築60年のマンションにあと何年住めるかは管理次第
まずマンションの寿命は何年か、築60年だとあと何年住めるのか見ていきましょう。
マンションの寿命は平均築68年
国土交通省の研究結果によるると、平均的なRC系住宅の寿命は68年とのことです。
※固定資産台帳の滅失データをもとに、区間残存率推計法を用いて、家屋の平均寿命(残存率が50%となる期間)を推計した結果(2011年調査)
なお鉄筋コンクリートの部材自体の耐用年数は120年、さらに適切な塗装やメンテナンスが行われれば、理論上は最大150年まで延命が可能とのデータも出ています。
ただし現存する建物については、新築当時から計画的にメンテナンス・修繕を行っていない場合は平均よりも短命な可能性が高いです。
「耐用年数」は47年
RC造の建物の「耐用年数」は47年とされています。
なお耐用年数とは税制上の償却期間のことで、毎年減価償却をして償却がゼロ(価値ゼロ)になるのが47年という意味であり、建物の劣化の程度とは直接関係はありません。
法定耐用年数は建物の構造別に定められ、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建物については1998年の税制改正で47年と定められています。
マンションのメンテナンス次第では、法定耐用年数よりも長く住める場合もあれば、短くなる可能性もあります。
管理組合の運営と大規模修繕計画の実施で寿命が決まる
実際のマンション寿命は、管理体制と大規模修繕計画の実施状況によって左右されます。
築60年の古いマンションでも管理組合が適切に運営され、十分な修繕積立金があれば大規模修繕計画を実施でき、寿命を100年以上に延ばすことも理論上は可能です。
しかし管理組合が機能しておらず、大規模修繕計画に必要な修繕積立金が不足しているマンションは、平均的な寿命に満たない可能性もあります。
実際に3割以上のマンションで修繕積立金が不足しているとの統計もあるため、一度自身の所有するマンションの修繕積立金を以下のポイントで確認してみてください。
- 過去にいつ・どのような修繕を行ってきたか
- 現在いくらの積立金が残っているか
築60年前後のマンションの特徴
築60年以上のマンションは、マンション黎明期に都心の一等地に建てられた「ヴィンテージマンション」と、高度成長期の大量建築物件とに分かれます。
1950年代は日本のマンション建設の初期にあたり、この頃までに建てられた物件は今でも高い資産価値を保つ物件が多いです。
次の1960〜1970年は日本の戦後復興から高度成長期へと移行し、人口増加と都市集中が急速に進んだ時代です。
いわゆるマンション建設ラッシュとなり、首都圏でいう「多摩ニュータウン」のような郊外の大型宅地開発が活発に進められました。
1960〜1970年代のマンションの主な特徴は以下のとおりです。
- 大量生産のためコンクリートの質が良くない
- 間取りが小さく天井の低い物件が多い
- LDKではなくDK
- エレベーターのない低層物件がほとんど
都市部では住宅が不足した結果「質より量」の建設が進められた時期といえます。
先ほどマンション寿命は68年~100年超ともお伝えしましたが、マンション建設ラッシュに建てられた物件は、部材の品質が劣る傾向があるようです。
築60年のマンションに住むメリット
築60年のマンションは寿命が近いという懸念もありますが、以下の点ではメリットといえそうです。
それぞれ見てみましょう。
古いマンションほど立地が良い
築後60年前後の民間分譲マンションの中には、都内の一等地に高級マンションとして建設された物件も少なくありません。
マンション建設ラッシュより前の物件であれば、比較的低層で戸数も少なく、ほとんど流通のない「ヴィンテージ物件」の可能性が高いです。
特に1964年以前に建設された立地の良いマンションは、いまだに高い需要と価値を保っている場合が多いようです。
資産価値が保たれる
一般にマンション価格は築30年頃までは下落を続け、それ以降はほぼ横ばいです。
つまり築30年を過ぎると資産価値が保たれやすいともいえます。
特に大手の実績ある建築会社の建てたマンションは、一般に構造が強固であり、さらに管理会社の信頼性も高ければ、物件状態も良好に保たれている可能性が高いでしょう。
