底地の売却を検討している方からいただく質問として多いのは
「底地を売却したいが相場がわからない」
「所有している底地の評価額・売却価格を教えてほしい」といったものです。
その背景として、固定資産税が高く地代収入が残らない、まとまったお金が必要になったので手っ取り早く現金化したいなどの理由のほかに、昨今はコロナ禍による経済の先行きが不透明になったことで、ここ数年のトレンドであった不動産価格の上昇局面が下落に転じるという見通しが広がっていることも一因となっているのではないでしょうか。
そこで今回は、底地の評価額の計算方法および底地を売却するための注意点について考えてみたいと思います。
目次
底地とは何か?
そもそも話ではありますが、底地とは何か?についてご説明いたします。
底地というのは、所有する土地に建物の所有や利用を目的とする借地権が設定されている土地のことをいいます。底地を所有している地主は、土地を貸すことによる地代、契約更新時の手数料など、借地人から収入を得ている人のことを指します。
底地の説明をこのようにすると、「借地と何が違うのだろう?」と感じる方も多いことと思います。
結論から先に言うと、底地=借地という解釈で大きな相違はありません。借地とは、他人から借りている土地のことを言います。それに対して、底地は他人に貸している土地。つまり、オーナー側からみるか、借地人側から見るかの違いということになります。
底地の評価の計算方法
底地の評価額は、国税庁が毎年発表している路線価に基づいて算出されます。路線価とは、道路に面した土地の価格のことで、土地を取得・所有したときにかかる税金額を算出する際に使われる指標です。
底地のように借地権が設定されている土地の評価をする場合は、路線価図に記載されている借地権割合を使って算出していきます。更地の価格から借地権割合の金額を引いた額が底地の評価額となります。
路線価図と借地権割合の見方
路線価図は国税庁のホームページで閲覧することが可能です。以下の<手順>に沿って所有されている土地の路線価を調べてみましょう。
<手順>
①国税庁ホームページ「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」
(https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm)にアクセスし、あなたが所有する土地の所在都道府県をクリック
②遷移した画面内「路線価図」をクリック
③あなたが所有する土地の所在市区町村をクリック
④「この市区町村の索引図ページヘ」をクリック
⑤地図から所在地を探す
路線価図を見ていくと、300Cや285Gといった数字とアルファベットが記載されています。これは価格と借地権の割合を記したもので、この場合の300は1,000円単位が省略されており、30万円となります。この金額は1㎡あたりとなっていますので、30万円/㎡となります。
アルファベットは、A〜Gまであり、Aは借地権割合が90%、Bは80%と続き、Gは30%となります。従って、この場合の300Cは、1㎡あたりの路線価が30万円で、Cは借地権割合が70%となります。
底地の計算例
では、調べた路線価で底地の評価額を算出してみましょう。底地の算出方法は、更地価格から路線価で定められた借地権割合を引いた額となります。
更地の評価額 ×(1-借地権割合)=底地評価額
上の式に以下の例題をあてはめてみましょう。
例.更地の値段が3,000万円、借地権割合が70%の土地の底地評価額
この場合の底地評価額を算出する計算式は以下のようになります。
<底地評価額>3,000万円×0.3(100%-借地権割合70%)=900万円
この場合の底地評価額は900万円となります。
売買する場合の底地の価格は取引相手によって大きく異なる
では、先程算出した900万円が底地の価格として取引できる金額として適正な価格なのかどうかについて考えてみたいと思います。
実際のところ、底地の売却価格は一律の評価が難しいため、評価額と売却価格が一致することはほとんどありません。その理由として、底地を第三者に売却することが難しいことを一因として挙げることができます。
上記のケースでは、更地価格3,000万円に対して、評価額は900万円でしたので、土地価格の30%の評価額となっています。しかし、実際の売却額の相場は更地価格の10〜15%程度が一般的です(表題にあるように、売却先によって変わります。詳細は後述します)。
その理由として、底地には借地人がいることから、底地を所有していてもその土地を自由に利用・売却することできないことが挙げられます。また、底地を所有した場合、借地人とのやりとりが発生しますので、そういった意味でも第三者が手を出しづらく、不動産業者を通じても仲介することが難しいため、買い手を探すのが非常に難しいといった背景があります。
では、この底地を少しでも高い金額で売却するためにはどうすればよいのでしょうか?
