耕作放棄地とは1年以上放置されている耕地のこと
耕作放棄地とは、過去1年以上何の作物も栽培されていない、かつ今後も活用する予定のない土地を指します。
耕作放棄地が引き起こす問題について解説する前に、まずは日本における耕作放棄地の現状について見ていきましょう。
耕作放棄地の現状
農林水産省の調査によると、耕作放棄地の面積は年々増え続けており、平成27年には42万3,000ヘクタールにまでのぼりました。
富山県の面積とほぼ同じくらいの農地が、現状何の用途にも使われずに放置されているということです。
また、2030年には農業従事者の数の減少により、2020年と比較して92万ヘクタールの農地が耕作されなくなると見られています。
参照元:日本農業新聞|30年に耕作面積92万ヘクタール減 経営体は半減 農水省試算
耕作放棄地が増える原因
いったいなぜ日本で耕作放棄地が増え続けているのか、その原因は主に以下の2つです。
- 農家の高齢化にともなう後継者不足
- 農業資材の高騰
第一に、農業従事者の高齢化と後継者不足による農業の担い手の減少が挙げられます。
実際、農林水産省の「農業労働力に関する統計」によると、令和6年における農業従事者の平均年齢は69.2歳となっています。
農業は体力仕事であることから、高齢になって体が思うように動かなくなった結果、離農を選択する人も少なくありません。
また、49歳以下の新規就農者数も年々減少傾向にあります。
農業従事者の高齢化が進み、また新たに農業を始めたいと考える若年層が減りつつある現状が、耕作放棄地の増加につながっているのです。
もうひとつの要因は、農業資材の高騰です。
近年あらゆる物価が上がるなか、農業資材の価格も高騰を続けています。
農業を続けても採算が取れないことも、耕作放棄地が増えている原因といえます。
遊休農地との違い
耕作放棄地と似ている言葉に「遊休農地」と「荒廃農地」があります。
遊休農地も耕作放棄地と同様、今後も耕作される予定がないまま放置されている土地を指します。
ただし、遊休農地は農地法で定められている法令用語なのに対し、耕作放棄地はデータを集計するための統計用語である点に違いがあります。
荒廃農地との違い
荒廃農地とは、その名のとおり、長期間にわたって作物が育てられずに荒れ果てた土地です。
荒廃農地のなかには森林化するなどして再生が不可能な土地も含まれており、そこが耕作放棄地との大きな違いだといえます。
また、荒廃農地かどうかは、自治体の農業委員会が客観的に見て判断します。
それに対して、耕作放棄地は農林水産省の「農林業センサス」というアンケート調査において、農業経営者が自分の意思で判断するものである点も違いのひとつです。
耕作放棄地がもたらす4つの問題
農地が耕作放棄地になることでもたらされる問題点は、主に以下の4つです。
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
食糧自給率の低下
農作物が栽培されない耕作放棄地が増え続けると、日本の食糧自給率は低下します。
農林水産省の調査によると、日本の食糧自給率は年々減少を続けている傾向にあります。
引用元:農林水産省|日本の食料自給率
このまま耕作放棄地が増え続ければ、さらに食糧自給率が低下してしまいかねません。
そうなると、食糧の多くを諸外国からの輸入に頼らざるを得ませんが、輸入先の国の政策の影響を受け、食糧の供給が滞ってしまうリスクも十分考えられるところです。
災害リスクの増加
災害リスクが増加する点も、耕作放棄地が引き起こす問題のひとつです。
農地には貯水機能があり、大雨や台風などのときに川が氾濫するリスクを未然に防ぐ役割を担います。
また農地は、火災が起きたときに周囲の建物に火が燃え移らないようにする火除け地としての役割も期待されているのです。
しかし耕作が放棄されて管理が行き届かなくなると、農地が持つさまざまな機能が失われてしまいます。
たとえば、火災の発生時には耕作放棄地の枯れ草などに燃え広がり、逆に被害を拡大させてしまいかねません。
耕作放棄地の存在が、さらなる災害リスクの増大につながりかねないのです。
近隣農家への悪影響
農地の管理を怠ると、雑草が生い茂って害虫や害獣が発生しやすくなります。
害虫や害獣による被害は耕作放棄地だけにとどまらず、近隣の農地にまで迷惑をかけてしまうことになりかねません。
とくに、農作物に損害をもたらす病害虫が発生してしまうと、近隣農家の農業経営に深刻な被害がもたらされるおそれがあります。
ゴミの不法投棄の増加
荒れ果てた耕作放棄地には、ゴミを不法投棄されるリスクが高まる点にも注意が必要です。
環境省の調査によると、令和4年度には年間で134件、総量4.9万トンもの悪質な不法投棄が発覚したということです。
所有している耕作放棄地にゴミを不法投棄されると、最悪の場合所有者自身が費用を負担してゴミを片づけなければならなくおそれがあります。
参照元:e-Gov法令検索|廃棄物の処理及び清掃に関する法律第5条第1項
耕作放棄地による問題を解決する5つの方法
ここまで、耕作放棄地がもたらすさまざまな問題について解説してきました。
これらの問題から解放されたいのなら、以下の方法のいずれかを検討することをおすすめします。
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
農地バンクを通じて耕作放棄地を貸す・売却する
今後も農地を自分で使う予定がないのなら、農地バンク(農地中間管理機構)を通じて第三者に貸したり、売却したりするのは選択肢のひとつです。
