墓じまいをしたいと思っている人は70.8%
20代以上の男女500人に「墓じまいをしたいと思うか」と聞いたところ、「とても思う」「やや思う」と答えた人が合わせて70.8%と多数派になりました。
全国的に墓じまい(改葬)が増加傾向にあるほか、「核家族化」「遺骨を残さない供養方法の登場」などで、墓じまいに関心をもつ人も多いのでしょう。
雑誌やWeb記事で、終活の一環として墓じまいが紹介されたのを目にして、実家のお墓が気になった方もいるかもしれません。
墓じまいをしたい理由1位は「維持管理・墓参りが大変」
墓じまいをしたい理由の圧倒的1位は「維持管理・墓参りが大変(218人)」。
2位に倍以上の票差をつけており、お墓の維持管理に大きな負担を感じている人が多いとわかります。
2位は「跡継ぎがいない(92人)」、3位「子どもに負担をかけたくない(43人)」と続きます。
アンケートの回答内容からは、「今は何とか維持できているけれど、今後管理を続けられるかわからない」という不安も見て取れました。
例えば、実家やお墓の近くに住んでいる年上の親族がいなくなったら、管理する人がいなくなるといった不安があるでしょう。
今後大変になると予想されるので、元気で動けるうちに墓じまいを考えておきたいという人も多いのではないでしょうか。
1位 維持管理・墓参りが大変
- お墓のある場所が遠く、頻繁に行けないから。またこまめに手入れができないから(30代 女性)
- 昔からの墓石を撤去するのは少し申し訳ない気持ちになるものの、お墓は現在住んでいるところから遠方なため、墓参りや掃除などができていないから(40代 女性)
- 出身が県外で距離が離れており、墓参りに赴くのに時間を要するため。今後高齢になればさらに困難になると予想されるため(50代 男性)
1位は「維持管理・墓参りが大変」でした。
お墓があるエリアを離れていると、お墓を訪れるのが大変になります。
また墓地が「駅から遠い」「山奥」「上り下りに苦労する傾斜地」などにあることも少なくありません。
中には「お墓が複数に分かれているので、お墓参りが大変」という人もいました。
お墓をすべてなくすのではなく、遠方にあるお墓は墓じまいして、管理しやすい近所のお墓にまとめたいと考えている人もいるようです。
自分が楽になりたいというだけではなく、「しっかり掃除などの維持管理できる場所に移した方が、ご先祖様や親も喜ぶだろう」という考え方の人もいます。
2位 跡継ぎがいない
- 兄弟はいるが二人とも子どもはいないので、私の代でなんとかしないと無縁墓になってしまう恐れがある(30代 男性)
- 私たちは子どもがいない夫婦なので、お墓の世話をしてくれる人が途絶えてしまうため(50代 女性)
- 自分の代で後継ぎがいなくなり、管理する人間が不在となる(60代 男性)
2位は「跡継ぎがいない」です。
少子化により、跡を継いでくれる人がいないというお墓も増えているのではないでしょうか。
お墓を継いでくれる人がいなくなると、お墓は「無縁墓」になり、放置されて荒れ放題になります。
無縁墓になることが予想されるので自分の代でなんとかしたいと考えている人も多いとわかりました。
無縁墓になると、必要な手続きののち、墓地の管理者によってお墓が解体・撤去され、遺骨は納骨堂などに改葬されることもあります。
3位 子どもに負担をかけたくない
- 私が一人っ子長女のため、結婚するとき親に「墓はどうする!」と散々反対されました。自分の子には迷惑をかけたくないです(30代 女性)
- 我が家は一人っ子なので、私たちが他界したあとは息子が一人で両家の墓の手入れをするのがかわいそうだなと感じます(40代 女性)
- 子ども二人はともに実家から離れたところに暮らしています。将来的に帰ってくる予定はなく、墓の管理という重たい宿題を残したくないと考えているからです(60代以上 男性)
3位は「子どもに負担をかけたくない」でした。
自身がお墓の管理の大変さを実感していて、子どもに負担を強いるのはかわいそうと感じている人も多くなりました。
子どもが遠方に生活拠点を築いている場合は、より墓守の負担も大きくなるでしょう。
そのため自分の代で墓じまいして、子どもや孫の負担を減らそうとしている人も多数。
何が何でも墓は継いでもらわないと困るという価値観は薄れているようです。
4位 維持費がかかる
- お墓の維持費が結構かかるからです(30代 女性)
- 市内の一等地に墓があるので、年会費という名の維持費が他に比べ高い(50代 女性)