こうした良質な建設会社と管理会社に恵まれたマンションは、古くても資産価値が下がりにくいといわれています。
建て替えで資産価値が上がる可能性がある
マンションが築60年を迎える頃には、建て替えの話が挙がる場合がほとんどです。
建て替えと聞くと、立ち退きなどのネガティブなイメージで捉えがちですが、建て替えによってマンションの資産価値が上がる可能性もあり、一概にデメリットばかりとは言い切れません。
例えば、以下に当てはまるマンションなら建て替えで価値が上がる可能性が高いです。
- 都内の一等地などとにかく立地が良い
- 建て替えにより容積率がアップする
- 土地や物件に対する住人の愛着が強い
立地が良ければそれだけで資産価値を維持でき、さらに高層化などで容積率がアップする場合には、入居戸数も増えるためマンション自体の価値が上がります。
築60年以上のマンションを建て替えた事例4選
ここでは実際に築60年以上のマンションを建て替えて価値が上った事例を見てみましょう。
- 同潤会代官山アパート
- 宮益坂ビルディング
- 同潤会青山アパート
- 四谷コーポラス
いずれも「好立地で需要が高い」「コミュニティが良好」「高層化により収益性アップ」などの好条件によって建て替えが可能となり、高い資産価値を保っている好事例です。
同潤会代官山アパート(1927年)
「同潤会代官山アパート」は、もともと関東大震災後の住宅難対策として1927に建てられ、その後戦後に払い下げ・分譲化されたアパートです。
戦後の混乱期に一時は都営住宅化され、その後住人に払い下げられた経緯があります。
1983年に一度建て替え計画が持ち上がったもの、バブル崩壊によるゼネコンの撤退などで計画は停滞。
東京電力が変電施設を併設する計画を提示したことで、再開発が決定しました。
2000年に10年以上をかけた建て替えが完了し、商業施設などを併設した高級タワーマンション「代官山アドレス」へと変身しました。
代官山アドレス「ザ・タワー」には再開発前からの居住者253世帯も再入居し、2024年現在は1LDK1億5,000万円、2LDK2億2,000万円前後の高い価格が付いています。
宮益坂ビルディング(1954年)
「宮益坂ビルディング」は、1953年に東京都が分譲した日本最初のマンションです。
地上11階の建物には店舗とエレベーターがあり、セントラルヒーティングなどの当時の最先端設備を誇る建築物でした。
同マンションは1990年の築36年で1億5,800万円の価格を付け、さらに建て替え決定後の2013年には、築59年でありながら2億を超える価格が付き話題となりました。
JR渋谷駅から徒歩2分の好立地と、日本初の分譲マンションとしてブランド化されているために高い価格が付いたものと思われます。
建て替え計画は2003年にスタートしたものの、リーマンショックで一時とん挫し、2017年にようやく着工。
2020年に「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」として生まれ変わり、2024年現在は2億5,000万円~2沖8,000万円ほどの価格が付いています。
同潤会青山アパート(1927年)
「同潤会青山アパート」は、代官山アパートと同じく同潤会によって1927年に建築された賃貸住宅です。
3階建てのアパート完成当時は、役人や軍人、大学教授などしか住めない高級アパートでした。
耐火構造の同アパートは山の手大空襲でも焼け残ったため、当時焼け出された人々の仮住居となったのち、戦後に同潤会から東京都へと引き継がれています。
原宿など周辺がファッション街として開けてからは、レトロな外観でブティックやギャラリーも多く入居しましたが、老朽化が進んだために2003年に解体。
安藤忠雄氏の設計・森ビルの再開発により2006年に複合施設「表参道ヒルズ」としてリニューアルされました。
2024年現在、「表参道ヒルズゼルコバテラス」の売買価格は不明ですが、賃料44万円~88万円前後で賃貸されているようです。
四谷コーポラス(1956年)
1956年(昭和31年)竣工の東京都新宿区「四谷コーポラス」は、日本初の民間分譲マンションです。
現在のような区分所有方法が確立される以前に分譲され、所有形態や共有部の管理責任などにおいて現在のマンションの先駆けとなった存在でもあります。
