3種類の地代
まず、不動産知識として、3種類の地代について解説します。
地代には「実際の地代」「通常の地代」「相当の地代」の3種類がありますが、この記事でご紹介するのは、すべて「実際の地代」の計算方法です。
というのも、「通常の地代」と「相当の地代」は、主に借地権の相続が発生したときに相続税評価額を算出するための、いわば「フィクションの数字」だからです。借地権の相続が発生した場合には、上記の「実際の地代」「通常の地代」「相当の地代」を組み合わせて、状況に応じて借地権の相続税評価額を算定します。
3つの中でも、借地人から地主に実際に支払われる地代は「実際の地代」のみを指します。
では、3種類の地代について簡単に説明します。
実際の地代
実際の地代とは、「借地契約において現実に借地人が地主に払っている地代」です。
この記事でご紹介するのは、すべて「実際の地代」の計算方法です。
通常の地代
通常の地代とは、借地契約において権利金の授受がある場合に「通常支払われるべき地代」です。
借地契約を締結するときには、通常当初に借主が地主に一括で権利金を支払います。
通常の地代はその権利金を考慮したものとなり、以下のように計算されます。
つまり土地価格から借地権割合を引いた評価額の6%が「通常の地代」です。
相当の地代
相当の地代とは、親族間の借地契約などで「権利金の授受がない場合」に相当とされる地代です。
権利金の授受がない分、相当の地代は通常の地代よりも高額になります。
計算式は以下の通りです。
権利金を差し入れていないので土地価額から借地権割合を引くことができず、土地価額全額に対して6%を計算します。
借地権割合は60~70%程度になるケースも多いので、相当の地代として計算されると通常の地代よりもかなり高額になります。
地代計算が必要なタイミング
3種類の地代について理解していただいたところで、ここからは「実際の地代」のみについて解説します。
まずは、実際の地代の「計算が必要なタイミング」を2つご紹介します。
借地権の設定時
借地契約を締結し、借地権を設定するときには地代を決定しなければなりません。
建物の所有を目的として、土地を賃貸する際に結ぶ契約
借地人と地主が互いに合意できる地代を決めて、土地賃貸借契約書に記載します。
なお、地代の支払い時期や回数は、月単位でも年単位でもかまいません。借地人との合意のもと決定しましょう。
地代を改定するとき
一度地代を決定しても、その後金額が不相応になったのであれば、地代の再設定が必要になります。
例えば、地代を定めてから何十年も経過して物価や賃料の相場が上がり、地代が相場より異常に安くなっているなら、地代の金額も上げるべきです。
反対に、バブルの際に定めた高額な地代が現状に合わないのであれば、地代の金額を下げるべきでしょう。
ただし、地代の再設定には地主と借地人の合意が必須です。
もし、借地人が地代の見直しにスムーズに合意してくれず、トラブルに発展するおそれがあるなら、底地のみを手放すのも賢明でしょう。
専門の不動産買取業者であれば、底地のみを買い取ってくれるので、地主は借地人との複雑な権利関係から抜け出せます。
弊社AlbaLinkでは、底地の査定はもちろん、底地のみの買取も行っております。お気軽にご相談ください。
地代を設定するための5つの計算方法
地代を設定するための5つの計算方法をご紹介します。
地代の計算方法は複数あり、「どれが正しい」という明確な定義はありません。
強いて言えば、複数の計算方法を用いて総合的に地代を算出するのが正しい方法なので、地主の独断で適切な地代を算出するのは、なかなか困難と言えます。
地代を算出する際は、ぜひ我々不動産のプロを頼ってください。
弊社は、底地や借地など、権利関係が複雑な土地の査定を年中無休で承っております。
では、地代の計算方法を1つずつ解説します。
固定資産税・都市計画税から計算
地代の計算方法でもっとも簡単なものは、固定資産税や都市計画税を基準に算出する方法です。
土地の所有者である地主には、毎年固定資産税や都市計画税が課税されます。
そのため、借地契約を結ぶ際には、少なくとも固定資産税や都市計画税より高額な地代を設定しなければ、地主にはメリットがありません。
固定資産税や都市計画税を基準に地代を決定する際には、通常以下のようにして定めます。
- 住宅地の場合には固定資産税と都市計画税の3~5倍程度
