共有名義不動産の固定資産税と都市計画税は誰が払うのか?
固定資産税は土地や家屋などの所有者(共有者)に対して課せられる地方税であり、その固定資産の存在する市町村(東京の場合は「都」)が課税します。
毎年1月1日現在の所有者(登記されていれば登記簿上の所有者、登記されていない場合でも実態に応じて所有者と判断される者)に納付義務があります。
また、市街化区域内の土地、家屋に対して課せられる都市計画税についても同様です。
共有名義となっている不動産については、各共有者がその「持分に応じて」費用を負担することになります。
固定資産税や都市計画税は不動産は保有しているだけで毎年当然にかかってきますので、不動産を維持するために欠かせない「必要費」と位置づけられます。
ただ、「持分に応じて」というのは共有者間の内部負担のことを言っているのであり、市区町村に対しては法により「連帯納付義務」が定められています。
つまり、各人はそれぞれに全額を納付する義務を負っており、誰かが全額を納めれば租税債務は消滅し、支払った人が他の共有者に対しその分を精算してもらう(求償)ことができます。
例えば、AB二人で共有している場合で、「二人の話し合いでAだけが負担することになったのでBは関知しません」といっても、それはあくまでABの内部のみで効力を持つものであり、債権者である地方自治体に主張することはできません。
自治体はABのどちらに請求してもよいことになります。
現実的な取扱いとしては共有者の中で「代表者」を決めることになっています。
共有名義の固定資産税の納税義務については、以下の記事で詳しく解説しています。
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共有名義不動産の固定資産税・都市計画税の納税通知書は代表者に届く
共有名義不動産の固定資産税・都市計画税は原則、各共有者が別々に納付はできません。
共有者のうち、市町村役場(都税事務所)が選んだ、もしくは登記名義人から申し出た代表者1人に全額の納付書が送られ、代表者がまとめて納付します。
ただ、自治体によっては「固定資産税の滞納を極力防止する」という観点から、いくつかの条件を設けて共有者ごとの分割納付を認めているところもあります。
たとえば、鳥取県日南町では共有者全員の合意の元、あらかじめ申請をしておくと、各共有者の持分割合に応じた納付書を個別に送付する制度を導入しています。
共有名義の不動産は毎年代表者宛に納税通知書が送付され、代表者が各共有者から持分割合に応じた固定資産税を集金し、まとめて納付します。
自治体が共有代表者を判断する
不動産が共有になったと同時に共有者が自主的に代表者を通知してこない場合などは「まず市町村役場が代表者を選定する」ことがあります。
選定については、多くの自治体が次のような基準を用いています。
- 土地、建物が存在する自治体に居住する者
- 共有持分が多い者
- 登記の順番が早い者
ただ、自治体としてはいったん決めた代表者に固定する趣旨ではなく、要は「いかに滞納なく固定資産税を払ってもらえるか」を重視しますので、当事者が決めた代表者を届け出ればそちらが優先されます。
代表者を決める
物件の購入や相続などで共有になった場合、話し合いで代表者を決めることもできます。
確実に支払をするためにはその不動産に居住、または管理する人を代表者とするのが望ましいでしょう。
決めた代表者を市町村に知らせるために「共有資産代表者選定届(タイトルは自治体により異なる場合もある)」を不動産所在地の役所の「資産税課」、東京都なら「都税事務所」に提出します。
その年度の通知に間に合うよう、「届出の締切がいつか」をその不動産の管轄自治体にあらかじめ確認しておきましょう。
代表者を変更する方法
いったん決めた代表者を後から変更することもできます。
それも同様に市町村に「代表者変更届」を提出することが必要です。
上記に挙げたフォーマットはあくまで一例ですので、管轄市町村のウェブサイトを確認してみましょう。PDFファイル等をダウンロードできるようになっている自治体も多いので、そちらを使用するのが確実です。
共有名義不動産の固定資産税と都市計画税の税額を確認する方法
固定資産税納税の代表者には「納税通知書と納付書」を、代表者以外の共有者全員には「納税通知書(税額が書いてあるがそれを使って納付できるものではない)のみ」を送るという取扱いをしている役所もあります。
【納税通知書の見本】
これは他の共有者にも税額の確認をしてもらう目的ですので、納税している代表者以外はこれを見れば税額が確認可能です。
もしこれを紛失したり、もともと他の共有者に納税通知書が来ない場合は「市町村役場の資産税課(もしくは都税事務所)で『固定資産評価証明書』を取得する」という方法もあります。
固定資産評価証明書とは、課税対象になっている土地・家屋などの資産の評価額が記載されている書類です。
役所でこれを取得する場合、身分証明書での本人確認が必要ですが、相続で取得した物件の場合は被相続人(亡くなった人)の相続人が自分であるという証明のため戸籍等も必要です。
