空き家は「売却したい」と思っても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。
立地、建物の状態、価格設定など、さまざまな要素が影響するからです。
では空き家を手放すまで、実際にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。
今回は、空き家の売却を経験・検討した139人にアンケートを実施し、「売却までにかかった期間」や「スムーズに売却できた物件の特徴」について聞きました。
- 調査対象:空き家の売却を経験・検討したことがある人
- 調査期間:2025年9月30日~10月15日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:139人(女性74人/男性65人)
- 回答者の年代:20代 10.8%/30代 25.9%/40代 23.7%/50代 29.5%/60代以上 10.1%
空き家を売却するまでにかかった期間は13.3ヶ月
空き家の売却を経験・検討したことがある139人に「売却するまでにかかった期間」を聞いたところ、すでに空き家を売却した人の平均値は、約13.3ヶ月でした。
ただしボリュームゾーンは「3ヶ月超半年以内」となっていて、売却まで長期間かかった一部の人が、平均値を押し上げているかたち。
まだ売却できていない人の中にも、「5年以上経つが、まだ売れていない」という声もありました。
ニーズのある物件はすぐに売れるものの、条件が厳しい物件では売れるまでに長期間かかってしまうことが浮き彫りになっています。
空き家の売却が順調だった人は41.0%
「空き家の売却が順調だったか」という問いには、「想定より順調だった(23.0%)」「想定通りだった(18.0%)」と答えた人が合わせて41.0%でした。
順調だと感じた人は4割を超えてはいるものの、苦戦した(している)人のほうが優勢です。
「空き家を売却するまでにかかった期間」の質問では、売却までに1年超かかってしまった人や、まだ売れていない人も多くいました。
条件やタイミングによっては、空き家の売却がなかなか順調に進まないことがわかります。
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空き家の売却が順調だった理由1位は「立地がいい」
空き家の売却が順調だった理由として最も多かった回答は、「立地がいい(29.8%)」でした。
物件そのものが魅力的だと、売れやすくなることが明らかです。
また、2位「急いでいなかった(22.8%)」、3位「不動産会社の対応が良い(19.8%)」といった回答も多く、スムーズな売却には時間的な余裕や専門家のサポートも重要だとわかりました。
1位 立地がいい
- 空き家の周囲の環境が良かったから(20代 男性)
- 駅から近い立地だった(30代 女性)
- 立地条件が非常に良かった。不動産会社も「すぐに決まるので、価格は引き上げるべき」とまで言っていました(40代 男性)
立地の良さが、売却を順調にする大きな要素となっています。
具体的には、駅へのアクセスの良さが多く挙げられました。
暮らしやすく便利な立地は、住まう人にとって魅力的であり、自分が住む場合にも投資用物件を買う場合にも重視されます。
また古い家でも立地が良ければ、「DIYして住む」「リフォームや建て替えをして住む」という選択肢があります。
2位 急いでいなかった
- 想定では最低でも1年は要すると思っていたが、想定していたより短い期間で売れた(40代 男性)
- 立地条件があまり良くなかったので売れづらいとは思っていたが、想像していた期間くらいで何とか売れたから(40代 女性)
- 長い期間空き家だったため、とくに急ぐ必要もなかった。「1年くらいで売れたらいい」と思っていたため(50代 女性)
売り出し当初から時間がかかることを想定していたなど、急がなかったことで結果的に良い取引につながった人もいます。
焦らずに売却活動を進めると、売れないからといって物件価格を下げ過ぎることもありません。
売り手の心に余裕があると、「値引き提案は妥当だろうか」と冷静に判断できます。
空き家である期間も維持費はかかりますので、心の余裕をもつためには維持費の準備をしておくのも大切です。
