相続放棄した建物も倒壊したら責任を負う羽目に!100%逃れる方法教えます

相続物件

「相続放棄した建物が倒壊したら、誰が責任を問われるの?」

「相続放棄した自分も責任を問われるのかな?」

相続財産の中に「倒壊の危険がある建物」があったら、相続放棄をして建物の管理責任から逃れたくなるのも無理はありません。

しかし、相続放棄した人も、倒壊した建物の責任を問われる恐れは十分にあります。相続放棄するだけでは、建物の管理責任から完全に逃れることはできないのです。

でも、ご安心ください。「まだ相続放棄をしていない人」にも「既に相続放棄をした人」にも、建物の管理責任から完全に逃れる方法はあります。

ということで、記事内では、相続放棄をしていない人と既にした人、2つの立場の方に向けて、以下の内容を解説します。

この記事でわかること

  • 相続放棄をしても建物の管理責任を問われる理由
  • 建物の管理責任から完全に逃れる方法
  • 相続放棄の注意点

もし、あなたがまだ相続放棄をしていないのであれば、一度相続してから倒壊の危険がある建物を早急に売却してしまいましょう。

そうすれば、建物の管理責任から完全に解放されるうえ、売却金額がまとまった現金で手に入り、相続人は一石二鳥です。

「倒壊しそうな建物なんて相続したくない!」「相続してから売れなかったらどうするの?」と思うかもしれませんが、ご安心ください。

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相続放棄をしても建物(相続財産)が倒壊したら管理責任を負う

もし、相続放棄した建物が倒壊したら、相続放棄した人も管理責任を負わなければなりません。

「相続放棄した人が管理責任を負う」とは、建物の倒壊による被害者の損害賠償請求に応じる、あるいは建物を滅失させたり損傷させたりせず、現状を維持するために必要な行為をすることです。

実際に、「公益財団法人 日本住宅総合センター」は、以下の表の通り、建物が倒壊して、危害を加えたときの損害額を試算しています。

倒壊事故によるケガの損害賠償 およそ数千万円
倒壊事故による死亡の損害賠償 およそ数億円
倒壊の危険がある建物の解体費 およそ100~200万円

参照元:公益財団法人日本住宅総合センター「WEBリポート / 研究活動」調査期間:2012年8月~2013年3月

相続放棄した建物の倒壊事故でこんなにも高額な損害賠償を請求されてしまったら、多くの方は破産し、絶望してしまうでしょう。

なぜ相続放棄してからもこれほどの責任を負わなければならないのか、詳細な理由を解説していきます。

次の相続人が建物の管理を開始するまで管理責任を負う

建物を現に占有しているときは、次の相続人が物件の管理を開始できる状態になるまで、管理責任はあなたに課されます。一時的であっても、物件の管理者がいなくなるのは危険だからです。

前提知識にはなりますが、民法では、相続順位(法定相続人の相続権が移行する順番)が定められています。

配偶者と子が相続放棄をしたら、第二順位の相続人へ、第二順位の相続人が相続放棄をしたら第三順位の相続人へ…と、相続権は移行します。あなたが相続放棄をしたら、相続権とともに物件の管理責任も次の相続人に移行する仕組みです。

例えば、亡くなった夫の相続財産を妻が放棄したら、子どもが建物の管理を始めるまでは、妻に管理責任が課されます。

実際に、民法940条第1項では、以下のように定められています。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索「民法第940条」

このように、相続放棄をした人が、その放棄の時に建物を占有している場合には、次の相続人または(相続人がいない場合には)相続財産清算人に対して、自己の財産と同一の注意を持って、建物を保存する管理責任を負います。

「自己の財産と同一の注意」とは、自分が持っている財産と同じくらいの注意のことをいい、善管注意義務より軽いものとされています。

なお、相続放棄した人は、次の相続人が建物の管理を開始できるよう、書面等でその旨を伝えなければなりません。

参照元:e-Gov法令検索「民法944条第2項・645条」

次の相続人が管理を開始しても空き家の管理責任が課せられる

次の相続人が建物の管理を引き継いでからも、空き家の場合にはあなたも管理責任を問われます。

これは「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空き家法)」の第5条で定められた「管理者」の解釈に、相続放棄をした人が含まれるためです。

(空家等の所有者等の責務)
第五条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。

引用元:e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法第5条」

このように、相続放棄した人も「管理者」として空き家の管理責任が課されてしまいます。

ちなみに、一度相続放棄したら、いくら管理責任から解放されたくても、相続財産の売却や処分はできなくなるので注意してください。詳しくは「相続放棄の注意点」で詳しく解説します。

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建物の管理責任から完全に逃れるためには「相続財産清算人の選任」

