土地と建物の名義が異なる家の売却方法
土地と建物の名義が異なる家はどのように売却すればよいのかを解説します。
当然のことではありますが、他人名義になっている不動産を勝手に売却することはできないため、土地と建物の名義が異なれば自分の名義になっている方のみ売却可能ということになります。
名義が別々になってしまうきっかけというのは、例えば以下のような状況です。
土地と建物の名義が別々になる状況
- 親自身の名義の土地に子供が建物を建てることを許した(土地は親の名義、家は子の名義)
- 土地と建物を夫婦で購入したが夫の方が資力があるため名義を分けた(土地は夫の単独名義、建物は夫婦共有名義など)
- 相続した不動産を兄弟で分けた(土地は兄の名義、建物は弟の名義
このように土地と建物の名義人が異なると、スムーズに売却できないことがしばしばあります。
名義が別々の不動産を売却する方法を1つずつ解説します。
土地や建物をそれぞれ単独で売却する
土地と建物をそれぞれ単独で売却する方法です。法的に言えば売却可能ですが、現実には困難を伴います。
仮に土地だけを購入しても、その土地上に他人の建物が存在すれば自由に利用することもできません。
また、建物だけを購入したとしても「地上権」「賃借権」といった土地の利用権が登記されている場合は原則的に買主が利用継続可能です。
しかし、親子間で貸し借りしている場合などに多く用いられる「使用貸借」は「無償で貸し借りする」約束ですので、買主が利用継続できるとは限りません。
使用貸借の場合は、期間や目的を定めていなければ土地所有者から契約解除されてしまうこともありますので、新たな買主となる人は土地所有者との間で利用権を明確にしておかなくてはなりません。
民法598条
貸主は、前条第2項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
借主は、いつでも契約の解除をすることができる。引用元:(使用貸借の解除)第五百九十八条
つまり、使用貸借において土地と建物どちらかの名義が異なる場合には、土地利用に関する契約の継続について事前に書面で明確にしておかなければ、売買にあたってリスクを伴うことになります。
土地もしくは建物を買い取って名義を一本化してから売却する
土地もしくは建物所有者のうち、売買を希望する所有者が、もう一方の所有者の保有する土地もしくは建物を購入し、名義を一本化して売却する方法があります。
具体的に名義を一本化する手順については後述します。
土地もしくは建物の一方の所有者に売却する
土地の所有者が建物の所有者に売却する、あるいは建物の所有者が土地の所有者に売却する方法です。
一般の買主を募るよりも条件面でも話が早くまとまる可能性があり、その不動産の事情を知っている当事者であるだけに売却手続きも手際良く進むことが多いでしょう。
土地と建物を名義が異なるまま「同時売却」する
土地と建物の名義人が協力して「両方を同時に売却する」方法です。
もちろん、両方の名義人が契約や決済などに関与するため、土地と建物の所有者の関係が良好であれば一番スムーズに話が進みます。
ただ、両者が不仲であったとしても、不動産仲介業者の手を借りることによって、必ずしも両方の所有者が同日に同席しなくても売却手続き自体は可能です。
土地もしくは建物のみを買取業者に売却する
土地、建物のどちらかの所有者のみが自分の所有する物件を不動産買取りを行う業者に売却する方法です。
その後、売却されなかった一方については購入した業者が所有者と交渉をして買い取り、名義を一本化する流れになります。
相手方との関係が悪化してしまっている場合などは、直接やりとりをしなくて良いため精神的負担のかからない方法といえます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)も、土地・建物のどちらか一方のみを買い取ることが可能です。
土地、もしくは建物の売主様が、もう一方の所有者様と話し合う必要は一切ありませんので、そのままの状態でお気軽にご相談ください。
土地と建物の名義が異なる家のケース別対処法
土地と建物の名義が異なり、今後名義の一本化を希望する場合の対処法をケース別に解説します。
住宅ローン残債ありの場合は金融機関の合意のもと名義変更
住宅ローンの支払いが終了していない場合、金融機関の合意のもとに名義変更しなくてはなりません。
建物を建築または購入する際に建物の名義人となる人が住宅ローンを利用したら、金融機関は通常、建物と同時に建物の建つ土地にも抵当権を設定します。
