 決済
  6. 方法5 「持分放棄」の流れ
    1. 共有者全員に持分放棄の意思を伝える
    2. 内容証明郵便で持分放棄の意思を通知する
    3. 所有権移転登記を申請する
    4. 他の共有者が贈与税の申告を行う
  7. 方法6 「自身の持分を第三者へ売却」の流れ
    1. 専門の買取業者に査定を依頼
    2. 買取価格の提示・条件の調整
    3. 売買契約
    4. 所有権移転登記・決済
  8. 方法7 「共有者分割請求訴訟」の流れ
    1. 弁護士・司法書士に相談する
    2. 共有物分割協議を行う
    3. 地方裁判所に訴訟を申し立てる
    4. 裁判所から呼出状が送られてくる
    5. 裁判の口頭弁論に出席する
    6. 判決
      1. 現物分割
      2. 代償分割
      3. 換価分割
  9. 売却代金を受け取った人は確定申告が必要
  10. まとめ

共有状態の解消前に必要な2つの手順

不動産の共有関係を解消する前に必要な準備は以下の2つです。

  1. 共有者の調査
  2. 共有者全員で共有解消方法について話し合う

共有者の調査

まずは、共有者が誰なのか、確定させておく必要があります。
あらかじめ共有関係を明確にしておかないと、後に新たな共有者が判明し、売却手続きがやり直しになってしまうからです。

例えば、相続が繰り返された土地では、世代を繰り返すごとに共有者が増えており、誰と共有しているのか分からないこともあるでしょう。そのような場合には、登記事項証明書で共有者の確認が可能です。

登記事項証明書は全国にある法務局窓口または、オンライン上で誰でも取得できます。

法務省「オンライン申請」

共有者全員で共有解消方法について話し合う

共有者が明確になったら、共有関係の解消方法について共有者全員で話し合います。
他の共有者が合意するかどうかで、行える解消方法が異なります。

共有者全員の合意が必要な解消方法

民法上、共有者全員の合意で行える解消方法は以下の2つです。

以上の方法は、共有物(不動産)の変更行為に該当するため、共有者全員が合意する必要があります。

具体例
あなた、共有者B、共有者Cで不動産を共有している場合
上記の解消方法を行うには、BとCの合意を得る必要がある

特定の共有者との合意が必要な解消方法

以下の方法は、特定の共有者と合意して共有持分を売買する方法です。

共有者は各自の共有持分を自由に売却できます。
そのため上記の方法は、売買を行う共有者間で条件を整えることで行えます。

具体例
あなた、共有者B、共有者Cで不動産を共有している場合
上記の解消方法は、BかCどちらかと条件を整える必要がある

共有者単独で可能な解消方法

以下の方法は、各共有者が各自で行えます。

共有者同士の関係が悪く、合意形成を得ることが困難な方は上記の方法を検討してください。

方法1 「共有者全員の合意のもと不動産を全体売却」の流れ

共有名義の不動産を全体として売却するためには、共有者全員の同意が必要です。

この方法では、共有者全員の同意を得て不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配します。通常の不動産売却をするため、市場相場通りの金額で売却できます。

また、共有者全員の手元に持分割合に応じた現金が入るため、一番平等な解消方法と言えるでしょう。
そのため、共有者全員が不動産の現金化を希望しており、共有者同士で足並みをそろえて売却活動を行える人におすすめの方法です。

※ただし、令和5年4月1日より、共有者が所在不明の場合、裁判手続きで自分の持分だけでなく所在不明共有者の持分も譲渡できるようになります。

不動産全体を売却する実際の流れは以下の通りです。

  1. 共有者間で売却費用の負担割合を決める
  2. 複数の不動産仲介業者へ相談・査定依頼
  3. 媒介契約締結
  4. 売却活動
  5. 内覧
  6. 売買契約締結引き渡し・決済