どこまでの戸籍が必要になるかは故人との関係(親子なのか、兄弟なのかなど)によります。
具体的に持参する書類は、あらかじめ固定資産税評価証明書取得先の役所に電話して確認しましょう。
持分の割合に応じて支払う
債権者である市町村に対しては「連帯納付義務」があると説明しましたが、実際に支払いをした代表者からは「各共有者の持分に応じて求償する」権利があります。
たとえば、固定資産税・都市計画税が合計15万円で、共有者が3人でそれぞれの持分割合が1/3の場合、各共有者は5万円ずつ代表者に支払わなくてはなりません。
納付は、代表者が立て替える形でまとめて支払うか、納付時期よりも前に各共有者から徴収する形で集金します。
共有名義不動産の固定資産税と都市計画税の支払い方法と時期
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日現在の固定資産税課税台帳に登録されている者(登記がある場合は登記簿を基準に判断)に、大体その年4月~6月くらいまでに納付書が送付されます。
実際の納期限は年4回あり、自治体により若干異なります。
平成31年(令和1年)度、東京都の場合は次のとおりです。
- 1期 2019年6月1日から7月1日まで(納期限 7月1日)
- 2期 2019年9月1日から9月30日まで(納期限 9月30日)
- 3期 2019年12月1日から12月27日まで(納期限 12月27日)
- 4期 2020年2月1日から3月2日まで(納期限 3月2日)
支払方法としては下記の通りです。
- 「納付書を税務課窓口、コンビニ、金融機関等に持参し現金払い」
- 「口座振替」
- 「インターネットバンキング等でペイジー払い」
- 「クレジットカード払い」
ただ、まだクレジットカードに対応していない自治体もあるので確認が必要です。
1月1日現在の所有者という基準についてですが、その年の途中で所有者が変わっても納税義務者が変わることはありません。
そのため、売買などする場合には、とりあえず売主が1年分を納めます。
実務的には売買代金を決済する際に「取得日以降年末まで」の固定資産税・都市計画税相当額を買主から売主に支払うことで精算しています。
共有名義不動産の固定資産税と都市計画税を滞納した場合
共有名義の不動産についての固定資産税、都市計画税は上記の通り「連帯納付義務」がありますので、滞納があった時でも単有の不動産とは異なる取扱いになることがあります。
なお、共有名義の固定資産税を滞納された場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
代表者の滞納
もし、共有者の中で代表者となって納税しなければならない者が固定資産税や都市計画税を滞納したとすると、それは「連帯債務」になっているので他の共有者にも責任が及ぶことになります。
つまり、共有者Aが滞納していたことにより、共有者Bの財産(不動産の持分や給料、預貯金など)に差押えがされることがあるのです。
共有名義人が死亡した場合も連帯債務になる
納税義務は相続財産として相続人に受け継がれるため、亡くなった共有名義人の相続人が引き続き納めなければなりません。
相続では、亡くなった人のプラスの財産と共に、マイナスの財産も相続人に継承されます。
したがって、「亡くなった共有者から回収できない」といった理由で、代表者が固定資産税・都市計画税を納付しなかった場合も、連帯債務で、共有者全員に納付義務が及ぶのです。
もし、共有者の誰も納付をしなかった場合、次に解説する延滞税・強制執行などのペナルティが科されます。
延滞と強制執行までの流れ
固定資産税の納付書を送付された代表者が税を延滞すると、まず督促状が届きます。
これは、地方税法第329条1項で「納期限から20日以内に督促状を発しなければならない」とされているからです。
ここで督促を無視すると、これも地方税法第331条で規定された「督促状を発したときから10日以内に完納しないとき」に該当し「滞納者の財産を差し押さえなければならない」とされています。
ただ、そこまですぐに差押えられることは実際には少なく、数回の督促を経て何もリアクションがなければいよいよ差押え、という流れになるでしょう(ケースバイケースですが、滞納からここまで数カ月かかることもあります)。
この差押えは実際に滞納した代表者だけではなく他の共有者にも及ぶ可能性がありますので注意が必要です。
もし滞納があったら最初の督促の段階できちんと担当者への連絡を取り、代表者自身が支払えなければ他の共有者が支払うといった対応を取ることが必要です。
共有者全員が支払える状態にないのであれば、現実的にどのくらいずつなら支払えるかという目途を立てて徴税職員(税務課の職員)と合意し、その通りに支払わなくてはなりません。
遅れれば遅れるほど延滞税もかさみますし、共有者全員が不動産やその他の財産を失うリスクを負ってしまいます。
よって「督促状が来た時に放置すること」だけは絶対に禁物なのです。