老朽化による建て替え計画では、区分所有者の9割が再建マンションを再取得する意向を示し、管理組合による建替え決議で全員合意し、建て替えが決定しました。
築後61年となった2017年に解体・建て替えされ、2019年に「アトラス四谷本塩町」として生まれ変わっています。
四谷コーポラスには長期居住の高齢者が多く、コミュニティの結束が固かったために、事業者との話し合いもスムーズに進んだといわれます。
容積率をアップできないために、住人による重い建設費負担があったにもかかわらず、住人の愛着が勝って建て替えが実現した事例です。
築60年のマンションに住むデメリット
ここからは築60年のマンションに住むデメリットを解説します。
先ほど「建て替えで古いマンションの価値が上がることもある」とお伝えしましたが、すべてのマンションに当てはまるわけではありません。
むしろ築古マンションにはリスクのほうが多いので、しっかりと把握し対処法を考えておきましょう。
耐震性が低い可能性がある
築60年のマンションは耐震性に問題を抱えている可能性があります。
1981年5月以前の建築物は旧耐震基準で建てられているので、現行の耐震基準に対応していません。
旧耐震基準の規定は「震度5程度で倒壊しない」とされているものの、震度6~7については特に規定がありません。
つまり震度6~7に耐える保証はなく、今後巨大地震が起こった場合、周辺よりも大きな被害を受ける恐れがあります。
実際、1995年の阪神淡路大震災で特に損害の大きかったマンションの約9割が、旧耐震基準で建てられた建物だったとのことです。
ただし1981年以前のマンションでも、新基準に改修されていれば問題ありません。
耐震化がされているかどうかは、耐震補強工事の「建築確認申請」書類の日付が1981年6月以降かどうかをチェックすればわかります。
なお以下の記事では、地震で倒壊しやすい家の特徴とエリアを解説しているので、参考にしてください。
断熱性や遮音性が低い
築60年近いマンションは構造的に耐熱性や遮音性が低い物件が多いです。
日本で省エネ基準が設けられた1980年以前は、そもそも設計・工事に「断熱」という概念がなかったかため、冷暖房効率が悪く光熱費が高くなる可能性があります。
当時のマンションは一般に現在よりも壁が薄く、防音性が低いともいわれます。
2000年代の標準的な壁の厚さ(スラブ厚)は18~20cm程度であるのに対し、1970年頃は13~15cm程が一般的で、その分断熱性と遮音性は低いと言わざるを得ません。
修繕積立金が高い
一般にマンションは築年数が進むほど修繕積立金が高くなります。
修繕積立金とは、マンション共用部の大規模修繕工事の費用を、各所有者が負担して積み立てる仕組みです。
大半のマンションでは修繕積立金を段階増額積立方式(定期的に値上げしていく仕組み)で積み立てているため、長く居住すればするほど月額が高くなります。
また、マンションは古くなるほど修繕範囲が広くなるため、計画的に修繕金の見直しが行われ値上がりするケースがほとんどです。
さらに大規模修繕の前後にも値上がりするケースが多いです。
それでも修繕工事費用が不足すると、区分所有者全員から数十万~数百万円が追加徴収されることもあるため、築年数が古くなるほど注意が必要です。
高齢化と空室化が進みコミュニティが崩壊する
マンションの築年数に比例して住人の高齢化が進み、空室率も高まるとの統計が出ています。
引用元:国土交通省「高経年マンションに居住する70 歳以上の世帯主が半数以上に~令和5年度マンション総合調査結果(とりまとめ)」
国土交通省の調査によると、古いマンションほど70 歳以上の割合が高く、1984年(昭和59)以前のマンションでは居住者の55.9%が70 歳以上との結果が出ています。
なお、居住者の多くが年金生活者だと修繕積立金の値上げが難しく、必要な修繕が行えなくなる恐れがあります。
続いて、以下は3カ月以上の空室戸数の割合を築年数別に見たグラフです。
ここから完成年次が古いマンションほど、空室率・所在者不明率が高いこともわかります。
空室率の高いマンションではコミュニティが成り立たなくなり、結果として管理費や修繕積立金の滞納が常態化し、管理組合も資金不足に陥ってしまう可能性が高いです。