- 商業地の場合には固定資産税と都市計画税の5~8倍程度
上記の範囲内で地主と借り主が話し合い、納得できる金額を定めるのが一般的です。
ただし、上記と異なる掛け率にしてもかまいません。
たとえば貸主と借主の関係性によっては固定資産税と都市計画税の1倍や2倍、あるいは10倍などとしても問題ありません。
具体例
固定資産税と都市計画税の合計額が10万円の土地の場合、住宅用地として借りるなら年額30万円~50万円程度、商業用地として借りるなら年額50~80万円程度が相場となります。
公示価格、基準地価から計算
「公示価格」や「基準地価」から地代を算出する方法もあります。
公示価格とは、全国の「標準地」に定められている土地価格で、国土交通省が土地の調査を行って決定しています。
基準地価は都道府県内の「基準地」に定められている価額で、各都道府県が毎年土地の鑑定評価をして決定しています。
ただし、全国のどの土地にも公示価格や基準地価があるわけではなく、基準や標準とされる地点にしか設定されていません。
そのため、公示価格や基準地価をもとに地代を算定する際には、近隣に標準地があることが必須条件となります。
地代の計算式は以下のとおりです。
- 地代=公示価格や基準地価×土地面積×1.5~3%程度
具体例
1平方メートルあたり50万円の公示価格が設定されている標準地付近の50平方メートルの土地を賃貸するケース
・地代=50万円×50平方メートル×2%=50万円
年間50万円が相場の地代となります。
相続税路線価から計算
全国の土地には「相続税路線価」が設定されています。
相続税路線価とは、相続税や贈与税などの計算をするときに土地を評価するための1平方メートル当たりの評価額です。

路線価図サンプル
全国の道路に面した市街地的な地域に設定されているため「路線価」と呼ばれます。
相続税路線価を使って地代を計算するときには、以下のようにするのが一般的です。
もしくは
相続税路線価÷0.8××土地面積×1.5~3.0%
相続税路線価は毎年改定されるので、変動が激しかった場合には直近3年分の平均値などを使ってもかまいません。
具体例
相続税路線価が40万円、借地権割合が60%、土地面積が60平方メートルの土地の場合
・地代=40万円×(1-0.6)×60×6%=576,000円
・地代=40万円÷0.8×60×2%=60万円
年間576,000円や60万円程度が相場となります。
積算法
積算法は、土地の更地価格に期待利回りを乗じて算出した額に、経費を加算する計算方法です。
該当の不動産が1年あたりに生み出すと予想される利益
主に売買価格の目安としての賃料を求めるためのもので、地代計算にも用いられます。
計算式は以下の通りです。
- 地代=更地価格×期待利回り+経費
期待利回りは一般的に土地価格の2%程度とします。
経費に含まれるのは主に税金(固定資産税や都市計画税)ですが、、土地の維持管理にかかる費用も含みます。
具体例
土地価格が3,000万円、固定資産税が20万円の土地の地代 ・3,000万円×2%+20万円=80万円 年間の相当地代は80万円と計算されます。
賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、近隣の類似の物件の賃料との比較で相当な賃料を計算する方法です。
近隣の類似の土地の地代例をいくつか抽出してその平均をとり、そこに対象土地の特殊性を考慮して地代を割り出します。
近隣に土地の賃貸例がないと利用できないことと、土地の形状や大きさなどの特殊性により必ずしも適正な金額を算定できないケースもあるので注意が必要です。
比較対象とする例について「いくつ以上」という決まりはありませんが、3例程度はあることが望ましいでしょう。
60平方メートルの土地。近隣の地代の事例は以下の3つ。
①50平方メートルで年間50万円
②100平方メートルで年間130万円
③80平方メートルで年間70万円
上記によると、①の土地は1平方メートルあたり1万円、②の土地は1平方メートルあたり13,000円、③の土地は1平方メートルあたり8,750円となります。
そこで平均を取り、対象土地の賃料は1平方メートルあたり10,583円とします。
対象土地が60平方メートルなら1年間の地代は635,000円と計算できます。
ただ、個人で周辺の隣地事情を調べ、適切な地代を求めるのは困難です。