3位 不動産会社の対応が良い
- 空き家近辺の売買に強い不動産屋さんに依頼して、概ね当初説明していただいたとおりの流れだった(40代 女性)
- 不動産会社の対応が早かった(50代 男性)
- 家の立地条件は良くなかったのですが、対応してくれた不動産会社が丁寧で、とても有能だったからです(60代以上 男性)
信頼できる不動産会社のサポートを受けたため、売却がスムーズに進んだと感じた人もいます。
例えば「地域の市場に詳しい」「スピーディーで丁寧な対応をしてくれる」などです。
立地条件があまり良くないケースで、有能な担当者のおかげで売れたという声もありました。
プロの力が大きな支えとなることがわかります。
4位 近所の人が買った
- 不動産会社から「立地的になかなか売れない」と言われ覚悟していたが、たまたまご近所で買い手が見つかり、すぐ売れた(40代 女性)
- 近所の人が家の売却を検討していることに気づいて、「息子夫婦に売ってくれないか」と声をかけてきて、すぐに話がついた(40代 女性)
- 買い手を探していたところ、近隣住民の親類から「買いたい」との話があり、手続きなども問題なく順調に売却できました(60代以上 男性)
ネットなどで広く買い手を募るのではなく、近所のつながりで売れたケースも、意外に多いとわかりました。
具体的には「親と近居したい子ども」「社員寮を探していた地元の経営者」などが買い手となっています。
不利な立地の物件でも、近くにニーズが眠っている可能性はあります。
空き家の売却を近所の人には知られたくないと考える人もいますが、近所の人にアピールすることで、買い手が見つかる可能性もあるのですね。
5位 物件がきれいだった
- 築浅で、リフォームをしなくても問題なく使える家だったから(20代 女性)
- 築年数の割に管理状態が良かった(40代 男性)
築年数が浅いなど、物件の状態が良かったことも、スムーズな売却に結びついています。
リフォームの手間がなく住み始められるなら、買い手は初期費用を抑えられるからです。
築浅物件だけではなく、古くても丁寧に手入れされていたことで、順調に売却できたケースも。
日頃の管理や清掃の積み重ねが、順調な売却につながります。
空き家の売却に時間がかかった理由は「立地が悪い」
「空き家の売却に時間がかかった理由」のダントツは、「立地が悪い(41.5%)」でした。
2位「不動産会社の対応が悪い(18.3%)」、3位「物件の状態が悪い(17.1%)」と答えた人も多くなっています。
売却が順調だった理由の1位「立地がいい」とは対照的で、立地が悪いと売却は難しくなることが明らかに。
売却が順調だった理由の3位「不動産会社の対応が良い」と対になる「不動産会社の対応が悪い」も2位に入り、売却活動におけるサポート力の重要性も浮かび上がります。
また「親戚との折衝に時間がかかった」という声も多く、売り出すまでの準備に時間がかかることもわかりました。
1位 立地が悪い
- 人口減の地域にあり、他にも空き家が多くあるうえに需要は少ないから(30代 女性)
- 田舎の空き家で、あまり人気な場所ではない。問い合わせすらもない状況(30代 女性)
- 駅から比較的近く静かな住宅地のため、立地条件はいいと思っていたがなかなか売れない。不動産会社に聞いてみると「静かな住宅地だが、少しずつ過疎化が進んでいるせいではないか」とのこと(50代 男性)
「田舎で交通アクセスが悪い」「人口が少ない」「空き家の供給過多」といったエリアでは、なかなか空き家は売れません。
立地は生活利便性や将来の資産価値に直結するため、駅や商業施設から遠かったり、衰退が見込まれたりするエリアでは、売却は苦戦します。
対策としては「価格設定の見直し」「更地化」「賃貸転用」など、買い手候補の範囲を広げる工夫があります。
2位 不動産会社の対応が悪い
- 不動産会社とのやり取りがうまくいかないから(30代 女性)
- 親族の不動産会社に頼んだら、営業もしてくれず売れどきを逃し、安く買いたたかれてしまった(40代 女性)
- 小さな不動産会社に頼んでいたのですが、3か月経っても売れる気配がなく、常に「売却価格を下げましょう」と言われていました。3か月後に大手不動産会社にもお願いしたら、1か月ほどで希望の値段で売れました。最初に頼んだ不動産会社が長引く原因でした(50代 男性)
