不動産の相続登記は3つのケースがある
相続登記とは、不動産を相続したときに行う名義変更の手続きです。
詳しくは後述しますが、2024年4月1日より相続登記が義務化されており、相続登記を怠ると罰則の対象となるので、相続登記は避けては通れません。
参照元:法務局|相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう所有者不明土地!~
不動産の相続登記には以下3つのケースがあります。
- 【ケース1】遺言通りに相続登記する
- 【ケース2】遺産分割協議を行って相続登記する
- 【ケース3】法定相続分で相続登記を行う
このうち、法定相続分による相続登記とは、民法で定められている割合に従って行う登記です。
上記3つのケースは上から順番に効力が強く、遺言がなく、かつ遺産分割協議も行わないなら、最終的に法定相続分で相続登記する形となります。
まずは、法定相続分が最適な選択なのかどうかを把握するために、どのような違いがあるかを見ていきましょう。
なお、相続登記の前後の流れも確認したい方は、以下の記事を参考にしてください。
【ケース1】遺言通りに相続登記する
まずは、遺言通りに相続登記する方法です。
遺言とは、被相続人が自らの死後のために想いや財産について綴った文書です。
【遺言書の見本】
3つの相続登記のケースの中でもっとも強い効力をもち、遺言書が存在するなら、基本的には遺言通りに相続登記を行います。
遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・ 秘密証書遺言の3つがあり、以下の違いがあります。
- 自筆証書遺言
- 遺言者が手書きで本文を作成し自身で管理する遺言書
- 公正証書遺言
- 公証人に作成してもらい公証役場で保管する遺言書
- 秘密証書遺言
- 公証役場で認証だけしてもらい、自身で管理する遺言書
このうち、もっとも多いのは自筆証書遺言で、被相続人が自宅で保管するケースがほとんどです。
被相続人の自宅を探して見つからなかった場合、近隣の公証役場に確認してみましょう。
遺言書の基本については、以下の記事で詳しく解説しています。
【ケース2】遺産分割協議を行って相続登記する
遺産分割協議を行って相続登記する方法です。
遺産分割協議とは、遺産の分け方について相続人全員で話し合いで決めることです。
相続登記を済ませるまでの不動産は共有状態となります。
誰か一人が単独名義で所有するのか、もしくは共有名義で共有持分として相続人同士が所有するのか遺産分割協議で決めて相続登記を行います。
一つの不動産を複数の人で所有しているときのそれぞれの人がもつ所有権の割合
遺言書がなく、法定相続分ではない分割方法にする場合、相続人全員で協議を行い、法定相続人全員で相続登記をする必要があります。
遺産分割協議書の作成方法については以下の記事で詳しく解説しています。
【ケース3】法定相続分で相続登記を行う
遺言書がなく、遺産分割協議も行わない場合、法定相続分で相続登記を行います。
法定相続分とは、民法で定められた被相続人の財産を継承する「法定相続人」がそれぞれもつ相続割合です。
被相続人との関係性によって、財産を受け取れるか否か・受け取れるならどの割合なのかが定められています。
なお、上位順位者がいる場合、下位の順位者は相続人になれません。
上記の画像の場合、配偶者と子どもが相続するなら、被相続人の両親・兄弟姉妹は相続人ではなくなります。
法定相続分の割合や順位については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議を行わなくても法定相続分で登記可能
前述したように、遺産分割協議を行わなくても、法定相続分で相続登記はできます。
法律には、当事者間の意向による変更が許されない「強行規定」と、当事者間の意向による変更が認められる「任意規定」の2つがあり、法定相続分は後者に含まれるからです。
したがって、遺産分割協議で決めた内容があるならそちらが優先されますし、特別に話し合いを設けていないなら法定相続分で相続登記は可能です。
法定相続分で相続登記後に遺産分割したらどうなる?
