ゴミ屋敷を放置すると自治体から行政代執行を受ける
冒頭でもお伝えしたとおり、ゴミ屋敷を放置し続けると、やがて自治体から行政代執行を受けることになります。
実は、ゴミ屋敷の相談窓口は自治体以外にもいくつかあります。しかし、ゴミ屋敷を取り締まる法律はないので、行政代執行という手段で強制的な措置を取ってもらえる自治体への相談が通例となっているのです。
ゴミ屋敷は違法ではありませんが、法を犯したときと同等の罰則を課せられます。この章では、ゴミ屋敷の行政代執行の全体像を把握するため、以下の内容をお伝えします。
- 行政代執行とはゴミを強制撤去されること
- ゴミ屋敷が行政代執行となる7つの流れ
- ゴミ屋敷が行政代執行となる条件
- 行政代執行となった場合の費用は所有者負担
行政代執行とはゴミを強制撤去されること
ゴミ屋敷における行政代執行とは、ゴミ屋敷所有者に代わって自治体がゴミを強制撤去することを言います。
各自治体によって、近隣住民の住環境を悪化させているゴミ屋敷を取り締まる条例である「ゴミ屋敷条例」が制定されています。
ゴミ屋敷条例でできることは、下記の3つです。
- 調査
- ゴミ屋敷の所有者について調査を行う。調査の結果、相談に乗る・支援するなどの今後のゴミ屋敷所有者への対応方法が決められる。「ゴミ屋敷所有者による自力での撤去」を目指す段階
- 支援
- ゴミ排出の支援を行う。片づけられない事情が精神的、あるいは身体的な問題であった場合に、福祉支援などのサポートを提供する。ゴミ屋敷所有者に同意を得た上で、自治体がゴミを撤去する
- 排出
- ゴミの強制撤去を行う。支援ではゴミ問題の解決に至らないと判断された場合に排出の措置が行われる。ゴミ屋敷所有者の同意が得られなくても、自治体が強制的にゴミを撤去する
このように、まずはゴミ屋敷所有者へのヒアリングや支援に始まり、自力でゴミの片付け、あるいは支援の元でゴミの片付けが行われます。
しかし、近隣住民に明らかに悪影響を与えているのに、再三の働きかけに応じない場合は「排出」が実行されます。
排出はゴミの強制撤去のことで、いわゆるゴミ屋敷の行政代執行です。
強制撤去はいきなり行われるわけではありません。ゴミ屋敷所有者へ勧告や命令など徐々に重い罰則を与えていき、改善が見られない場合の最終段階で行政代執行が行われます。
次章で、ゴミ屋敷が行政代執行となる流れを見ていきましょう。
ゴミ屋敷が行政代執行となる7つの流れ
自治体にゴミ屋敷解消を依頼する流れは、おおむね下記のとおりです。
- 近隣住民が住所地のゴミ屋敷条例の有無を確認する
- 近隣住民から自治体へ相談をする
- 自治体が現場調査を行い、ゴミ屋敷として認定する
- ゴミ屋敷所有者に、支援・指導・勧告などの措置を取る
- ゴミ屋敷所有者にゴミを片付けるよう命令を行う
- ゴミ屋敷所有者の氏名の公表や罰金を課す
- 行政代執行が実行される
このように、自治体の職員が再三の指導などを行い、改善が見られなかった場合の最終手段として行政代執行が行われます。
行政代執行にかかる期間は「指導から◯ヶ月後」など厳密には決まっていません。前述したように、ゴミ屋敷への直接的な法律がないのですぐに取り締まれないからです。
そのため、近隣住民から自治体に相談があった日から行政代執行までに行政代執行までに、数年〜10年程度要するケースもあります。
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ゴミ屋敷が行政代執行となる条件
ゴミ屋敷が行政代執行となる条件は各自治体によって異なりますが、おおむね以下のとおりです。
- 害虫・害獣が発生しており、繁殖や異臭が発生している
- 著しく景観を損ねている
- ゴミの堆積により、火災・不法投棄・崩落などの危険性がある
上記のように、周辺に悪影響を与えていて、なおかつ近隣住民から苦情や相談などが自治体にあった場合に、ゴミ屋敷所有者への支援や指導の措置が行われます。
行政代執行となった場合の費用は所有者負担
行政代執行の実行にかかった費用は、ゴミの撤去が完了した後、ゴミ屋敷所有者に請求されます。
行政代執行が「自治体がゴミ屋敷をキレイにしてくれて、なおかつゴミ屋敷所有者に一切費用の負担がない」という待遇だと、ゴミ屋敷が減るどころか全国的に増えてしまう可能性があるからです。