なお、マンションの空室化リスクについては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
管理会社が撤退し必要な管理が行われなくなる
管理組合の資金不足で管理会社への支払いが滞れば、管理会社から業務委託契約を打ち切られ、必要な管理ができなくなります。
管理会社が撤退すると、以下のような弊害が起こるのも時間の問題です。
- 定期点検ができずエレベーターが止まってしまう
- 受水槽が清掃されず水道水が汚染される
- 共用部の電気料金が支払われずオートロックが使えなくなる
必要な管理が行われないマンションは、生活の場としての機能を失ってしまいます。
たとえ鉄筋コンクリートの箱モノは問題なくても、マンションとしての資産価値を失い、廃墟化の道を歩むことになるでしょう。
リフォームも建て替えもできず寿命が近づく
築古のマンションは構造上リフォームが難しい場合があります。
例えば1970年前後に建築されたマンションの場合、下の階の天井裏に配水管を通しているケースがよくあります。
この構造で配水管の移設・交換を行おうとすると、下の階の住人に交渉して工事に協力してもらうか、もしくは自分の床を上げて配水管を新設するしかありません。
また工事時にコンクリートを剥がす場合は、マンションの寿命にも影響を与えかねません。
こうして寿命が迫ったマンションはいずれ建て替えが必要となりますが、高齢化・空室化の進んだマンションは管理組合が機能しなくなり、建て替えの決議もできない可能性があります。
マンションの立地や建築条件などによっては、リフォームも建て替えもままならず寿命を待つしかなくなるかもしれません。
売却しづらい
築60年のような築古のマンションは売却が困難です。
老朽化した外観の印象や大規模修繕の可能性などから、高額な修繕費負担を心配し築古マンションを敬遠する人がほとんどです。
また買い手が住宅ローンを組む際に、古いマンションは資産価値が少ないとみなされて金融機関の審査が通りにくく、さらに築25年超では原則住宅ローン控除も使えません。
よほど立地や生活の便が良く、建て替え後に資産価値が上りそうなマンションであれば、購入希望者もいるかもしれませんが、そうでなければなかなか買い手が現れないでしょう。
なお、売れないマンションを売却する方法については、以下の記事で解説しているので参考にしてください。
最終的に資産価値が0になり売れなくなる
鉄筋コンクリート造マンションの耐用年数(47年)上の価値はすでに0円です。
資産価値で見た場合は、それまでの管理状態によって延命できたかどうかで異なります。
もし空室化が進んで管理状態も悪化している場合は、資産価値は今後も下がり続ける一方です。
先ほど「建物が古くなっても土地価格だけは残る」とお伝えしましたが、管理される見込みもなく保険料も跳ね上がった老朽化マンションを、好んで買う人はまずいません。
誰も買わなければ価値0円と同等です。
0円になってからでは、不動産業者に相談しマンションを売却しようとしても相手にされないでしょう。
建て替えが必要になる
マンションの寿命が近づくと建て替えの話が挙がります。
一般的にマンションは築40年ぐらいから構造部の調査が開始され、改修か建て替えかが検討されることになります。
マンションの建て替えを判断するタイミングは以下のとおりです。
- 長期修繕計画に基づく改修が行われておらず、構造躯体の劣化が激しい場合
- 定期的な修繕が行われてきたものの、地震などにより性能が低下していることが発覚した場合
- 1981年5月以前建築の旧耐震基準建物で、かつ根本的な耐震補強が困難な場合
- 築60年を超えている場合
- 大規模修繕費用のコストが、想定されている建て替えコストを上回っている場合
- 建物の劣化によって、周囲に甚大な被害をもたらすことが予想される場合
参照元:国土交通省「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」
なお2022年末で、築40年以上のマンションが約125.7万戸、建て替えが済んでいる累計数はわずか282件、約23,000戸(2023年3月時点)とのデータがあります。
参照元:国土交通省「マンション長寿命化・再生円滑化について」
このことからも築古マンションの建て替えが一向に進んでいないことがお分かりいただけるでしょう。
