相続土地国庫帰属法が制定された背景
「相続土地国庫帰属法」とは、相続するいらない土地を国が引き取ってくれる法律のことで、その法律に則って制定行された制度を「相続土地国庫帰属制度」と言います。
参照元:e-GOV法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
この法律が制定された背景には、以下の4つのような日本の社会問題があります。
- 所有者不明の土地が増加している
- 土地を手放したい所有者が増えている
- 管理不全で活用できない土地が増えている
- 土地所有権を放棄するような規定がない
このような社会問題が起きてしまう理由としては、「相続した土地を手放したくても手放しにくい」という現状があるからです。
例えば、上記4つの社会問題にもある「所有者不明」というのはかなりやっかいです。
相続した土地の謄本を見たら、所有者が全く知らない人と言うケースが少なくありません。(参考記事:所有者が不明の土地を売却する方法を圧倒的にわかりやすく解説)
また「周りの土地に迷惑がかかるから管理が必要だけど、遠くに住んでいて管理できない」「管理したいけど金銭的負担が大きい」などの理由から、仕方なく相続した土地を放置してしまう人もいます。
さらに、相続した土地を活用したくても、専門的な知識のない個人が土地活用を行うと収益化できずに赤字になるリスクがあるので、相続した土地の活用に手を出す人は少ないのが現状です。
このような社会的背景を受け、政府は「相続土地国庫帰属制度」を制定し、相続したいらない土地を引き取ることで問題の解決を図っています。
相続土地国庫帰属法の利用要件
前述したとおり、相続した土地が放置されてしまう問題の解決策として「相続土地国庫帰属制度」が設けられていますが、実際にこの制度を利用するには多くの要件を満たさなければなりません。
相続土地国庫帰属制度の適用要件は、大きく3つに分けられますので、一つずつ解説していきます。
人の要件
相続土地国庫帰属制度は「相続や遺贈などで土地を取得した人」が利用できます。
そのため、以下の人はこの制度を利用できません。
- 売買で土地を取得した人
- 生前贈与や家族信託を受けた人
例えば、親から「生前贈与」によって手に入れた土地や親から「購入」した土地の場合、これらは「相続で取得した土地」に該当しないので、相続土地国庫帰属制度を利用できません。
土地の要件
相続土地国庫帰属法には「土地の審査」があり、以下に該当する土地はそもそも審査の対象にならないので、相続土地国庫帰属制度を利用できません。
- 建物がある土地
- 担保に入っている土地、貸している土地
- 地元の方が利用している土地
- 土壌汚染がある土地
- 隣の土地との境界が不明確な土地
- 崖地
- 残置物がある土地
- ゴミ等が埋まっている土地
- 公道までの通路がない土地
- その他(災害・獣害危険区域、賦課金が必要な土地改良区等)
例えば、相続した物件が戸建てや一棟アパートなど、建物が残っている土地の場合は相続土地国庫帰属制度の対象外となります。
また、自動車や鉢植えが放置されていたり樹木などが残っている場合や、申請する土地の範囲内に他の人が利用する通路や水路などが含まれている場合も申請できません。
他にも、土地を引き取ったとしても土壌汚染があるなど、土地を活用する際にコストがかかると予測される土地はこの制度を利用できないので、細かい確認が必要です。
このように、相続土地国庫帰属制度を利用したい場合は、不要なものをすべて取り除いた更地(土地のみ)の状態にする必要があります。
費用面の要件
相続土地国庫帰属法を利用して、いらない土地を国に返すには以下の「費用」がかかります。その費用を納めることも相続土地国庫帰属制度を利用する要件の1つです。
それぞれの費用について一つずつ詳しく解説していきます。
審査手数料
相続土地国庫帰属制度の審査手数料は「14,000円」かかり、収入印紙を貼付して納付します。
審査手数料は、審査不合格の場合であっても返還されません。ですから、あなたの土地が相続土地国庫帰属制度の申請条件を満たしているのかを予め確認してから申請することをおすすめします。
10年分の管理費用