法定相続分で相続登記した後に遺産分割した場合、更正登記を行って修正が可能です。
更正登記とは、登記の申請時に誤った内容を記載してしまった場合に、正しい内容に訂正する手続きです。
民法第909条では、遺産分割の効力について以下のように明記されています。
第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
つまり、遺産分割の効力は相続開始時までさかのぼるため、法定相続分の相続登記は更正登記の対象となります。
共有持分割合の登記に誤りがある状態で放置した場合、住宅ローンの控除額が減ったり、贈与税が発生したりするリスクがあるため、遺産分割で変更が生じたらすみやかに更正登記を行ったほうがよいです。
更正登記で正しく訂正するには専門的な判断が必要となるため、司法書士への依頼も検討しましょう。
持分更正登記を依頼した場合の司法書士報酬はおおむね3万円〜6万円程度です。
なお、共有持分の更正登記については以下の記事で詳しく解説しています。
法定相続分による相続登記を行う6つの手順
前述したとおり、遺言書も遺産分割協議もない場合は法定相続分による持分割合で相続登記をします。
この章では、法定相続分による相続登記を行う以下6つの手順を解説します。
- 【手順1】司法書士に代行を依頼するか決める
- 【手順2】必要書類を揃える
- 【手順3】登記申請書を作成する
- 【手順4】相続登記に必要な費用を準備する
- 【手順5】法務局へ提出する
- 【手順6】登記識別情報通知書が交付される
【手順1】司法書士に代行を依頼するか決める
まずは、相続登記を自分で行うか司法書士に依頼するか決めましょう。
自分で行う場合、時間と労力がかかりますが費用が浮かせられます。
一方、司法書士に依頼する場合、費用はかかりますが、相続人とのトラブルを発生させず相続登記ができます。
司法書士報酬は相続内容によって異なりますが、おおむね6万円〜10万円程度です。
なお、法定相続分通りに相続登記をする場合、書類の収集を代表者が代行するなら、他の相続人の「委任状」が必要となります。
司法書士に依頼する場合は委任状の作成から対応してもらえるケースが大半です。
共有名義不動産を売却する流れや委任状の作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
【手順2】必要書類を揃える
相続登記における必要書類を揃えましょう。
法定相続分による相続登記に必要な書類は以下のとおりです。
- 出生から死亡までの戸籍(被相続人)
- 住民票の除票(被相続人)
- 住民票(相続人全員)
- 戸籍謄本(相続人全員)
- 住民票(相続人全員)
- 固定資産評価証明書(対象不動産のもの)
必要書類の収集は、相続登記の手順の中でもっとも時間を要するパートです。
どのような書類でどう取得するのか把握し、スムーズに手続きを済ませましょう。
出生から死亡までの戸籍(被相続人)
被相続人の「出生から死亡までのすべての戸籍」が必要です。
戸籍は出生から戸籍は離婚・再婚・転籍・死亡など、その人の一生が記載されている身分証明書を指します。
相続人すべてを確認するには、 亡くなった時点の戸籍だけではなく、被相続人が生まれた時点からの戸籍が必要です。
戸籍謄本には以下3つの種類があり、該当するものはすべて収集します。
それぞれの取得先と費用は以下のとおりです。
書類 | 取得先 | 手数料 |
---|---|---|
戸籍謄本 | 被相続人の本籍地の役所 | 450円 |
改製原戸籍謄本 | 被相続人の本籍地の役所 | 750円 |
除籍謄本 | 被相続人の本籍地の役所 | 750円 |
いずれの戸籍謄本も、本人確認書類・印鑑があれば、故人の本籍地の役所の窓口で取得可能です。
なお、戸籍は郵送でも取得できます。
郵送なら、役所のホームページで「戸籍証明書等申請書」をダウンロードして記入し、以下の書類を同封して送付しましょう。
- 本人確認書類
- 定額小為替(手数料分)
- 返信用の封筒と切手
住民票の除票(被相続人)
相続登記には、被相続人の住民票の除票が必要書類に含まれています。
住民票の除票は、死亡・転出によって住民登録が抹消された住民票です。
戸籍謄本には住所が記載されていないため、登記簿上の者と被相続人が同一人物であることを証明するために必要となります。
被相続人の住民票の除票は、故人の最後の住所地を管轄する役所の窓口で取得できます。