実はマンションの建て替えが困難な事情がいくつかあり、詳しくはこの後解説します。
建て替え時には現行法の基準に適合する必要がある
もともと法の規定を満たしていたものの、建築基準法などの法改正により適法でなくなったケースがあり、この状態を「既存不適格」といいます。
以下の既存不適格物件は建て替え時に現行法に適合させる必要があります。
- 1981年5月31日以前の旧耐震基準
- 高さ制限の変更に対する不適合
- 建ぺい率・容積率の変更に対する不適合 など
既存不適格物件はそのまま住む分には問題ありませんが、建て替えを行う場合は現行の法律に適合させなければならず、ディベロッパー側の負担も大きくなりがちです。
また新耐震基準や建ぺい率・容積率、斜線規制などの新基準に適合させた結果、床面積が減少するケースも少なくありません。
住人にもディベロッパーにもメリットが感じられないため、建て替えに踏み切れなくなるのです。
マンションの建て替えには4/5以上の住民の合意が必要
マンションの建て替えには、住人の4/5以上の合意が必要です。
とはいえ実際のところ、建て替えが可決されるケースは極めて少ないです。
特に築年数の古いマンションほど高齢者が多く、年金から建て替え費用を捻出できないとの理由で建て替えに反対するケースが少なくありません。
また、外国人や所有者不明・不在者の多いマンションの場合、残りの所有者の大半が決議に賛成していても、合意が取れないといった事態が発生してしまいます。
こうした事情により、事実上4/5の賛成はほぼ不可能なのです。
稀に建て替え決議の合意形成が実現するマンションもありますが、いずれも以下のような条件をそろえている物件に限られます。
- 区分所有者が富裕層である
- 立地が良い
- 所有者が地域やマンションに愛着を持っている
- 容積率に余裕がある(建て替えで高層化できる)
なお、2024年に改正予定の「区分所有法」には、建替決議の多数決要件を緩和する法案が盛り込まれていますが、まだ国会を通過していません。
進展があれば追記します。
参照元:法務省「『区分所有法制の改正に関する中間試案』(令和5年6月8日)取りまとめ」
建て替え費用は住民が負担する
マンションの建て替え費用は住人(区分所有者)が負担しなければなりません。
本来であればマンション管理組合の修繕積立金を建て替え費用に充てますが、実際のところ修繕積立金自体が不足しているケースが多いです。
建て替えの規模にもよりますが、住人の自己負担額は1,000万円〜3,000万円程度で、内訳は以下のとおりです。
- 解体・建設費用
- 設計費用
- 事務経費など
もともと容積率に余裕があって住戸数を大幅にアップできるマンションなら、新たに分譲する住戸の売却資金を建て替え費用に充て、住民負担を減らすことも可能です。
しかし実際、民間の分譲マンションはもともと容積率ギリギリで建てられている建物が多いうえ、後の法改正(日照制限など)によって、コンパクトに建て替えざるを得ないケースも少なくありません。
さらに建て替えには仮住まいへの引っ越し費用、仮住まいの賃貸料金などもかかります。
この建て替え負担こそが4/5の賛成を得られない最大の理由です。
築60年マンションの建て替えに対処する2つの方法
マンションの建て替え話が上がった際、費用が支払えない場合にはどうすればよいか、対処法を解説します。
まちづくり融資(高齢者向け返済特例)を利用する
「高齢者向け返済特例(まちづくり融資)※」を利用すれば、年金収入のみの人でも建て替え費用の融資を受けることが可能です。
※高齢者向け返済特例(まちづくり融資)とは
住宅金融支援機構の都市居住再生融資制度のひとつ。
60歳以上の高齢者が最高 1,000 万円までの融資を受けられ、存命中の返済は「金利相当分」のみ、元本は死亡時に一括返済とする。
参照元:一般財団法人高齢者住宅財団「マンション建替え等融資の債務保証」
まちづくり融資を利用すれば、これまで年齢制限で住宅ローンを利用できなかった高齢者でも、建て替え事業に参加でき、再建後のマンションに住み続けられるメリットがあります。
ただし財団が連帯保証人になるため、返済利息以外に以下の手数料が必要です。
- 保証料:融資額の6.0%
- 保証限度額設定料:33,000円(税込)