共有者間で売却費用の負担割合を決める

不動産の全体売却は、一般の不動産業者へ仲介を依頼するため「仲介手数料」がかかります。

細かいところで言えば、売買契約書に貼付する「収入印紙代」や住宅ローンが残っている場合は「抵当権抹消登記費用」等もかかるでしょう。

これらの諸費用は、持分割合に応じて分配するのが一般的です。
ただ、共有者間で負担割合を決めるのであれば、事前に話し合う方がよいでしょう。
実際に費用を支払わねばならない段階で、共有者同士が揉めるのを未然に防ぐことができます。

複数の不動産仲介業者へ相談・査定依頼

複数の不動産仲介業者への査定依頼はとても重要です。

なぜなら査定金額も重要ですが、複数の不動産仲介業者を比較することで、「担当の営業マンが信頼できるか」という点を見比べる必要があるからです。
売却金額は最悪、購入希望者との交渉次第でコントロールできます。

しかし、担当の営業マンが売却に真剣に向き合ってくれなければ、買い手探しすらうまくいかないのです。

媒介契約締結

信頼できる不動産仲介業者を見つけたら、売却活動を正式に依頼する「媒介契約」を締結しましょう。
この媒介契約には種類があるので、簡単に説明します。

  • 一般媒介契約
    複数の不動産業者に仲介を依頼できる。
    不動産業者は売却状況を売主に報告する義務がない。
    自社で売却できるとは限らないため、不動産業者から営業活動を後回しにされることもある。
    複数の不動産業者に依頼して、一番良い条件で売れるまでじっくり検討したい方におすすめです。
  • 専任媒介契約(専属専任媒介契約)
    ※2つの媒介契約はほぼ同一であるため、まとめて解説します。
    契約を交わした1社以外に仲介を依頼できない。
    不動産業者には売却状況を売主に報告する義務がある。
    契約中であれば確実に自社で売却できるため、不動産業者に積極的に広告活動してもらいやすい。
    条件よりも、早さ重視で売却活動を行いたい方におすすめです。

売却活動

媒介契約を結んだ不動産業者が正式に仲介として不動産の売却活動を開始します。
ここから先は基本的に不動産業者主導で売却を進めてくれます。

具体的なプランを考えるのは不動産業者の仕事ですが、あなたの希望通りの売却を実現するためには、優先したいことや要望を明確に伝えることがとても大切です。

以下の4つに絞って伝えてみましょう。

  1. 希望の売却価格
  2. 希望の売却時期
  3. 優先したいこと(なるべく早く売りたい/なるべく高く売りたい等)
  4. 広告活動の手法(インターネット広告/新聞の折込チラシ等)

先に共有者間で上記について希望条件を話し合っておくと、スムーズに売却活動に入ることができます。

内覧

購入希望者が現れたら、内覧の日程を取り付けます。
内覧の前後で行わなければならないのは以下の3つです。

  1. 内覧前の清掃
  2. 内覧の対応
  3. 売買条件の交渉

購入希望者が現れたら、内覧対応はできる限りあなた自身で行いましょう。
実際に住んでわかる「物件の良いところ」は、あなたにしか伝えることができないからです。

また、内覧時は風呂場やトイレ、押し入れやベランダ等全て見せることになります。
物件の印象を左右するため、内覧前の清掃は欠かさずにしましょう。

内覧対応がうまくいくと、売買条件の交渉を行っていきます。
多くの場合で購入希望者からの『値下げ交渉』がされるので、どこまで許容するか共有者同士で決めておきましょう。

売買契約締結

買主が決まり、「物件の最終調査」「買主側の住宅ローンの事前審査」等が問題なく完了したら、いよいよ売買契約を買主と結びます。
多くの場合、売主と買主、双方の仲介担当者が不動産会社の事務所に集まり契約を行います。

売買契約前に共有者全員で以下の書類を準備しておきましょう。

  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 共有者全員の実印と印鑑登録証明書
  • 共有者全員の身分証明書(※住所が記載と異なる場合は住民票の写しが必要です。)