窓口で必要となる書類は、本人確認書類・被相続人との関係性を証明できる資料(戸籍のコピー等)・手数料(300円程度)です。
郵送で請求する場合、「住民票の写し等交付請求書」を役所ホームページでダウンロードして記入し、以下の書類を同封して送付します。
- 本人確認書類
- 定額小為替(300円程度)
- 返信用の封筒と切手
- 被相続人との関係性を証明できる資料
戸籍謄本(相続人全員)
相続人を確定するため、相続人全員の戸籍謄本も必要です。
相続人の戸籍謄本は、相続関係の人たちが健在かどうかを把握する目的であるため、現在の戸籍謄本のみでかまいません。
戸籍謄本の取得先は相続人の本籍地の役所で、窓口での必要書類は、本人確認書類・手数料(450円)・印鑑です。
郵送で請求する場合、役所ホームページから「戸籍証明書等申請書」をダウンロードして記入し、本人確認書類・定額小為替(450円分)・返信用の封筒と切手を同封して送付します。
住民票(相続人全員)
法定相続分で相続登記する場合、相続人全員の住民票が必要です。
取得先は相続人の住所地の役所で、本人確認書類と手数料(300円程度)で窓口交付ができます。
郵送で取得する場合、「住民票の写し等申請書」を役所ホームページでダウンロードして記入し、定額小為替(300円程度)・返信用の封筒と切手を同封して送付しましょう。
固定資産評価証明書(対象不動産のもの)
固定資産評価証明書は、土地や家屋などの固定資産の評価額を証明する以下のような書類です。
後々納税する登録免許税・相続税の税額も、固定資産税評価証明書に記された評価額をもとに算出します。
固定資産税評価証明書は、対象不動産が所在する役所で、窓口で本人確認書類・手数料(200円~400円程度)で取得可能です。
郵送で取得する場合、役所ホームページで申請書をダウンロードして記入し、本人確認書類・定額小為替(手数料と同額)・返信用の封筒と切手を同封して送付します。
登記事項証明書(対象不動産のもの)
登記事項証明書は、不動産とその所有者の情報が記載された証明書で、登記簿謄本とも呼ばれます。
相続登記の添付書類ではないですが、登記申請書を作成する際に不動産の情報を確認するために必要です。
登記事項証明書の取得に必要な持ち物はなく、法務局の窓口で手数料480円〜600円を支払うと取得できます。
なお、登記事項証明書は窓口以外に、郵送にも対応しています。
郵送で取得する場合、法務局ホームページから以下の「登記事項証明書交付申請書」をダウンロードし、記載例を参考にしながら必要事項を記入しましょう。
引用元:法務局|登記事項証明書交付申請書
登記事項証明書交付申請書に、登記印紙(手数料と同額)を貼り、返信用の封筒と切手を同封して送付すると、おおむね一週間で自宅に届きます。
法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人との関係を表にした家系図のような書類です。
2017年5月から始まった「法定相続情報証明制度」で利用される書類で法定相続人の存在を確認するために用いられます。
これまで挙げてきたように、相続登記は相続が発生するたびに各方面から戸籍謄本の収集が必要です。(手続き終了後に戸籍謄本は返却はされる)
しかし、法定相続情報一覧図を作成しておくと、今後相続が発生した際に戸籍の収集が省略できるため、相続登記の手続きを簡略化できます。
法定相続情報一覧図の大まかな作成手順は以下のとおりです。
- 戸籍謄本など必要書類を用意する
- 法定相続情報一覧図を作成する
- 法務局に、必要書類・法定相続情報一覧図を提出する
- 法定相続情報一覧図の写しが交付される
法定相続情報一覧図の作成は、法務局の記載例を参考にするとスムーズに作成できます。
今回の法定相続分による相続登記では必要ありませんが、不動産を相続するのなら今後の相続発生に備えて作成しておきましょう。
【手順3】登記申請書を作成する
法務局に提出する登記申請書を作成します。
相続登記申請書に決まった書式はありませんが、法務省のホームページで書式・記載例を公開しているので、それを参考に作成しましょう。
登記申請書は相続パターンによって種類があり、法定相続分で登記する場合は「所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」を利用します。
なお、相続登記登記申請書は必要事項が記載された書面であれば、手書き・パソコンでの作成も可能です。
【手順4】相続登記に必要な費用を準備する