農地バンクとは、農地を貸したい・売りたい方と借りたい・買いたい方とを結びつける役割を担う公的な機関です。
農地バンクを通じて農地を賃貸・売却すれば、借り手や買い手が適切に耕作をしてくれるので、耕作放棄地になる事態を防げます。
ただし、「共有者がいて登録に同意を得ていない」「抵当権が設定されている」「山林化している」などの農地は、農地バンクに登録できません。
農地バンクを利用する際には、事前に要件を満たしているかを確認することをおすすめします。
自治体の補助金を活用して耕作放棄地を再生する
自治体によっては、耕作放棄地を再生する名目で補助金を支給しているところがあります。
その補助金を利用し、耕作放棄地を活用するのはひとつの方法です。
たとえば、福島県大玉村で農業を営んでいる12名の方は、荒廃農地を再生するために『ふくしま「医食同源の郷」づくり事業』「油糧作物推進事業」による補助金を活用し、80アールの荒廃農地でエゴマ栽培を開始。
収穫したエゴマはエゴマ油に加工して直売所やインターネットなどで販売し、好評を博しています。
自治体によって、耕作放棄地の解消へ向けた取り組みは異なります。
耕作放棄地を活用する予定があるのなら、まずは管轄の自治体で利用できる補助金制度がないかを確認しておきましょう。
「農福連携」で耕作放棄地を再生する
農福連携とは、障がい者が農業分野で活躍できるようにする取り組みのことです。
近年、農林水産省は厚生労働省と連携し、耕作放棄地の解消・障がい者の社会参加を促すさまざまな取り組みを行っています。
たとえば、新潟県阿賀野市では耕作放棄地を花畑に変えてハチミツを生産し、その瓶詰め作業を障がい福祉事業所などに通う方が行うという取り組みがなされています。
参照元:環境省|グッドライフアワード
農福連携に取り組むと、農林水産省から交付金が支給される点もメリットです。
「耕作放棄地を活用したいけれど何をしたらよいかわからない」方は、農福連携を検討してみてはいかがでしょうか。
太陽光発電経営を行う
耕作放棄地を活用し、太陽光発電経営を行う方法もあります。
太陽光発電システムの下部で農業を行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」なら、面倒な農地転用の手続きは不要なので、気軽に経営を行えます。
農地を耕作以外の目的で使用すること。
農作物を栽培しながら太陽光発電を行えるため、双方から収益を得られる点がメリットです。
また地目は農地のままなので、固定資産税の節税効果も見込めます。
ただし、営農型太陽光発電を行う場合には農地の一時転用手続きが必要です。
営農型太陽光発電の場合は一度許可を得たら10年間利用できますが、期間が終了したら再び申請しなければなりません。
加えて、太陽光発電の下部で生産した農作物に関する状況を毎年報告するなど、一時転用の許可にあたってはさまざまな条件が課される点にも注意が必要です。
なお、太陽光発電経営をはじめ、農地を活用する方法は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

耕作放棄地を売却する
「今後耕作放棄地を活用する予定はない」「面倒な手続きをせずに手放したい」と考えているのなら、耕作放棄地を専門の買取業者に売却するとよいでしょう。
耕作放棄地をはじめとする農地を売却するのは非常に困難であるといわざるを得ません。
なぜなら、買い手が農家の方に限られているからです。
また、農地を売却するには農業委員会の許可を得なければならず、必ずしも認められるとは限らない点に注意が必要です。
しかし専門の買取業者に依頼すれば、農業委員会への面倒な申請手続きの一切を代行してもらえます。
あなたが手間をかけずに耕作放棄地を手放せるようになるのが、専門の買取業者に売却する大きなメリットです。
弊社AlbaLink(アルバリンク)では、これまで耕作放棄地をはじめとする数多くの農地を買い取ってまいりました。
弁護士や行政書士などの専門家とも連携しているため、農業委員会への申請手続きもすべてお任せいただけます。
耕作放棄地を売却してさまざまなトラブルから解放されたいとお考えの方は、お気軽に弊社までご相談ください。
なお、農地を高額で売却できる買取業者の選び方については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

まとめ
近年、1年以上放置されている耕作放棄地の数が増え続けています。
所有している農地が耕作放棄地になると、ゴミの不法投棄や害虫・害獣の発生などによって近隣の農家の方へ被害を与えてしまいかねません。
そのため、今後も自分で農地を活用する予定がないのなら、耕作放棄地になる前に売却して手放すことをおすすめします。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、耕作放棄地をはじめ、全国の農地を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
過去には、一般の買取業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者として、フジテレビの「newsイット!」にも紹介されました。
査定は24時間365日無料で行っております。
耕作放棄地をいくらで買い取ってもらえるのかが知りたい方は、お気軽にお問い合わせください。
なお、査定を依頼しても、無理な営業をかけることは一切ありませんので、安心してご活用いただければ幸いです。