ワンルーム条例とは各自治体が定めた建築制限のこと
ワンルーム条例とは、各自治体が建築基準法とは別に独自で定めたワンルームマンションの建築・管理に対する制限のことです。
ワンルーム条例は主に人口が集中する都市部で制定されています。
マンション近隣住民とのトラブルを未然に防ぎ、適切な住環境を形成する目的で、廃棄物の保管方法や駐輪施設の設置義務などが定められています。
なおワンルームとは専有面積を指す言葉であり、間取りが1DK・2DKでも面積が既定の面積に満たなければワンルーム規制の対象となる点に注意が必要です。
条例の示す「ワンルーム」の定義は自治体により異なり、「30㎡未満」「40㎡未満」などさまざまです。
規制の詳細は自治体により異なるため、各自が建設を予定している自治体の規制内容を確認しなければなりません。
このあとワンルーム条例についてさらに詳しく解説します。
ワンルームマンション規制には条例と指導要綱がある
自治体のワンルームマンション規制には、条例による規制と指導要綱の2種類があります。
条例による規制は建築基準法第40条にもとづいて設定されており、建築基準法と同じ効力があるため、条例の規制は遵守しなければならず、違反すると罰則を受けることもあります。
一方の「指導要綱」による規制は、マンション建設に対する行政指導の指針に過ぎず、法律とは関わりがありません。
指導要綱には条例のような強制力はなく、マンション建設予定者は指導に従う義務はないとされています。
とはいえ、もし申請者が建築指導要綱違反で是正勧告を受けた場合、改善しないと建築基準法上の「建築確認申請」を受け付けてもらえない恐れがあります。
つまり法的には強制力のない指導要綱でも、実質的な強制力があるのです。
なお、一部の自治体がわざわざ強制力の弱い指導要綱を選択する背景には、条例の制定には議会の審議が必要な半面、指導要綱なら議会に諮らず、自治体が独自で規制を設けられる事情があります。
実は指導要綱でワンルーム規制を実施している自治体でも、今後条例化される可能性が高いので、動向に注意しましょう。
ワンルームマンション税が課税される自治体もある
自治体の中には、一定の基準を満たさないマンション建設に対し「狭小住戸集合住宅税(通称 ワンルームマンション税)※」が課税されるところもあります。
※狭小住戸集合住宅税とは
ゆとりある住環境を整備し、ファミリー層に住みやすい街づくりをする財源とするための税金。狭小住宅の建設に対し課税される。
東京都豊島区では、2004年4月に以下の狭小住戸集合住宅税を導入しています。
項目 | 詳細 | |
---|---|---|
課税対象となる狭小住戸 | 集合住宅における1住戸の専用面積が30平方メートル未満のもの | |
課税対象となる行為 | 建築等(新築、増築、大規模修繕、大規模模様替、用途変更等により新たに狭小住戸が発生すること) | |
税額 | 狭小住戸1戸につき50万円 | |
非課税事項 | 狭小住戸の数が8戸以下の建築等の行為に対しては、課税を全額免除 |
同制度によれば、建築主は30㎡未満の住戸の「建築等」を行う工事着手から2カ月以内に、最低450万円を申告、一括納付しなければならないということです。
参照元:狭小住戸集合住宅税(通称「ワンルームマンション税」)|豊島区公式ホームページ
豊島区のワンルームマンション税は「法定外普通税」のため使途は特定されていないものの、主に以下の用途で活用しています。
- 区営住宅の改修費
- 子育てファミリー世帯への家賃助成事業
- 高齢者世帯の住み替え家賃助成事業
現在のところワンルームマンション税を導入しているのは豊島区のみですが、他の自治体が追随して導入する可能性も少なくありません。
ワンルーム条例の2つの目的と背景
ここでは多くの自治体でワンルーム条例が制定された目的と背景を解説します。
狭小住宅の乱立を抑制する目的
ワンルーム条例制定の目的の1つに、狭小住宅の乱立抑制があります。
賃貸住宅を建設する場合、建設主にとっては狭い部屋で多くの戸数を作るほうが家賃の㎡単価が上がり、収益性を高められます。
そのため、東京都23区のように人口が集中し入居希望の多いエリアにおいては、収益目的の狭小なワンルームマンションばかりが乱立する恐れが生じました。
