持分移転登記とは?
共有持分移転登記とは、不動産の「共有持分の名義」を変更する手続きです。
不動産が共有となっている場合、登記簿にはそれぞれの共有者の名前や持分割合が記載されています。
共有持分が売買されたり相続されたりすると、共有持分権者が変更されるので、名義も書き換えなければなりません。
そのための手続きが「共有持分移転登記」となります。
共有持分移転登記しなければならないのは、以下のような場合です。
- 共有持分を相続した
- 共有持分を購入した
- 共有持分の贈与を受けた
- 離婚などの財産分与で相手の共有持分を取得した
なお、以下の記事でも持分移転登記について詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
共有と単独所有、名義変更手続きの違い
共有不動産と単独所有とでは、名義変更の手続きにそこまで大きな違いはありません。
ひとつ異なるのは、登記申請書の目的欄です。
ここでは、共有不動産と単独所有の不動産における名義変更手続きの違いを見ていきましょう。
申請先や必要書類は同じ
共有物件でも単独所有物件でも、名義変更の申請先や必要書類はほとんど同じです。
申請先 | 法務局 |
---|---|
必要書類 | 登記申請書、住民票、登記原因書類(売買契約書など)、印鑑登録証明書、固定資産評価証明書など (登記原因等の個別事情によって異なります) |
申請人 | 物件の譲受人、相続人など |
【持分移転登記申請書の見本】
登記申請書の「目的」欄が異なる
共有物件と単独所有物件の名義変更手続きで異なるのは「登記申請書」の「登記の目的」欄です。
単独所有物件の場合には、単に「所有権移転」と記載します。
一方で共有物件の場合には「鈴木太郎持分全部移転」などと記載します。
「鈴木太郎持分全部移転」と記載した場合には、従前「鈴木太郎さん」が保有していた共有持分を次の権利者へ移転できます。
登記申請書の記載を間違えるとやり直しになってしまうので、正確に作成しましょう。
共有持分を売買・贈与で取得した場合は「不動産登記申請書提出前のチェックリスト・所有権移転(売買・贈与)」を、相続で取得した場合は「不動産登記申請書提出前のチェックリスト・所有権移転(相続)」をご確認ください。
持分移転登記が必要な場面
共有持分移転登記が必要になる可能性があるのは、以下のようなケースです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続
遺産相続によって共有持分を取得したら、共有持分登記をしなければなりません。
相続登記には以下の3パターンがあります。
共有持分の相続登記については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議によって単独で持分を取得
相続人が全員で遺産分割協議を行ったのち、1人の相続人が単独で共有持分を取得することになったケースです。
不動産を共有名義で相続するときの遺産分割協議書の書き方や注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言書によって単独で持分を取得
遺言書によって共有持分の取得者が指定されている場合には、指定された相続人や受遺者が共有持分を取得します。
【遺言書の見本】
相続人全員が法定相続分に応じて取得
遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割協議をしない場合などには、共有持分を法定相続人が全員で分割取得してもかまいません。
そういったケースでは、もともと割合的な共有持分をさらに法定相続分によって分割するので、それぞれの共有持分割合が細分化されます。
法定相続分で相続登記を行う手順は、以下の記事で詳しく解説しています。
贈与
共有持分が贈与されたときにも共有持分移転登記をしなければなりません。
たとえば以下のようなケースです。
- 親が子どもや孫へ共有持分を贈与する
- 夫婦や親子、兄弟などで物件を共有しているとき、他の持分権者から持分の贈与を受ける
なお、共有持分を贈与した際の契約書の作成方法や記載すべき内容については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
離婚時の財産分与
物件を共有している夫婦が離婚すると、財産分与によって物件の所有者を単独にするケースが少なくありません。
離婚後も共有のままにしておくと、トラブルの種になってしまうからです。
共有持分の財産分与を行ったら、財産分与を理由とした持分移転登記をしなければなりません。
そうしなければ、いつまでも物件の登記が相手との共有状態となり、混乱を招きます。
なお、離婚に伴う共有名義不動産の最適な対処法は以下の記事で詳しく解説しています。
併せて参考にしてください。
売買
共有持分を売買した場合にも、持分移転登記が必要です。
たとえば以下のような場合が考えられます。
- 物件を共有している場合に、相手から持分を買い取って単独名義にする