スムーズに売れない原因が仲介業者にあると考えている人も多数。
「動きが鈍い」「営業や広告が不十分」といった不満を感じた経験談が寄せられています。
実際に依頼する不動産会社を変えたり増やしたりして、売却に結びついた例も。
相談の段階で慎重に不動産会社を選ぶことや、ちょっと対応がおかしいと思ったら他の会社にも相談してみることをおすすめします。
3位 物件の状態が悪い
- 立地条件は良いものの、物件そのものが古家扱いになってしまったので(30代 女性)
- 空き家が汚かった。外観が美しくなかった(50代 女性)
- 建物の状況が悪い。以前の名残で大きな冷蔵庫などの産廃がある。築年数が60年以上ととても古い(50代 女性)
「建物が古い」「外観がボロボロ」といった理由を挙げた人もいました。
汚い物件はやはり、第一印象が良くありません。
設備なども壊れていると、リフォームやリノベーションを見込んだ値引き交渉につながることもあります。
「築年数が経っていても、丁寧に使っていれば売れた」という体験談とは対照的です。
対応策としては「解体し、更地化して売る」「リフォーム・リノベーション後に売る」などが考えられます。
4位 売り出し価格が高かった
- 自分たちが思っている金額で売れない(20代 女性)
- 売却希望の価格が高かったのかもしれません。結局、当初の値段よりだいぶ下げた値段で売れました(50代 女性)
売主が相場とかけ離れた高い価格で売りに出してしまうこともあります。
上記のような場合には価格競争力で破れ、売れ残ってしまう可能性も。
不動産会社に相場価格を聞くなどして、適切な値段設定が必要です。
ただし「不動産会社の査定額が不自然に高く、信じ込んで売りに出したら全然売れなかった」という声もありました。
上記のような状況を防ぐために、複数の不動産会社に査定してもらうとよいでしょう。
5位 親戚との折衝に時間がかかった
- 相続人同士の意見調整に時間を要しています。「建物をいくらで取得したのか」「いくらで売却したいのか」という基準が明確でなく、加えて売却時の税金額を確認する必要もあり、整理に時間をかけています。慎重に進めている段階です(30代 女性)
- 遠方に住んでいる兄弟との意見が合わずに、時間がかかっている(60代以上 男性)
- 相続人の意見がまとまらずに長引き、相続者が決定してもなかなか不動産会社への相談をしなかったため(60代以上 女性)
相続にともなって空き家を売却したり、共有名義の空き家を売却したりするケースでは、関係者間で意見がまとまらないこともあります。
「そもそも売却するのかどうか」「いくらで売りたいのか」などがまとまらないと、売却に向けて具体的に動き出せません。
中には、相続人ではない親族が口を出してくるという体験談も。
空き家が家族や親族にとって思い入れのある家だと、意思決定に時間がかかると予想されます。
売り出し後に買い手がつかなくて長引くのではなく、「売却活動開始までに時間がかかる」という物件もあるとわかります。
空き家を売却するうえで大変だったことは「不動産会社とのやり取り」
「空き家を売却するうえで大変だったこと」を聞いたところ、1位は「不動産会社とのやり取り(34.5%)」でした。
2位「維持費の支払い(17.3%)」、3位「残置物の片付け(15.1%)」が続きます。
不動産会社とのやり取りや売却価格の調整など、コミュニケーションの負担を感じている人が多くなっています。
また「残置物の片付け」「物件のメンテナンス」などの、労力・手間の部分も負担となっていました。
さらに金銭面の負担もあります。
空き家の売却においては、実務的な負担も、お金やメンタルの負担もあることがわかりました。
1位 不動産会社とのやり取り
- 不動産会社の担当者がいい加減で、何度話しても理解が得られなかった。専売にされているため他社にお願いしたくても、口を出してきて話が進まなかった(20代 女性)
- 不動産会社と何度もやり取りすること(30代 女性)
- 遠隔地にあるため、不動産会社とのやり取りなどに時間がかかったこと(40代 男性)
不動産売却には専門的な知識・手続きが必要となります。
そのため不動産会社とのやり取りでは飛び交う言葉が難しくなり、やり取りの回数も多くなりがち。