実際に1990年代後半から2000年代にかけて、バブル崩壊後の地価下落と金利低下、さらに晩婚化による単身者の増加などが引き金となり、東京23区ではワンルームマンションの建設ラッシュが訪れています。
そこで「適正な居住環境を担保する」という目的のもと、多くの自治体で狭小住宅の建設を抑制する条例や指導要綱を制定することとなったのです。
若年単身者の流入を抑制する目的
ワンルーム条例制定には、若年単身者の流入を抑制しファミリー層の流入を促す目的もあります。
2000年前後の急激な若年単身層の増加により、東京都心ではマンション周辺住人から以下を理由としたワンルームマンション建設反対の声が挙がるようになりました。
- 若者は地域活動にほとんど参加しない
- 騒音やゴミ出しルール違反などのトラブルが多い
- 住民票を移さず住民税を支払わない者も多い
ワンルームマンション反対の声を受けた自治体では、若年単身世帯の流入を抑制するために、ワンルームマンション建設の規制について本格的に検討を始めたのです。
加えて自治体側としても住民税を支払わない若年単身者より、高額納税が見込まれるファミリー層を誘致したい思惑が重なり、ワンルーム条例の制定を進めた経緯があります。
2007年の税源移譲もワンルーム規制の背景にある
自治体がワンルーム規制に踏み切った背景には、2007年の国による「税源移譲」もありました。
税源移譲とは「三位一体の改革」の1つで、今まで国民が国へ納めていた税を減らすと同時に、都道府県や市町村に納める税を増やすことで、国から地方へ税源を移すことです。
三位一体の改革では「地方にできることは地方に」との理念にもとづき、以下の3つが同時に行われました。
- 国から地方への補助金・負担金を廃止・縮減
- 地方への税源移譲
- 地方交付税の見直し
税源移譲により、自治体が自ら財源を確保する必要性が高まったため、住民税収アップへと政策をシフトしたのです。
結果として、税収に直結しにくい若年単身世帯よりも高所得のファミリー世帯を優先するワンルーム規制へとつながった側面があります。
参照元:総務省「国から地方への税源移譲 (三位一体の改革)」
参照元:総務省「税源移譲」
ワンルーム条例の4つの主な規制内容
ワンルーム条例の規制内容は自治体により異なりますが、ここでは東京都23区を例にとり、主な規制内容を紹介します。
最低住戸面積の規定
自治体のワンルーム条例では、ほとんどの場合ワンルームマンションの「最低住戸面積」を定めています。
最低住戸面積とは、マンション1戸に義務付けられた最低限の面積のことで、東京23区の場合は国土交通省が定める最低居住面積水準にもとづき25㎡と定めているところがほとんどです。
25㎡とは約15.4畳を指し、ルームタイプでいえば1Rかキッチン・居間のある1Kをイメージするとわかりやすいでしょう。
なお一部の政令指定都市では、最低住戸面積を18㎡前後で制定している地域もあり、逆に東京都渋谷区では最低住戸面積が28㎡と広めに設定されているなど、自治体によって規制の内容は異なります。
月家賃10万円の賃料単価を渋谷区と他のエリアで比べると、25㎡エリアでは4,000円のところ渋谷区では約3,500円/㎡となり、500円ほど収益率が下がってしまうことがわかります。
かつては23区内でも18㎡程度の物件が少なくありませんでしたが、条例や要綱の制定後は計画段階で25㎡の基準をクリアしなければならず、収益を出しにくくなったことは明らかです。
ファミリー向け住戸の設置の義務
主なワンルーム規制の1つに、ファミリー向け住戸の附置(設置)義務もあります。
ファミリー層の流入を図りたい自治体の多くは、新しいマンション建設基準に住戸面積の広い「ファミリー向け・家族向け」住戸の設定を義務付けました。
ファミリー向けの定義は自治体により異なりますが、おおむね40㎡以上とされているようです。
たとえば東京都中央区では「40㎡以上(ファミリー向け)住戸の床面積合計が全住戸合計の1/3以上」と規定されており、残り2/3の住戸が40㎡未満の単身者向けということになります。
ファミリー向け住戸附置が条例化されている自治体と、指導要綱に留めている自治体とがあり、東京23区では以下のように分かれています。
【条例化している自治体】
中央区、港区、新宿区、文京区、目黒区、江東区、台東区、墨田区、世田谷区
【指導要綱の自治体】