- 他人の共有持分を買い取る
共有持分を買い取っても登記しなければ、いつまでも自分の権利が明確になりません。
固定資産税の請求が売主の方へ届いてトラブルになる可能性もあります。
早めに持分移転登記を完了しましょう。
なお、以下の記事では共有持分を買取請求する際の流れについて解説しています。
併せて参考にしてください。
共有持分移転登記にかかる税金・費用
共有持分移転登記をすると発生する税金や費用は以下のとおりです。
どのような費用がどの程度発生するのかを見ていきましょう。
なお、以下の記事でも共有持分を所有・取得・譲渡した場合に発生する税金について解説しているので、併せて参考にしてください。
登録免許税
不動産の登記をすると「登録免許税」がかかります。
登録免許税とは、登記にかかる手数料のような税金です。
登記申請の際に法務局へ支払います。
税額は物件の「固定資産税評価額」に定められた税率をかけ算して求めます。
税率は基本的に1000分の20(2%)となっていますが、土地売買の場合には一定期間「軽減税率」が適用されます。
また相続のケースでも税率が抑えられています。
持分移転の原因 | 不動産の種類 | 税率 |
---|---|---|
売買 | 土地 | 平成31年4月1日から令和8年3月31日までは1000分の15(軽減税率) |
建物 | 1000分の20 | |
相続人による相続 | 土地及び建物 | 1000分の4 |
遺贈 | 土地及び建物 | 1000分の20 |
贈与 | 土地及び建物 | 1000分の20 |
財産分与(離婚) | 土地及び建物 | 1000分の20 |
計算の具体例
①1000万円の土地、1500万円の建物の2分の1持分を売買する場合
1000万円×2分の1×0.015=7万5000円
1500万円××2分の1×0.02=15万円
合計で22万5000円の登録免許税が発生します。
② 3000万円の土地建物の3分の1持分を子どもが相続する場合
3000万円×3分の1×0.004=4万円
登録免許税は4万円となります。
③ 3000万円の土地建物の3分の1持分を贈与する場合
3000万円×3分の1×0.02=20万円
登録免許税は20万円となります。
不動産取得税
贈与や売買によって共有持分を取得した場合には「不動産取得税」が課税されます。
共有持分を取得した次の年に自治体から納付用紙が送られてくるので、それを使って支払をしましょう。
税率は固定資産税評価額に以下の税率をかけ算して算出します。
不動産の種類 | 税率 |
---|---|
宅地 | 令和9年3月31日までは1000分の30(軽減税率) |
住宅用の建物 | 令和9年3月31日までは1000分の30(軽減税率) |
住宅用以外の土地建物(原則) | 1000分の40 |
さらに新築住宅や中古住宅、それぞれに対して課税標準額から一定の金額を控除する軽減措置があり、住宅の取得を容易にするための優遇措置として利用可能な場合があります。
たとえば3000万円の土地の2分の1の共有持分を移転した場合には、3000万円×2分の1×0.03=45万円の税金がかかります。
1000万円の建物の2分の1の共有持分を移転した場合の不動産取得税は、1000万円×2分の1×0.03=15万円となります。
節税のためにも、利用できるかどうかを確認しておきましょう。
なお、「離婚時の財産分与」や「相続」のケースでは、不動産取得税はかかりません。
司法書士報酬
共有持分移転登記は自分でもできますが、手間がかかるので司法書士に代行してもらうことも選択肢の1つです。
そうなると「司法書士報酬」を支払う必要があります。
司法書士報酬は、依頼する事務所にもよりますが、1件3万~5万円程度が相場です。
複数の持分を移転する場合には、件数分の費用がかかる事務所もあります。
たとえば物件の共有者が5人いる場合に1人に権利を集中させたいので、他の4人から共有持分を買い取ったとしましょう。
すると、3万円×4人=12万円程度の費用がかかる可能性があります。
一方で、1件分の3万円の費用で対応してくれる事務所も中にはあります。
司法書士報酬は依頼する事務所によって計算方法が異なるので、依頼前にしっかり見積もり額を確認しましょう。
その他の費用
共有持分移転登記をするときには、住民票や印鑑登録証明書などの必要書類を取得しなければなりません。
相続の場合、大量の戸籍謄本類が必要となる可能性もあります。それらを取得する実費もかかるので、注意しましょう。
なお、書類を取得する際にかかる手数料は自治体によって異なるので、事前に確認しておくと安心です。
共有持分移転登記にかかるその他の費用の内訳は以下の表のとおりです。
住民票 | 250~300円程度 |
---|---|
印鑑登録証明書 | 250円~300円程度 |
戸籍謄本 | 450円程度 |
除籍謄本、改正原戸籍謄本 | 750円程度 |
全体でどのくらいの税金や費用がかかるのか
以上を前提に、共有持分の移転登記をするとどのくらいの金額がかかるのでしょうか?
