通行地役権とは他人の土地を通るために設定する権利のこと
そもそも地役権とは、他人の土地を自分のために利用する権利を指します。
その地役権のなかでも、自分の土地の使い勝手を良くするために他人の土地を通れるようにする権利が「通行地役権」です。
この場合の自分の土地を「要役地(利益を得る土地)」、他人の土地を「承役地(利益を与える土地)」といいます。
通行地役権に関して押さえておきたいポイントは、以下の4つです。
それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
通行地役権を設定するには隣地所有者と契約を交わす必要がある
前提として、他人の土地に通行地役権を設定するには、その所有者と契約を交わさなければなりません。
また、権利を行使できる期間も契約で取り決めます。
たとえば、隣地所有者から「契約期間は10年」と提示され、それに応じた場合には10年間しか権利を行使できないということです。
なお、契約を交わすにあたり、通常は通行料の支払いを設定しますが、法的には無償とすることも可能です。
通行地役権と囲繞地通行権との違い
通行地役権とよく似ている用語に「囲繞地通行権」があります。
囲繞地通行権とは、他の土地に囲まれていて道路に直接通じていない袋地の所有者が、土地を囲んでいる囲繞地を通行できる権利のことです。
囲繞地通行権は民法第210条で定められている権利であり、袋地の所有者は囲繞地の所有者の同意がなくても、その土地を通れます。
一方で、通行地役権は利用される土地の所有者の同意がなければ成立しない点が大きな違いです。
また通行できる範囲も、囲繞地通行権では「囲繞地にとってもっとも損害が少ない箇所」とされているのに対し、通行地役権では「互いの同意」によって自由に決められます。
なお、囲繞地通行権にまつわるトラブル事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

通行地役権を第三者に主張するには登記が必要
囲繞地通行権は袋地の所有者に当たり前のように認められている権利であり、登記をしなくても第三者に権利を主張できます。
権利関係などの情報を法務局の登記簿に記録し、公に向けて公開すること。
しかし、通行地役権はあくまでも契約を交わしている当事者同士の間でのみ適用されるため、登記をしなければ第三者に主張できません。
たとえば、通行地役権を登記していない状態で承役地の所有者が売買などで変わった場合には権利を主張できないため、それまで通れていた道を通れなくなる恐れがあります。
ただし登記していれば、承役地の所有者が変わっても引き続き従来の契約内容に応じて通行が可能です。
通行地役権を登記する方法
通行地役権を登記するには、要役地と承役地の所有者が共同で管轄の法務局へ申請する必要があります。
登記の際に必要となる主な書類は、以下の通りです。
書類名 | 概要 | 取得先 |
---|---|---|
登記原因証明情報 | 通行地役権に関して当事者間で取り決めた内容を記載した契約書など | 自分で用意 |
地役権図面 | 承役地のうち通行地役権を設定する範囲を記した図面 | 自分で用意 |
委任状 | 登記手続きを司法書士などに委任するときに必要 | 自分で用意 |
承役地の登記識別情報 | 通行地役権を設定する承役地の所有者を記載した書類 | 法務局 |
承役地所有者の印鑑証明書 | 承役地所有者の本人確認用 | 自治体 |
なお、通行地役権の登記は個人でもできますが、正確に手続きを済ませるためにも司法書士に依頼することをおすすめします。
通行地役権があるのに通行を妨害されたときには排除を請求できる
通行地役権を設定しているのに、承役地の所有者から通路にポールを置くなどの妨害をされたときには、「排除の請求」が可能です。
これを「妨害排除請求権」といいます。
妨害排除請求権に関する民法上の規定はありません。
しかし、「その物の所有者は他人に邪魔されることなく自由に利用・処分」できる権利を有しているため、承役地の通行を妨げられている状態にあれば、相手方の故意・過失を問わず妨害排除請求権が認められます。
通行地役権を設定するメリット【ケース別】
ここでは、通行地役権を設定する利点を以下ケース別に解説します。
【要役地】土地の利便性を高められる
要役地の所有者は、通行地役権を設定することで自分の土地の利用価値を高められます。
たとえば、「自分の敷地が面している道路から駅まで20分かかるが、隣地を通ることで10分に短縮できる」といったケースで有効です。
【承役地】土地の通行料を受け取れる
承役地の所有者にとっては、自分の土地を通る方から通行料を得られる利点があります。
ただし、通行料の具体的な相場は民法で明確に規定されていないため、契約当事者間で話し合って決めなければなりません。
通行料に関するトラブルを未然に防ぎたいのなら、不動産鑑定士に土地の評価を依頼し、評価額をもとに適切な金額を決めるとよいでしょう。
通行地役権を設定するデメリット【ケース別】
通行地役権の設定には、以下のようなデメリットがある点も押さえておきましょう。
【要役地】土地の通行料を支払う必要がある
要役地の所有者は、承役地を通らせてもらう代わりに通行料を支払わなければなりません。
双方の合意があれば無料にできますが、通行料の金額が折り合わない場合、トラブルに発展するケースも考えられます。
【要役地】土地の通行を妨害される可能性がある
通行地役権を設定していても、承役地の所有者から土地を通れないように邪魔される可能性があります。