品川区、杉並区、千代田区(豊島区)
なお、条例で規制するエリアでマンションを建設する際には、たとえファミリー層のニーズのないエリアであっても、条例に従いファミリー住戸を設置しなければならない点に注意が必要です。
管理人の配置の義務
自治体によってはワンルーム条例の中で、管理人の設置を義務付けています。
自治体にもよりますが、一般に戸数が多いほど管理人の配置基準が厳しい設定がほとんどです。
たとえば東京都江東区の場合、住戸数によって管理体制が以下のように変わります。
廃棄物(中略)の収集を行う時間帯には管理人を駐在させなければならない。
(1) 30戸未満 管理人を週1日以上一定の時間帯に駐在させること。
(2) 30戸以上50戸未満 管理人を1日4時間以上、かつ、週5日以上駐在させること。
(3) 50戸以上 管理人を1日8時間以上、かつ、週5日以上駐在させること。
29戸までなら管理人をパートタイムで雇えば済みますが、50戸以上になるとほぼフルタイムで雇用しなければなりません。
住戸数に比例して人件費負担が増えて収益性が落ち、かといってコストを家賃に上乗せすれば入居者募集が難しくなるでしょう。
ファミリー層からしてみれば、管理が行き届いているほど良いともいえますが、その分若年単身者に高い家賃を強いることにもなりかねません。
一定台数の駐車場確保の義務
ワンルーム条例の中で、駐車場台数の確保を定めている自治体も少なくありません。
たとえば東京都豊島区の場合「駐車施設の設置基準は、少なくとも1台の駐車区画を幅3.5メートル以上、奥行き5メートル以上設ける」「1台当たりの規模は、幅0.5メートル、奥行2メートル以上とし、位置を白線などで明示すること」とされています。
参照元:豊島区中高層集合住宅建築物の建築に関する条例施行規則
駐車台数が住戸数に応じて定められているケースも多く、建設予定地が狭い場合は、敷地内での駐車場確保が難しくなります。
結果的に立体の機械式駐車場を設置するしかなく、建設コストアップにつながってしまうでしょう。
宅配ボックスの設置などを義務付ける自治体もある
近年は、ワンルームマンションに宅配ボックスの設置を義務付ける自治体が増えています。
単身者世帯では宅配便の再配達率が高いことから、かねてから配達ドライバーの負担や路上駐車による近所迷惑が問題になっていました。
さらに運輸業界の「2024年問題(残業規制による配達員不足)」が重なったことから、国土交通省の宅配ボックス推進を受け、自治体がワンルームマンションへの宅配ボックス設置を義務づけたのです。
東京都江東区と埼玉県川口市では、2024年4月からワンルームマンション建築の要件に宅配ボックスの設置が義務付けられています。
参照元:東京都江東区「マンション・業務用建築物の建設を計画される方への手引き(詳細版)」
参照元:川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例の手引きについて
宅配ボックスの設置費用の負担者は建築主とされ、設置にはダイヤル式で10ボックス40万~60万円ほど、電子式で80万~100万円ほどかかります。
補助金もあるとはいえ、住戸数分の設置負担は決して軽いものではありません。
また自治体によっては宅配ボックス以外にも、以下のような規制が設けられているところがあります。
- バリアフリー設計
- 壁面後退距離
- 集会室・多目的室の附置
- 地域におけるコミュニティの推進
- 防災備蓄倉庫の附置
- 最低限の緑地の確保
いずれの規制も建築・運営コストを増加させ、マンション設計を難しくする要因となっています。
東京都23区のワンルーム条例・要綱一覧
以下に東京都23区のワンルーム条例・指導要綱の概要をまとめました。
(40㎡未満を「単身者向け」、40㎡以上(自治体によっては50~55㎡など)を「家族向け」と読んでおおむね差し支えありません)
区・最低面積・対象規模 | ファミリー住宅附置 |
---|---|
千代田区(指導要綱)
最低面積:25㎡以上 対象規模:階数4以上かつ専用面積30㎡以下の住戸数10以上 |
住戸の総戸数が20戸以上の場合、ファミリー住戸(専用面積40㎡以上)の専用面積合計が全住戸の専用面積の合計の1/3以上 |
中央区
最低面積:25㎡以上 対象規模:住宅数10戸以上 |
