自分以外の名義があると土地全体での売却が難しくなる
自分以外の名義が入っている土地(=二者以上が共有する土地)は、共有者の一部だけで土地全体、「変更・処分行為」とよばれる法律行為を行うことは不可能です。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用元:民法第251条
では、変更というのはどのような行為をさしているのでしょうか。
具体的には次のようなものがあります。
対象物の性質を変えるような(=物理的変化を伴う)行為
- 建物の大規模修繕や建て替え
- 土地上への建物の建築
- 土地の土盛り
- 土地の造成(畑を宅地にする、など)
対象物を法律的に処分する行為
- 売買や贈与のような所有権を失う契約
- 担保権(抵当権など)、用益権(地上権など)を設定する契約
- 共有者間で決定した使用方法の変更
- 短期賃貸借(※)の期間を超えていたり、借地借家法が適用される賃貸借契約の締結
※短期賃貸借・・・「山林10年、山林以外の土地5年、建物3年、動産6カ月」(民法602条)。
自分名義の土地だけ売却する3つの方法
このように処分が不自由な共有土地ですが、売却する方法もいくつか考えられます。
自分の共有持分だけを売却する
冒頭でお伝えしたとおり、自分の共有持分だけであれば、それぞれの共有者が自分の判断のみで売却することが可能です。
ただ、法的に持分のみの売買が可能とはいえ、持分だけを一般向けに売却しようとしても買い手がつくことは通常、考えられません。
そこで、売却できる相手方を考えて選定しなければなりませんが、売却先の選び方については下に詳しく解説します。
土地を分筆し単独名義の土地として売却する
共有の土地を物理的に分ける、つまり分筆して各共有者の単独名義にした上で売却するという選択肢もあります。
「共有」というのは1つの登記簿の甲区(所有権等を記載する欄)に2名以上の名義が入っていることですが、その状態では物理的に「Aさんが北側、Bさんが南側のみ使用できる」といった状態ではありません。
あくまでも共有は「1つの土地全体に対して、それぞれの共有者が持分に応じて全体を利用できる」という考え方になります。
例えばABが2分の1の共有なのにAが1人で土地を占有して利用し、Bに利用させないような場合は、BはAに対して賃料の2分の1相当を請求することが可能という理屈になります。
分筆は、現在1つである土地を物理的に分けて、登記簿を2つ(もしくは3つ以上)にすることです。
1つの土地を2つに分けるための分筆登記をすると、現在の所有者のまま2つの登記簿に分割されますので、ABが2分の1ずつで共有する土地を2つに分けるとAB共有のまま土地が2つできることになります。
その後、ABの間でそれぞれの登記簿の持分を交換することによってはじめてAとB単有の土地になります。
このプロセスを経て単有になった土地は、AとBそれぞれが自分の判断で売却可能となります。
共有物分割請求をして売却する
売却を希望する共有者が他の共有者に対して「共有物分割請求」を行い、請求した共有者が自らの単有にしてから売却するという方法があります。
共有物分割請求とは、不動産等の共有状態を解消するために(=単有にするために)行われる請求です。
もちろん裁判外の話し合いで行うことも可能ですが、協議を尽くしてもまとまらない場合は「共有物分割訴訟」という裁判上の請求にすることも可能です。
しかし、単に売却のみを目的とした共有物分割請求はあまりおすすめできません。
例えば共有物分割請求が訴訟にまで発展した場合は、弁護士費用などにより経済的負担が大きくなることも考えられるからです。
また、共有物分割訴訟は他の訴訟と違って「固有必要的共同訴訟」といって、共有者全員を巻き込んで裁判を行わなければならないという特徴があります。
そうなると、元から対立していた当事者だけではなく、その他の共有者との関係まで悪化することもあり得ます。
もし、売却によりその不動産の共有関係から離脱したいというだけの目的であれば「自己の共有持分のみの売却」によって十分目的は達成されますから、その方が時間、費用の面から見てもずっと効率がよいと考えられます。
自分の共有持分だけを売却する相手先の選び方
自分の共有持分を売却するにあたって、相手先をどのように決定するかは大切なことですので、適切な選定の仕方を考えてみましょう。
