共有持分放棄の登記手続きの方法と注意点

共有持分放棄の登記手続きの方法と注意点 共有持分

不動産が共有状態になっている場合、いろいろと面倒なことが発生します。そのようなとき、共有持分を「放棄」することによって共有関係から離れることができます。

「共有持分を放棄」とはどういうことなのか?
どのようにしたら有効に「放棄」できるのか?
放棄したら共有持分は誰のものになるのか?
放棄に費用はかかるのか?

今回は、上記のような「共有持分の放棄」についての疑問にお答えしていきます。

共有持分の放棄とは

まずは「共有持分の放棄」とはどういうことなのか、理解しましょう。

そもそも共有持分の放棄って何?

共有持分の放棄とは、不動産などの共有物の自分の持分権を一方的に「要らない」と宣言することです。共有持分を放棄したら、自分の持分権は失われて他の共有持分者のものとなります。

持分権を放棄した人は共有状態から離れますが、権利を失うので、その後に不動産を売却した場合などにお金を受け取ることもできなくなります。

民法上の共有持分放棄

民法では、共有持分放棄について以下のように定められています。

共有者の一人がその持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときはその持分は他の共有者に帰属する。民法255条

特に持分放棄の方法などについての規定もなく、放棄したら当然に他の共有持分権者に持分が移転すると書かれています。

当然ですが、もし相続人がいれば、そのまま相続人に持分は移転します。

放棄された持分権はどうなる?

共有持分権者が持分を放棄したら、その人の持分権はどうなるのでしょうか?

上記の民法の規定をみると「他の共有者に帰属する」と書かれているので、基本的には他の共有持分権者のものとなります。

他の共有持分権者が複数いる場合には、その持分割合に応じて帰属します。

3人で共有する不動産

例えば、4,000万円の土地があってAさんが2分の1、Bさんが4分の1、Cさんが4分の1ずつの持分を持っているとします。
このとき、Cさんが持分を放棄したら、Aさんに16分の3、Bさんに16分の1の持分が帰属します。

放棄された配分の帰属先

登記はどうなる?

不動産の共有持分権者は「登記」によって公示されています。
持分の放棄によって持分権者がかわったら、そのことを登記しなければなりません。

持分を放棄しても当然には登記内容は変更されないので、自分たちで申請をして登記の書き換えを行う必要があります。

共有持分を放棄した場合の登記について

実際の登記内容の例

共有持分権者が共有持分を放棄して登記をすると、登記簿謄本の「権利部」に以下のような表記が行われます。

権利部(甲区) (所有権に関する事項)
順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
所有権移転 平成25年7月3日
第1234号
原因 平成25年7月30日売買
共有者 東京都武蔵野市〇〇 〇丁目○番地の○
持分3分の2 鈴 木 一 郎
埼玉県川越市〇〇 〇丁目○番地の○
持分3分の1 佐 藤 太 郎
2 佐藤太郎持分全部移転 令和元年10月10日
第23456号
原因 令和元年10月10日持分放棄
所有者 埼玉県川越市〇〇 〇丁目○番地の○
持分3分の1 鈴木一郎

登記内容の解説

上記の登記簿の場合、もともと鈴木一郎さんと佐藤太郎さんの共有状態(鈴木さんが3分の2、佐藤さんが3分の1)になっています。

ところが佐藤太郎さんが令和元年10月10日にその持分を全部放棄したため、鈴木さんへと持分権が移転しています。
以後この不動産は、鈴木さんの単独所有物となります。

共有持分放棄の手順

誰かと不動産を共有している共有持分を放棄したい場合には、どのようにするのが良いのでしょうか?
手順をみていきましょう。

まずは共有者に通知を送る

共有持分の放棄は「単独行為」です。つまり自分一人でもできる行為なので、相手の同意は不要。
共有持ち分の放棄は「放棄する」と言えば有効です。

しかし、現実には共有者に通知しなければ登記もできず放棄したかどうか誰にも分かりません。
そこで、放棄の事実は共有者に告げなければなりません。

共有持分放棄を連絡

通知の方法について特に手続き的なルールはなく、口頭でも一応有効です。
しかし、口頭では証拠が残らず後々にトラブルになるおそれがあるので、通常では「内容証明郵便」を用いて通知します。
内容証明郵便には、放棄したい不動産の明細と「下記不動産の共有持分〇分の〇を全部放棄する」と書いておけば大丈夫です。

