共有不動産の消費税の定義
被相続人より不動産を共有名義で相続または承継する相続人は、自身の課税期間の基準期間における課税売上高(事業収入など)だけでなく、被相続人から相続を受ける事業の課税売上高についても加味する必要があります。
本章では、共有不動産の消費税の定義をはじめ、課税対象の有無の具体例について解説します。
消費税の課税対象
単独及び共有の区分を問わず、事業の一部として不動産を所有する上では、課税売上高に応じて課税事業者は消費税を納める義務があります。
課税事業者(個人事業者及び法人)とは、国内における事業として行う資産の譲渡や貸付、サービス等の取引を行う上で、課税期間にかかる基準期間における事業の売り上げが1000万円以上の場合は、共有不動産の消費税を支払うこととされています。
そのため、相続または承継などによって共有不動産を取得した場合は、納税義務を有する自分自身の状況だけでなく、被相続人の課税売上高が消費税の納税義務の有無に該当するかどうかをしっかり見極めることが重要です。
以下では、共有不動産を所有している際の、実際に消費税がかかる課税対象になる場合とそうでないと場合について紹介します。
課税対象の具体例
相続した複数の不動産を兄弟の一方が全て継承する場合
- 父親(被相続人)から兄弟(2名/相続人)へ、年間賃貸料収入900万円の不動産Aと年間賃貸料収入700万円の不動産Bを相続し、どちらか一方が全て承継した
このケースの場合、消費税法が規定する消費税の納税義務である課税期間にかかる、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えることになります。
((A)900万円+(B)700万円=合計1,600万円)
そのため、当該相続人(兄弟のどちらか一方)は相続のあった日の翌日から課税事業者として消費税を納める対象に該当します。
課税対象外の具体例
相続した複数の不動産を兄弟で分割して継承する場合
- 父親(被相続人)から兄弟(2名/相続人)へ、年間賃貸料収入900万円の不動産Aと年間賃貸料収入700万円の不動産Bを相続し、兄弟で分割して承継した
上記の場合、兄弟のそれぞれが各不動産を分割して承継することになります。
そのため、消費税法施行令第二十一条の規定が適用され、兄及び弟の課税期間にかかる基準期間における課税売上高が1,000万円以下となるため、課税対象にならないため納税義務も発生しません。
ただし、兄弟で共有相続を行う場合は注意が必要です。
相続人間で共有相続をする際、上記の課税対象にならない場合の具体例とは異なり、共有者間の不動産の持分割合に応じて、被相続人の課税売上高を算出して消費税の金額が決定します。
消費税法施行令第二十一条
相続により、二以上の事業場を有する被相続人の事業を二以上の相続人が当該二以上の事業場を事業ごとに分割して承継した場合における法第十条第一項または第二項の規定の適用については、これらの規定に規定する被相続人の基準期間における課税売上高は、当該被相続人の当該基準期間における課税売上高のうち当該相続人が相続した事業場に係る部分の金額とする。
○相続が開始された年
課税事業者に含まれない者や事業を行っていない相続人が、被相続人から相続があった年に、当該基準期間における課税売上高が1,000万円超の事業を承継した場合、その相続人の当該相続のあった日の翌日から12月31日までの期間、課税資産の譲渡等については納税義務の免除の規定が適用されません。
またこの他にも、「相続開始年の翌年または翌々年」についても納税義務の免除の規定が適用されないため覚えておくと良いでしょう。
まとめ
共有不動産を被相続人より相続や事業承継を目的として行う場合、相続を受ける相続人の基準期間における課税売上高だけでなく、被相続人の基準期間における課税売上高を事前に把握することで消費税の納税義務の有無を知ることが可能です。
一般的には、課税事業者のうち、課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の免税事業者として該当すると覚えておくと良いでしょう。
ただし、場合によっては相続により事業等を承継した際の消費税の納税義務の免除の特例も設けられているため、課税売上高だけで判断せず、知識を有する専門家に相談するようにしましょう。