たとえば、承役地の所有者が亡くなって新たな相続人がその土地を取得した場合、通行地役権の存在を知らずに物置などを設置するケースが考えられます。
前述のように、通行地役権は登記をしなければ第三者に対抗できませんが、問題は「相続人は第三者に該当するかどうか」です。
これについて、最高裁判所は「承役地が要役地の所有者に継続的に通行されていた事実が明白であり、かつ譲受人が認識できる状況であれば、通行地役権の存在を知らなかったとしても第三者には該当しない」との判決を下しています(最高裁平成10年2月13日判決)。
参照元:裁判所|裁判例結果詳細
したがって、相続によって承役地の所有者が変わった場合でも、状況によっては妨害排除請求権を行使できる可能性があります。
【承役地】土地の利用が制限される
承役地の所有者にとっては、通行地役権を設定すると自由に土地を活用できなくなるデメリットがあります。
通路として取り決めた箇所には、建物を建てたり、物を設置したりすることができないからです。
したがって、将来的に土地を別の用途で利用したいと考えている場合、計画に支障をきたしてしまう可能性が否めません。
通行地役権に関して押さえておきたい注意点3つ
通行地役権に関する重要なポイントとして、以下の3つを押さえておくことも大切です。
通行地役権は売買や相続で受け継がれる
通行地役権は「物権」に分類され、土地と一体の権利として扱われます。
物を直接支配し、利益を得る権利。
所有権や占有権、地上権、抵当権などが該当。
そのため、要役地が売却されると、承役地に設定された通行地役権も自動的に新たな所有者へ引き継がれます。
また相続が発生した際も、通行地役権は財産権として相続対象となります。
通行地役権は時効取得できる
通行地役権は、一定の条件を満たせば時効取得できます。
たとえば隣地の一部を通行路として10年間、あるいは20年間以上継続的に使用していた場合、時効によって通行地役権が成立する可能性があります。
参照元:e-Gov法令検索|民法第162条・第163条・第283条
そのため、時効取得により意図せず自分の土地が承役地となり、自由に利用できなくなる恐れもあるため、気をつけましょう。
通行地役権は時効で消滅する
通行地役権は、存続期間を当事者同士の合意で決定できますが、長期間使用されなかった場合、時効により権利が消滅します。
具体的には、通行地役権が設定されている場所に建物が建てられるなどして20年間通行が行われなかった場合、契約上の存続期間にかかわらず消滅する可能性があります。
通行地役権トラブルから解放されたいなら土地を売却する
ここまで解説してきたように、通行地役権にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。
通行の仕方や通行料などを巡り、要役地または承役地の所有者との間でトラブルが起こる可能性も否めません。
そのため、「すでにトラブルが起こっている」「トラブルにあうのを未然に回避したい」のなら、通行地役権を設定している土地を売却するのは選択肢のひとつです。
不動産の売却方法は、仲介と買取の2種類です。
仲介は、不動産仲介業者を通じて一般個人の買い手に売却する方法です。
仲介ではマイホームの購入を検討している方がターゲットとなるため、立地や周辺環境が良ければ早く売却できる可能性があります。
ただし、近隣トラブルが起こりやすい、もしくはすでに起こっている土地の売却は難しいといわざるを得ません。
実際、弊社が行ったアンケート調査でも、「近隣トラブルがないこと」を土地探しの条件に掲げている方は少なくありませんでした。
問題のある土地を買いたいと考える個人の方はまずいないため、すでにトラブルが発生しているのなら、専門の買取業者に相談することをおすすめします。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、一般の買い手が見つかりにくい訳あり物件の買取に特化している専門の買取業者です。
弊社は全国の弁護士とも提携しているため、トラブルが発生している不動産でも問題なく買い取ることが可能です。
土地を売却して通行地役権トラブルから解放されたいとお考えの方は、まずは弊社までお気軽にご相談ください。
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まとめ
通行地役権を設定すると、要役地の所有者には「土地の使い勝手を向上できる」、承役地の所有者には「通行料を得られる」利点があります。
しかし、要役地の所有者は通行料を支払わなければならず、承役地の所有者は土地の自由な活用ができなくなるため、慎重に検討する必要があります。
もし通行地役権に関する問題を抱えている場合は、専門の買取業者への売却も有効な解決策です。
土地の売却金額を元手に新たな土地を購入すれば、トラブルに頭を悩ませることがなくなるでしょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、全国の土地を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
過去には、一般の不動産業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者としてフジテレビの「newsイット!」にも紹介されました。
弊社ならトラブルのある土地でも円滑に買い取ることが可能なため、お気軽にご相談ください。