共有名義の不動産で片方(共有者)が死亡したら持分はどうなる?

共有名義の不動産で片方(共有者)が死亡したら持分はどうなる? 共有持分

不動産を共有しているときに共有持分権者が死亡してしまったら、その不動産はどのように扱われるのでしょうか?

 

相続人がいれば相続人に引き継がれますが、相続人がいないケースにおける取扱いは非常に複雑です。残された共有持分権者が取得できるケースもあれば取得できないケースもあるので、法律にもとづく考え方を正しく理解しておきましょう。

今回は、共有名義の不動産で片方の共有者が亡くなった場合の共有持分の取扱いについて、解説していきます。

兄弟で50%ずつ保有の共有不動産

共有名義人の片方が亡くなった

共有者に相続人がいるケース

死亡した共有持分権者に相続人がいる場合、相続人がそのまま持分を取得します。

相続人が1人ならその相続人に持分が移るだけですし、相続人が複数いる場合には、共有持分が「法定相続割合」に応じて各相続人に帰属します。

もともと相続人が複数でも、相続人たちが遺産分割協議によって誰か1人が単独で共有持分を相続する事に決めた場合、その1人の相続人が新たに共有持分権者となります。
被相続人が遺言によって誰か1人の相続人を共有持分の引継人と定めていた場合にも、その相続人が単独で共有持分を取得します。

相続人がいる場合

共有者に相続人がいないケース

共有不動産の持分権者が死亡したとき、問題になりやすいのは「相続人がいないケース」です。

相続人がいないケースとは?

相続人がいないケースとは、以下のような場合をいいます。

  1. 配偶者も親も子どもも兄弟姉妹もいない
    相続人がもともと天涯孤独で法定相続人となる親族がいないケースです。子どもや孫、ひ孫、親、祖父母、兄弟姉妹も甥姪が存在せず、法定相続人がいなければ相続する人がいません。
  2. 相続人が全員相続放棄した
    もともと相続人がいても、全員が相続放棄してしまったら相続人がいないのと同じ状態となります。その場合にも、共有持分を相続する人がいなくなります。

相続人がいない場合

相続人がいないケースにおける共有持分の取扱い

共有持分権者に相続人がいない場合、共有持分はどうなるのでしょうか?
このような場合、民法は内容の異なる2つの規定をおいているので、多くの方が混乱してしまいがちです。次の項目で詳しくみてみましょう。

民法255条と民法958条の3

共有持分権者が死亡した場合の共有持分について民法が定める2つの規定とは、民法255条と民法958条の3です。

それぞれの条文

まずは条文を確認しましょう。

  • 255条(持分の放棄及び共有者の死亡)
    共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
  • 958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
    前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

民法255条とは

民法255条をみると、「共有者の1人が死亡して相続人がいないときには、共有持分が他の共有持分権者のものになる」と書いてあります。
これによると、共有持分権者が死亡して相続人がいなければ、他の共有持分権者に権利が移ることになります。
不動産への所有権はなるべく一人に集中させる方が好ましいので、こういった規定がもうけられています。

他の共有持分権者に権利が移る

民法958条の3とは

958条の3は「特別縁故者への財産分与」を認めています。これは、内縁の配偶者など被相続人と特別な関係にあった人による遺産受け取りを認める規定です。
人が死亡したとき、遺産を受け取れるのは基本的に「法定相続人のみ」です。内縁の妻や献身的に介護を行った人などには相続権がないので、一切の遺産を受け取ることができません。
しかし相続人がいない場合にまで、そういった近しい人が一切遺産を受け取れないのは不合理です。
そこで相続人がいない場合には、死亡前に被相続人と近しい関係にあった人を「特別縁故者」として、財産を一部もらう権利を定めています。

上記の2つの規定があるために共有持分権者が死亡して相続人がいない場合「共有持分権者」が持分をもらえるのか「特別縁故者(内縁の妻など)」が持分をもらえるのかがはっきりしません。
いったいどちらが共有持分を取得できるのでしょうか?