建物と名義が異なる土地に抵当権を設定する場合、土地の名義人のことを「物上保証人」とよびますが、親の土地に子が建物を建てる場合などにはよく使われる方法です。
「抵当」とは、借金のカタということですので、抵当権をつけられた土地や建物の名義を勝手に変えることはローン契約で禁じられていることが普通です。
もし勝手に名義を変えてしまった場合、「ローン契約違反」ということで期限の利益(分割払いができる利益)を失い、残債務の一括返済を求められる危険もあります。
そこで、土地、建物のどちらかの所有者がもう片方を買い取りたいなどの場合には必ず事前に金融機関に相談することが必要です。
具体的処理方法としては次のようなものがあります。
住宅ローンが残っている場合の対処法
- 残債務が少額であれば完済してしまい、抵当権を抹消して金融機関を名義変更とは無関係にする
- 債務者ではない当事者が債務者所有の物件を買い取る場合には、金融機関が認めるなら借り換えなどの形で債務者を変更する
所有者を変えることで自動的に債務者が変わるわけではないため、借り換えで債務者を変更するなどの場合は新たな債務者の信用状況について金融機関が審査しなくてはなりません。
金融機関が融資する場合、基本的には債務者が所有権や持分を持っていることが条件とされる場合が多いため、当事者が思ったとおりの名義変更ができるとは限らないこともあるのです。
もう一方の名義人が行方不明の場合は不在者財産管理人を選任する
土地もしくは建物どちらかの名義人が行方不明などで連絡が取れない場合、家庭裁判所に申立てを行って「不在者財産管理人」を選任する方法があります。
不在者財産管理人とは民法第25条に定められており、「住所や居所を去り、財産管理人を置かなかった人について、一定の申立権者が家庭裁判所に申し立てることで不在の間の管理人を選任して不在者の財産を適正に保つ」という制度です。
「不在者財産管理人」の詳しい注意点等についてはこちらを参照してください。

この制度ではあくまでも「不在者の財産を守ることが制度の本来の趣旨である」ということに注意が必要です。
そのため、周囲の人が不在者の財産を買い取りたいと思ったので不在者財産管理人を選任してもらったものの、買い取ることを家庭裁判所が認めない可能性も十分あるということです。
また、裁判所に納める予納金などで数十万円の費用を申立人が負担しなければならないといったことも念頭に置かなくてはなりません。
もう一方の名義人が認知症の場合は成年後見制度を利用する
土地か建物の名義人の判断能力が衰えている場合には家庭裁判所に申立てを行って「成年後見人」を選任する方法があります。
ただ、成年後見人も不在者財産管理人と同様に「判断能力が衰えている(認知症など)本人」の財産を保護するための制度であり、周囲の親族や売却希望者の希望通りに不動産売却などができるとは限りません。
成年後見の場合は特に「成年被後見人(認知症等の本人)の居住用財産」を売却、もしくは売却に準ずる処分をするのであれば家庭裁判所の許可を要するとされていますので、特に厳しくなるものと考えておかなくてはなりません。
民法第859条 3項
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。引用元:民法「第八百五十九条」
成年後見は申立ての手続きそのものが煩雑であり、人によっては費用もまとまった金額(医師の鑑定が必要な場合は20万円など)になります。
家庭裁判所が後見人を選任した場合、報酬が発生すること(被後見人の財産により金額が異なる)も理解しておかなくてはなりません。
そして、成年後見人を選任した目的となる行為(売却等)の後にも後見人は原則、被後見人の死亡まで職務を継続しなくてはならないという点にも注意が必要です。
「成年後見人」の詳しい注意点等についてはこちらを参照してください。

土地、建物の名義が異なる家を相続する際は遺産分割協議を慎重に行う
土地と建物の名義が異なる不動産について相続が発生した場合、誰が相続するかは慎重に遺産分割協議を行って決めなくてはなりません。
例えば、親の土地に長男が自分名義の家を建てているが、親が亡くなり土地を長男と次男どちらかが相続しなくてはならないとしましょう。
この場合、間違いなく「長男が単独で土地を相続する」のが一番望ましい形です。