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延期や減額、免除
もし、やむを得ない事由で固定資産税を納付できない場合、東京都の場合は下記の条件を満たせば原則1年の猶予が認められます。
- 申請者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にあったこと
- 申請者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
- 申請者がその事業を廃止し、又は休止したこと
- 申請者がその事業につき著しい損失を受けたこと
- 申請者に(ア)~(エ)に類する事実(詐欺の被害、横領の被害、取引先の倒産、リストラなど)があったこと
- 法定納期限から1年を経過した日以後に納付すべき税額が確定した都税があること
また、固定資産税の金額そのものが減免される場合もあります。
生活保護を受ける者が保有する不動産、災害により滅失した不動産や公益性が高いと認められる不動産についてです。
東京都については詳しくは「東京都主税局」公式サイトで解説されています。
共有名義不動産の固定資産税と都市計画税を支払いたくない場合は?
もし、共有名義になっている不動産の固定資産税と都市計画税が負担になっている場合、共有関係を解消すれば、納付義務から離脱できます。
この章では、共有関係を解消する方法について解説します。
共有関係を解消する
共有関係から抜ける方法については「共有者全員で全体を売る(共有者全員の同意が必要)」「自分の共有持分だけ売る(自分1人の意思でできる)」といったものがあります。
ただし、共有者全員で売却する方法は民法で定める「変更行為」に該当するため、共有者全員の合意が必要です。
共有者全員が売却に納得していない場合は、自身の「共有持分のみの売却」を検討しましょう。
また、自分の共有持分だけ売る場合は「他の共有者に売る」「共有者以外に売る」の二類型があります。
なお、共有状態を解消するパターン別の流れ・手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有者に売る
他の共有者は不動産の売却に合意していないが、自分は共有関係から離脱したいという場合に、他の共有者に買い取ってもらうという手段があります。
診をする共有者に共有持分を買い取る気持ちと資金がある場合に、有効な手段です。
上記に当てはまらず、共有者間での共有持分の売買が実現できない場合は、次章で解説する専門の買取業者への売却がおすすめです。
なお、共有持分を個人売買するメリット・トラブルについては、以下の記事で詳しく解説しています。
専門の不動産業者に売却
共有者に売却することが不可能なのであれば他人に売る、という選択肢もあります。
民法上、自分の持分のみであれば、共有者の合意なく自由に売却ができます。
ただ、共有持分のみの売却は民法上は可能であるものの、現実に買い手を探すのは非常に厳しいです。
親族と共有するならまだしも、他人との共有関係にわざわざ入っていこうとする一般人はまずいないからです。
そのような場合に考えられるのは「専門の不動産業者への売却」です。
「問題のある不動産」を得意とする業者であれば、共有名義の場合のその後の処理のノウハウもあるため、スムーズに売却することができます。
一般の不動産業者ではなかなかこういった物件を取り扱うことは難しいので、固定資産税等の負担が苦しいと感じたら早めの段階で専門業者に相談することをおすすめします。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は共有持分に強い専門の買取業者です。
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まとめ
本記事では、共有名義不動産の固定資産税・都市計画税の納付に関する以下の内容をお伝えしました。
- 共有名義になっている不動産の固定資産税や都市計画税は連帯納付義務があるものの、実際の納付にあたっては代表者を決めて市町村に届け出て、その人がいったん立替納付し、他の共有者に持分に応じた負担分を請求する(求償)ことになる。
- 共有者の中の代表者が固定資産税や都市計画税を滞納すると、他の共有者の財産にまで差押えが及ぶことがあるため、督促が来たら決して放置してはならない。
- 共有名義になっている不動産の固定資産税や都市計画税を負担に感じ、共有関係から抜けたい場合は、もし他の共有者が不動産全体の売却に合意しないのであれば自分の持分だけを訳あり物件専門の不動産業者に売却するという手段がある。
弊社AlbaLink(アルバリンク)では、共有持分をはじめとした訳あり不動産を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
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