- 古い墓地で管理状況が悪く、今後維持していくのにお金がかかりそうで心配だから(60代以上 男性)
4位は「維持費がかかる」でした。
墓地にもよりますが、お墓の管理費としては年間数千円~15,000円程度がかかります。
墓石にひびが入るなどの傷みがあれば、メンテナンス費用も必要です。
また遠方にお墓がある場合には、お墓参りに行くための旅費が負担になることも。
お寺にある墓地なら、檀家としてのお布施や寄付なども必要になるでしょう。
5位 実家・親族と関わりたくない
- 墓守すると、会いたくもない親戚に連絡する場面も出てくるから。墓参りはしたいけれど、親戚には会いたくありません(20代 男性)
- 両親も他界したので、「墓を通じての親戚付き合い」をしたくないです(30代 女性)
- 亡くなった祖母の墓があります。祖母の性格が好きではなかったため、墓があっても墓参りしたくありません。墓じまいした方がいろんな意味で楽です(40代 女性)
「実家・親族と関わりたくない」が5位でした。
お墓の管理を担う人は「法要」や「お寺とのお付き合い」なども担当することが多いため、法要の準備などで親戚に連絡をとることも多くなります。
地域や一族ならではのしきたりが多く、目上の親族からあれこれ口出しされると、面倒に感じてしまうこともあるでしょう。
また「墓に入っている人が好きではなかった」という意見もありました。
家族でも性格の合う・合わないはありますし、「親族にいじめられた・いびられた」という経験がある人もいるはず。
労力とお金をかけて嫌いな人が入っているお墓を守れと言われても、納得できない人も多いのでしょう。
墓じまいをしたくない理由1位は「しばらくは維持管理できる」
続いて「墓じまいをしたくない理由」と回答した146人にしたくない理由を聞きました。
その結果、1位は「しばらくは維持管理できる(37人)」、2位は「先祖代々の墓だから(32人)」、3位は「心の拠り所として残したい(27人)」でした。
お墓を「先祖代々受け継がれてきた、大切なもの」「自分のルーツを思い起こさせてくれるもの」として大切に思っている人も多いとわかります。
そのため、自分や親族で管理できるうちは墓じまいは考えずに守りたいという考えになるのですね。
1位 しばらくは維持管理できる
- 遠くにあるわけでもないし、手入れは家族がやってくれているから(20代 女性)
- 極端に遠いわけではないため、身体が動くうちは考えていない(30代 女性)
- 後継がいるので今は考えていない(40代 男性)
1位は「しばらくは維持管理できる」でした。
「家族・親族が管理してくれている」「墓参りに負担を感じるほどの距離ではない」などの理由で、墓じまいを考えていない人が多数。
ただ、現時点では考えていないという人が多く、今度維持管理を担っている家族や自分の体力面などに不安が出てきたら、墓じまいも視野に入ってくるのかもしれません。
2位 先祖代々の墓だから
- 先祖代々続けてきた歴史もあり、とても大切なことだと思うからです(30代 男性)
- 寛永時代から続くお墓なので、ずっと守っていきたい(50代 女性)
- 先祖が入ったお墓なので、自分の代で終わりにしたくない(60代以上 女性)
2位は「先祖代々の墓だから」です。
ご先祖様を大切にしている人もいますし、「今まで受け継がれてきたお墓を、自分の代で終わりするのは気が引ける」という人も多いでしょう。
上記のような場合、もし維持管理が難しくなってしまったとしても、自分が墓を取り壊すと決めてしまっていいのかと迷いが生じそうです。
また地域によっては、先祖代々の墓を解体することへの周囲の目が厳しいこともあります。
3位 心の拠り所として残したい
- 先祖のことを思い出すきっかけになっているため(30代 男性)
- 満足にお墓参りができているわけではないが、心の拠り所として、お墓は維持したいと思う(40代 男性)
- お墓参りをするとなんとなく落ち着きます(50代 女性)
3位は「心の拠り所として残したい」でした。
お墓参りすることで、亡くなった祖父母・親に思いをはせたり、自分のルーツについて考えたりする機会になります。
お墓を掃除し、お墓の中にいる家族に手を合わせて向き合うことで、心の落ち着きを感じる人も。
「もっと一緒に過ごしたかった」「もっといろんなことを教えてほしかった」など、故人への思い入れが強いほど、お墓のもつ意味は大きくなるでしょう。
4位 墓じまいが大変そう
- 遺骨の移し替えが大変そう(20代 男性)
- 墓じまいの仕方がよく分からないし、面倒くさそうだから(20代 女性)