また、共有者のうち1人が代表して契約を行う場合は、上記に加えて他の共有者全員が記名押印した委任状が必要です。

引き渡し・決済

決済当日に買主から売主名義の口座へ購入代金が振り込まれます。
着金の確認が取れたら、登記を担当する司法書士が所有権の移転登記を行い、買主に物件の鍵を渡します。

また、引き渡し日に仲介手数料を不動産会社に支払います。
売買契約の際に手付金として仲介手数料の半額を支払っている場合は、残代金を支払います。

方法2 「土地の分筆登記」の流れ

分筆とは
1筆(1つ)の共有名義の土地を、持分割合に応じて分割し、複数の単独所有の土地にする方法です。
分筆後の土地はそれぞれ単独所有物となるため、各所有者が自由に処分したり、使用したりできます。

ただし、土地に建物が建っている場合、物理的に分けられないため分筆はできません。
また、分筆で土地が狭くなりすぎてしまうと、建築基準法上の制限がかかります。
そうなると、土地の市場価値が下がってしまう可能性があります。

そのため、建物が立っておらず、建築基準法上の問題なく分筆可能な土地を持っている人におすすめの方法です。

土地の分筆登記の流れは以下の通りです。

  1. 土地家屋調査士に依頼
  2. 現地調査
  3. 分筆案の作成
  4. 分筆登記
  5. 所有権移転登記

土地家屋調査士に依頼

土地の分筆手続きは土地家屋調査士に依頼します。
境界測量から図面の作成、分筆登記等の分筆に必要な手続きは土地家屋調査士に全て任せることができます。

相談の時点で、共有者の土地の利用目的について、担当者に相談しておくとスムーズに手続きを進めることができます。
また、報酬代金は事務所や土地の状況によって変わるため、相談の際に大体の金額を確認しておくとよいでしょう。

現地調査

まずは、分筆可能な土地であるかの調査が必要です。
土地家屋調査士が法務局や役所で公図や測量図、登記事項証明書を確認して調査を進めます。
同時進行で現地を調査し、境界が明らかでない場合は、自分と隣地所有者の立ち合いのもと境界確定測量が行われます。

基本は土地の共有者全員が立ち会いますが、代表者のみの立ち会いで済ませることも可能です。

分筆案の作成

土地家屋調査士が、調査や測量の結果に基づき、土地の分筆案を作成します。
分筆案は役所や隣地所有者に対する説明資料の役目も果たします。

共有者同士のトラブルを避けるために、分筆後の土地の形状や道路と接しているか等について、分筆案を確認しておきましょう。

分筆登記

ここまでの手続きが完了したら、分筆の登記を行います。
分筆登記の申請には以下の書類の用意が必要です。

  • 分筆登記の申請書
  • 代理権限証書(土地家屋調査士への委任状)
  • 境界確認書又は筆界確認書
  • 地積測量図
  • 現地案内図

上記の書類は、土地家屋調査士が用意してくれるので、実際は共有者の代表者が委任状に記名押印すれば、登記申請することが可能です。

所有権移転登記

分筆登記を行っても終わりではありません。
なぜなら、分筆登記は土地をいくつかに分けるだけの手続きであり、登記簿上では共有状態のままだからです。

共有関係を解消するためには、持分を交換するなどして土地の所有者を単独名義にする必要があります。

分筆後の所有権移転登記は司法書士に依頼しましょう。
所有権移転登記の申請には以下の書類の用意が必要です。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 登記済証または登記識別情報
  • 固定資産税評価証明書
  • 共有者全員の住民票
  • 共有者全員の印鑑証明
  • 委任状

ほとんどの場合、書類の作成は司法書士が代行してくれます。
そのため、持分の譲渡者が登記原因証明情報に署名押印を行い、共有者全員が委任状に署名押印することで、登記申請できます。

方法3 「他の共有者の持分を買い取る」の流れ

他の共有者が持つ共有持分を全て買い取ることで、対象の不動産をあなたの単独所有物とする方法です。
不動産を単独所有物にするため、誰の制限も受けず自由に活用できるようになります。

そのため、資金的に余裕があり、お金を払ってでも共有関係を解消したい人や、誰の制限も受けず不動産を自分の自由に活用したい人におすすめの方法です。

他の共有者の共有持分を買い取る流れは以下の通りです。

  1. 買取価格の交渉
  2. 司法書士へ依頼
  3. 決済

買取価格の交渉

他の共有者と交渉をして、共有持分の売却に同意をもらい買取の条件を決めます。
買取価格は共有者間の交渉次第で決まりますが、共有持分の本来価値より高い金額を提示された場合は考え直した方がよいでしょう。

