底地の相続税評価や納税資金が足りない場合の対処法を解説

底地

底地は地代収入が低いにもかかわらず、固定資産税や相続税負担が大きい土地のため「納税資金が捻出できない」という人も少なくありません。

納税資金は現金で準備する必要があります。手持ちの財産や相続財産で足りない場合は、底地の売却や親族からの借り入れ、税金の延納や物納を検討しましょう。

相続税は、故人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に納税する必要があります。

納税資金が準備できず自分の財産を切り崩す事態が予測される場合は、相続財産や底地を売却し現金化を準備しておきましょう。

この記事では、底地の相続税評価額や納税資金が支払えないときの対処法ついて詳しく解説します。

複雑な権利関係にお悩みの方に

トラブルの多い借地権や底地を買い取ります!

底地は地代収入が低くわりに相続税負担が大きい

底地は、収益性が低く地主が自由に土地を活用できないのに、相続税が高く設定されています。

「毎月の地代収入を得られる」「相続時に小規模宅地の特例を活用して評価額を減額できる」というメリットはありますが、相続税が大きいと最終的な負担が膨らみます。

小規模宅地等の特例

被相続人が所有する「住居用の土地」「事業を行っていた土地」「賃貸していた土地」について、一定の条件を満たせば相続税が最大80%減額される特例のこと。

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相続税負担の高さに加えて、底地は「土地に借地人の建物がある限り契約が更新され続ける」と法律で規定されてあるため、借地権を保有する借地人の権限が強いです。

本来の所有者である地主でも、借地人の許可なく自由に土地を活用できないうえ、正当な理由がなければ借地契約も解除できません。

「重い相続税負担+土地を自由に扱えない」ことで、底地の買い手が現れることはほとんどなく、所有したまま固定資産税を払い続け、相続により多額の相続税の支払いに困る地主が多いのが現状です。

相続税評価額の計算方法

底地の相続税の計算方法は、借地権割合によって異なるため確認が必要です。

下記の計算方法を確認してみましょう。

普通借地権の評価額の計算方法

底地の相続税評価額は、こちらの計算式で算出できます。

底地の相続税評価額=更地価格×(1-地権割合)

「更地価格」は、借地権などの権利関係が一切発生していない、まっさらな状態の更地の価格です。

「借地権割合」とは、土地の権利の中で借地権が占める割合を指しており、国税庁HPに掲載されている路線価図をもとに導きます。

例えば「荻窪駅周辺」の路線価図は以下の通りです。

上記の地図中に記載された数字とアルファベットの組み合わせ(500C・1,860Bなど)によって、価格(数字)と借地権割合(アルファベット)を表現しています。

数字とアルファベットの見方は以下の通りです。

数字の見方 アルファベットの見方
1:1,000円 A:90%
10:1万円 B:80%
100:10万円 C:70%
1000:100万円 D:60%
10000:1,000万円 E:50%
F:40%
G:30%

例えば、更地価格が4,000万円・借地権割合が80%の場合、底地の評価額は以下になります。

更地価格×(1-借地権割合)=4,000万×(1-80%)
=4,000万×(1-0.8)
=800万

基本的には数字を当てはめれば計算できるため、そこまで難しくありません。

具体的な借地権割合の確認方法などは、こちらにまとめています。

底地の評価額と取引価格の計算方法を3分で簡単理解!
底地の売却において、もっとも気になるのがその「価格(評価額)」。しかし、底地の計算の方法や相場を知っている方は多くありません。この記事では、底地の計算の方法を具体的な手順や例を交えながら解説しています。

定期借地権の評価額の計算方法

定期借地権が付随する底地の評価額は、以下2つの計算方法のうち、低い価格となった方を利用します。

1.更地価格 – 「更地価格×(A/B)×(C/D)」で算出した定期借地権の評価額

A:定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
B:定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期におけるその定期借地権の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
D:定期借地権の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率

引用:借地権の評価(国税庁HP)

Aの「借地権者に帰属する経済的利益の総額」とは、借地権者の手元に入る利益のことです。権利金・保証金・地代の差額などが当てはまります。

Bは、土地が市場で取引されている場合の通常価格のことです。

Cに関して、「課税時期」は相続が開始した日、「残存期間年数」は定期借地権の残り期間を指します。

例えば、借地権の設定期間が30年で10年経過後に相続した場合、残存期間年数は「30-10=20年」となります。

C・Dに含まれる「基準年利率」「複利年金現価率」は、国税庁HPでご確認ください。

2.更地価格 – (更地価格×定期借地権の残存期間に応じた以下の割合)
残存期間5年以下:5%
残存期間5年を超えて10年以下:10%
残存期間10年を超えて15年以下:15%
残存期間15年を超える:20%