さらに担当者の対応が不誠実だと感じたり、物理的に距離があってやり取りが難しく感じたりすると、負担感は増します。
煩雑なやり取りを、できるだけストレス少なく行うためにも、信頼できる不動産会社や担当者を探すことが大切です。
2位 維持費の支払い
- 固定資産税や光熱費など、売れるまで維持費を払い続ける必要があり、心理的にも負担を感じます(40代 女性)
- 売れない間にも修繕などが必要になり、出費があった(50代 女性)
- 売却するまでの間、使ってもいないのに固定資産税や光熱水費の基本使用料などで年間20~30万円が消えていく(60代以上 男性)
空き家は、使っていなくても維持費がかかります。
具体的には「固定資産税・都市計画税」「光熱水費の基本料金」「修繕や除草にかかる費用」などです。
自力で修繕や掃除をするにしても、空き家が遠方にあれば移動の交通費がかかりますね。
売れない期間が長引けば長引くほど維持費はかさみ、「いつ売れるのだろう」「いつまでお金がかかり続けるのだろう」という精神的な負担も大きくなります。
3位 残置物の片付け
- 遠方に住んでいるため、売却前の家財整理・処分が一番大変でした。週末ごとに新幹線で実家に帰り、祖父母の思い出の品を仕分ける作業は、体力的にも精神的にも大きな負担でした(30代 男性)
- 売りやすくするために、不用な残置物を処分していく作業が一番大変だった(40代 男性)
- 両親が生活していたころの荷物が手つかずだったので、整理に時間がかかった。自営で肉屋を経営していたので、使っていた業務用の冷蔵庫の始末なども大変でした(50代 女性)
空き家に残された荷物の整理や処分は、肉体的にも精神的にも負担の大きな作業です。
家財が多いほど時間と労力がかかるうえ、遠方から通う場合は交通費や宿泊費も負担になります。
さらに親しかった人の遺品を整理する場合は「使わないけど、捨てていいのか」という葛藤が起こり、メンタルにも負担に。
大型家具などは動かすのも大変で、処分が難しく高額な費用がかかる場合もあります。
4位 物件のメンテナンス
- まだ売却できていませんが、少しでも売りやすいように周りの掃除が大変です(30代 男性)
- 売却まで、「雑草」「雪」「風」といった天候による被害から空き家を守ること(40代 女性)
- 空き家にして放置しておくと近隣に迷惑をかけるので、管理や掃除が大変でした(60代以上 男性)
空き家を放置していると、建物の劣化が進みやすくなります。
庭がある家に放置してしまうと、庭木や雑草が伸び放題になって近隣に迷惑をかける可能性も。
手入れされておらず見た目が悪いと、内覧時の印象もよくありません。
そのため、売れるまでの定期的な手入れに負担を感じた人も多くなっています。
雪の多い地域ですと冬季の雪かきも必要で、かなりの手間がかかります。
5位 売却価格の調整
- 売却価格の調整や買主との条件交渉も、精神的に負担となりました(30代 女性)
- なかなか売れず、どんどん値下げ交渉されたこと(40代 女性)
- 不動産屋ははじめ調子のいいことを言っておいて、後になって「売れないから」とどんどん値段を下げるように言ってくるので、不信感をもった(50代 女性)
価格調整や交渉の過程で、「自分の思い」と「市場の現実」のギャップに悩んだ人が多くなっています。
不動産会社に値下げを勧められ、不信感や虚しさを覚えるケースも。
ローンの残額や、今までかけた維持費などを考えると、値下げに応じたくない気持ちになることもあります。
価格や条件面での交渉が、売主のメンタルを削っている面もあるとわかりました。
まとめ
空き家売却にかかる期間のボリュームゾーンは、「3ヶ月超半年以内」です。
ただし立地など条件が悪い場合には、3年を超えても売れないなど苦戦するケースも。
ただ、立地が悪いと絶望するしかないというわけではありません。
ご近所とのつながりを活かしたり、優秀な不動産会社を味方につけたりすることで、立地の悪い空き家を売却した例もありました。
立地は変えられませんが、物件をリフォームして見た目を良くしたり、不動産会社を変えたりすることは可能です。
空き家売却に時間がかかって悩んでいる場合には、複数の不動産会社に話を聞いてみるなど、「不動産売却に関するセカンドオピニオン」を試すことをおすすめします。