※ただし、令和5年4月1日から、共有者が所在不明の場合、裁判手続きにより所在不明共有者の持分を買い取ることができる制度が始まります。

具体例
市場価値5,000万円の不動産
「2分の1」の共有持分の本来価値=2,500万円

司法書士へ依頼

買取条件を決めたら「売買契約書」の作成や、「所有権移転登記」の手続きを司法書士へ依頼しましょう。
司法書士への報酬金額の相場は5~10万円程と幅があります。
依頼する前に担当の司法書士へ大体の報酬金額を確認しておきましょう。

売買契約

共有者間での共有持分の売買であっても、正式な契約書を作成しなければなりません。
決済後に行う所有権移転登記に、売買契約書が必要となる場合があるためです。

契約当日に、司法書士が作成した売買契約書に売主、買主双方が署名捺印をし、契約成立となります。

決済

決済当日に購入代金を売主名義の口座へ「口座振込」または「現金」で支払います。
着金確認ができたら、司法書士が所有権移転登記を行い、買い取った共有持分をあなた名義に変更します。

所有権移転登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 代理権限証書(司法書士への委任状)
  • 売主買主の身分証明書
  • 買主の住民票の写し
  • 売主の印鑑証明書及び実印
  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 固定資産評価証明書

ほとんどの場合、書類の作成は司法書士が代行してくれます。
そのため、持分の売却者が登記原因証明情報に署名押印を行い、共有者全員が委任状に署名押印することで登記申請できます。

方法4 「自身の持分を他の共有者に売却」の流れ

他の共有者にあなたの共有持分を買い取ってもらうことで、共有関係から抜け出す方法です。
あなたは共有持分を現金化でき、買い手側の共有者からしても、不動産を単独所有化できるため双方にメリットがあります。

また、買い手側の共有者に「対象の物件にどうしても住み続けたい」等の事情があれば、強気に価格交渉を進めることも可能です。

そのため、なるべく高額で共有持分を現金化して、共有関係を解消したい人におすすめの方法です。

自身の共有持分を他の共有者に売却する流れは以下の通りです。

  1. 売却価格の交渉
  2. 司法書士へ依頼
  3. 売買契約
  4. 決済

売却価格の交渉

他の共有者と交渉して、あなたの共有持分の買取に同意をもらい売却の条件を決めます。
売却価格は共有者間の交渉次第で決まりますが、共有持分の本来価値より高い金額を提示してしまうと、トラブルになりかねないため気を付けましょう。

※ただし、令和5年4月1日以降は改正法により裁判所での共有物分割は価額賠償が創設されるため、裁判になると本来の価値が基準になると考えられるため注意が必要です。

具体例
市場価値5,000万円の不動産
「2分の1」の共有持分の本来価値=2,500万円

司法書士へ依頼

売却条件を決めたら「売買契約書」の作成や、「所有権移転登記」の手続きを司法書士へ依頼しましょう。
司法書士への報酬金額や登録免許税、契約書に貼付する収入印紙代は、売主と買主の双方が負担するのが原則ですが、当事者同士の話し合いで決めるケースが多いようです。

売買契約

共有者間での共有持分の売買であっても、正式な契約書を作成しなければなりません。
決済後に行う所有権移転登記に、売買契約書が必要となる場合があるためです。

契約当日に、司法書士が作成した売買契約書に売主、買主双方が署名捺印をし、契約成立となります。

決済

決済当日に売却代金を「口座振込」または「現金」で受け取ります。
着金確認ができたら、司法書士が所有権移転登記を行い、あなたの共有持分を買主名義に変更します。

所有権移転登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 代理権限証書(司法書士への委任状)
  • 売主買主の身分証明書
  • 買主の住民票の写し
  • 売主の印鑑証明書及び実印
  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 固定資産評価証明書