相続登記に必要な費用を準備しましょう。
司法書士に代行してもらっている場合は、「司法書士報酬 + 登録免許税」自分で行なっているなら登録免許税の準備が必要です。
司法書士報酬は、相続人の数や地域などの諸条件によって異なりますが、おおむね、6万円〜10万円程度です。
登録免許税額は、固定資産税評価証明書に記載されている「固定資産税評価額 × 0.4%」で算出できます。
たとえば、土地と建物を合わせた固定資産税評価額が2,000万円であれば、登録免許税は8万円です。
司法書士報酬は申請手続きに移行する前に振り込みで支払い、登録免許税は、登記申請書に税額分の収入印紙を貼ります。
なお、相続登記にかかる費用については、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてお読みください。
【手順5】法務局へ提出する
登記申請書に必要書類を添付し、対象不動産を管轄する法務局に提出します。
法務局ホームページの「管轄一覧から探す」を開くと「不動産登記管轄区域」にて、提出先の法務局がわかります。
参照元:法務局|管轄のご案内
登記申請書の提出は、窓口・郵送のどちらも対応しています。
郵送で申請する場合、登記申請書と必要書類を同封して「不動産登記申請書在中」と記載して書留郵便で送付しましょう。
登記申請の書類一式に不備がなければ、おおむね1週間〜2週間ほどで相続登記が完了します。
相続人単独で登記は可能
法定相続分による相続登記は単独で行えます。
なぜなら、法定相続分による相続登記は、民法第252条の共有財産の保存行為に該当するからです。
したがって、他の相続人の委任状がなくても、代表者一人が相続登記申請をすれば、登記は完了します。
ただし、詳しくは後述しますが、単独で相続登記した場合は「登記識別情報通知書」が代表者一人しか受け取れません。
後々のトラブル防止のため、単独で相続登記申請をしてもよいかどうかは事前に相続人に確認しておく必要があります。
なお、不動産の共有に関する「保存行為」「変更行為」「管理行為」については、以下の記事で詳しく解説しています。
【手順6】登記識別情報通知書が交付される
相続登記が無事に完了すると、法務局から登記識別情報通知書が交付されます。
登記識別情報通知書とは、不動産の名義変更があった際に送付される通知書で、売買などで本人確認に利用される重要書類です。
登記識別情報通知書には、不動産の所在や登記識別情報となる12桁の英数字が記載されています。
登記識別情報通知書は再発行できないため、紛失すると売買などで必要になった際に代替えの書類を作成する費用が発生します。
自宅に届き次第、大切に保管しておきましょう。
法定相続分で不動産を相続登記した場合の2つのリスク
ここまで、法定相続分による相続登記の手順を解説しました。
しかし、法定相続分での不動産相続はトラブルが発生しやすく、実務上はあまり選ばれない手段です。
この章では、法定相続分で不動産を相続登記した場合における以下2つのリスクを解説します。
- 登記申請人以外に登記識別情報通知が発行されない
- 共有不動産となりトラブルが起こりやすくなる
登記申請人以外に登記識別情報通知が発行されない
法定相続分で相続登記をすると、登記申請人以外が登記識別情報通知書が受け取れなくなるリスクがあります。
不動産登記法第21条により、登記識別情報通知書が送付されるのは相続登記の申請人のみと定められているからです。
相続人全員が登記識別情報通知書を受け取るには、登記申請書に相続人全員の押印が必要です。
登記識別情報通知が受け取れなかった相続人は、売買や担保のときに登記識別情報通知に代わる書類を作成する費用が発生します。
法定相続分による相続登記は単独で行えるものの、後々のトラブルを回避するためにも、共有者への事前の説明や確認が欠かせません。
共有不動産となりトラブルが起こりやすくなる
法定相続分で相続した場合、共有不動産となりトラブルが起こりやすくなります。
共有不動産とは、一つの不動産を複数人で所有している状態を指します。
共有不動産は一つのものに対して複数人が権利を持つからこそ、以下7つのリスクが生じやすいです。
- 不動産の売却や利用で揉める
- 他の共有者が持分を悪質なブローカーに売却する
- 他の共有者が音信不通になる
- 1人の共有者が物件を占有する
- 占有者が賃料を支払わない
- 管理費や税金の負担割合で揉める
- 自分の子どもや孫の代ではさらに複雑な共有関係に