最高裁判所の考え方

共有持分権者が死亡した場合の民法958条の1と民法255条の問題について、最高裁は以下のように判断しています。

(最高裁平成元年11月24日)
958条の3の規定は、本来国庫に帰属すべき相続財産を被相続人と特別の縁故があった者に分与し、特別縁故者を保護するためのものである。
特別縁故者への財産分与の制度がもうけられているにもかかわらず、相続財産が共有持分というだけで分与が認められないのは不合理であり、被相続人の意思にも合致しない。
共有持分権者が死亡して相続人の不存在が確定したときには、まずは特別縁故者への財産分与の対象となり、その手続を経ても承継する人がいない場合にはじめて255条によって他の共有者に帰属すると理解すべきである。

このように裁判所は、民法958条の3と民法255条については958条の3が優先的に適用されると判断しています。
共有者に相続人がいないケースでは、共有持分はまず特別縁故者への分与対象となり、分与が行われなかったときに他の共有持分権者のものとなります。

特別縁故者がいる場合

マンションの敷地権の場合、共有持分権者が取得できない

相続人・特別縁故者がいない場合は国のものになる

遺言状がある場合

マンションの共有持分のケースでは、民法958条の3と255条について特例が設けられています。
それは「建物部分」と「敷地権の共有部分」の所有者を分けないルールです。

マンションの権利は「建物部分」と「土地(敷地権)部分」に分かれており、建物部分は所有者の「専有(単独所有)」、敷地権はマンション所有者全体の「共有」となっています。
そこでマンションの所有者が亡くなった場合、専有部分である建物部分と共有部分である敷地権のそれぞれの相続が問題となります。

そしてマンションについては「区分所有法」という法律により、「建物と敷地権持分の所有者が一致しなければならない」という原則が定められています(区分所有法24条)。
建物と敷地権を両方所有していないと、利用や売却などの際に混乱が生じて不都合だからです。

相続の結果、「建物部分は国のもの、敷地権は共有持分権者のもの」などとなるのは区分所有法に反するので認められません。

そこでマンションの所有者が死亡した場合、敷地権の所有者は建物の所有者に従って決まります。
建物が特別縁故者によって取得される場合には敷地権も特別縁故者のものとなりますし、特別縁故者がいない場合には敷地権も国のものになります。
マンションの敷地権だけを他のマンション所有者が取得することはできません。

マンションの共有名義相続

共有者が亡くなったあとの具体的な流れ

不動産の共有持分権者が死亡すると、その後どのような流れになるのでしょうか?

相続人がいるケースといないケースに分けてみていきましょう。

相続人がいるケース

  1. 相続人が遺産分割協議を行う
    相続人がいる場合、相続人らが「遺産分割協議」を行って、誰が共有持分を相続するのかを決定します。
  2. 相続人が共有持分の相続登記を行う
    遺産分割協議によって誰が共有持分を取得するか決まったら、その相続人が自分で共有持分の名義変更登記(相続登記)をします。その後は、不動産がこれまでの共有持分権者と新たな相続人との共有状態になります。

相続人がいないケース

  1. 共有持分権者が「相続財産管理人」の選任を申し立てる
    共有持分権者が死亡した場合、他の共有持分権者が共有持分を取得するには、まずは家庭裁判所で「相続財産管理人」の選任を申し立てなければなりません。先に説明したように共有持分権者より特別縁故者が優先され、相続財産管理人が特別縁故者への財産分与の手続きを終えない限り、死亡した人の共有持分を他の共有持分権者の名義に移すことができないからです。相続財産管理人の選任方法は、後の項目で詳しく説明します。
  2. 相続財産管理人が相続人の捜索や債権者・受遺者への支払い、特別縁故者への財産分与などの手続きを進める
    家庭裁判所で相続財産管理人が選任されたら、その人が相続人の捜索や財産の現金化、債権者への支払いなどを進めます。その後に特別縁故者への財産分与の手続きが行われます。
  3. 最終的に共有持分が残ったら共有持分権者による取得が認められる
    相続財産管理人が換価や必要な支払いをした後、死亡した人の共有持分が残っていたら、その持分は他の共有持分権者のものとなります。
  4. 取得した共有持分についての名義変更登記を行う
    共有持分権者が不動産の共有持分を取得した場合には、その持分について自分の名義に変更する名義変更登記を行います。これにより、第三者に対しても引き継いだ共有持分を主張できる状態になります。