相続放棄をするだけでは、建物の管理責任から完全に逃れられないと理解していただけたでしょうか。

相続放棄した人が建物の管理責任から完全に解放される唯一の方法は、裁判所にて「相続財産清算人選任の申立て」を行うことです。

相続財産清算人(以下、財産清算人)とは、相続人に代わって相続財産の管理をする人です。多くは弁護士や司法書士など、専門職の方が裁判所から選任されます。

相続財産清算人は、相続放棄をした人の管理責任を引き継いでくれるので、相続放棄をした人は管理責任から完全に解放されます。

次章では、相続放棄をした人が財産清算人選任の申立てを行い、実際に建物の管理責任から解放されるまでの流れを簡単に説明します。

なお、申立ての概要や手続きに必要な書類などは、裁判所HPをご覧ください。

参照元:裁判所「相続財産清算人の選任」

相続財産清算人選任から相続財産が国に帰属される流れ

相続放棄をした人は、家庭裁判所で財産清算人選任の申立てを行ったら、すぐに管理責任から解放されるわけではありません。

財産清算人が選任され、相続財産が国に帰属されるまでには、多くの手続きが必要で、およそ1年以上の期間を要します。

一般的な手続の流れは次のとおりです。途中で相続財産が無くなった場合はそこで手続は終了します。

1. 相続放棄をした人が家庭裁判所に財産清算人の申立てをします。家庭裁判所は,財産清算人選任の審判をしたときは,相続財産清算人が選任されたことを知らせるための公告及び相続人を捜すための公告を6か月以上の期間を定めて行います。この公告の期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。
2. 1の公告があったときは,財産清算人は,2か月以上の期間を定めて,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします(1の公告の期間満了までに2の公告の期間が満了するように公告します。)。
3. 1の公告の期間満了後,3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
4. 必要があれば,随時,財産清算人は,家庭裁判所の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換えることもできます。
5. 財産清算人は,法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり,特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続をします。
6. 5の支払等をして,相続財産が残った場合は,相続財産を国庫に引き継いで手続が終了します。

引用元:裁判所「相続財産清算人の選任」 

財産清算人によって、建物を処分・換金(4)、もしくは国に帰属(6)されることで、相続放棄をした人ははじめて管理責任から解放されます。

管理責任から解放される前に家が倒壊してしまったら、損害賠償などを請求されるおそれがあるので注意してください。

相続財産清算人選任の申立てをする前提で相続放棄をしてはいけない

まだ相続放棄していない方は、相続財産清算人選任の申立てをする前提での相続放棄は絶対に行ってはいけません。

相続財産清算人選任の申立てにかかる手間や時間、金銭的負担は、非常に大きいからです。

相続財産清算人選任の申立てのデメリット

  • 申立ての手続きに必要な書類が多く、準備に手間を要する
  • 相続財産清算人が実際に管理を始めるまで、およそ1年かかる
  • 申立ての際は裁判所に予納金として20~100万円を納めなくてはならない

財産清算人選任の申立てを行うには、予納金として、家庭裁判所に20~100万を納めなくてはなりません。

予納金は、主に、財産清算人が相続財産を管理、処分するための費用に充てられます。

また、財産清算人の報酬は相続財産から支払われますが、相続財産が少なくて報酬が支払えないと見込まれるときは、予納金を相続財産清算人の報酬に充てられることがあります。

余った予納金は、返還されますが、1円も返ってこない可能性も十分にあり得るので注意してください。

参照元:遺産相続に関する記事一覧法律相談ナビ

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倒壊の危険がある建物は「一度相続してから売却」が賢明

建物の管理責任から逃れる方法として、相続放棄は、まったく賢明な判断ではないと理解していただけたでしょうか。

まだ相続放棄していないのであれば、倒壊の危険がある建物を一度相続してから売却し、所有権を完全に手放してしまうべきです。

そうすれば、管理責任からも完全に解放されます(ご存知かも知れませんが、相続財産を売却するためには、相続登記して正式な所有者になる必要があります)。

以下では、不動産売却の代表的な方法2つ「仲介」と「買取」をご紹介します。

仲介業者に売却活動を依頼する

「不動産売買」と聞くと、多くの人は、街の不動産業者に売却活動を依頼して、買主を探してもらう方法を思い浮かべるのではないでしょうか。

これは「仲介」という売却方法です。街の不動産業者のほとんどが「不動産仲介業者」に該当します。

ただし、倒壊の危険がある建物の売却を仲介業者に依頼しても、売れる見込みは全くありません。

仲介での買手の多くは一般の個人で、自身の新居を探しているので、当然、倒壊の危険がある建物なんて購入しないからです。

そのため、何年も売れ残ったり、最悪の場合、永遠に売却できないおそれもあります。

売れ残っている間に建物が倒壊したら、管理責任は当然売主(相続人)に課せられます。

買取業者に直接売却する

「仲介」ではない、もう1つの不動産の売却方法として「買取業者に直接売却する」方法があります。

倒壊の危険がある建物は、買取業者に直接売却するべきです。

買取業者は、倒壊の危険がある建物も最短数日でほぼ確実に買い取れるからです。

倒壊の危険がある建物でも買い取れる秘訣は、買取業者の買取目的が、居住用ではなく「再販事業用」である点に隠されています。再販事業とは、買取金額と再販金額の差額で利益を出すことです。