建物が長男、土地が次男のような状況になると、それぞれに相続が発生した場合にまた合意をしなければならない人数が増えるなどで収拾がつかなくなることも考えられるからです。
本来は土地と建物の名義を最初からバラバラにしない方がよいのですが、上記例のような状態になっている場合には親が生前に「土地を長男に相続させる」といった遺言書を作成しておくのが好ましいといえます。
また、1つの不動産を2人以上の「共有」で相続することも、将来の共有者数を増やさないようにする意味では避けた方がよいでしょう。
目ぼしい相続財産が土地のみであるといった場合には、以下のような方法があります。
土地のみの遺産を平等に分配する方法
- 土地を兄が相続し、兄から弟に法定相続分(民法で定められた相続分)を金銭で渡す(価格賠償)
- 土地建物をまとめて売却して金銭に換えて分配する(換価分割)
その家にとって、相続する預貯金がどのくらいあるか?相続人の居住用不動産は確保されているかなど個別の事情でベストな分割方法が異なります。
その場しのぎに法定相続分で登記するといったことは避けるべきですので、司法書士や弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
借地権付き建物の売却は地主に相談する
借地権(賃借権)がついた建物は、地主に相談して売却の承諾を取り付けなくてはなりません。
他人の土地上に存在する建物には何らかの土地利用権が設定されていますが、利用権が「賃借権」である場合、民法に次のような条文があるからです。
民法第612条
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。引用元:民法「第六百十二条」
もちろん地主自身に建物を買い取ってもらうことも可能ですが、いずれにしてもひとまず地主に相談しなければならないことを覚えておきましょう。
土地と建物の名義を一本化する手続き
土地と建物の名義を一本化するにあたって具体的な手続きを確認してみましょう。
相手方と交渉する
自分が相手方から買い取ることを希望する場合は、まず価格等条件面での交渉を行いましょう。
もし相手方に相続が発生している場合には相続登記を行ってもらわないと所有権を移転することができないことに注意しましょう。
妥当な価格については、不動産業者に査定を依頼するのがおすすめです。
司法書士へ相談する
買い取りの条件が決まったら、登記のために準備すべき書類などを司法書士に相談しましょう。
相手方に相続が発生している場合は相手との交渉段階から司法書士にアドバイスしてもらう方がスムーズです。
登記費用の負担は「相続登記は相続が発生している側の当事者」「売買による所有権移転登記は買主」の二者で負担するのが業界の慣例ですが、売主と買主の関係性によっては(親子など)別途協議で負担者を決めても構いません。
いずれにしても、あらかじめ見積もりを取っておくことが大切です。
売買契約を締結
売買契約を締結しますが、書面で行うことが望ましいといえます。
法的には口頭の約束でも売買契約が成立しますが、条件面などで後日トラブルにならないためにも売買契約書はきちんと作成しましょう。
決済・登記
契約を締結したら後日代金の決済を行い、その日に所有権移転登記を行います(契約と決済を同日に行うケースもあります)。
代金の支払いと登記は「同時履行」でなくてはならないため、代金決済の日には必ず登記の必要書類をすべて整えた状態で臨まなくてはなりません。
もし不動産仲介業者を入れずに売買すると、後日、物件の瑕疵(キズ、欠陥)等に基づくトラブルが起こった場合に対処できないことがあります。
特に親族ではない他人同士の場合は、不動産仲介業者に依頼して取引することをおすすめします。
まとめ
土地と建物で名義が異なる不動産の売却方法を解説しました。
原則として、土地と建物は同時でないと売却できません。
売却する方法はいくつかあり、例えば、土地と建物の所有者、両者が売却同意して同時に売却する、どちらかが土地(もしくは建物)を買い取り名義を一本化する等があります。
しかし、全ての方法において、土地と建物の所有者、両者の交渉や話し合いが必要です。
両者が仲違いしている等、直接話し合えないのであれば、不動産買取業者に直接売却してしまいましょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、土地のみ・建物のみもスムーズに買取できます。
売主様が、売却前にもう一方の所有者様に交渉する必要はないのでご安心ください。