相続財産管理人選任からの流れ

共有持分権者が死亡した人の持分を取得する方法

共有持分権者が死亡したとき、他の共有持分権者が死亡した人の持分を取得するには、以下の2種類の方法があります。

死亡後に相続財産管理人を選任する

相続財産管理人の選任が必要な理由

共有持分権者が死亡したとき、他の共有持分権者がその持分を取得したい場合には、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければなりません。相続財産管理人とは、死亡した人の財産を管理処分して、最終的に国に帰属させる人です。
先にも説明しましたが、死亡した人の共有持分は優先的に特別縁故者のものとなり、それが行われないときに生きている共有持分権者のものとなります。
そこで、まずは特別縁故者への分与手続きをしないと共有部分を取得できません。その特別縁故者への財産分与を行うのが、相続財産管理人です。
共有持分権者が勝手に特別縁故者と話し合いをしたり財産分与したりすることはできないので、共有持分をもらうために、まずは相続財産管理人を選任しなければならないのです。

相続財産管理人を選任する方法

相続財産管理人の選任申立は、「被相続人の住所地の家庭裁判所」にて行います。
その際、以下のような書類が必要です。

  • 被相続人や被相続人の両親、子どもや孫などの人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類
  • 相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 被相続人の財産に関する資料(不動産全部事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金や株式などの残高が分かる書類など)
  • 不動産を共有していることを示す資料(共有不動産の全部事項証明書)
  • 財産管理人の候補者を立てる場合、その人の住民票または戸籍附票

共有持分権者が自ら相続財産管理人となることも可能です。
申立の際にかかる費用としては、800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手、「予納金」が必要です。
相続財産管理人選任の際の予納金は、20万~100万円以上かかるケースもあり、高額です。

相続財産管理人が選任された後の流れ

相続財産管理人が選任されたら、その人が財産の換価や処分を行っていき、最終的に特別縁故者への財産分与の手続きを行います。
その時点で共有持分が処分されずに残っていたら、民法255条によって生きている共有持分権者が死亡した人の共有持分を取得することが可能です。

共有者に対する遺贈(遺言で財産を譲ること)

遺言に書いておく

遺言が有効な理由

上記のように、共有持分権者の死後に他の共有持分権者が自力で死亡した人の共有持分を取得しようとすると、非常に大変で費用もかかります。
このような手間を省いてスムーズに共有持分を引き継ぐため「遺言」を利用しましょう。

遺言によって共有持分の引き継ぎ手を指定しておけば、相続開始後すぐに指定された人が共有持分を取得できるからです。
この場合、相続財産管理人の選任は不要ですし、特別縁故者に分与される可能性もありません。

またマンションの場合、遺言がなかったら特別縁故者のものになるか国のものになるかのどちらかであり、共有持分権者が取得できる可能性はありませんが、遺言があれば建物と敷地を両方共有持分権者がもらうことも可能です。

 

遺言内容は本人が決める

遺言内容は遺言者本人が自由に決めるものです。共有持分権者が特別縁故者へ共有持分を遺贈するなら、共有持分は特別縁故者のものになります。
共同で不動産を所有している共有持分権者が共有相手の死亡後に持分を取得したいなら、相手の生前にしっかり話し合いをして、自分に共有持分を譲ってくれるよう説得してから遺言書を書いてもらう必要があります。

共有者が亡くなった場合の対策まとめ

共有名義の不動産で片方(共有者)が死亡したら持分はどうなる?まとめ

 

不動産を共有しており、共有相手に相続人がいない場合には、死亡後にその持分をどうしたいのか本人の希望を確認しておくべきです。
相手に内縁の配偶者などがおらず、特段の希望がないなら、あなたに共有持分を遺贈する遺言を残してもらいましょう。

もしも遺言書を残さないで死亡されてしまった場合、共有持分を取得するために家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任する必要があります。
方法がわからない場合や自分で申し立てるのが手間な場合、かかる費用が心配な場合などには、一度法律の専門家である弁護士に相談してみることをお勧めします。

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