このうち、特にトラブルになりやすいのが「不動産の売却や利用で揉めるケース」です。
共有不動産は、住む・貸す・売るが個々の自由では行えず、その都度共有者の合意が必要になります。
不動産を自由に活用できない上に、固定資産税や修繕費は持分割合に応じて負担し続ける義務があるため、トラブルに発展しやすいのです。
法定相続分で相続登記をして相続人同士が共有すると、共有不動産がきっかけでいつトラブルに発展するかわからないため、できる限り避けたほうがよいでしょう。
その他、共有名義で不動産を相続すると起きるトラブル6選については、以下の記事で詳しく解説しています。
【相続登記が義務化】法定相続分でも登記は必ず行おう
法定相続分で相続人同士で連絡を取りたくない場合でも、相続登記は必ず行いましょう。
2024年4月1日より相続登記は義務化されており、 登記を怠ると罰則が課せられてしまうからです。
参照元:法務局|相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう所有者不明土地!~
相続登記の義務化には以下3つの規定があります。
- 不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記の申請が必要
- 正当な理由もなく相続登記を怠ると10万円以下の過料を課せられる
- 令和6年4月1日より前に発生した不動産相続も申請義務の対象
参照元:法務省|民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて
つまり、相続登記をされていない不動産すべてがペナルティの対象となるので、早期に登記は済ませておきましょう。
法定相続分での相続で揉めている不動産の2つの対応
前述したように、相続人同士が揉めていて連絡をとりたくない場合でも義務化の対象となるため、相続登記は避けられません。
この章では、法定相続分での相続で揉めている不動産の2つの対応について解説します。
- 【対応1】相続放棄する
- 【対応2】共有不動産を売却して換価分割を行う
- 【対応3】共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう
【対応1】相続放棄する
まずは、相続放棄によって受け継がない方法です。
相続放棄とは、被相続人が遺した財産のすべてを受け継かず、放棄することです。
「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に家庭裁判所に申出をして受理されると、「最初から相続人ではなかった」状態になります。
相続放棄すれば、今後一切共有者と関わらずに済むため、有効な対処方法と言えます。
ただし、後述するデメリットもあるため、相続放棄するか否かは慎重な判断が必要です。
なお、相続放棄の概要と相談先については、以下の記事で詳しく解説しています。
不動産だけを放棄できない
相続放棄は不動産だけを限定して放棄できません。
相続放棄するのであれば、被相続人が遺した現預金などのプラスの財産も手放す必要があるからです。
そのため、遺産の中に受け継ぎたい財産が含まれている場合、相続放棄は向かない策と言えます。
管理責任が残る
相続放棄したとしても管理責任からすぐ解放されるわけではありません。
民法第940条では、相続した不動産の管理について以下のように定められているからです。
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
つまり、自分が相続放棄した後でも次に管理する人が決まらない限りは、管理責任から解放されません。
万が一、他の共有者が相続放棄した場合、相続財産清算人が決まるまでの期間は相続人全員が管理責任を負います。
相続人がいない相続財産を管理や処分の役割を担う人のこと
相続放棄しても、すぐさま共有不動産の管理責任から解放されない点は留意しましょう。
相続放棄した家の管理責任・相続財産清算人の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
【対応2】共有不動産を売却して換価分割を行う
共有不動産を売却して換価分割を行う方法です。
換価分割とは4種類ある遺産の分割方法のうちの一つで、不動産に置き換えると以下のような分け方を指します。
現物分割 | 不動産を物理的に分割して分ける |
---|---|
換価分割 | 不動産を売却して現金で分ける |
代償分割 | 不動産を受け継ぐ人が代わりに対価を支払う |