他の共有者に交渉する
最も現実的で資産価値の高い方法は「他の共有者に売却すること」です。
他の共有者が購入することで結果的に単有にできれば、土地全体の利用がしやすくなるという大きなメリットがあります。
つまり、相手方がメリットを理解してくれればスムーズに売却できる可能性が高まるのです。
ただ、親族など親しい間柄である場合、逆に、売買価格を巡って双方が合意できなくなる可能性もあります。
他の共有者への売却を試みるには、もともと連絡が取り合える間柄であることはもちろん、話し合いができる程度の良好な関係を築けていることが前提となります。
共有持分専門の不動産買取業者に売却する
共有持分の買取を行ってくれる不動産買取業者に売却するという手段もあります。
他の共有者の連絡先がわからなかったり、手紙を出しても返事が来ない、話し合いを拒否されているといった事情がある場合は特におすすめです。
自己の共有持分のみを売却するのであれば、特に他の共有者に事前に伝えたりする必要もありません。
完全に秘密裏に売買を完了させ、素早く現金化することが可能です。
弊社では、一般的に売却の難しい共有持分のみでも、積極的に買取を行っております。実際に売却するとしたらいくらで売れるか気になる方は、気兼ねなくご連絡ください。
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土地と建物の名義が異なる場合の売却方法
土地の上に建物が存在し、それぞれ名義が異なる場合には自分名義の土地のみを売却することは現実として難しくなりますが、どのように売却するべきかを考えてみましょう。
法的には土地、建物の名義が異なる場合に土地のみを売却することも可能ですが、その場合は建物を所有するために何らかの借地権(地上権や賃借権など)が付着しているはずです。
よって土地購入者が購入後自由に利用することができなくなるという障害があるため、更地を売却する場合とは異なる工夫が必要になります。
建物を購入・受贈して自分名義にしてから売却する
土地所有者が建物を購入したり贈与を受けたりして自分名義にしてから、土地と建物をまとめて売却する方法があります。
名義が同一人であれば売買契約等の事務手続きも一人で行うことができ、シンプルで期間も早く終えられることが多くなります。
ただ、注意点としては以下のようなものがあります。
- 売買でも贈与でも、建物の名義を移す際に登録免許税や司法書士報酬などの「移転コスト」がかかる。
- 贈与を受ける場合は贈与税がかかるかどうか、いくらくらいになるか、減税を受けられる特例などがないかどうかを事前に確認する必要がある。
建物の所有者と交渉し土地と同時に売却する
建物所有者の協力が得られるのであれば、土地建物を同時に売却する方法があります。
この場合の注意点としては、両者が一緒に契約や決済などの立会いに行き、権利証(または登記識別情報通知)や印鑑証明書等の書類も両方の当事者が準備しなくてはならないことです。
両者が遠方に住んでいたり多忙な場合は建物所有者の協力を得ることが難しくなる場合もあります。
ただ、どうしても同時に立ち会うことが不可能な場合、売却の合意さえ得られれば細かい手続きそのものは委任状を持参した代理人に委ねることもできます。
代理人を立てる場合は、司法書士による意思確認など「本人でなければできない部分」のみ協力してもらうことになります。
訴訟を起こし建物を解体してから土地を売却する
空き家になった建物がある場合は訴訟によって建物解体を求め、解体後に更地になった土地を売却する方法があります。
現在、全国の至るところで空き家の増加が問題視されていますが、古くなって解体する方が望ましい建物は特に早めの処置が求められます。
建物所有者が協力してくれない場合は「建物収去土地明渡請求訴訟」を起こし、強制的に建物を解体させる方法もあります。
ただ、現在空き家の多くは登記簿上の所有者の行方がわからなかったり、相続が発生しており相続人が多数にのぼるなどの問題を抱えています。
当事者死亡により戸籍をたどるなどの相続人調査が必要になる場合もあるため、登記名義人との連絡が不可能であれば、最初の段階から弁護士に依頼した方が早く解決できるでしょう。
また、相続人の数によっては費用が多額にのぼることもありますので、事前に弁護士の概算見積もりを取ると安心です。