上記の割合は、残存期間に応じた評価額の減少割合を示しています。

例えば「相続税評価額2億円:貸出期間50年:40年経過後に相続発生」という場合、2億×10%=2,000万円の評価額が減少します。

事業用定期借地権も上記で解説した計算式で底地の評価額を算出できます。

底地を相続する場合は共有名義にしない

底地を相続する場合は、相続人が複数名であっても単独名義がおすすめです。

共有名義にすると、底地の売却や管理に共有者の同意が必要なため、自由に活用できない底地の扱いがさらに面倒になります。

収益配分や権利関係が複雑になりトラブルの原因にもなるため、底地を相続する際は以下のいずれかの方法で単独所有にしましょう。

遺産分割協議で底地を単独名義で相続する

法定相続分での相続を行い共有名義にしてしまうと、共有者全員で共同売却するのも意思の統一が難しくなってしまったり、自身の共有持分を単独売る時に値段が低くなってしまいます。

また次の相続によって共有名義人が増えると、さらに権利関係が複雑になってしまいます。

そのため遺産分割協議では、底地の相続人を単独名義にするよう話し合いましょう。遺産分割協議の成立には相続人全員の同意が必要です。遺産分割協議で話した内容は遺産分割協議書にまとめておき、相続登記の際に利用します。

スムーズに相続人が決まらない場合は、相続人の一人に底地を相続させ、他の相続人それぞれの相続分を現金で補償する代償分割を活用します。金銭の割合は相続人全員が納得する価格を決める必要があります。

単独所有に関する詳しい内容はこちらの内容をご覧ください。

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節税目的なら資産管理会社を建てることが有効的

相続人が資産管理会社を立ち上げることで節税可能です。

方法としては、相続人が株主となり資産管理会社を立ち上げ、被相続人から管理会社に対して底地を更地価格の10〜15%程度で売却します。相続税は個人資産に対して発生するため、資産管理会社に売却して底地の所有者を「個人→法人」に変更できれば、税負担を大きく軽減可能です。

資産管理会社を設立しておくことで、底地を法人名義で売却する際、税金が所得税(最大45%)から法人税(20%前後)に変わります。相続税が発生しないうえに売却時の税金も軽減できます。

底地の売却価格が相場よりも著しく低いと、「低額譲渡」とみなされ贈与税が課税されます。売却の際は市場価格に照らし合わせ売却するようにご注意ください。

底地を相続しても納税資金がない場合の対応方法

底地を相続しても「財産に現金が少ない」「土地や家などの不動産資産が多い」「遺産分割で揉めている」などの理由で納税資金が用意できないことがあります。

この場合、以下の方法で対処できます。

延納制度を利用した分割支払い

延納とは、以下の要件をクリアすることで相続税を分割支払いできる制度です。

  • 相続税額が10万円を超える
  • 金銭での納付が困難な理由があり、かつ、納付困難な金額の範囲内である
  • 延納税額及び利子税額相当の担保を提供できる(延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下の場合は担保不要)
  • 延納申請に係る相続税の納期限又は納付すべき日までに、延納申請書と担保提供関係書類を税務署に提出できる

延納可能期間は条件によって「5〜20年」で設定されており、期間中は毎年利子(1.2〜6.0%程度)が発生します。

延納にあたり、担保となる財産の提供が必要です。土地や国債など、複数の選択肢があるため必ず確認しておきましょう。

金融機関や親族から借入

担保になる資産があれば、銀行から借り入れた現金を相続税の支払いに充てることも検討可能です。

銀行借り入れでも利息の支払いは必要ですが、金額によっては延納の利率より低い可能性もあるため確認しておきましょう。

ただし、底地を担保に金融機関から借り入れることは難しいため、親族からの借入も検討します。

「親族間だから口約束でも良いだろう」と考え、借用書を作成せずに借り入れると第三者から見た時に贈与や借入か分からず、税務署から贈与と判断され贈与税を支払う可能性があるため注意が必要です。