ゴミ屋敷の執行にかかる費用は調査費用なども含まれるので、一般的な清掃業者への依頼より割高になります。
なお、一般的な清掃業者に一軒家のゴミ屋敷の清掃を依頼する際にかかる費用相場は、35万円〜63万円程度です。ゴミの量が多ければさらに費用は高くなるので、ゴミ屋敷の行政代執行では費用が100万円を超えるケースも珍しくありません。
さらに、行政代執行にかかった費用は税金などと同じ扱いであるため、仮にゴミ屋敷所有者自己破産したとしても財産差し押さえをして徴収ができるのです。
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ゴミ屋敷が行政代執行となった事例【京都市の例】
京都市右京区に所在するゴミ屋敷が、2015年に全国初の行政代執行が実施された事例を紹介します。
問題となったゴミ屋敷は通報があった当初、以下のような状態でした。
- 通路幅約130㎝の私道に、高さ約200㎝・奥行約440㎝・幅約90㎝におよぶゴミを堆積させていた
- 車いすを利用している人がゴミを避けるために車いすから降りるなど、近隣住民の日常生活に支障をきたしていた
- 万が一災害があったとき、避難に支障が出て生命も脅かしかねない恐れがあった
- 老朽化したベランダにゴミを堆積させており,崩落して近隣住民にケガをさせる危険性があった
このように、近隣住民に悪影響をおよぼす状態であったため、自治体職員が126回訪問し、61回もの接触を行っています。
健康相談など、ゴミ屋敷所有者への支援を中心にした接触を行い、人間関係の構築は図れていたものの、ゴミの片付けについては拒否的な態度だったため、強制執行に至りました。
今回の事例における、指導から行政代執行までの流れは以下のとおりです。
行政代執行では、新聞や雑誌など45リットルのゴミ袋167袋相当にもおよぶ大量のゴミが、自治体職員により撤去されました。
この事例から、ゴミ屋敷所有者とのコンタクトで良好な人間関係が築けていたとしても、ゴミ屋敷が周辺住民に悪影響を与える状態である限り、行政代執行が実行されることがわかります。
もし、自治体から指導が入った場合には、早急にゴミを撤去するなど対応をしなければ、やがて行政代執行が実行されてしまいます。
ゴミ屋敷の行政代執行が行われている自治体を調べる方法
自身の住所地がゴミ屋敷の行政代執行が行われている自治体かどうかは、以下の方法で確認できます。
- Googleなどで「〇〇市 ゴミ屋敷 条例」で検索をかける
- 市町村のホームページの検索まどで「ゴミ屋敷」と検索する
上記のように検索をかけると、各市町村が作成している資料がヒットします。
例えば、京都市のホームページで「ゴミ屋敷」で検索をかけると「不良な生活環境(ごみ屋敷)の解消のために」という資料が出てくるので、ここから市の取り組みを確認可能です。
なお、「ゴミ屋敷条例」は通称であるため、上記の方法でヒットしない場合もあります。その際には、自身の住所地の市役所に電話で問い合わせてみましょう。
「ゴミ屋敷の行政代執行は難しい」と言われる3つの理由
ゴミ屋敷の相談窓口の中でも、自治体が行う行政代執行には強制力があり、基本手段として用いられています。
しかし、以下の3つの理由から「ゴミ屋敷の行政代執行は難しい」と言われているのが現状です。
- 「それはゴミじゃない」と言われたら手出しできない
- 先にゴミ屋敷所有者のケアが必要なケースがある
- ゴミの撤去費用を税金で立て替える必要がある
それぞれ詳しく解説します。
「それはゴミじゃない」と言われたら手出しできない
まず、行政代執行が難しい理由の1つに、ゴミ屋敷所有者がゴミをゴミと認識していないケースが挙げられます。
ゴミ屋敷には直接的な法律が整備されていません。ゴミと財産の線引きも法律上定められていないため、ゴミ屋敷所有者が「財産」と主張すると、強制撤去ができないのです。
こうした強制撤去が難しい背景から、ゴミ屋敷条例を制定している市町村であっても行政代執行はわずか0.3%しか実施されていない結果となっています。
このグラフからもわかるように、多くの場合は調査や支援などでゴミ屋敷所有者にコンタクトは取れているものの、行政代執行には移行できていません。