共有者と登記

共有持分を放棄したら、そのことを世の中に示すために登記を行う必要があります。

持分の放棄自体は単独行為ですが、登記は他の共有持分権者との共同で行わねばならないので注意が必要です。
もしも相手が放棄を拒絶したら、登記できません。

他の共有持分権者に登記を拒否された場合には「登記引き取り訴訟」を提起すると、裁判所命令で強制的に登記させることが可能です。
共有持分放棄にもとづく登記引き取り訴訟では、請求が棄却されることはない(負ける可能性がない)ので必ず登記を認めてもらえます。

ただし裁判をすると費用と手間がかかるので、相手に対し「争っても無駄である」と説明して任意の登記に応じるよう説得するのが良いでしょう。

持分放棄と贈与の違い

共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者のものとなります。
それならば、放棄は贈与と何が違うのでしょうか?

放棄は、放棄者が一方的に「要らない」と意思表示する単独行為です。単独行為なので相手の同意も要りません。
その自然な効果として他の共有持分権者に反射的に持分が移転しているだけです。
放棄すれば、共有相手は「要らない」と思っていても、強制的に共有持分を取得させられます。
また他の持分権者が複数いれば、その持分割合に従って放棄された共有持分が帰属します。
共有持分権者以外の人に持分を帰属させることはできません。

一方で、贈与はお互いの契約ですから、贈与者と受贈者双方の同意が必要です。
他の持分権者が納得していないのに強制的に贈与することは不可能です。
また贈与契約は一対一で行うので他の持分権者が複数いても、贈与の相手方以外の持分権者には持分が移転しません。
さらに共有持分権者以外の第三者へ共有持分を移転することも可能です。

このように、放棄と贈与は「単独行為」か「契約」かという点が大きく異なります。
放棄の場合相手の同意は不要ですが、贈与の場合には相手との話し合いやお互いの了解が必要となります。

税務上は贈与とみなされる可能性がある

上記は法律的な理解ですが、税務上の取扱いは法律と異なるケースがあるので注意が必要です。
共有持分を放棄した場合、他の持分権者に「贈与税」がかかる可能性があります。

共有持分放棄の帰属で贈与税

他の共有者に贈与税がかかる理由

贈与税とは、価値のあるものを贈与されたときに発生する税金です。贈与を受けた人は利益を得るので、その利益分について「贈与税」を払わねばなりません。

不動産の共有持分には不動産の割合分の価値があります。共有持分権者が持分権を放棄してその持分が自分のものになったら、その人は贈与を受けたのと同じ結果になります。

このとき税金がかからないとすると、共有物件の場合、誰もが放棄を選択することになり、贈与する人はいなくなるでしょう。そうやって「税金逃れ」が多発すると、不都合です。

そこで共有持分が放棄されて他の共有持分権者へ移転された場合にも、贈与と同じ取扱いになって贈与税がかかるのです。

贈与税の税率

共有持分が放棄されたとき、贈与税はどのくらいかかるのでしょうか?
贈与税の税率は、以下の通りです。

親や祖父母から子どもや孫への贈与

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

一般の贈与

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税には「基礎控除」があり、1年に110万円までの贈与分には贈与税がかかりません。

贈与税計算の具体例

たとえば3,000万円の物件があってAさんが3分の2、Bさんが3分の1の共有持分を持っていたとします。
AさんとBさんは兄弟です。
Bさんが3分の1の持分を放棄した場合、Aさんにどのくらいの贈与税がかかるのでしょうか?

