完全分離型二世帯住宅とは
完全分離型二世帯住宅とは、親世帯と子ども世帯の生活空間を分けている二世帯住宅です。
トイレやキッチン、浴室などの設備は共有せずにそれぞれの世帯に設けられています。
また、玄関も別々に設けられており、親世帯と子ども世帯で共有するスペースはありません。
完全分離型二世帯住宅には、以下の2種類があります。
- 縦割り分離型
- 横割り分離型
縦割り分離型は、2世帯の生活空間を左右で分けるタイプです。
一方、横割り分離型は、2世帯の生活空間を上下で分けるタイプです。
完全分離型二世帯住宅は別々の住居として利用できるので、それぞれの世帯のプライバシーを確保できます。
完全分離型二世帯住宅で親の死後に生じる4つの問題
完全分離型二世帯住宅では、親が亡くなった後に以下のような問題が生じます。
- 余った生活スペースの定期的な管理が必要
- 固定資産税をはじめとした税金の負担が重くなる
- 相続時にトラブルが起こる
- 親の住宅ローン返済分の負担が生じる
余った生活スペースの定期的な管理が必要
親が亡くなった後、親世帯の生活スペースは使われなくなります。
この場合、子ども世帯は余った生活スペースを掃除や換気などの定期的な管理をしなくてはなりません。
もし、管理を疎かにしてしまうと、建物の構造や設備の劣化の進行が早くなってしまうからです。
管理をせず、放置してしまった場合に起こりうる建物の不具合は以下のとおりです。
- 水道管のサビ・故障
- カビの発生
- 木材の腐食
上記のように建物が傷み、家の価値が下がる原因となります。
最悪の場合、物件に価格がつかなくなるおそれもあります。
売却を考えた際、少しでも高値で売れるようにするため、余った生活スペースの管理も定期的にしましょう。
しかし、時間が取れないので、掃除をはじめ家の管理を業者に委託したい人もいるでしょう。
空いたスペースの管理を委託できる業者について、くわしく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
固定資産税をはじめとした税金の負担が重くなる
二世帯住宅において、土地・建物の両方、または、土地・建物の片方を親が所有しているケースがあります。
上記の場合、親の死後に固定資産税・都市計画税の負担が重くなります。
土地や建物の所有者に対してかかる税金
都市計画区域(都市として一体的に開発する必要がある区域)内にある土地や建物の所有者に対してかかる税金
参照元:地方税制度-固定資産税|総務省
参照元:地方税制度-都市計画税|総務省
たとえば、二世帯住宅において、土地の所有者が親、建物の所有者が子どもだったとします。
上記の場合、土地にかかる税金は親が負担し、建物にかかる税金は子どもが負担します。
しかし、親が亡くなった後に土地を子どもが引き継いだ場合は、土地と建物両方にかかる税金を負担しなければなりません。
東京都主税局の調査データによると、東京23区と横浜市、大阪市の3地域の固定資産税・都市計画税の負担額の平均は以下のとおりでした。
土地 | 建物 | |
---|---|---|
東京23区 | 11.7万円 | 10.5万円 |
横浜市 | 9.0万円 | 9.2万円 |
大阪市 | 9.4万円 | 10.2万円 |
参照元:東京都特別区と他都市との固定資産税負担等の実態比較調査|東京都主税局
親から土地と建物いずれかを引き継いだ場合でも、10万円程度の税負担が増えます。
税金を支払えるほどの収入がない場合、処分を検討したほうがいいでしょう。
相続時にトラブルが起こる
建物、または、建物が建っている土地の所有権が親にある場合、相続時にトラブルが発生する可能性があります。
建物や土地のような不動産は、現金と違い、物理的に分割できません。
兄弟姉妹がいる場合、遺産分割の割合に不公平を感じた人との間でトラブルが生じる可能性があります。
たとえば、以下の状況で相続が発生したとします。
親の遺産
- 二世帯住宅が建っている土地:3,000万円
- 現金・預貯金:3,000万円
相続人は子どもA・B・Cの3人
二世帯住宅はAが所有
なお、遺産はA・B・Cで均等に1/3ずつ分割すると決めています。
Aが二世帯住宅に住み続ける場合、3,000万円相当の土地はAが相続します。
このとき、BとCは現金・預貯金を分割した1,500万円しか相続できません。
そのため、当初決めた1/3ずつの分割ができません。
分割ができない不動産の相続は、平等に遺産を分け合えないため、トラブルの原因となります。