- 保証事務手数料:77,000円(税込)
また、元金は将来相続人が返済しなければならない点にも注意しましょう。
最後まで建て替えに反対する
建て替え費用が支払えない場合、最後まで建て替えに反対するのも1つの手です。
先述したように、住人の4/5以上の賛成がなければ建て替えは可決されません。
同じように費用の自己負担金が支払えない人が多い場合、建て替えは可決されないでしょう。
ただし万が一建て替えが可決されてしまった場合、建て替えに反対したことにより賛成者に「売渡請求権」を駆使され、所有するマンションを「時価」で建替組合に売り渡さなければならないため、注意が必要です。
敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
以下はマンションの建て替えまでの流れです。
建て替えの流れ | 具体的な内容 |
---|---|
1.準備・検討・計画 |
|
2.建て替え決議 |
|
3.マンション建替組合の設立 |
|
4.反対区分所有者への売渡請求 | マンション建替組合が反対区分所有者の権利を時価で買取 |
5.権利変換計画の決定・認可 |
|
6.組合がマンションの権利を取得 | 期日にすべての権利が移動 |
7.組合による建替事業 | 工事等の開始 |
建て替え反対者には最終確認(催告)の書面が渡され、2カ月以内に回答しなかった場合に区分の売渡請求が言い渡されてしまいます。
建て替えに参加しない区分所有者(反対者)は売渡請求を拒むことはできません。
マンションを売却する
マンションの建て替え話が上がり、費用が払えそうにない場合、マンションを売却してしまうのも1つの方法です。
むしろ建て替え決議が可決して自由な売却ができなくなる前に、自分から売却してしまうほうが賢明といえます。
今のマンションを売却すれば、立地にこだわらければもう少し築年数の新しい物件に引っ越せるかもしれません。
また建て替えが決まった場合、修繕積立金を返還してもらえる可能性もあります。
修繕積立金はマンションの建て替えには転用できず、建て替えが決定した場合は残高が各区分所有者に返還されることになっているからです。
とはいえ、修繕積立金に余裕がある管理組合は限られているので、まとまった金額は当てにしないほうがよいでしょう。
築60年のマンションは建て替え前に売却がおすすめ
築60年のマンションは建て替えの話が検討段階のうちに売却するのがおすすめです。
建て替え決議が可決したら自由な売却ができなくなってしまうので、その前に売却するのがベターです。
古いマンションを手放せば、値上がりを続ける修繕積立金や建て替え費用から解放されます。
とはいえ、建て替えを控えたマンションは買い手から敬遠されるため、通常の売却活動では時間がかかってしまうでしょう。
その間に建て替え決議が可決されてしまうかもしれません。
もし建て替え前のマンションを一刻も早く売却したい場合は、築古マンション専門の買取業者に相談してみることをおすすめします。
専門の買取業者なら、築60年のマンションでも問題なくスピーディーに買い取ってくれるはずです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、築古マンションを専門に買い取る不動産買取業者です。
どんなに老朽化した古いマンションでも高く買い取れる自信がありますので、建て替え前のマンションが売れずにお悩みの方は、ぜひ下記の無料査定へご相談ください。
>>【築60年のマンションでも高額売却!】無料で買取査定を依頼する
築60年以上のマンションを売却する2つのポイント
先述したように築60年のマンションを売却するのは簡単ではありません。
売却の成功率を上げるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
売却前にリフォーム・リノベーションは行わない
見た目の古いマンションはなかなか売れないだろうと、売却前にリフォーム・リノベーションを行うのは要注意です。
気持ちはわかりますが、スケルトンやフルリフォーム、フルリノベーションのような大規模リフォームをすれば数百万円というお金がかかります。
売り出し価格にリフォーム費用を上乗せしたら、かえって購入希望者に敬遠されてしまうのが実情です。