住戸の専用面積が40㎡以上の住戸の床面積の合計が、住宅用途床面積(容積対象床面積)の1/3以上 |
港区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
単身者向け共同住宅の住戸数が30戸以上の場合、住戸専用面積が50㎡以上の住戸を ①商業地域(総戸数-29)×0.1+1以上 ②その他の地域(総戸数-29)×0.2+1以上 |
新宿区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
ワンルーム住戸が30戸以上で専用面積40㎡以上の住戸を ①1種低層内(ワンルーム住戸数-29)×1/2以上 ②その他の用途地域内(ワンルーム住戸数-29)×1/3以上 |
文京区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
住戸総数15戸超で(住戸総数-15)×1/2以上を専用面積40㎡以上 |
台東区
最低面積:25㎡以上 対象規模: 住戸数10戸以上の下宿、共同住宅、寄宿舎 |
①総住戸数15~49戸、高さ40m以下 ⇒専用面積40㎡以上の住戸を総戸数の1/3以上 ②総住戸数50~99戸、高さ40m超50m以下 ⇒総戸数の3分の1以上を40m²以上の住戸とし、そのうち総戸数の9分の1以上を50m²以上の住戸とする ③総戸数が100以上又は高さ50m超 ⇒総戸数の2分の1以上を40m²以上の住戸とし、かつ、そのうち総戸数の4分の1以上を50m²以上の住戸とし、かつ、そのうち総戸数の20分の1以上を75m²以上の住戸とする |
墨田区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
①住戸数25戸以上50戸未満 ⇒住戸数の30%以上を専用面積40㎡以上の住戸 ②住戸数50戸以上100戸未満かつ50%以上が専用面積40㎡以上 ⇒住戸数の20%以上を専用面積70㎡以上の住戸ただし、全住戸が40㎡以上であった場合を除く ③住戸数100戸以上 ⇒住戸数の50%以上を専用面積40㎡以上の住戸、20%以上を専用面積70㎡以上の住戸 |
江東区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
40㎡未満の住戸数が20戸以上の場合、(40㎡未満住戸数-19 戸)×1/3以上 ※最大 29 戸 |
品川区(指導要綱)
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
①40㎡未満の住戸が15~19戸で40㎡以上を1戸 ②40㎡未満の住戸が20~29戸で40㎡以上を2戸 ③40㎡未満の住戸が30を超える場合は用途地域に応じる |
大田区
最低面積:25㎡以上 対象規模:計画戸数15戸以上 |
30戸以上の共同住宅等の場合、40㎡超の住戸を ①1種低層・2種低層 ⇒1+(住戸数-30)×1/2 ②1種中高層~準住居 ⇒1+(住戸数-30)×1/3 ③準工業・工業 ⇒1+(住戸数30)×1/5 ④近商・商業 ⇒1+(住戸数-30)×1/10 |
世田谷区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
ワンルーム住戸数30超かつ延べ1,500㎡以上 ⇒専用面積40㎡以上かつ平均50㎡の住戸戸数を(ワンルーム住戸-30)×1/2以 上 |
渋谷区
最低面積: 対象規模: |
専用面積50㎡以上の住戸を ①商業地域 ⇒(総戸数-15)×1/3以上 ②商業地域以外 ⇒(総戸数-15)×1/2以上 |
中野区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
(総戸数-11)×1/2以上 |
杉並区(指導要綱)
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
ワンルーム住戸数が20超の集合住宅 ⇒20を超える数×1/2以上 |
豊島区(条例・要綱)
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
※要綱2024.10.1~ 3階建て以上かつ30⼾以上の共同住宅(商業地域は対象外)の場合、 |