共有分割 | 不動産を分けないで相続人全員で共有する |
換価分割は不動産を売却して現金化し、相続人全員で持分割合に応じた現金を分け合います。
換価分割なら管理責任からも解放されますし、相続放棄もしなくてよいので故人のプラスの財産を取得できます。
仲介業者に売却依頼する
仲介業者に共有不動産の売却を依頼する方法です。
仲介業者は、売主・買主の間に入り、不動産の売買が成立するようサポートする業者を指します。
買主となる第三者に向けて幅広く広告・宣伝を行うため、購入希望者が多く募れる不動産なら高値で売却しやすいのが特徴です。
ただし、共有不動産の売却には相続人全員の合意が必要です。
なおかつ、仲介業者はあくまで販促活動を中心にサポートする業者であるため、共有不動産の売却前に共有者たちがリフォーム・測量などの費用負担をし合って「すぐ住める状態」にしておく必要があります。
互いが良好な関係で、なおかつ相続人全員が売却を検討しているのであれば、共有不動産を仲介業者へ売却し、売却額を換価分割しましょう。
買取業者に買い取ってもらう
買取業者に共有不動産を買い取ってもらう方法です。
買取業者は、売主が売却を依頼した不動産を直接買い取る業者です。
買取業者は、業者が買い取った後にリフォーム等の再生を施して再販するため、そのままの状態で売却できます。
共有不動産の売却に向けて、相続人同士がリフォーム・測量などを施さなくてよいので、手間・費用をかけずに売却額を換価分割できます。
ただし、商品化コストを差し引かれる分、仲介業者よりも売却価格は安価になりやすいです。
売却価格を重視する相続人がいる場合、共有不動産全体での売却に合意が得られない可能性があるので適さない方法といえます。
【対応3】共有持分を専門の買取業者に買い取ってもらう
法定相続分で相続したのち、専門の買取業者に共有持分を買い取ってもらう方法です。
専門の買取業者は一般の買取業者に比べて、共有持分をはじめとした訳あり不動産の買取に特化した業者です。
業者自身が買主であり、売主が買取価格に納得さえすれば売買契約に話が進むため、平均1週間〜1ヶ月というスピード感で売却できます。
加えて、専門の買取業者は弁護士や司法書士などの専門家と連携して売却手続きを行うため、相続人とのトラブルに発生する心配がありません。
業者側で煩雑な手続きや他の相続人との交渉を進めてくれるので、売主は売却以降、共有不動産に関与しなくて済むので有効な手段といえます。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は共有持分に強い買取業者です。
弊社は相続専門の弁護士や司法書士と提携しており、トラブルがあってもスムーズに解決可能です。
実際に、これまで共有持分をはじめとした数々の訳あり不動産を買い取ってきた実績があり、売主様から多くの感謝の声をいただいております。
無料査定・無料相談は随時受け付けております。
相続人同士のトラブルにお悩み・ご不安のある方は、お気軽にお問い合わせください。
もちろん、査定・相談のみのご連絡も大歓迎です。
>>【共有持分のみで高額売却・トラブル解消】無料で買取査定を依頼
なお、以下の記事では共有持分の買取に強い専門の買取業者を特徴別にご紹介しています。
まとめ
本記事では、法定相続分で相続登記を行う方法をメインに解説しました。
法定相続分での相続登記は遺産分割協議もなく、単独で登記申請も行えるため、必要最低限のコンタクトで登記が完了します。
ただし、法定相続分で相続登記をした後は、共有不動産として今後も不動産の管理をし続けたり、費用を負担しあったりして共有者と付き合い続けていく必要があります。
共有者と不仲で、なおかつ相続した不動産を今後活用する予定がないなら、自身の所有する共有持分を専門の買取業者に売却しましょう。
専門の買取業者なら、相続専門の弁護士や司法書士と提携しているため、トラブルがあってもスムーズに解決が可能です。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有持分に強い専門の買取業者です。
「相続人同士が揉めている」「連絡がつかない相続人がいる」このような状況でも、各専門家と連携のある弊社なら、トラブルなくスピーディーに共有持分を買い取れます。
無料査定は24時間365日受付中です。
もちろん、査定・相談のみのご連絡も大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。