なお、不動産のように分割できない遺産の相続が発生した場合でも、トラブルを回避できる方法があります。
トラブルなく、親の不動産を相続する方法について、くわしく知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
相続人全員に固定資産税負担の義務が生じる
土地・建物の名義人が親の場合、親の死後に子どもをはじめとした相続人全員に固定資産税の納付義務が生じます。
地方税法によると、共有物に課される固定資産税は、共有者全員が連帯して納付しなければならないとしています。
第十条の二
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。引用元:地方税法|e-Gov法令検索
相続発生時、遺産は相続人全員の共有物とみなされるため、上記に当てはまります。
前述したケースでは、親が所有していた土地を相続した際、二世帯住宅に住んでいないB・Cにも固定資産税の納付義務が課されます。
二世帯住宅に住んでいない人からしてみれば、税金を課されることに対して不公平にしか感じないでしょう。
なお、相続人全員の税金の納付義務を解消したい場合は、不動産を引き継ぐ人に名義変更する必要があります。
名義変更にやり方についてくわしく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
親の住宅ローン返済分の負担が生じる
親子リレーローンを利用して住宅ローンを借りた場合、親が亡くなった時に子どもがローン返済を引き継ぎます。
親子二世代にわたって、1つのローンを返済すること
親が急死して、ローン引き継ぎのタイミングが早くなった際、子ども世帯が想定以上の住宅ローン残債を返済しなければなりません。
なお、親子リレーローンでは、子どものみが団体信用生命保険(団信)に加入することが一般的です。
ローン返済中に契約者が死亡をはじめ返済が困難になった際、ローン残高がゼロになる保険
そのため、親が亡くなったとき、団信によるローンの帳消しができません。
したがって、親子リレーローンで住宅ローンを組んだ際は、親の突然の死により子ども世帯が想定より大きな負担を強いられるおそれがあります。
親子リレーローンを組む際は、親が急死する可能性を考慮した返済計画を組むことが必要です。
親の死後における完全分離型二世帯住宅の4つの活用方法
前述したとおり完全分離型二世帯住宅は、親が亡くなった後は税金負担が重くなるうえ、親が住んでいたスペースの定期的な管理も必要になります。
余ったスペースを放置したままにすると、完全分離型二世帯住宅のメリットを受けられず、ただ損するだけになってしまいます。
そのため、親の死後は以下の4つの活用方法を検討してみましょう。
- 1世帯住宅にする
- 子ども世帯との2世帯住宅として活用する
- 親世帯の住居スペースを賃貸にする
- 更地にして売却する
- 親世帯の住居スペースを売却する
1世帯住宅にする
完全分離型二世帯住宅は間取りを変更して、1世帯住宅としても活用できます。
子どもが増えて窮屈になったり、もともと居住スペースが狭かったりした場合は、広々とした生活環境を手に入れることが可能です。
具体的には、以下のような活用が考えられます。
- リビングを広げる
- 子ども部屋数を増やす
- 趣味部屋・仕事部屋を作る
ただし、間取り変更には1,000万円~1,500万円もの費用がかかるので、資金を準備できる場合に限った手段といえます。
工事資金の準備ができるうえ、現状の家を拡張したい人におすすめです。
子ども世帯との2世帯住宅として活用する
自分の子ども世帯との二世帯住宅として活用することも1つの手段です。
二世帯住宅としての設備はすでに整っているため、そのまま活用可能です。
子ども世帯にとっては、住居資金の準備をする必要がないというメリットがあります。
また、完全分離型は生活空間を別々にできる特徴があります。
そのため、親子間でサポートをすぐに受けられる環境は欲しいが、プライバシーは確保したい人たちにとっては、理想の住宅といえるでしょう。
ただし、親の近くに住みたいと考えている子ども夫婦でなければ、この手段は使えません。
子ども夫婦が親世帯の近くに住みたいと考えている場合は、2世帯住宅としての活用を検討しましょう。
親世帯の住居スペースを賃貸にする
余っている親世帯のスペースを賃貸に出す活用方法も挙げられます。
トイレやキッチン、浴室など生活するうえで必要な設備はすでに整っているうえ、住居スペースは完全に分離されているので、賃貸物件としてそのまま転用が可能です。