再販事業で利益をあげている買取業者は、買い取った建物を再生するノウハウや、再生した建物を確実に再販するルートを豊富に持ち合わせています。倒壊の危険がある建物も、買取後に確実に再販して利益をあげられるため、買取が可能なのです。

もちろん、弊社AlbaLink(アルバリンク)も、買取後の再生ノウハウや再販ルートを豊富に持ち合わせています。

倒壊の危険がある建物の買取も、お任せください。

出来る限り高値をご提示、売主さまが納得のいくお取引ができるよう、全力を尽くさせていただきます。

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相続放棄の注意点

最後に相続放棄の注意点をお伝えします。

相続放棄には多くの注意点があるため、やはり気軽に行ってはいけません。

相続放棄をしたら売却できない

一度相続放棄した相続財産は、売却(処分)できません。

相続財産の所有権は、相続放棄した時点で次の相続人に移行していて、既にあなたのものではないからです。

ただし、「次の相続人が管理を開始しても空き家の管理責任が課せられる」で解説したように、相続放棄をしても、自治体から空き家の管理責任を問われる恐れはあります。

そのため、相続放棄した人は、倒壊しそうな建物を処分することもできず、自治体から問われる管理責任に応じなければなりません。

全ての相続財産を放棄しなくてはならない

相続放棄の際は、倒壊しそうな建物以外の相続財産(金銭的にプラスの財産や思い出の品)も、全てを放棄しなければなりません。

相続放棄は「相続人が被相続人(故人)の財産(相続財産)に関する資産や負債などの権利や義務の一切を引き継がず放棄すること」と定められているからです。

相続放棄の手続きは3カ月以内に済ませなくてはならない

相続放棄の手続きは、被相続人が亡くなったこと及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから3カ月以内に済ませなくてはなりません。

3カ月以内に相続放棄の手続きを行わないと、「単純承認(故人の財産の継承を無条件に承認する)」とみなされます。

また、3カ月以内に、故人の預金から現金を引き出して使うなど一定の行為があった場合は、単純承認をしたとみなされ、相続放棄をすることができなくなります。

3カ月を過ぎてからの相続放棄は原則としてできませんが、もし行うのであれば、複雑な手続きが必要です。

手続きを弁護士に依頼しなければならなくなり、相続人の金銭的負担が増えてしまいます。

相続放棄の手続きについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

空き家を相続放棄しても管理責任は残る!回避法や手放す方法を解説
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まとめ

相続放棄した建物が倒壊した際の管理責任について解説しました。

結論、相続放棄をしただけでは、建物の管理責任から完全には逃れられません。

相続放棄した人が家の管理責任から完全に逃れるための唯一の方法は、「相続財産清算人選任の申立て」を行うことです。

ただ、申立ての手続きには、手間や時間、大きな金銭的負担がかかります。

まだ相続放棄をしていないのであれば、相続放棄の選択肢は捨てて、相続を済ませましょう。そして、倒壊の危険がある建物は、早急に売却してしまいましょう。

弊社は、倒壊寸前の建物も、スピーディーな買取が可能です。

倒壊の危険がある建物を早急に手放し、空き家の管理責任(倒壊事故による損害賠償請求のリスク)から解放されてください。

我々がお客さまのお力になれれば幸いです。

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「相続放棄した家が倒壊」のよくある質問

相続人はすみやかに相続手続きを済ませ、倒壊しそうな家を売却しましょう。売却すれば、相続人はまとまった現金が手に入りますし、家の管理責任からも完全に逃れられます。なお、相続放棄をするだけでは、家の管理責任からは完全に逃れられません。
民法239条第2項では「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と定められています。しかし、相続人全員に相続放棄されただけでは、その不動産は「所有者のいない不動産」としては認められません。相続放棄した相続人が家庭裁判所にて、相続財産管理人(相続人に代わって財産を管理する人)の選任を申立てることで、相続放棄された不動産は正式に国に帰属されます。
監修者

母壁明日香 弁護士

プロフィールページへ
弁護士法人長瀬総合法律事務所(茨城県弁護士会)所属 弁護士(69期
企業法務や相続案件を多数取り扱っているほか、企業向けセミナー講師を多数務めている。
【役職等】
厚生労働省茨城労働局 茨城紛争調整委員会委員
株式会社日本能率協会マネジメントセンター パートナー・コンサルタント
【執筆等】
1.「現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」(共著)
2.「新版 若手弁護士のための初動対応の実務」(共著)
3.「若手弁護士のための民事弁護初動対応の実務」(共著)
4.「企業法務のための初動対応の実務」(共著)
5.「民法を武器として使いたいビジネスパーソンの契約の基本教科書」(共著)

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