相続土地国庫帰属制度の申請が承認されると、申請者は負担金として「10年分の土地の管理費用」を支払わなければいけません。
負担金額は、以下の表の通りです。
宅地 | 面積に関わらず20万 |
---|---|
田畑 | 面積に関わらず20万 |
森林 | 面積に応じて算定 |
その他 | 面積に関わらず20万 |
ただし、厳密には土地によって金額が変わるポイントがあります。
都市計画法の区域内の住宅街にある宅地や優良農地などは、「面積」に応じて管理費用が算定されます。
ですから、これらの土地に当てはまる場合は、予め負担金を計算して納付金額を把握しておきましょう。予め計算しておけば、思いもよらない大きな負担金を支払うことを防げます。
例えば、都市計画法の市街化区域の場合、100㎡だと負担金額は「100㎡×2,720(円/㎡)+276,000円」で計算され、およそ55万円となります。
なお、負担金の支払い期限は「負担金の通知書が届いた翌日から30日以内」です。期限を過ぎると承認が失効してしまいますので注意してください。
また、負担金が納付された時点で土地の所有権が国に移りますので、相続した土地が本当にいらない土地なのかを慎重に判断してから申請しましょう。
建物の解体費用
相続した物件に建物がある場合は、相続土地国庫帰属制度の申請前に更地にしなければいけないので、解体費用がかかります。
解体費用は家屋の構造によって変わり、相場は以下の通りです。
木造 | 3~5万円/坪 |
---|---|
鉄骨造 | 5~7万円/坪 |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 6~8万円/坪 |
例えば、50坪の戸建住宅であれば、解体費用の目安は以下のようになります。
木造 | 150~250万円 |
---|---|
鉄骨造 | 250~350万円 |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 300~400万円 |
上表のように家屋の構造だけでなく、「築年数」や「屋内の家具・家電を一緒に撤去するかどうか」などによっても、解体費用の金額は変わります。
解体費用を少しでも安く抑えたい場合は、家屋内のものは自分で撤去し、庭の樹木なども可能な限り処分しましょう。
専門家への依頼費用
相続土地国庫帰属制度は、前述したとおり適用要件が複雑なので、一般の方が独力で申請を行い、土地の審査を通すのはとても困難です。
ですから、相続土地国庫帰属制度の申請を行う場合は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
その場合、上記の専門家に相続土地国庫帰属制度の申請サポートに対する費用を払うことになります。
相続土地国庫帰属制度は、まだ新しい制度のため報酬費用の相場ははっきりしていませんが、「10~50万円」ほどの費用が予想されます。
相続土地国庫帰属制度を申請する前に見積もりを取り、費用がどのくらいかかるかどうかを確認しておきましょう。
なお、弊社は相続した物件を専門に扱う買取業者で、弁護士や司法書士とも提携しており、相続土地国庫帰属制度に関するアドバイスも可能です。
「相続した土地を国に引き取って欲しい」「いらない土地を早く手放したい」とお考えなら、一度弊社にご相談ください。
※「物件住所」「氏名」「メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。(※個人情報保護は万全です)
※無料相談はサービスの一環であり、買取を前提とするものではありませんので、お気軽にご利用ください。
相続土地国庫帰属法のメリット・デメリット
前述したように、相続土地国庫帰属制度は適用要件があったり費用がかかるので、デメリットが多く利用しにくい印象を受けると思います。
しかし、相続土地国庫帰属制度はメリットもありますので詳しく解説していきます。
相続土地国庫帰属法のメリット
相続土地国庫帰属法のメリットは以下の2つあります。
- いらない土地だけ国に返すことができる
- 引取後は土地に関する一切に責任を取る必要がなくなるので安心できる
相続土地国庫帰属制度の大きなメリットは、相続したいらない土地のみを選択して国に返せる点です。