具体的な金額は「物件の固定資産税評価額」によって大きく変わりますし、登記原因によっても変わります。
司法書士に依頼するかどうかでも差が発生するので、一概にはいえません。
それでもおおざっぱにいうと、一般的な宅地物件持分の売買で司法書士に依頼した場合、10~30万円程度となるケースが多いでしょう。
具体的には状況によって大きく異なるので、必ず個別事案に即してシミュレーションを行うか、法律の専門家に相談してみてください。
持分移転登記を自分で行うときの手続きの流れ
共有持分移転登記をするときには、以下の流れで進めましょう。
それぞれの手順で何を行うのかを解説していきます。
必要書類を準備
まずは必要書類を揃えなければなりません。
具体的には以下のような書類が必要です。
- 登記申請書
- 住民票
- 印鑑証明書
- 登記識別情報通知
- 登記原因資料(売買契約書や遺言書、遺産分割協議書や財産分与契約書など)
- 固定資産評価証明書
【固定資産評価証明書の見本】
相続を原因とする場合には、上記以外に被相続人の「出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類」および相続人全員の「戸籍謄本類」が必要となるケースもあります。
書類に不備があると登記を受け付けてもらえないので、漏れのないように集めましょう。
登録免許税を計算
共有持分移転登記をする際には、登録免許税を払わねばなりません。
具体的にいくらかかるのか、計算しておきましょう。
法務局へ提出
必要書類を揃えたら法務局へ提出します。
このとき、登録免許税を印紙で払うなら収入印紙を購入して貼付しなければなりません。
収入印紙の売り場がある法務局も多いですが、ない場合には近くの金融機関などで購入しましょう。
持分移転登記が完了した旨の書類を受け取る
書類を提出したら、法務局で不備がないか確認されます。
問題がなければ登記が完了し、申請人へ「登記識別情報通知書」が交付されます。
登記識別情報通知書は共有持分の権利者である事実を示す重要書類です。
後に共有持分を売却する際などにも必要になるので、大切に保管しましょう。
持分移転登記の注意点
共有持分の移転登記をするときには、以下のような点に注意しましょう。
共有持分移転登記の手続きは複雑であり、さまざまなトラブルが起こりがちです。
スムーズに手続きを済ませたいなら、司法書士などのプロへ相談しましょう。
共有持分移転登記時の注意点について、それぞれ解説します。
単独所有のケースより間違いが起こりやすい
共有持分の移転登記は、単独所有の移転登記より複雑になりがちです。
登記申請書の記載方法を間違えてしまうケースもあるでしょう。
また「持分割合」によって登録免許税の金額が変わるので、計算間違いも起こしやすい傾向があります。
自分で対応すると不備が発生し、やり直しになってしまうケースが少なくありません。
費用の違いが大きくなりやすい
共有持分移転登記を司法書士に依頼する場合、司法書士事務所によって登記にかかる費用が大きく異なる可能性があります。
共有持分移転登記を行う場合、多数の当事者が依頼するケースが多いからです。
たとえば1件3万円の司法書士事務所と1件5万円の司法書士事務所があり、10人分の共有持分移転登記をお願いしたとしましょう。
1件なら2万円の差額でも10件なら20万円の差額となります。
また多数当事者ということで割引きしてもらえたり1件分の金額で対応してもらえたりする事務所もあります。
そういった司法書士に依頼したら、大幅に費用を抑えられるでしょう。
共有持分移転登記を依頼する司法書士事務所を選定するときには、単独登記のケース以上に司法書士費用に慎重になるべきといえます。
複数人の当事者が絡むと手続きが煩雑になる
共有持分移転登記をするとき、多数の当事者が絡むとどうしても手続きが複雑になります。
たとえば5人の共有持分権者から持分を買い取る場合、5人から印鑑登録証明書をもらわねばなりません。
協力してくれない人や対応の遅い人がいたら、大変なストレスになりますし、スムーズに進めるのが難しくなるでしょう。
共有持分移転登記はプロに相談、依頼しよう
共有持分移転登記には非常に手間がかかりますし、自分で対応すると間違いも発生しやすい問題があります。
できれば当初の段階から司法書士に相談して任せましょう。
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特に共有物件の取扱いが多く、一般の不動産会社では対応しにくい案件にも積極的に関わっています。
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なお、以下の記事では共有持分の優良買取業者を厳選してご紹介しています。
どの買取業者に依頼したらよいのかが分からない方は、ぜひ参考にしてください。
まとめ
共有持分移転登記をしなければならないのは、売買、贈与、離婚時財産分与、相続などのケースです。
状況によって登録免許税など費用の計算方法が異なるので、事前に正確にシミュレーションしましょう。
共有持分移転登記は複雑なので、自分で対応すると不備が生じやすく手間もかかります。
そのため、取得した共有持分の移転登記の手続きを行うなら、司法書士に依頼することをおすすめします。
また、共有持分を手放したいとお考えなら、弊社AlbaLink(アルバリンク)へご相談ください。
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