そのため、土地の査定実績を多く持ち合わせる不動産のプロに相談しましょう。
弊社は、年間300件以上の土地の査定実績を持ち合わせております。地代算出のお手伝いができれば幸いです。
収益分析法
収益分析法は、借地を個人の居住用ではなく、事業用として貸し出す際に用いられる計算方法です。
借地人が土地を活用して収益を得る場合、なおかつ、「その土地を使って借地人が得られる利益」が明確にわかる場合に有効な計算方法であると言えます。
ただし、収益の計算方法が非常に複雑であるうえ、この方法を利用できる条件も多数あるので、あまり一般的な計算方法ではありません。
- 地代=年間の予想収益+必要経費
たとえば土地の利用によって年間100万円の収益を得られる見込みがあり、必要経費が30万円のケースでは、年間の地代は130万円となります。
地代を改定するための4つの計算方法
ここから先は、地代を改定する際によく用いられる、4つの計算方法をご紹介します(上記に紹介した5つの計算方法を改定時に用いることも可能です)。
ただし、最初の地代の設定時より、もともとの地代を改定(値上げ)する時の方が、借地人とトラブルになる可能性が高いので注意してください。
地主の独断で計算し直した地代では、借地人の合意が得られないおそれがあります。
借地人に地代の改定(値上げ)を提案するのであれば、不動産のプロに算出してもらった、適正な地代を提示しましょう。
金額のソースが不動産のプロであれば、借地人を納得させやすいでしょう。
差額配分法
差額配分法では、現行の賃料と新たに設定する「適正な新規賃料」の差額に注目して適正賃料額を定めます。
計算式は以下のとおりです。
- 地代=現行賃料+(適正な新規賃料-現行賃料)×差額の配分率
配分率の相場は2分の1~3分の1程度です。
現行の賃料が年間100万円、適正な新規賃料が120万円、配分率2分の1のケース
100万円+(120万円-100万円)×2分の1=110万円
年間110万円が適正地代と計算されます。
ただ、適正な新規賃料(地代)を地主の独断で判断するのは困難です。
適正な新規賃料(地代)を知りたい場合は、ぜひ一度我々にご相談ください。
豊富な査定実績を活かし、適正な新規賃料(地代)をご提示させていただきます。
利回り法
利回り法は、不動産から得られる予想収益に経費を足して適正地代を計算する方法です。
上記でご紹介した積算法とほとんど同じ考え方ですが、積算法は一般的に新規に地代を定めるケース、利回り法は地代の改定をするケースで使われます。
利回り法にもとづく地代計算式は以下のとおりです。
- 地代=現在の地価×継続賃料利回り+必要経費
具体例
たとえば現在の地価が4,000万円、継続賃料利回りが2%、固定資産税等の必要経費が30万円の土地があるとします。地代は以下のとおりです。
4,000万円×2%+30万円=110万円 適正賃料は年間110万円と計算されます。
スライド法
スライド法は、賃料を定めたときと比べて物価に変動があったとき、現状に応じて賃料を変動させる方法です。
物価が上がっていれば賃料を上げ、下がっていれば賃料を下げます。
ちなみに、物価の変動率は、総務省HPから確認できます。
参照元:総務省HP「消費者物価指数」
計算式は以下の通りです。
- 地代=(現状の地代-想定されている必要経費)×物価変動率+現在かかっている必要経費
具体例
たとえば現状の地代が100万円、地代設定当時に想定されていた経費(固定資産税等)が20万円、現在実際にかかっている経費が25万円、物価が上昇したために当時より1.2倍程度になっているケースを考えてみましょう。
・(100万円-20万円)×1.2+25万円=121万円
年間の相当地代は121万円と算定されます。
まとめ
地代の計算方法をご紹介しました。
地代の計算方法は複数あり、どの方法が最適であるか、明確な正解はありません。
唯一言えるのは、豊富な不動産知識がなければ、正確な地代を算出するのは困難であるということです。
「地代の計算方法がわからない」「計算方法や金額について借地人と意見がまとまらない」
このような方は、一度弊社にご相談ください。
我々は、底地・借地などの権利関係が複雑な土地の査定実績が多数ございます。
豊富な実績を活かして、最適な地代をご提示させていただきます。
お客様の肩の荷を、1つ下ろすお手伝いができれば幸いです。