土地を手放す方法には、土地を相続する前に「相続そのものを放棄する方法(=相続放棄)」もあります。
しかし、相続放棄してしまうと、いらない土地のみならず遺産を全て手放すことになってしまうので、あまりおすすめしていません。
また、取引後も国が責任をもって土地を管理してくれる安心感がある点もメリットです。
国有地になれば、原野商法などの反社的なことに土地が使われることはないでしょうし、土地を手放したあとに近隣の方からクレームが発生することもありません。
このように、相続土地国庫帰属制度を利用すれば、相続した土地を後腐れなく綺麗サッパリ手放すことができます。
相続土地国庫帰属法のデメリット
相続土地国庫帰属法のデメリットは以下の3つあります。
- 申請するための要件が複雑である
- 高額な費用がかかる
- 国に帰属するまでに時間がかかる
前述したとおり、相続土地国庫帰属制度を申請できる人や土地にさまざまな要件があり、確認事項も多いため、申請そのものが困難な点は大きなデメリットです。
また、相続土地国庫帰属制度の申請が困難なので、申請手続きは専門家へ依頼する必要がありますが、依頼するとなると専門家への報酬費用が発生します。
国に払う負担金や家屋の解体費用なども併せると高額な出費となります。
相続土地国庫帰属制度の利用には、書類審査や現地調査が必要であるため、審査に時間がかかることもデメリットです。
適用要件の確認や書類作成などの時間も考慮すると「数ヶ月〜1年以上」を要する可能性もあります。
前述したように、相続土地国庫帰属制度にはメリットもあるとお伝えしましたが、そのメリットを享受するには、上記3つのデメリットを乗り越える必要があり、そのハードルは高いと言えます。
相続土地国庫帰属法の手続きの流れ
相続土地国庫帰属法の手続きは以下の流れで行います。
専門家に相談する
相続土地国庫帰属制度は開始されたばかりの制度のため、この制度に関する実績のある弁護士や法律の専門家は多くないでしょう。
しかし、弁護士や司法書士は法律の専門家なので、相続土地国庫帰属制度を正確に申請するためにはサポートを依頼すべきです。
相続する土地の種類に応じて、以下の専門家に相続土地国庫帰属制度の申請手続きを依頼しましょう。
宅地 | 弁護士・司法書士で宅建士の資格所有者 |
---|---|
農地 | 農地法に詳しい弁護士や司法書士 |
山林 | 山林の境界問題に詳しい弁護士や司法書士 |
相続土地国庫帰属制度を申請する際の注意点は、市区町村の窓口に相談しないことです。
市区町村は気軽に相談しやすい公的機関ではありますが、窓口の担当者は不動産に詳しい法律の専門家ではないため、十分な対応をしてくれない可能性があります。
つまり、市区町村に相談すると、相続土地国庫帰属制度の申請や審査の可否に影響が出ないとも言い切れないのです。
相続土地国庫帰属制度を申請する際は、必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。
法務局に申請書を提出する
相続土地国庫帰属制度の申請を進めることを決めたら、申請に必要な以下の書類を準備しましょう。
- 申請書
- 印鑑証明書
- 公図(地図)
- 現地写真
- 境界点を撮影して番号をつける
- お隣との境界がわかる写真
それぞれ必要書類を詳しく解説しますが、前述したように弁護士や司法書士に相続土地国庫帰属制度の申請サポートを依頼すれば、上記の必要書類をすべて準備してくれます。
なので、専門家に相談する場合は、上記の必要書類をすべて覚える必要はありません。
申請書
相続土地国庫帰属制度を申請する際は、所定の申請書を記載する必要があります。
申請書用紙は法務省の以下のページからダウンロードできます。
記載例は以下のURLで確認できますので、申請書を記載する際は参考にしてください。
印鑑証明書
相続土地国庫帰属制度を申請する際は「印鑑証明書」が必要です。
印鑑証明書とは、登録された印鑑が本物であることを証明する書類のことです。
印鑑登録カードを用意し、市区町村の窓口やコンビニの発行機に行けば取得できます。
相続土地国庫帰属制度を申請に必要な印鑑証明書の通数は、提出先の法務局に確認しておいてください。