北区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
専用面積40㎡未満を30戸以上含む |
荒川区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
住戸の数に応じ50㎡以上の住戸となるようにする。 |
板橋区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
小規模住戸数が30以上の場合、以下のいずれかを選択 |
練馬区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
「練馬区ワンルーム形式の集合住宅を建築する場合におけるファミリー住戸の設置に関する指導要綱」で規定。 |
足立区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
※ワンルーム形式の上限は29戸 ワンルーム形式住戸30戸以上 ⇒(ワンルーム形式住戸数-29)以上の住戸数を40㎡以上の住戸とする。 なお上限を超える数のワンルーム住戸を計画する場合は、ワンルーム住戸の計画数-29と同数の55㎡以上の住戸を附置すること。交通利便地域(駅からおおむね500m以内)の場合は、30戸を40戸、29を39と読み替える。 |
葛飾区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
①住戸数15戸以上29戸以下 |
江戸川区
最低面積:25㎡以上 対象規模: |
①法人名義の場合、15戸未満の部分は平均30㎡以上、これを超える部分は平均70㎡以上 |
※寄宿舎=シェアハウスのこと
※長屋=廊下や階段などの共有部分がない集合住宅(テラスハウス)のこと
なお規制ではありませんが、葛飾区では2023年「全戸数の3分の1以上のファミリー層向け住宅設置」などの条件を満たした場合の補助金制度が設けられています。
ワンルーム条例による4つの影響
前述のように東京都23区内ではワンルーム条例によって、一棟丸ごと単身者向けのマンションを建てることはできません。
ここではワンルーム規制により、マンションの建設と経営にどのような影響が生じるのかを解説します。
狭い土地ではマンションを建てられなくなる
ワンルーム条例が制定された地区においては、狭い土地でマンションを建てることが難しくなります。
どうにかマンションを建てられる程度の敷地面積、例えば100㎡約30坪程度の場合、ファミリー住戸や駐車場などの必要設備を設置すると、住戸数を確保できない可能性が高いです。
仮に23区内で立地は良かったとしても、住戸数が少なければ収益化できるほどの家賃を得られず、投資に見合った収益を上げられないかもしれません。
家賃が上がり入居者が付きにくくなる
ワンルーム条例の最低面積規制によって一戸あたりの家賃が高くなると、入居者がつきにくくなります。
実は2000年代のワンルーム条例以前にも、最低専有面積規制自体はあったものの当時は基準が緩く、一戸あたり18㎡程度でした。
規制が緩かった頃に建設された18㎡のワンルームマンションと比べると、新しい25㎡以上の家賃相場は2倍前後の高さです。
狭くても家賃が安いほうがよいと考える単身者からは、新しいワンルームマンションが敬遠される可能性が高いでしょう。
ファミリー住戸が埋まらず長期在庫になる
ワンルーム条例の規制によって附置されたファミリー住戸は、一般に入居しにくく長期空室のままになる恐れがあります。
もともとファミリー層は一般に住宅の購入希望が高く、賃貸希望は高くありません。
実際、弊社AlbaLinkで実施した男女500人に対する「家を買ったタイミングランキング」アンケートでも、以下のような結果が出ています。
家を買ったタイミングで最も多かったのが「妊娠・出産(122人)」、次いで「子どもの入園・入学(79人)」、3位が「結婚・婚約(77人)」でした。
ここからも、ファミリー層は賃貸マンションよりも持ち家を希望していることが分かります。
さらにファミリー層は一般に生活リズムの違う単身者との混在を嫌うため、ワンルーム・ファミリー一体型のマンション需要はかなり低いといえるでしょう。
入居付けが難しければ家賃を下げざるを得ないため、ファミリー住戸の設置はそれだけマンションの収益性を落とすことにつながります。