ほとんどの場合、書類の作成は司法書士が代行してくれます。
そのため、持分の売却者が登記原因証明情報に署名押印を行い、共有者全員が委任状に署名押印することで登記申請できます。

方法5 「持分放棄」の流れ

放棄された持分は持分割合に応じて他の共有者へと帰属される
自身の共有持分を放棄し、他の共有者へ分配する方法です。
持分放棄と聞いて「共有者と関わらずに済みそう」と考える人もいますが、そんなことはありません。
持分を放棄するためには、共有者全員で登記手続きを行う必要があるのです。

共有者と関わらずに共有関係を解消したい方は「専門の買取業者」に共有持分を売却するほうがよいでしょう。
買取業者であれば、他の共有者と一切かかわらずに、決済まで行ってくれるためです。
また、買い手を探す必要もないため、条件さえ合致すれば、共有持分をすぐにでも現金化できます。

専門の買取業者に共有持分を売却する流れは「方法6 「自身の持分を第三者へ売却」の流れ」で解説しておりますのでご参照ください。

共有持分を放棄する流れは以下の通りです。

  1. 共有者全員に持分放棄の意思を伝える
  2. 内容証明郵便で持分放棄の意思を通知する
  3. 持分権移転登記を申請する
  4. 他の共有者が贈与税の申告を行う

共有者全員に持分放棄の意思を伝える

持分放棄の意思を確実に伝えるためには、内容証明郵便で通知するのが基本です。
しかし、いきなり持分放棄の意思を伝える郵便が届くと、他の共有者が驚いてしまうかもしれません。
そのため、他の共有者と話せる間柄であれば、郵便を送る前に口頭で伝えておくとよいでしょう。

内容証明郵便で持分放棄の意思を通知する

通知した事実を公的に証明できる内容証明郵便を利用して、持分放棄の意思を伝えましょう。
後々になって、共有者間で言った言わないのトラブルになることを防ぐことができます。

所有権移転登記を申請する

共有者全員で所有権移転登記を行うことで、持分放棄が完了します。

所有権移転登記は司法書士へ依頼するとよいでしょう。
必要書類は以下の通りです。

  • 代理権限証書(司法書士への委任状)
  • 共有者全員の身分証明書
  • 持分譲渡者の印鑑証明書および実印
  • 持分取得者の住民票の写し
  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 固定資産税通知書
  • 登記原因証明情報(登記原因証書または、売買契約書等)

ほとんどの場合、書類の作成は司法書士が代行してくれます。
そのため、登記原因証明情報に持分を放棄した人の署名押印する、および、共有者全員が委任状に署名押印することで、登記申請できます。

他の共有者が贈与税の申告を行う

放棄された共有持分は、贈与とみなされ他の共有者に「贈与税」が発生します。
贈与税は他の共有者が各自で申告する必要があります。

贈与税の申告は所有権移転登記を行った翌年の2月1日~3月15日の間に行わなければいけません。
他の共有者と話せる間柄であれば、教えてあげるとよいでしょう。

方法6 「自身の持分を第三者へ売却」の流れ

自身の共有持分を第三者へ売却する方法です。
共有持分の売却は一般の不動産会社ではなく、専門の買取業者に依頼しましょう。

通常の不動産会社では、共有持分を取り扱っておらず、依頼しても断られるためです。
断られなかったとしても、取り扱った経験がないため、安値で買い取られることになります。

買取業者では、双方の条件が合致していればすぐに共有持分を現金化でき、買取までの間も共有者と関わらずに済みます。
そのため、共有者と関わらず、共有状態を解消したい方におすすめの方法です。
弊社でも共有持分の積極的な買取を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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自身の共有持分を第三者へ売却する流れは以下の通りです。

  1. 不動産仲介会社ではなく専門の買取業者に査定を依頼
  2. 買取価格の提示・条件の調整
  3. 売買契約
  4. 所有権移転登記・決済

専門の買取業者に査定を依頼

共有持分の売却は一般の不動産会社ではなく、専門の買取業者に依頼しましょう。
複数の買取業者へ査定依頼を行い、条件の良い業者を選ぶとよいでしょう。

買取価格の提示・条件の調整

査定結果が提示されたら、買取業者と条件のすり合わせを行います。
また、他共有者との関係が悪かったり、連絡が取れなかったりすると、買取価格が下がる傾向にあります。
共有持分買取後に買取業者が共有者との合意形成を得ることが困難であるためです。