- 祖母が墓じまいをしたとき、費用がとてもかかり、段取りも大変だと聞いたため(30代 女性)
4位は「墓じまいが大変そう」でした。
墓じまいには「親族の同意をとりつける」「自治体ごとの手続きや必要書類を調べる」「墓地の管理者に墓じまいしたいと伝える」「新しい納骨先を探す」などのステップがあります。
そのため、面倒だからという理由で、墓じまいを避けている人も多くなりました。
例えば「うるさい親族がいるので、話し合うのが面倒」「お寺にお墓があるので、住職に墓じまいを言い出しにくい」などの事情があるでしょう。
墓じまいを代行してくれる業者もありますが、利用すると代行費用がかかります。
なお墓じまいに伴ってお寺の檀家を離れる場合には、今までの感謝の気持ちとして離檀料が必要となります。
5位 家族・先祖の気持ちを大切にしたい
- 家族で話し合い、墓じまいをしないことに決めたから(20代 女性)
- 両親が自分たちの気にいるお墓を見つけているので、守ってあげたい(40代 女性)
- 亡くなった祖父母がもし生きていたら、墓じまいを承諾するとは思えないから(40代 女性)
「家族・先祖の気持ちを大切にしたい」が5位でした。
墓じまいするかどうかを決める権限は、お墓の名義を継いだ使用者がもちます。
ただ自身が使用者であっても、「家族やご先祖様の気持ち」「お墓参りを大切にしている親族や友人の気持ち」を考えると、自分一人では決められないと感じる方も多いでしょう。
家族でお墓について話し合い、墓じまいをしないことに決めたというご家庭もありました。
自分が亡くなったときにしてほしい方法は「散骨」
自分がなくなったときに希望する供養の方法を聞いたところ、最も多かったのは「散骨(131人)」でした。
2位「先祖代々・家族の墓に入る(112人)」、3位「樹木葬(97人)」、4位「納骨堂(73人)」が続きます。
散骨や樹木葬など、遺骨を自然に還す「自然葬」を選んだ人が多くなりました。
ただ、自然に還りたいからという理由よりは、「遺族の手間がかからないから」という理由で選んだ人が多い印象です。
納骨堂や共同墓地なども、管理の手間は少なくなります。
1位 散骨
- 私は自分の墓があっても仕方がないと思っているし、お金もかけてほしくないです。なので、正直捨ててもらっても構いません。でも「捨ててくれ」と言われたら相手が困ると思うので、「海にでも撒いてくれ」と頼みます(30代 女性)
- 費用が安くお墓の管理もいらない。また海が好きなので、海に撒いてくれたら嬉しい(40代 女性)
- 業者に委託すれば数万円程度の費用ですむので、後の世代に墓地の心配をかけなくていい(60代以上 男性)
1位は「散骨」でした。
遺骨を海に撒く「海洋散骨・海洋葬」を希望する人が多いとわかります。
「自然に還りたい」「海が好き」という意見もありましたが、「お墓の維持費がかからないから」という意見も多数。
子どもや孫世代に負担をかけたくない人にとっては、メリットの大きい方法だといえます。
デメリットとしては「お墓参りができず、遺族が寂しい気持ちを抱くことがある」「新しい供養方法なので、家族の理解を得られないかもしれない」などがあります。
また、海水浴客や観光地の景観保護、漁業者との兼ね合いもあるため、どこにでも散骨していいというわけではないので注意しましょう。
2位 先祖代々・家族の墓に入る
- ご先祖様と一緒にいたいから(20代 男性)
- 地域的に「先祖代々の墓に入るのが当たり前」という考えが強く、先祖の墓に入らなかったら、残された人が「何で先祖の墓に入れなかったの?」と延々と聞かれると思うから(40代 女性)
- 当たり前だから(60代以上 女性)
2位は「先祖代々・家族の墓に入る」です。
「当たり前のように、先祖代々の墓に入ると思ってきた」「他の供養方法は考えたこともなかった」という人も多くなっています。
将来にわたってお墓を守っていくことが前提なら、家族と一緒のお墓に入るほうが管理しやすいという面もあります。
また「先祖代々の墓に入り、みんなで一緒にいられると思うと安心する」という声も複数見られました。
安心できる相手と一緒に入りたいため、「実家の墓に、実の両親と一緒に入りたい。配偶者の両親と一緒の墓には入りたくない」という人も多いようです。
3位 樹木葬
- 手間やコストがあまりかからないようにしたい(30代 女性)
- 「土に還る」のが、一番自分の好みに合う(50代 女性)
- 子どもに迷惑を掛けたくないので、樹木葬で十分です(60代以上 男性)
3位は「樹木葬」でした。