実際には家賃を下げても入居づけができない長期在庫になる可能性が高いです。
価格の安い中古マンションに入居者が流れる
規制を受けた新築マンションよりも、家賃の安い中古物件に入居希望者が流れる可能性が高いです。
部屋が広い分もともと家賃が高いうえに、条例どおりの設備を設置すれば、費用負担分も家賃に上乗せせざるを得なくなります。
一方で条例制定前の古いワンルームマンションなら面積が狭く、ファミリー住戸や駐車場などの設備投資も不要だったため、家賃も安く抑えられているのが一般的です。
ワンルームの入居希望者には経済的な理由により、規制前の古くて狭いワンルームしか選べない学生や独居高齢者も多く、新しいマンションは彼らの選択肢から外れる可能性が高いでしょう。
ワンルーム条例の6つの対応策
ワンルーム条例のある自治体でマンションを健全に運営するには、規制による影響を最小限に抑えることが重要です。
ここではワンルーム条例の影響を抑えるための対応策を紹介します。
自分の土地がマンション用地に適しているかどうかも含め、この機会にじっくり検証してみましょう。
複数の建築プランで収益性を比較する
ワンルーム条例のある自治体でマンションを建設する場合は、複数のハウスメーカーの建築プランを見て収益性を比較することが大切です。
厳しい条例のある自治体では、規制による影響をどう抑えるかによってマンションの収益性が変わってきます。
複数のハウスメーカーのプランを見れば、その中からもっとも収益性の高いプランを選択できます。
なお複数社に提案を依頼する際には、事前にある程度土地活用で重視するポイントや方針を明確にしておくことも大切です。
土地活用の方向性を明確にしておけば、土地の特性や建築主の事情を考慮してくれる、もっとも提案力のある業者を選べるでしょう。
ファミリータイプを上層階に配置する
ワンルーム条例ではファミリー住戸の附置が定められてれている場合がほとんどです。
ファミリー住戸の附置義務がある場合には、ファミリー住戸を上層階に、ワンルーム住戸を下層~中層階までに配置するのが基本とされています。
単身者向けのワンルーム住戸にはもともと強い賃貸需要があるので、1~2階であっても入居者の確保は可能ですが、ファミリー層は賃貸需要そのものが高くありません。
ただでさえ下層階はセキュリティや眺望などの理由から入居付けが難しいので、ファミリー住戸を空室にしないためには上層階に配置するのがよいとされているのです。
とはいえ、小さな子どものいる家庭では、以下の理由から下層階へのニーズも高いのが一般的です。
- バルコニーからの転落の心配
- エレベーター移動による負担と時間的ロス
- 子どもの足音による下階への気遣い
ファミリー住戸を上層階に配置する場合は、防音や移動導線などに配慮すると同時に、入居希望者の心配を上回る強いアピールポイントが必要でしょう。
ファミリータイプの建物内導線を分ける
ファミリー住戸を附置しながら収益性を保つためには、ファミリー住戸の建物内導線を他と完全に分けることも1つの方法です。
同じマンションにワンルームとファミリータイプが混在していると、若年単身者が子どもが寝ている時間に大きな音を立てて帰宅したり、友人と騒いだりしてトラブルになる可能性があります。
そのためファミリータイプの購入希望者は、生活パターンの異なるワンルーム入居者との混在を避けたいと考えるのが一般的です。
ワンルームとファミリータイプとでエレベーターや通路などの建物内導線が完全に区分されていれば、ファミリー世帯も安心して入居できるでしょう。
ただし共用スペースが増える分住戸数が抑えられ、収益を圧迫してしまう恐れがある点に注意が必要です。
容積率を下げて条例を回避する
ワンルーム条例のある地域でマンションを建設する場合には、容積率※を下げて条例自体を回避する方法もあります。
※容積率とは
建物の延べ床面積を敷地面積で割った割合のことで、敷地面積に占める建物の延床面積の割合。
東京23区の容積率は用途地域により200%~500%前後で、ワンルーム規制がなければ容積率いっぱいに住戸数を増やすほうが収益性が高まります。
しかしワンルーム規制下で住戸数を増やすと、ファミリー住戸の附置や管理人の配置義務が生じるため、あえて条例を下回る住戸数に抑えるほうが効率的な場合もあるのです。
