別荘と居住用住宅との違い
別荘と居住用の住宅では、税務上の扱われ方に違いがあります。
また、別荘と混同されがちな「セカンドハウス」も利用目的が別荘とは異なるため、税務上は全く別の扱いになります。
これらの具体的な違いについてみていきましょう。
別荘の定義とは?
日常生活には使用していない、避暑や避寒などの保養を目的とした家は別荘になります。
戸建でもリゾートマンションであっても、保養目的で所有しているものは別荘として扱われます。
税金の軽減措置は対象外
別荘は生活必需品とはみなされず、あくまでも趣味や嗜好の範囲で所有している贅沢品と判断されるため、居住用の住宅に適用される税金の軽減措置の対象にはならないのです。
セカンドハウスとは?
セカンドハウスは、居住用の住宅以外に所有している家で、少なくとも毎月1日以上は使用しているものを指します。
「遠距離通勤になるため、職場の近くに所有している家」「仕事の拠点として使用している家」、このようなケースはセカンドハウスとして認められます。
セカンドハウスの場合は居住用の住宅と同様に、固定資産税・都市計画税・不動産取得税の軽減措置を受けることができます。
別荘に買い手がつきにくい理由
使い道のない別荘に困って売却をしても、別荘は一般の住宅よりも売れにくい傾向にあります。
富裕層の象徴としてバブル期まで人気があった別荘は、高値で売買されていました。
しかし、バブル崩壊とともに別荘の需要は下火になり、一般庶民には高嶺の花だった人気エリアの物件も今では数百万円で売却されているのが現実です。
なかには、価格を下げ続けても何年も売れないため、売主が数十万円の諸費用分まで負担してタダで譲り渡した事例さえあるほどです。
では、なぜ別荘はそれほど売却しにくいのでしょうか?
築古物件が多く修繕費用がかかる
別荘は1970年代~80年代後半に多く建てられていて、築40年以上経過している物件も珍しくありません。
住居のように頻繁に使用しない別荘は、管理が手薄になりがちで老朽化が進みやすく、再利用するには多額の修繕費が必要なケースがほとんどです。
築古の別荘は、物件自体が安くても実際には出費がかさむため買い手がつきにくいのです。
立地・利便性が悪い
そもそも保養が目的の別荘は、立地や利便性よりも景観や自然環境を重視しがちです。
しかし、「年齢とともに車での長距離、山道の移動がつらくなった」「実際に数日間滞在してみると生活の不便さに足が遠のいた」「医療施設がなく、もしもの時に不安」など、日常生活をしなくてもある程度の利便性は不可欠です。
別荘地の人気が衰えるとともに近隣の商業施設や飲食店が撤退し、ますます利便性が悪くなります。
寂れた印象の別荘地の売却は非常に困難なのです。
近年、別荘や二拠点生活の住まいとしてニーズがあるのは、都心から1時間半程度の距離で自家用車以外の交通手段も利用できる場所です。
維持費が高い傾向がある
一般住宅に比べて、別荘は維持管理費が高い傾向にあります。
例えば、居住用の住宅は、固定資産税の評価額を3分の1または6分の1にまで軽減してもらえますが、別荘には軽減措置は適用されません。
また、別荘の土地面積は広いため課税額も大きくなります。
さらに、温泉の権利料や使用料などリゾート地ならではの共益施設などにコストがかかるケースも多々あります。
別荘の維持にかかる費用
固定資産税や都市計画税、住民税
固定資産税は土地の広さや建物の大きさ、築年数によって異なりますが、課税評価額の1.4%になります。
都市計画税は評価額の0.3%(最大)ですが、都市部でなければ掛かることはないでしょう。
また、住民票を別荘地に移していなくても、自治体内に別荘を所有してライフラインを利用していれば住民税を払う義務があります。
もちろん、別荘の居住割合分の金額になるため、大きな負担にはなりませんが、余分な出費を続けることになります。
共益管理費
別荘地内の街灯の保守管理や道路脇の除草、管理事務所の運営など、別荘地内全体の管理・整備費用になります。
積雪がある地方では除雪費用に結構な費用がかかり、共益費が高額な場合もあります。
別荘地の規模や軒数によっても金額はまちまちです。
火災保険料
火災保険料は建物の面積が大きければ金額も上がります。
都心の住宅よりも敷地に余裕があるので広めの建物を建てる人も多く、火災保険料が自宅よりも高くなる場合もあります。
水道/電気/ガス料金
別荘を使用していない期間でも、毎月の光熱費の基本料金はかかってきます。
水道料は定額料金の別荘が多いようです。
使っても使わなくても一定の料金を支払うという形です。
このほか土地が借地の場合は借地料がかかってきますし、別荘地によっては管理費とは別にゴミの処理費用がかかる場合もあります。