樹木や草花を墓標とするのが、樹木葬です。
「木が生えているところに、自由に遺骨を埋めたらいい」というわけではなく、墓地として認可されている場所に埋葬する必要があります。
お墓を購入するよりも安く済むことが多いのは、樹木葬がもつメリットのひとつ。
また墓地側が敷地を管理してくれるので、維持管理の心配もありません。
散骨と違って墓標となる木や植物がありますので、遺族がお参りしやすいのもメリットです。
4位 納骨堂
- 自分の子どもや孫に負担をかけたくないから。納骨堂なら定期的に集団でお参りや供養もしてくれるから嬉しい(20代 女性)
- コスパが良さそうだし、誰にも迷惑がかからなさそう(30代 男性)
- 散骨なども考えていますが、納骨堂が一番手間はかからないと思うから(40代 男性)
4位は「納骨堂」でした。
納骨堂とは、屋内で骨壺を収蔵するスペースのことです。
ひとつの納骨堂にたくさんの遺骨が収納されるため、マンションや集合住宅に例えられることもあります。
半永久的に管理者が供養してくれる「永代供養」がついている納骨堂も多く、維持管理の手間が少ないことから注目している人も多いようです。
宗派を問わない納骨堂や、ペットと一緒に入れる納骨堂もあります。
5位 希望はない/遺族に任せる
- 死んだ後まで子どもの負担になるのは嫌なので、子どものいいようにしてほしい(20代 女性)
- あとのことはどうでもいいので、楽なようにしてくださいと言いたいです。とにかく金銭面、精神面で迷惑をかけたくありません(30代 男性)
- 自分は死んでいるので関係ない(40代 女性)
「希望はない/遺族に任せる」が5位でした。
「とくにこだわりはないので、遺族が楽なようにしてくれたらいい」という人が多数。
根底には、死んでしまったら何をされようがわからないという考えもあるようです。
ただ、全部好きにしてと言われると、困ってしまう遺族もいるかもしれません。
故人の遺志を尊重したいと考える、優しい配偶者やお子さんであればなおさらでしょう。
「実家の墓に入れるのだけはやめて」など、最低限の希望は伝えておいてはいかがでしょうか。
事前に自分で納骨堂などについて調べておくのもいいですね。
6位 永代供養
- 墓をもつと、墓の手入れの手間や維持費がかかって、子どもに負担をかけてしまうから(30代 女性)
- 母方の祖母や叔母が同じ場所の永代供養墓に入っているので、自分も同じところでいい(40代 女性)
- お布施は必要かもしれないが、墓を維持する手間よりかは楽だと思うから(50代 男性)
「永代供養」が6位でした。
永代供養とは、墓地やお寺が半永久的に供養とお墓の維持管理をしてくれることです。
継承者が必要ないため、子ども・孫世代に負担をかけたくない人に向いています。
「納骨堂や樹木葬に永代供養がついている」「一般的なお墓に永代供養がついている」など、さまざまなタイプがあります。
なお、一定期限を過ぎたあとは見ず知らずの人と合祀される墓地も少なくありません。
合祀されると遺骨を取り出せなくなるので、抵抗がある場合は「合祀されない永代供養墓」を探しましょう。
7位 共同墓地
- お墓の管理で子どもに負担をかけたくないから、共同墓地に入れてほしい(30代 女性)
- 子どももいないので、なるべく人の負担にならないように(40代 女性)
「共同墓地」が7位でした。
「同じ地域の人たちが一カ所につくっている墓地」も共同墓地と呼びますが、アンケートに回答してくれた人は「見知らぬ人同士が一緒に納骨する供養塔など」を念頭に置いていると思われます。
後者の共同墓地だと永代供養がついていて、管理の手間がありません。
継承者も必要ないので、管理の手間やコストを抑えたくて、見知らぬ人と一緒のお墓に入っても構わないという場合には有力な候補になります。
まとめ
先祖代々のお墓を大切にしたい気持ちはあっても、お墓が遠方にあるので維持管理が大変と感じる人は多いようです。
維持管理できないと悩みながら放置しているより、お参りしやすく管理も行き届いている納骨堂などに移した方が、供養する側は心身ともに楽でしょう。
また「ご先祖様にとっても、放置されるより頻繁にお参りしてもらえる方がいい」という考え方もできます。
ただ供養についての考え方は家族間でも異なり、お墓を心のよりどころにする人や、先祖代々のお墓に入りたいと考えている人もいます。
勝手に墓じまいすると親族との関係が悪くなることも考えられますので、墓じまいを検討する際には、お墓に関わる家族の意見も聞いてみるのがおすすめです。