公図(地図)
公図とは、土地の大まかな位置や形状を表した地図のことです。
具体的には、縮尺が「1/2500」になっている地図を法務局で取得し、地図上に以下の内容を記載したものを用意します。
- 所有している土地の範囲を記載する
- 境界点を撮影した場所に番号をつけて記載する
- 写真を撮影した向きを矢印で記載する
公図を取得するのは知識がなくてもできますが、公図に上記の内容を示すのは専門的な知識がないと難しいため、弁護士や司法書士などの専門家に代行してもらった方が早いです。
現地写真
相続土地国庫帰属制度を申請する際は、建物や樹木などがない更地になっていることを証明するために「現地の写真」が必要です。
土地の状況がわかるように、複数の視点から近景・遠景の写真を用意し、どの角度から見ても問題がないことがわかる写真を準備しましょう。
境界点を撮影して番号をつける
相続土地国庫帰属制度を申請する際は、現地の近景・遠景の写真とは別に、隣家との「境界線」と「境界点」がわかる写真が必要です。
提出する写真には、地図に示した撮影場所の番号を記載し、写真に写っている木杭などの境界点を矢印で示してください。
また、境界線はマーキングしてわかりやすく示しましょう。
相続土地国庫帰属制度を申請する際に必要が書類の記載例を載せておきますので参考にしてください。
書面による審査と現地調査による審査
必要書類を準備したら、相続した土地の住所を管轄する法務局へ提出します。
その申請書が受理されると、法務局担当官によって書面による審査と現地調査が行われます。
書面の審査は前述した必要書類を元に行われます。
書面審査が通過すれば、法務局の職員が実際に現地に行って調査を行います。
申請者の土地の範囲を正確に調査し、隣地との境界などに間違いがないかなどを確認します。
また、調査では土地が利用できる可能性についても調査されます。
具体的には、建築規制や環境への影響などが調査され、将来にわたって活用できる土地かどうかを評価します。
合格通知を受け取り負担金の納付を行う
審査が完了し、問題がなければ承認されて国への名義変更が許可されます。
申請者には、書面にて「相続土地国庫帰属法が承認された旨」が通知されます。
承認された場合、承認の通知とともに負担金の納付を求める通知が届くので、通知が届いた翌日から「30日以内」に負担金の納付を行います。
いらない土地は国に返す前に不動産買取業者に相談しよう
相続土地国庫帰属制度では、いらない土地や売れない土地を国に返すことで手放すことができます。
しかし、これまで解説してきたように、相続土地国庫帰属制度を利用するには高額な費用や時間、労力が必要です。
また、適用要件が多く、実際に土地を国に帰属できるケースは多くありません。
ですから、相続した土地を手間なく簡単に手放したいとお考えなら、専門の不動産買取業者に買い取ってもらうことをおすすめします。
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専門の不動産買取業者がどんな土地でも買い取れる理由は、立地が悪い土地や老朽化した物件がある土地を活用・運用するノウハウを豊富に持ち合わせているからです。
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まとめ
本記事では、いらない土地を国に返せる「相続土地国庫帰属法」について解説しました。
日本では「所有者不明の土地が増加している」などの背景から、いらない土地を国に返すことができる「相続土地国庫帰属制度」ができました。
ただ、この制度を利用するためには多くの要件を満たさなければいけません。
要件を満たせず、そもそも相続土地国庫帰属法が適用できないケースも多くあります。
また、相続した土地を国に帰属させるには、100万円近い高額な費用や1年以上の期間がかかります。
ですから、費用をかけずに、すぐに土地を手放したい方は、不動産買取業者に直接売却するのが賢明です。
専門の買取業者に売却すれば、あなたは相続した土地を手放せるだけでなく、まとまったお金を手に入れることもできます。
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