それにどんなに室内を新しくしたところで、外観は築60年のマンションです。
リフォームした部屋を見る前に、老朽化した外壁や共有スペースを見た購入希望者が買い気を失くしてしまったら、リフォーム投資がすべて無駄になってしまいます。
築60年のマンションをリフォームする場合はリスクに対する覚悟が必要です。
なお古いマンションを売却する方法については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
賃貸物件化してから売却することも検討する
築60年の古いマンションは居住用としてではなく、賃貸物件化してから売却する方法もあります。
築古のマンションは居住用としては買い手が付きにくいものの、収益物件としては人気が出る可能性があります。
というのもマンションは築50年を過ぎると価値がほぼ土地価格だけとなり、その後は価格がほとんど下がらない物件となるからです。
当初居住向けに売り出して売れなかった物件を、一度賃貸に出してから収益物件として売りに出したところ、問い合わせが来るようになったケースも少なくありません。
古いマンションは格安なため、手持ち資金の少ない初心者投資家などに人気があるようです。
築60年マンションを売却できる3つの売却先
ここでは築60年のマンションを売却できる具体的な売却先を紹介します。
ちなみに、すでに建て替えの話が上っていて可決の可能性がある場合は、「買取再販業者」に相談するのがもっともスピーディーです。
リーズナブルに自分の城を持ちたい個人
築60年のマンションを買ってくれそうな第一候補は、リーズナブルに自分の城を持ちたい個人です。
最初から自分用にリノベーションする予定で、安価な築古物件を購入したい層は一定数います。
特に都心などで通勤に便利な立地なら、高年収のサラリーマンなどの購入希望者がいる可能性は大いにあるでしょう。
事実、リフォーム用の築古マンションを探している人同士で、目ぼしい物件の取り合いになるケースもあるそうです。
ただ築古マンションは通常、仲介業者などではなかなか扱ってくれないため、物件を買ってくれそうな人とマッチングできない可能性もあります。
また、いくら物件が格安でも、リノベーション費用は1,500万円~2,000万円ぐらいが相場のため、支払える人でないと購入は厳しいでしょう。
不動産投資家
建て替え計画が挙がってきたようなマンションでも、不動産投資家になら売却できる可能性があります。
投資家は「周辺エリアの新築マンション価格」よりも「マンションの購入価格+建て替え費用の区分所有者負担分」のほうが安ければ、お買い得の高利回り物件と考えます。
立地が良ければ、建て替え後にマンションの資産価値が上がることを見越して購入を検討する人も少なくありません。
特に築60年ぐらいの物件は高層化で容積率がアップする場合が多く、専有面積が1.5倍前後に増えるケースもあり、近年のマンション価格高騰にあって、投資家にとってもおいしい物件に映っているのです。
ただし築古マンションを売却したい個人と個人投資家をマッチングするサービスは、一般にはあまり知られていないので、短期間で買い手を見つけるのは難しいかもしれません。
買取再販業者
築60年の古いマンションでも、不動産会社やリフォーム会社などの法人が「買取再販物件」の仕入れとして買い取ってくれる可能性があります。
買取再販とは、不動産会社が築古マンションをいったん購入し、リフォーム・リノベーションを施した後に販売する中古住宅販売形態です。
近年は新築マンションの価格の高騰が続いているため、相対的に割安感のある中古マンションの需要が高まってきています。
その中でも買取再販物件はリフォーム・リノベーションされ、新築とほぼ変わらない状態で入居できるので、特に人気が高いのです。
なお買取業者の買取では、業者が買取り後にリフォームする前提のため、一般の仲介業者には断られるような老朽化したマンションでも問題なくそのままで買い取ってくれます。
もちろん自分でリフォームする必要はありません。
さらに買取再販は一般の不動産仲介と異なり、物件を直接買い取ってくれるため、買主を探さない分スピーディーに売却できる点も魅力です。
そのため、建て替え決議前に売却を急ぐ場合は特におすすめです。
アルバリンクは築60年の老朽化したマンションでも売却できる!