売買契約

買取業者とあなたが条件に合意したら、日程を決めて売買契約を結びます。
多くの場合、契約は不動産業者の事務所で行います。

売買契約に必要となる書類は以下の通りです。

  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 身分証明書
  • 住民票の写し
  • 印鑑証明書および実印

以上の書類を用意できなくても代替方法があるので、担当者に相談しましょう。

所有権移転登記・決済

決済当日に売却代金を「口座振込」または「現金」で受け取ります。
着金確認できたら所有権移転登記を行い、あなたの共有持分を買取業者名義に変更します。

所有権移転登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 代理権限証書(司法書士への委任状)
  • 身分証明書
  • 印鑑証明書および実印
  • 権利証または登記識別情報(不動産取得時に法務局より交付)
  • 固定資産税通知書
  • 登記原因証明情報(登記原因証書または、売買契約書等)

ほとんどの場合、書類の作成は司法書士が代行してくれます。
そのため、売買の当事者が委任状に署名押印、売主が登記原因証明情報に署名押印することで、登記申請できます。

方法7 「共有者分割請求訴訟」の流れ

共有物分割訴訟
共有者間で話し合いがまとまらなくても「共有物分割請求訴訟」で、共有関係は解消できます。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通して他の共有者に共有関係の解消を求めることです。

ただ、共有物(不動産)の分割方法は裁判所の判断となるため、あなたが望む結果にならない場合もあります。

「分割請求訴訟」の流れは以下の通りです。

  1. 弁護士に相談する
  2. 共有物分割協議を行う
  3. 地方裁判所に訴訟を申し立てる
  4. 呼出状が送付される
  5. 口頭弁論または答弁書の提出
  6. 判決
  7. 共有物の分割

弁護士・司法書士に相談する

まずは弁護士・司法書士に相談しましょう。
※共有物の価額が140万円以下の訴訟の場合は司法書士に依頼することができます。

今後の共有者間の話し合いや、裁判手続きは弁護士に全て任せられます。

また弁護士費用は、裁判によってあなたが得られる経済的利益の額によって決まります。

共有物分割協議を行う

法律上、訴訟を起こす前に共有者間での協議が必要です。
※令和5年4月1日以降は、協議が整わないときだけではなくて、協議ができないときも共有物分割請求訴訟が可能になります。

協議の方法は定められていません。
ほとんどの場合は、各共有者の弁護士を通してのやり取りとなります。

「協議の申入に共有者からの応答がない」「協議で話し合いがまとまらない」ようであれば、共有者の誰でも訴訟を申し立てられます。

地方裁判所に訴訟を申し立てる

共有物分割協議がまとまらないのであれば、いよいよ訴訟の申し立てとなります。
訴訟の申し立て先は共有不動産の所在地、または被告(訴訟を受けた人)側の住所地を管轄する地方裁判所もしくは、訴額が140万円以下であれば簡易裁判所です。

申し立てる際には以下の書類が必要となります。

  • 訴状(訴訟内容を記載した書面)の正本および副本
  • 収入印紙
  • 郵便料
  • 固定資産評価証明書
  • 全部事項証明書(登記簿謄本)

訴状は正本に収入印紙を貼付し、正本と副本と一緒に裁判所に提出します。いずれも記名押印が必要です。
副本は裁判所から他の共有者全員(被告)に送達されます。

収入印紙代と郵便料金については訴訟内容や裁判所によって異なるため、申立先への確認が必要です。

裁判所から呼出状が送られてくる

訴訟の申し立てから1か月程度で、裁判所から被告の共有者全員に対して「呼出状」が送られてきます。
原則、呼出状が送られた人は、書面に記載の裁判期日に裁判所へ出頭しなければなりません。