また、ゴミ屋敷に直接的な法律がないことから、ゴミを勝手に処分すると器物損壊罪・住居侵入罪・財産権の侵害など、撤去する側が罰せられてしまう恐れがあります。
そのため、周囲から見て明らかにゴミであっても、ゴミ屋敷のゴミを勝手に処分してはならないのです。
先にゴミ屋敷所有者のケアが必要なケースがある
先にゴミ屋敷所有者のケアが必要なケースがあるのも、強制撤去を難しくさせる要因です。
ゴミ屋敷所有者が精神的な疾患を抱えていることが原因で、ゴミ屋敷化している場合もあるからです。
例えば、うつ病・統合失調症・強迫性障害などの疾患を抱えている場合、強制撤去によって一時的に片付けができたとしても、時間を置かずに再びゴミ屋敷化する可能性があります。
そのため、根本的な解決を図るためにはゴミ屋敷の改善と同時に、ゴミ屋敷所有者への福祉支援など精神的なケアが欠かせないのです。
当然ですが、自治体が支援で解決しようと努力している期間は、行政代執行に移行されません。
自治体が「これ以上、支援を続けてもゴミ屋敷は改善されない」と見切りをつけるまでは、辛抱強くゴミ屋敷所有者へのケアを行うので、なかなか行政代執行に到達しないのです。
ゴミの撤去費用を税金で立て替える必要がある
ゴミの強制撤去にかかった費用を一旦税金で立て替えなければならない点も、行政代執行の実現が難しい原因です。
前述したように、ゴミの行政代執行には多額の費用がかかります。
行政代執行にかかった費用は、税金や国民年金などと同様に強制徴収の対象にはなるものの、ゴミ屋敷所有者に財産がなければ、自治体の費用倒れとなってしまうのです。
そのため、ゴミ屋敷条例が制定されていても行政代執行を実行するハードルが高く、強制撤去に至っていないケースが多いのが実情です。
行政代執行とならないゴミ屋敷でも放置してはいけない4つの理由
ここまで読んできたゴミ屋敷所有者のあなたは、「行政代執行は難しいから、まだ現状のままでも大丈夫」と安心感を抱いたかもしれません。
しかし、行政代執行とならないゴミ屋敷でも放置は禁物です。その理由である以下の4つについて、順番に解説します。
- 健康被害を受ける
- 近隣住民からクレームがくる
- 犯罪に利用されやすくなる
- ゴミの撤去費用が増大する
健康被害を受ける
行政代執行にならなかったとしても、ゴミ屋敷に住み続ける限り、健康被害を受けます。
十分な換気・掃除が行われない部屋は湿気がこもりやすく、カビが繁殖しやすいからです。
カビの胞子を吸い込んだ場合、症状が軽ければ、鼻炎・咳・頭痛程度で済みます。しかし、長期にわたってカビの胞子を吸い続けると、やがて免疫力が低下し、気管支炎や肺炎といった深刻な病気を引き起こす危険性があります。
カビは人の皮脂やフケを栄養源にするため、換気・掃除を十分に行わない限り減ることはありません。
深刻な健康被害を生じさせないためにも、ゴミ屋敷の清掃や処分は行うべきです。
近隣住民からクレームがくる
ゴミ屋敷を放置すると近隣住民からクレームが入り、今後住みづらくなります。
ゴミの堆積に生ゴミや食品が混在していると、当然悪臭を放ちます。その臭いにつられた害獣・害獣がゴミ屋敷に住みつき、そこで糞尿をしてさらに悪臭が強くなるという負のループが生じてしまうのです。
ゴミ屋敷があると近隣住民は、窓を開けて換気したり、洗濯物を外に干したりできなくなり、日常生活に支障をきたします。
とくに夏場は悪臭が強くなりやすく、ゴミ屋敷によるクレームが発生しやすいと言えます。
犯罪に利用されやすくなる
ゴミ屋敷は犯罪に利用されやすく、放置するのは危険です。
とくに、ゴミ屋敷は放火犯のターゲットにされやすい傾向にあります。近隣住民からの話題で認知度が高い上に、燃えやすい材料が敷地いっぱいに詰まっているため、放火犯の好奇心をそそってしまうからです。
実際に、令和3年に起きた総出火件数の35,077件のうち、放火および放火の疑いによる火災は3,859件と全火災の11%を占める割合となっています。
参照元:総務省消防局|令和3年(1~12月)における火災の概要
上記のデータはゴミ屋敷以外の一般住宅も含めた数字ですが、放火による火災が全国的に少なくないことがわかります。
ゴミ屋敷に住み続けると、放火によって命を落とす危険すらあるのです。