土地のみを専門の買取業者に直接売却する
上記に上げた方法は、いずれも土地を売却するまでに、建物所有者への交渉や裁判の手続きをしなければならず、費用もかかります。
もし「面倒なことはしたくない」「費用をかけずに売却したい」というのであれば、専門の不動産買取業者に相談しましょう。
専門の不動産買取業者であれば、建物名義が無い土地のみであっても、そのままの状態で買取可能な場合があります。
弊社でも積極的に土地のみの買取を行っておりますので、実際にいくらで売れるのか樹になる方は気軽にお問い合わせください。
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自分名義の土地のみを売却する際に気をつけるべきポイント
自分名義になっている土地のみを売却しようとする際、注意しなくてはならないポイントを確認してみましょう。
住宅ローンの残債がある場合は金融機関への交渉が必要
共有になっている土地に自分名義の持分があり、かつ金融機関の住宅ローンがついていたら売却する際には金融機関への事前の相談、交渉が必要です。
登記簿にはまだ金融機関の抵当権がついているはずですが、その状態での売却が可能なのでしょうか。
単なる登記技術の話から言えば、「抵当権を触らずに自分の持分のみ売却」は可能です。
しかし、金融機関に無断で持分の名義を移しても以下のような問題が残ります。
- 売却したからといって金融機関との関係が終了するわけではなく、ほとんどの場合は持分を売却した本人は「ローンの債務者」になっており、登記簿にもその旨が掲載されている。
所有者としての立場と債務者としての立場は連動するわけではないため、所有者ではなくなったとしても自動的に債務を免れるわけではない。 - 住宅ローン契約で「所有権を移転する際は銀行の許可が必要」のようになっていることが一般的であるため、黙って持分を移転するとローン契約違反となり、残債務一括返済を迫られることがある。
例えば、住宅ローンの残債務がかなり減っており、売却したい人が残債務全体を弁済し抵当権を抹消してしまえば持分のみの売却も可能です。
しかし、どうしても一括返済が不可能である場合には売却は難しくなります。
仮に土地全体を売却するのであれば、完済が不可能でも「任意売却」できることがあります。
任意売却とは、完済できない状況で債権者に交渉して一部の弁済で抵当権を抹消してもらう方法ですが、持分のみの売却で任意売却を行うことは現実的ではありません。
なぜなら抵当権は不動産全体についているものですので、一部の共有者の持分のみを外すことは金融機関が通常認めないからです(登記技術的には可能ですが)。
整理すると、「売却希望の共有者が残債務全額を返済」「抵当権全体を抹消」「持分のみ任意売却ではない通常の売却により行う」という流れで行わなくてはならないということです。
売却先を安易に決めるとトラブルのもとに
自分名義の部分のみ土地を売却する際には、売却先を安易に決定するとトラブルを招く可能性があるため、慎重に選定する必要があります。
他の共有者との関係をよく考えずに売却の話を持ちかけると、価格などの条件面でトラブルになり、人間関係を損なうこともあるので注意しなくてはなりません。
不動産業者への売却でも、よくわからないブローカーのような業者に依頼してしまうと、不適切な価格をつけられたり、売却の話が知らない間に他の共有者へ漏れていることもありますので十分気をつけましょう。
良質な業者を厳選するためのポイントを以下の記事に解説していますので参照してください。
まとめ
この記事では、他の名義人がいる土地で、自分名義の部分のみを売却する方法をご説明しました。
おさらいになりますが、共有名義になっている土地を、自分名義の部分だけで売却する方法は以下の3つです。
- 自分の共有持分だけを売却する
- 土地を分筆し単独名義の土地として売却する
- 共有物分割請求をして売却する
上記の方法の中で、他の共有者と一切関わることなく自分名義の土地を売却できるのが、共有持分のみを売却する方法です。
共有持分のみでの売却を検討しているのであれば、持分専門の不動産買取業者へ相談しましょう。
弊社でも、積極的に共有持分の買取を行っております。実際に自分の共有持分がいくらで売れるのか気になる方は、以下の査定フォームからお気軽にご連絡ください。