弊社AlbaLink(アルバリンク)は築古マンションなどの買取・再販に強い不動産買取業者です。
弊社では築60年などの築古マンションを数多く買取再販してきた実績があります。
多数のリフォーム・リノベ業者と提携しているため、築60年のマンションでもコスパよく収益物件化できるほか、全国の不動産投資家へ幅広く再販できるため、他社より高額での買取が可能です。
弊社は訳あり物件専門の買取業者として、マンション・戸建てにかかわらず他社では断られるような築古物件を数多く買い取ってきました。
たとえば下記のように「20年以上放置されて老朽化が進んだ空き家」や「不用品で室内があふれてしまっている空き家」を買い取った実績もあります。
【20年以上放置された空き家の買取事例】 【不用品で室内があふれてしまっている空き家の買取事例】
引用元:Albalinkの空き家買取事例
20年以上放置された空き家については780万円で買取らせていただき、「雨漏りもするような家だったが、思ったより高い金額で買い取ってもらえた」と、金額についても満足していただけました。
また、不用品で室内が溢れてしまっている空き家の所有者は、他の不動産業者から「不用品の回収だけで100万円近くかかる」と言われ、途方に暮れていたそうです。
それだけに「(弊社に)そのまま買い取ってもらえてとても助かりました」と言っていただけました。
ほかにも弊社に買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「色々不安だったがスムーズに売却できた」といった感謝の言葉を多数いただいております。
(下記Google口コミ参照)
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して築60年のマンションを売却したい方は、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
>>【築60年のマンションでも高額売却!】無料で買取査定を依頼する
まとめ
マンションの寿命は施工状況や管理体制、管理費・修繕積立金の財務状況に左右されます。
マンションの平均寿命は68年といわれますが、修繕積立金が不足したり長期修繕計画が実施されていなかったりすると、寿命がもっと短くなる可能性が高いです。
もし建て替えが決まれば、住人(区分所有者)は1,000万円~3,000万円もの費用を負担しなければなりません。
なお築60年のマンションで建て替えが上手くいくためには、好立地で住人の結束が固く、建て替えで容積率がアップするなどの好条件がそろわない限り厳しいです。
上記に当てはまらず、建て替え費用が支払えそうにない場合は、マンションを売却して手放すことをおすすめします。
築古マンションの買取再販の専門業者なら、築60年のマンションでもそのままでスピーディーに買い取ってくれるからです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は古くて建て替えが必要なマンションなどの訳あり物件を専門に買い取る不動産買取業者です。
多数の訳あり物件を買い取ってきた実績は、フジテレビをはじめとする多くのメディアでも紹介されています。
弊社は全国の不動産投資家と提携し、幅広い再販先を抱えているので、築古のマンションでも高く買い取ることが可能です。
築60年マンションの寿命や建て替え費用でお悩みの方、建て替え決議前に売却をお急ぎの方は、ぜひ以下の無料査定をご利用ください。