ゴミの撤去費用が増大する
ゴミ屋敷を放置するとゴミの堆積量はさらに増え、いざ撤去する時の費用が増大します。
ゴミの撤去費用は、間取り・作業時間・人件費などに応じて費用が変動するからです。
例えば、1LDKの清掃を業者に依頼した場合の費用相場は7万円~20万程度ですが、1日で撤去が終わらなければ費用は約2倍になります。
ゴミの撤去が自力でできないようであれば、早めにゴミ屋敷の処分を検討したほうがよいでしょう。
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ゴミ屋敷を行政代執行から回避する3つの方法
ゴミ屋敷を行政代執行から回避する方法は、以下の3つです。
- 家族や知人にゴミの片づけを手伝ってもらう
- 清掃業者にゴミの撤去を依頼する
- 専門の買取業者にゴミ屋敷ごと買い取ってもらう
ゴミ屋敷条例を制定している自治体は増加傾向にあり、いつ自身の所有するゴミ屋敷が行政代執行の対象となるかわかりません。行政代執行を確実に回避する方法について詳細を見ていきましょう。
家族や知人にゴミの片づけを手伝ってもらう
行政代執行を回避する方法の1つ目は、家族や知人に片付けを手伝ってもらうことです。
清掃業者ではなく、家族や知人に依頼すれば、ゴミの片付けにかかる費用を用意しなくてよいので、実現しやすい方法と言えます。
ただし、家族や知人は最初は快く引き受けてくれますが、複数回にわたって「片付け→ゴミ屋敷化」を繰り返すと、次第に軋轢が生じる恐れがあります。
1度〜2度くらいまでなら許容されるかもしれませんが、複数回繰り返すと確実に関係性は悪化するでしょう。
清掃業者にゴミの撤去を依頼する
清掃業者に依頼してゴミの撤去を済ませておけば、行政代執行を回避できます。
すべての作業を清掃業者が担うので、ゴミ屋敷所有者のモチベーションに関係なく、ゴミを片付けられます。
ただし、当然ですが業者に依頼する費用が必要です。ゴミ屋敷の清掃業者に依頼する費用相場は、ワンルームで1時間〜3時間ほどで清掃が終わる程度の軽微なゴミ屋敷でも3万円〜8万円程度かかります。
また、人によってはゴミ屋敷化した家の中を人に見られるストレスも感じるので、お金に余裕があり、抵抗感もない場合のみ有効な手段と言えます。
専門の買取業者にゴミ屋敷ごと買い取ってもらう
3つの方法の中で、もっともおすすめなのが専門の買取業者にゴミ屋敷ごと買い取ってもらう方法です。
ゴミ屋敷を専門に取り扱う買取業者であれば、ゴミを片付けなくても現状のままで買い取ってもらえるからです。
専門の買取業者に依頼すれば、行政代執行を回避するために、友人や家族と不仲になるリスクもなく、清掃業者に依頼して多額な費用をかける必要もありません。
さらに、ゴミ屋敷を売却すれば、売却金を得られるので住み替えの費用にも充てられます。
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ゴミ屋敷専門の買取業者の詳細と業者を選ぶポイントについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひお読みください。
まとめ
今回は、ゴミ屋敷が行政代執行となる流れや回避方法について解説しました。
ゴミ屋敷化した状態が長期にわたると、やがて近隣住民から自治体へ苦情が入り、行政代執行が実施されてしまいます。
本文でお伝えしたように、行政代執行はゴミ屋敷所有者へ以下のようなデメリットをもたらします。
- ゴミを問答無用で強制的に撤去される
- ゴミの撤去にかかった費用を全額請求される
- 通常の業者に依頼するより、2倍以上も高い費用を請求される
そのため、自宅がゴミ屋敷化していて今後も清掃が難しいと判断された方は、ゴミ屋敷を処分するのが懸命な判断です。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、全国のゴミ屋敷を買い取っている専門業者です。
実際に、フジテレビの「イット」でも、残置物が大量に残された物件をそのまま買い取って再生する買取業者として特集されています。
片づけられないゴミ屋敷でお悩みの方は、ぜひ一度ご連絡ください。もちろん、ゴミ屋敷の改善についてなど、売却に関係しないご相談も大歓迎です。