「相続税の一部が不足している」など少額の現金が必要な場合であれば、利率は高いですがキャッシングも検討しましょう。

物納制度の利用

延納制度や銀行借り入れを利用しても納税が難しければ、底地を税金の代わりに納める「物納制度」も利用できます。

原則として相続税は現金で納める必要があり、物納には法律で以下の厳しい要件が設けられているため簡単には利用できません。

  • 延納を活用しても現金での納税が困難である
  • 管理処分不適格財産(物納に充てられないと指定された財産)に該当しない
  • 物納劣後財産(物納時に優先順位が下がる財産)に該当する場合、他に物納に充てるべき適切な財産がない

物納するハードルは非常に高いため、まずは延納制度を活用したり相続財産の売却で現金を捻出して支払えたりするか検討しましょう。

納税資金が莫大な場合は、底地を処分して費用を捻出する

底地は相続税額が高い割に収益性が低いため、手持ちの現金では納税できないケースもあります。

上記で解説した延納・借入・物納でも納税資金を用意できない場合、底地を処分して現金を準備する必要もあります。

底地は売却先によっては、相場よりも高い価格で売却できるためどのように売却するか入念に確認しましょう。

借地人へ相場よりも高い価格で売却する

借地人に対しては、底地を相場よりも高い価格で売却できる可能性が高いです。

借地人が底地を取得する事で、通常の土地と同じく自由に建物の増改築などを行うことができます。地主に対する地代の支払いや承諾料も、今後不要になります。

底地の買取は借地人にもメリットが大きいため、相場よりも高い価格で買い取ってもらえる可能性が高いです。通常の底地は、更地価格の10〜15%程度での売却が相場と言われていますが、借地人に対して底地を売却する場合は50%前後と言われています。

借地人と協力し完全な所有権の土地として売却する

借地人と協力し同時売却することで、市場価格で売却することも可能です。

完全所有権となることで、通常の土地と同じように扱えます。底地の制約がないため、買主が見つかりやすく売却しやすいです。

借地人が借地権の手放しを検討している場合、協力して売却することを提案してみるのも良いでしょう。協力して売却する場合の、売却益の割合は借地権と底地の割合に応じて協議して決定します。

他にも「借地権を買い取ってから底地を売却する」「底地と借地権の一部を交換して売却する」という方法も有効的です。

底地買取専門業者などの第三者へ売却する

底地の制約(税負担が大きい・土地を自由に扱えない)があるため価格は低くなりますが、第三者へ売却することもできます。

底地は税金負担の大きさや収益性の低さから、一般の不動産業者では基本的に取り扱えませんが、底地専門の買取業者なら対応可能です。

底地に特化したスタッフが在籍しているため、一般的な不動産業者では見落としてしまうケースでも、念入りに調査して買取の可能性を探ってくれます。

底地の買取相場や売却方法ついては、こちらで詳しく解説しています。

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【最終手段】相続放棄・限定承認を選択する

延納・借入・物納・底地売却など、あらゆる方法を検討しても納税資金の捻出が難しければ、最終手段として「相続放棄」「限定承認」のいずれかを選択できます。

相続放棄をすれば、被相続人が残した負債を清算する必要がありません。ただし、底地だけでなくプラスの財産も相続できないためご注意ください。相続財産を確認しマイナス分が多い場合は相続放棄しましょう。

限定承認では、財産の範囲内のみで故人の負債を負担するという約束のもと相続します。

相続放棄を実施する場合、相続開始から3ヶ月以内に「家庭裁判所への申し立て」が必要です。限られた期間の中で、すべての財産を確認して「本当に放棄しても良いのか?」と判断するため労力もかかります。

限定承認を実施する場合、相続人全員が共同で申述しなければなりません。

限定承認に関する詳しい内容はこちらをご覧ください。

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もし相続放棄をした場合、次順位の相続人が底地を継承するため、後からトラブルとならないように事前の擦り合わせが必須です。

まとめ

底地は相続税の負担が大きい割に、地主にメリットが少ない土地です。何も考えずに底地を相続してしまうと、思いがけない相続税に苦しめられる可能性があります。

相続税の申告期限までに納税資金を準備する必要があるため、遺産分割協議では被相続人の財産の把握、今後の底地の活用方法を親族間で話し合う事が大切です。

売却する場合は、借地人と協力し共同売却や借地人が買い取ってもらう事が理想ですが、うまくまとまらない場合は専門の買取業者へ依頼する方法が手間なく簡単です。

他にも資産管理会社立ち上げなどの方法もありますが、いずれも専門知識が必要ではあるため、トラブルなく相続を終えるために、税理士や司法書士等の専門家への相談も検討しましょう。

弊社でも底地を買い取っているので、売却先がなかなか見つからない方はお気軽にご相談ください。

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