底地の売却相手として考えられる売却先として、
①当該底地の借地人
②一般の第三者(不動産業者の仲介)
③不動産業者による買取が主なものとして考えられます。
ここからは、①〜③それぞれの観点から底地を所有することのメリット・デメリットについて考えてみたいと思います。
当該底地の借地人
借地人が底地を買い取ることのメリットとして一番大きいものとして、土地の所有権を取得することができることが挙げられます。
借地人は、借地権はあるものの、建物の増改築や建物を第三者に賃借するなどの際には、地主の承諾と承諾料が必要になります。底地を所有することで、こういった制限はなくなり、土地と建物を自由に活用することができます。
実際のところ、借地人が底地を買い取る形が、底地人・借地人双方にとってメリットが一番大きいwin-winの形を作ることができ、先程挙げた①〜③の三者の中で、最も高く売却することができる可能性が高いのが借地人です。その際の相場は、更地価格の概ね50%前後となります。
一般の第三者(不動産業者の仲介)
底地人、借地人以外の第三者が購入する場合、売却額は更地価格の10〜15%まで下がってしまうことが一般的です。
前述したように、所有したからといってその土地を自由に活用することができないことがその理由です。底地の所有者になっても借地人を追い出すということはできません。不動産投資家であれば、購入に興味を持つ方もいるかもしれません。しかし、地代による収益も固定資産税などを差し引くとわずかなので、魅力に乏しいと判断されるケースが多いようです。
不動産業者による買取
底地の業者による買取を依頼することのメリットは、すぐに現金化できることにあります。借地人への売却が最も高額となる可能性が比較的高いことは、前述したとおりです。ただし、その場合でも、売却条件の調整や購入資金の準備などで時間がかかる点には留意が必要です。
買取業者は、借地人への売却のような金額での売却は難しいですが、比較的短期で現金を得ることが可能です。通常、数日~数週間での売却となることが一般的です(契約内容や底地の状況によって変わる点にご注意ください)。
もう一つの利点は、仲介業者が売主と買主をつなぐさいに必要となる仲介手数料がかからない点もメリットとして挙げることができます。
一方、不動産業者による買取のデメリットは、一般的な仲介業者に比べて、底地の市場が小さいこともあって対応している不動産業者が少ないことです。通常の不動産売却などの場合は、多数の不動産仲介業者から売却査定学の相見積もりをとり、その中からどの業者に売却を委任するかを決定するのが一般的です。底地の買取の場合は、そもそも業者数が少ないので、選択肢が少なく、数が少ないだけに、良い買取業者をみつけることもにも一苦労するといったことも考えられます。
底地の取引の際に注意するべきポイント
信頼できる相談先の確保
底地の売却にあたっては、法務・税務関連事項、価格査定など、素人が理解するのに苦労する事柄が多数ありますので、信頼できる相談先を事前にみつけておくことが重要です。
不動産業者や不動産鑑定士、弁護士などさまざまな方に相談し、客観的な第三者的立ち位置で適切な助言をくれるアドバイザーを確保しておきましょう。
借地権契約の内容を確認
底地の売却に際して、賃借人との契約内容を確認しておくことが重要です。売却にあたっては、借地人の同意は必要ありませんが、底地の売却によって地主の変わることで、借地人とのトラブルが起こるということはよくあるケースです。以下に、留意点を取り上げます。
確認しておきたいポイント「隣地との境界を確定」
トラブルになることが多いケースとして、売却する底地の認識について、新しいオーナーと借地人と第三者の間に齟齬が生まれるケースです。例えば、隣地との境界確定にあたって、地主間同士で分合筆が行われ、借地人なしで同意が図られた場合、新しい地主と借地権者および隣地の地主間で齟齬が生じる可能性が考えられます。
底地の売却にあたっては、隣地の境界線を確定し、判然としない場合には、土地家屋調査士に依頼し、境界を相互に確認しておくなどの事前の対応が重要となります。
確認しておきたいポイント②「普通借地権と定期借地権」
平成4年8月1日に施行された新借地借家法に「定期借地権」という新しい制度が盛り込まれています。
これは、契約期間が満了になれば、原則更新はない契約となります。これはつまり、前述したような借地人との交渉を通じた借地権の購入や、高額な立ち退き料の支払いなどは不要で、かつ土地がいつ戻ってくるのかも明確にわかるなど、メリットが多い契約手法です。
一方の普通借地権は、契約の更新が原則自動更新となりますので、所有権を取り戻すことはとても難しく、借地人との交渉・購入、高額な立ち退き料の支払いなどが必要となります。
当然のことながら、この契約方法の違いによって底地の売却額・買取額にも影響を与えます。言うまでもなく、定期借地権の方が評価額はアップします。
まとめ
ここまで、底地の評価額の計算方法と売却時の注意点について、いくつかのポイントを取り上げてきました。実際に所有されている底地の評価額を算出し、借地人との交渉を早速行いたいと感じた方も多いのではないでしょうか。
一方、ここまで論じてきたように、基本的に借地人の権利は強く守られているため、底地人でもあっても強制力をもって現状を変更するような動きをとることはできません。そのため、交渉がまとまらないということも多いというのが実態です。
第三者への売却は、それに輪をかけて困難な状況です。昨今、借地権の土地売買は人気エリアを除くと需要は限定的なものにとどまっています。その理由として、ここまで挙げてきたいくつかの理由の他に、金融機関の住宅ローン審査・評価が厳しくなっていることなども一因となっています。
交渉がまとまらない、買い手がみつからない、売却額が下がっても早期に現金化したいという課題をお持ちの底地人の方には、底地買取に実績のある不動産業者へ相談してみることも一つの手段としてオススメいたします。