戸数を減らして条例の対象から外れれば、容積率は下がりますがワンルームだけでマンションを設計できるため、賃料単価を上げられます。
結果として投資対効果が高まるため、マンションを建てられる敷地にあまり余裕がない場合には、容積率にこだわらない方が得策といえます。
とはいえ、敷地を最大限に利用できないことには変わりないため、他の土地活用方法と併せて検討することがおすすめです。
マンション以外の土地活用法も検討する
ワンルーム条例によってマンションでの土地活用が難しそうなら、他の土地活用法も検討してみましょう。
東京23区で賃貸マンションを建てられる敷地があれば、オフィスビルやビジネスホテルを建てる方法もあります。
駅前などの立地が良い土地であればテナントやシェアオフィスなどの選択肢もあり、狭小地の場合には以下への転用も有効です。
- 駐車場(月極駐車場・コインパーキング)
- コインランドリー
- 自動販売機
- 露店やキッチンカー、屋外ギャラリーなどへの時間貸し
ただし最適な土地活用方法は、土地の立地や特性、重視するポイント(収益性、運営の手間やランニングコスト、節税など)などによって異なります。
例えば、少ない先行投資で設置できる駐車場や自動販売機の場合は節税効果が低いため、収益化に失敗すると赤字になる恐れがあるので注意が必要です。
土地の立地や特性は地元の不動産業者が把握している場合が多いので、不動産業者に土地活用方法を相談するとよいでしょう。
土地をそのまま売却する
土地の最適な活用法が見つからない場合は、土地をそのまま売却することも検討しましょう。
先述したように、ベストな土地活用方法は立地や重視すべきポイントによって異なり、大半の土地活用方法には高度な経営ノウハウが必要とされます。
もし運用方針がブレたり立地条件を見誤ったりすると、運用するほど赤字が膨らむ可能性もあるので注意が必要です。
しかし土地を売却してしまえば運用の心配がなく、まとまった資金も手元に入ります。
東京23区内の土地を売却すれば、売却金でワンルーム条例のない土地を購入し、マンションを建設できる可能性もあるでしょう。
特に不動産を相続で取得している場合は、相続から3年10カ月以内に売却すると売却益にかかる税金が安くなる特例も適用されるため、早めに売却するのがおすすめです。
参照元:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
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まとめ
ワンルーム条例では、若年単身者の流入を抑制しファミリー層を誘致する目的で、ファミリー住戸の附置・管理人の設置などが義務付けられています。
こうした規制により、ワンルーム条例がある自治体では建設・運用コストの増加で収益が圧迫されるだけでなく、入居者募集も困難にならざるを得ません。
まず、最低住戸面積に合わせて高い家賃を設定すれば、若年単身者の入居募集が難しくなります。
また、ワンルームとファミリー住戸が混在することによって、ファミリー層のニーズも満たせなくなるため、ファミリー住戸の空室リスクも避けられません。
さらにワンルーム・ファミリーの導線を分ければ、より多くのスペースが必要となり住戸数が抑えられてしまいます。
このような規制の多いワンルーム条例のある自治体では、ある程度広い土地でないと収益の出るマンション建設が難しいのが実情です。
マンション以外の土地活用方法もあるものの、いずれも難易度が高く、自分の土地に合った活用方法が見つからない場合もあるでしょう。
もしワンルーム条例の規制が厳しい自治体で、活用しにくい土地を相続してしまった場合には、専門の買取業者へ土地を売却するのがおすすめです。
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これまでも狭小地や不整形地、再建築不可物件など、活用が困難な土地を多数買い取ってきた実績があるので、あなたが相続した土地も高値で買い取ることが可能です。
「ワンルーム条例で土地をうまく活用できない」「狭小地・不整形地を相続してしまい活用方法が見つからない」とお悩みの方は、無料相談・無料査定も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。