ただし、立地が良い物件ではない限り、借り手がみつからないかもしれません。
弊社が実施した「住みたい街の特徴」のアンケートによると、「買い物に困らない」「交通の便がいい」を「住みたい街の特徴」として挙げている人が多数いました。
アンケート結果から、スーパーをはじめとした商業施設が近くにある物件、近くに駅やバス停があるなど車以外の移動手段をとれる物件が人気あるといえます。
一方、近くに商業施設がない、車以外の移動手段がない立地の場合、借り手が見つかりにくいといえるでしょう。
立地が良い物件である場合は、おすすめできる手段です。
更地にして売却する
親が自宅で亡くなり、発見までに時間がかかった場合は、更地にしてから売却することも検討に入れてもいいでしょう。
遺体の発見まで時間がかかってしまった建物は事故物件として、買い手から敬遠される可能性が高くなります。
弊社が実施したアンケートによると、事故物件かどうか気になる人の割合は87.4%でした。
上記の結果から、人が亡くなった建物に対して、嫌悪感を抱く人は多いため、そのまま売却は難しいでしょう。
一方、更地にすれば、人が亡くなった建物がなくなるため、心理的な嫌悪感を和らげることが可能です。
そのため、建物がある状態で売りに出した場合より、早期に買い手が見つかる可能性が高まります。
ただし、解体に100~150万円かかるため、売却した際に得られる利益は少なくなります。
また、更地にしても、その場所で人が亡くなったことが買い手に心理的影響を与える場合、伝えなくてはなりません。
そのため、通常の土地と比べて買い手が見つかりにくいおそれがあります。
親の死亡発見まで時間がかかった物件を処分する際は、更地にして売却することも手段の1つとして考えておきましょう。
もし、事故物件となった物件の処分にお困りの場合、弊社アルバリンクにご相談ください。
買い手が見つかりにくい物件でも、査定価格に納得いただければ、1週間~1か月程度で売買契約が決まります。
事故物件を処分したいのに、売却先が見つからない人は、ぜひアルバリンクにお問合せください。
親世帯の住居スペースを売却する
完全分離型二世帯住宅は居住スペースが別々なため、使っていない親世帯側の居住スペースのみの売却も可能です。
前述したとおり、トイレや浴室、キッチンなどの設備はすべて揃っているので、1つの戸建て物件と同様に売りに出せます。
したがって、二世帯住宅として売りに出すときと違い、親子で同居したい層のみに需要が限定されていません。
夫婦やファミリーをはじめ買い手の層が広いので、通常の二世帯住宅より早期に売買取引が成立する可能性があります。
ただし、実際に売りに出す場合は、土地の分筆をはじめ権利関係の整理が必要です。
不動産関係の法律の知識が必要になるため、土地家屋調査士や司法書士などの専門家に相談しながら、手続きを進めましょう。
なお、弊社アルバリンクでは、二世帯住宅をはじめ権利関係の問題で売却できない物件の買取もしております。
たとえば、相続で不動産が共有名義になった際、持分のみの買取をしています。
また、需要が限られる二世帯住宅として買取を依頼することも可能です。
二世帯住宅の処分でお困りの人は、一度アルバリンクにご相談ください。
まとめ
この記事では、親の死後、完全分離型二世帯住宅を持っていることで起こりうる問題について解説しました。
完全分離型二世帯住宅において、親の死後に生じる可能性がある問題は以下の4点です。
- 余った生活スペースの定期的な管理が必要
- 固定資産税をはじめとした税金の負担が重くなる
- 相続時にトラブルが起こる
- 親の住宅ローン返済分の負担が生じる
親が亡くなった際、使われなくなったスペースの管理や税金負担の増額など、子ども側の負担が大きくなるおそれがあります。
そのため、1世帯住宅としての活用や賃貸物件としての活用などをしない限りは、所有しているメリットがないので、処分したほうがいいでしょう。
もし、物件の売却を考えている場合は、弊社アルバリンクの無料買取査定もご利用ください。
築年数が経過している物件をはじめ需要がない物件でも、査定・買取いたします。
また、リフォームを必要な箇所のみに絞ることをはじめ買取にかかるコストを抑えるノウハウがあります。
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親が亡くなった後の完全分離型二世帯住宅の処分を検討中の人は、アルバリンクにご相談ください。