裁判期日に本人や弁護士が出席できない場合、代わりに「答弁書」で意見を述べることができます。

※答弁書
呼出状に同封されている書面。
裁判に関する認否や意見を記載することで、裁判への出席の代わりとなる。

裁判の口頭弁論に出席する

裁判期日に弁護士または本人が「口頭弁論」に出席します。

※口頭弁論
法廷で、当事者・利害関係人にその言い分を公平・平等に述べる機会

口頭弁論では、訴状の内容に間違いがないかを、裁判所が原告(訴訟を申し立てた人)に対して確認します。
他の共有者から反論がある場合や、再度事実確認が必要な場合は口頭弁論は何度でも行われます。

また、他の共有者が「口頭弁論への出席」「答弁書の提出」のどちらも行わなければ、あなたの主張がそのまま通ることもあります。

判決

口頭弁論または答弁書の内容を受け、共有物(不動産)の適切な分割方法を裁判所が決定します。

分割方法は裁判所判断であり、共有者全員が損する可能性もあります。
そのため、判決が下される前に共有者間で落としどころを見つけた方がよいでしょう。

具体的に、裁判所が下す分割方法は以下の3パターンです。

現物分割

現物分割とは
現物分割とは、不動産を分筆登記によって物理的に分割する方法です。
原則として共有物の分割方法は「現物分割」が優先されます。

ただし、建物は物理的に分けられないため現物分割を行うことはできません。
そのため、分割対象の共有不動産に建物が含まれている場合は、他の2つの方法のうちどちらかとなるケースが多数です。

※ただし令和5年4月1日以降は価額賠償による代償分割と並列的に規定されているため、必ずしも現物分割が優先とはなりません。

代償分割

代償分割とは
共有物を誰か1人の単独名義とし、他の共有者に対して共有持分に応じた「代償金」を支払うことで分割する方法です。

具体例
5,000万円の不動産を共有者Aと共有者Bで「2分の1」ずつ共有
不動産をAの単独所有とし、AがBに対して「2,500万円」を支払う

ただし、代償分割をおこなうためには、共有者に代償金の支払能力があることが必須です。
そのため、共有者全員に支払能力がない場合、次項で紹介する「換価分割」での判決が下されるケースが多数です。

換価分割

換価分割とは
共有物を競売にかけて得たお金を持分割合に応じて分配する分割方法です。
ただ、競売による落札相場は一般的な市場価値の5~7割程度であるため、共有者全員が金銭的な損失を被ります。

具体例
5,000万円の不動産を共有者Aと共有者Bで「2分の1」ずつ共有
不動産が競売により「2,500万円」で落札、AとBで「1,250万円ずつ」分配する

売却代金を受け取った人は確定申告が必要

不動産を売却して得た売却益には「譲渡所得税」がかかるため確定申告する必要があります。
不動産全体を売却した場合は共有者全員が確定申告の対象となります。

また、譲渡所得税の申告期限については、不動産を売却した翌年の2月16日~3月15日の間です。

まとめ

不動産の共有名義を解消する方法には、7つのパターンがあります。
大切なのは、自分に合った方法を選択することです。

しかし、共有名義の解消には多くの手続きが必要で、不動産知識のない人にとっては難しく感じると思います。
そのため、共有解消の際は弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

また、弁護士や司法書士に依頼しづらい場合は、経験豊富な不動産業者に相談することも有効な手段です。

弊社でも、弁護士と連携して他の共有者とトラブルにならない方法を提案しております。
不動産の共有関係でお困りの方は、お気軽にご相談ださい。

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監修者

井上佐知子 司法書士

プロフィールページへ
司法書士事務所神戸リーガルパートナーズ代表。
司法書士歴25年以上で幅広い司法書士業務を経験し、現在は国をまたいだ渉外関係業務を中心に、国内外から問い合わせを受けている。

◆保有資格・関連リンク
司法書士
家族信託コンサルタント
ファイナンシャルプランナー
【所属】
兵庫県司法書士会(会員番号998号)
成年後見センターリーガルサポート
NPO法人渉外司法書士協会
一般社団法人家族信託普及協会
一般社団法人神戸事業承継パートナーズ
一般社団法人Glocal Solutions Japan

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