また、配管や屋根・壁など、経年劣化による建物の補修が必要になれば100万単位の費用が必要になるため、別荘を所有し続けるには、長期的な維持費の計画を立てておく必要があります。
別荘を手放す方法
よほどの好条件でなければ、別荘の売却は長期戦になる覚悟が必要です。
時間をかけずに処分をしたい場合には、売却以外の方法も検討した方がいいでしょう。
別荘を処分するには次のような方法があります。
不動産会社や管理会社に売却を相談する
「不動産仲介会社に売却を依頼する」「管理会社に買取ってもらう」、この方法で解決できるのが一番理想的といえます。
しかし、実際には別荘のニーズが多くないため、仲介会社に依頼しても何年も買い手がつかない可能性が高く、早く手放したい人には不向きな方法でしょう。
また、管理会社が買い取ってくれるケースは稀で、「無料で引き取ってもらう」ひどい場合には、別荘の所有者が「お金を支払って引き取ってもらう」というケースまであるようです。
建物を解体し更地にして売却する
建物の築年数が古く、経年劣化が進んでいる場合は、思い切って建物を解体して更地売りにする方法もあります。
劣化の激しい建物のリフォームやリノベーションは、新築を建てるよりも費用がかかる場合もあり、敬遠されがちです。
また、傷んだ建物があると周辺全体のイメージが悪くなり、より買い手が付きにくくなります。
更地の売却で解体費用や売却時の諸費用が回収できるか、信頼できる不動産会社に査定してもらいましょう。
親戚や知人に無償で譲る
使わない別荘を所有しているだけで多くのランニングコストがかかり、家計を圧迫しているケースも。
そのような場合は親戚や知人など身近な人に無償で譲ることも検討しましょう。
古い別荘でもリノベーションをして活用したい人がいるかもしれません。
注意が必要な点は、譲渡によって贈与税がかかる場合があるので税理士に相談が必要です。
また、譲渡後のトラブルを避けるためにも、専門家に相談をしながら譲渡を進めていきましょう。
自治体や公共機関に寄付する
自治体ごとの条件を満たしていて、自治体のニーズに合致した物件なら無償で引き取ってもらえる可能性もあります。
自治体にどのようなニーズがあるかわからないので、相談してみる価値はあるでしょう。
ただ、自治体としても引き取った後の維持費用や手間が発生するため、使い道のない物件は引き取りません。
別荘売却時の注意点
別荘の売却の際には、税制面で一般の住宅売却とは異なる点があります。そのことも踏まえて売却計画を立てていきましょう。
別荘の売却で損益通算ができない
長期間所有していた別荘を売却する場合、築年数とともに建物の資産価値は下がるため、売却によって損失が生じることもあります。
通常は不動産の売買で生じた損失分を給与所得など、ほかの所得と合わせて所得税を算出する「損益通算」によって、不動産による損失を控除して税金を減らすことができます。
ところが、別荘のように生活必需品ではない不動産の場合は損益通算はできません。
譲渡所得税がかかる場合もある
別荘を売却する際、利益が生じた場合は「所得」とみなされ、金額に応じた「譲渡所得税」を支払わなければなりません。
居住用の住宅であれば「特別控除」が適用になるため、売却益が3000万円を超えなければ課税されません。
例えば、4000万円で購入した物件が地価の高騰によって5000万円で売却できた場合、利益は1000万円となり3000万円を下まわっているため、譲渡所得税を支払う必要はないのです。
しかし、別荘の場合は利益の2割~4割もの税金を支払うことになります。
売却によって利益が見込まれる場合は、前もって譲渡所得税額を調べておきましょう。
売却が難しい別荘は専門業者の買取りサービスがおすすめ
「建物の状態が悪く現状での売却や譲渡が難しい」「仲介会社で売却しているが売れる見込みがない」「維持費が大変で早急に処分したい」など、別荘の扱いに悩んでいる場合には、専門の不動産業者に買取ってもらう方法があります。
一般的な不動産仲介会社では買い取ってもらえなかった物件でも、買取り専門の業者なら物件活用のノウハウがあるため、まずは相談をしてみましょう。
専門業者の買取りなら、短期間で現金化することができます。
買取り業者を選ぶ際の注意点は、別荘の買取り実績が多く別荘を扱う知識がある業者を見極めることです。大切な財産を任せられる信頼できる業者に依頼しましょう。
まとめ
別荘を所有しているあいだは、利用をしない場合にもランニングコストがかかります。
現在はそれほど高額な費用ではではないという場合でも、将来的には建物の大規模な修繕、もしくは取り壊しなどの大きな費用がかかることは避けられません。
使う予定の無い別荘であれば、なるべく早い段階で処分の方法を検討することをおすすめします。