固定資産税のしくみとは?
まず、固定資産税のしくみや意味合いについて知っておきましょう。
固定資産税の意味合い
固定資産税は、土地や建物の「所有者」に課税されます。
使用者ではなく、あくまでも所有者に支払い義務があります。
地域によっては固定資産税のほかにも「都市計画税」がかかる場合があります。
これもまた、不動産の所有者が支払うべき税金です。
都市計画税とは?
都市計画税は、「市街化区域」内の土地や建物の所有者に課せられる税金で、都市計画事業や土地区間整理事業の資金に利用するのが目的です。
地域の上下水道や道路建設といったインフラ整備などが対象になります。
固定資産税や都市計画税を管轄しているのは各市町村の自治体になりますが、自治体によって税率は多少異なります。
固定資産税のしくみ
固定資産税は1月1日の時点で、土地や建物などの不動産を所有している人には必ず発生する税金です。
市町村の「固定資産課税台帳」に登録されている不動産の持ち主全員が対象になります。
固定資産税額はどのように決まるのか?
固定資産税額は「固定資産税評価額」(課税標準額)を基に計算されます。
評価額は、土地の公的価格などをもとに、各市町村の評価員が決定をします。
固定資産税評価額は3年に1度、その時点での地価に応じて見直しがおこなわれます。
土地の価値の変動に合わせて税額も変えて、税負担に不公平がないようにする仕組みです。
地価が高騰している時期であれば固定資産税も高くなるということです。
固定資産税額の算出方法
固定資産税額は、課税標準額(評価額)を基に下記の方法で算出することができます。
固定資産税=課税標準額(評価額)×1.4%(標準税率)
尚、税率は各市町村によって1.5%や1.6%など、税率が異なります。
固定資産税の支払い時期
固定資産税を支払うのは、その年の1月1日時点での所有者です。
1月2日以降に不動産の所有者になった場合は、その年には固定資産税の支払いはなく、翌年からの支払いになります。
つまり、不動産を売却して1月2日以降に所有者ではなくなった場合でも、その年の固定資産税は全部支払う必要があります。
固定資産税の支払い時期は市町村によって違いがありますが、1年分を4回に分けて払うケースが多く、ほとんどの自治体では6月、9月、12月、2月に納税通知書が郵送されてきます。
固定資産税の支払い方法
多くの市町村では、4月~6月頃に納税通知書と一緒に、一括払い用と4回の分納用の振込用紙が送られてきます。分納が面倒な場合は一括で支払うことが可能です。
市町村の固定資産税課窓口に出向いての納付はもちろん、銀行・郵便局・コンビニでも納付できます。
うっかり振り込みを忘れて支払いが遅れてしまうと、最大14.6%の遅延金を取られることになります。
口座からの自動引き落としやクレジットカードに対応しているところも増えているので利用するといいでしょう。
自治体によって支払いの方法が異なるため、事前に確認が必要です。
借地権と固定資産税
次に、借地権と固定資産税の関係についてご説明していきましょう。
借地人には固定資産税の支払い義務はない
固定資産税はお伝えしてきたように、不動産の「所有者」に支払い義務があります。
つまり、日常的に土地を使用していても、借地人に支払い義務は一切ありません。
賃貸アパートを借りて住んでいても、固定資産税を請求されることがないのと同じ意味合いです。
借地の建物には固定資産税がかかる
借地人には土地の固定資産税はかかりませんが、借地に建てた建物の所有者は借地人になるため、固定資産税や都市計画税の支払い義務があります。
支払いの時期が来れば、建物部分だけの納税通知書が送られてきます。
貸地人(地主)に税軽減のメリットがある場合も
貸地人である地主は、更地や駐車場のように建物の立っていない土地を所有し続けるよりも、他人に土地を貸すことによって大きなメリットを受けられることもあります。
「住宅用地の特例」で固定資産税を軽減できる
地主が所有している土地が更地の場合、固定資産税の軽減を受けることはできません。
しかし、借地として貸し出して借地人が居住用の家を建てれば、「住宅用の敷地」という扱いになり、固定資産税が大幅に軽減されます。
これを「住宅用地の特例」といいます。
ちなみにこの特例は、一戸建てだけではなく、賃貸マンションやアパートなども対象になります。
減額の割合は、住宅1戸あたり200㎡までの部分の固定資産税評価額が6分の1に軽減され、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されます。
相続税の節税対策になる
更地で所有せずに借地にすることで、固定資産税の軽減だけではなく相続税の節税対策ができる可能性もあります。
他人に土地を貸して借地権が設定されている契約期間は、自分の所有地であっても、地主は土地の処分や活用などを勝手におこなうことはできません。
土地の利用法が制限され自由度が低いことで、土地の財産評価額は低くなります。
そのため相続税の軽減が期待できるのです。
固定資産税額が地代に影響することもある
土地価格の高騰によって固定資産税の金額が上がった場合、地主は借地人に地代の値上げを請求することができます。
当初の契約書上で地代を設定していた場合でも、金額の変更をすることが可能です。
借地借家法では、「土地に対する税金などの増減」「土地価格の上昇や低下、そのほかの経済事情の変動」「近隣の土地の地代と比較して金額が不相当」といった場合には、地代の値上げや値下げができると定められています。
地代には多くの税金がかかる
地主が地代をもらっても、100%が利益になるわけではありません。
固定資産税や都市計画税はもちろんのこと、地代は「不動産所得」になるため所得税もかかります。
特に都市部の土地評価額は値上がりが続いています。
しかし、頻繁に地代を上げるわけにもいかず、何十年も同じ地代でまかなっている地主も多いのです。
固定資産税額は地代設定の目安になる
地代は地主さんが決めますが、一般的なのが固定資産税額を地代設定の目安にする方法です。
首都圏の場合、固定資産税と都市計画税を合わせた金額に対する地代(年額)は以下のようになります。
・住宅の場合 3倍~5倍
・商業地の場合 5倍~8倍
例)固定資産税評価額 2500万円の場合
2500万円×1.7%(固定資産税+都市計画税)×3~5倍=153万円~255万円(年間)
1ヶ月当たりの地代は13万円~21万円程度となります。
まとめ
借地権の固定資産税は、使用者ではなく、所有者である地主に支払い義務があります。
土地の価格が上がって課税評価額が上がれば、固定資産税も高くなり地主に支払いの負担がかかります。
そうなれば、地代の値上げによって負担をカバーするしかありません。
借地人は固定資産税の支払い義務はないものの、固定資産税額の増減によって地代は少なからず影響を受けるため、仕組みを理解しておくことが大切です。