Aさんへは1,000万円分の財産が移転しています。
基礎控除の110万円を引くと、890万円分が課税対象です。
この場合の贈与税率は「一般の場合」を用いるので、贈与税の税額は890万円×40%-125万円=231万円となります。

共有持分放棄にかかる登記費用

共有持分の放棄をしたら、持分権放棄の登記をしなければなりません。
登記をしなくても罰則はありませんが、持分権を放棄した事実を第三者に主張できないので、売却などの活用はできないままになります。
早期に登記をすべきです。

登記には費用がかかります。
以下でどのような費用がどのくらい発生するのか、みてみましょう。

登記費用の内訳

  • 登録免許税
    不動産の登記を申請するときには「登録免許税」がかかります。これは、国に支払う手数料のようなお金です。金額は「不動産の固定資産評価額の1,000分の20(2%)」です。
  • 住民票や印鑑登録証明書の取得費用
    不動産の登記をするには住民票や印鑑登録証明書が必要です。役所で取得するのにそれぞれ250~300円くらいかかります。
  • 固定資産評価証明書の取得費用
    不動産の登記には固定資産税評価証明書も必要です。役所で取得するのに250~300円くらいかかります。
  • 司法書士の費用
    登記申請を司法書士に依頼する場合には、司法書士の報酬が発生します。金額は依頼する事務所によっても異なりますが、3~5万円程度となるケースが多いでしょう。

登記費用

登記費用は誰が支払うのか

登記費用は、誰が支払うのでしょうか?

法律などで「どちらが負担すべき」というルールはありません。
ただ一般的には「放棄した人」が負担します。
自分から放棄しておいて「あなたが登記費用を支払え」というのは厚かましいからです。

もちろん相手が納得したら半額ずつの負担などにしてもかまいません。

登記費用計算の具体例

たとえば固定資産評価額が3,000万円、共有持分3分の1を移転する場合の登記費用を計算しましょう。

  • 登録免許税
    移転する持分の価値は1,000万円なので、登録免許税の金額は6万円となります。
  • 司法書士報酬
    司法書士に依頼して4万円の費用がかかったとしましょう。
  • 実費
    住民票等の取得のため1,000円がかかったとしましょう。

合計で10万1,000円が必要となります。
司法書士に依頼しなければ6万1,000円で済みます。

共有持分を放棄するときの必要書類

共有持分を放棄する人は、以下の書類を集める必要があります。

  • l登記識別情報通知(権利証)
    不動産を取得したときに受け取っている登記識別情報通知が必要です。昔不動産を取得された場合には「権利証」や「登記済証」として受け取っている可能性があります。そのどちらかを用意しましょう。
  • 印鑑証明書
    市区町村役場で印鑑登録証明書を発行してもらいましょう。もしも実印の登録をしていない場合には、先に印鑑登録を済ませる必要があります。発行後3か月以内のものが必要です。
  • 固定資産税評価証明書
    不動産が所在する市区町村役場で、不動産の共有持分に関する固定資産評価証明書を発行してもらいましょう。発行手数料は250~300円程度です。
  • 実印
    登録している実印を用意しましょう。
    本人確認資料
    運転免許証や健康保険証などです。

共有持分放棄処理

他の共有持分権者は、以下の書類を集める必要があります。

  • 住民票
    居住している自治体の市区町村役場で住民票を取得しましょう。取得費用が250~300円程度かかります。
  • 認印
    他の共有持分権者については実印が不要で、認印でかまいません。
  • 本人確認資料
    運転免許証や健康保険証など、本人確認資料を用意しましょう。

共有持分放棄と売却、どっちがお勧めか

共有関係を解消したい場合、上記のように「共有持分放棄」をすれば自動的に他の共有持分権者に共有持分を移転させて、自分は共有状態から離れられます。

しかし相手が登記の引き取りに応じなければ「登記引き取り訴訟」をしなければなりません。
また放棄したら一切お金は入ってこず、むしろ登記費用の数万円(ときには10万円以上)がかかるので持ち出しです。

一方、売却するのは手間ですが、きちんと売却代金が手元に入ってきます。
同じ手間をかけるなら、売却した方が明らかに得です。

共有持分を売却

他の共有持分権者と共同で売るのが大変な場合、自分の共有持分だけを売却する方法もあります。
それなら相手の同意が不要で自分一人の判断で売ることが可能ですし、持分割合に応じたお金が入ってくるので、放棄するより大きなメリットを得られるでしょう。

当社でも積極的に不動産の共有持分買取に対応しております。
共有物件への対応でお悩みの方は、一度お気軽にご相談下さい。

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