事故物件情報共有サイト「大島てる(おおしまてる)」とは?
※補足説明
住民が自殺、殺人、火災死などで死亡した、いわゆる「事故物件」の情報を提供するサイト。なお、サイトの運営代表者とサイト運営会社の名前も同じく「大島てる」である。
ちなみにこの取材は前・中・後編にわかれており、中編では「事故物件を貸したり売ったりするときのポイント」、後編では「大島てる運営の体制やサイトに込めた思い」などを伺っております。
前編に当たる本記事は、
- 引越しの予定があるが金欠気味のため、部屋選びで絶対に失敗したくない
- 騒音がヤバい、住民の質がヤバいなど「ヤバい物件」の見抜き方を事前に知りたい
- たまに見聞きする「事故物件」や「告知事項」といった言葉の正しい意味が知りたい
といった方必見です。
これがヤバい物件を見抜くチェックリストだ!
大島てる
株式会社大島てる代表取締役。東京大学経済学部卒業。自殺、他殺、火災死などのあった事故物件の情報を共有するサイト「大島てる」の管理人。サイト運営の他、イベント登壇、講演、執筆、書籍監修など多岐に渡って活動中。
大島さんは日本で一番「ヤバい物件の情報を知っている」といっても過言ではないと思います。
これまでを振り返って「アレはヤバかったな〜」という物件ありましたか?
そうですね……。
3階建てで戸数は少ないにも関わらず、4年の間に傷害致死事件、首吊り自殺、刺殺が起きたというマンションがありましたね。
えっ
しかもこれ、
- 入居者同士の喧嘩の末、片方がビール瓶で相手を殴り傷害致死事件に発展
- 屋上での首吊り自殺
- 大家さんが刃物で住民に刺し殺される
とそれぞれまったく別々の事件なんです。
さらに大家さんを殺した犯人は埼玉の山奥で自殺した状態で見つかっています。
治安がアウトレイジ
さすがにそこまでの物件は珍しいとは思うんですが、「ヤバい物件」はどうすれば事前に見抜くことができるのでしょうか?
色々とありますが、下記のポイントは最低限押さえておきたいですね。
ネット検索時のチェックリスト | ||
項目 | 内容 | |
□ | 検索サイト | ・下記の優先順位で検索しているか?
(1)不動産会社直結サイト (2)不動産会社運営サイト (3)情報企業の不動産サイト (4)不動産会社のブランドサイト (5)大手サイトの賃貸ページ 上記の優先順位で検索。複数サイトに掲載されている場合は、一番いい条件のサイトから問い合わせをする。 |
□ | 掲載情報 | ・相場より明らかに家賃が安い、不自然なリフォームをしているなど、事故物件の可能性はないか?気になるようであれば事前に電話で確認したか? |
□ | 口コミ | ・不動産業者の口コミで気になる点はないか? |
内見時のチェックリスト | ||
項目 | 内容 | |
□ | 共有スペース | ・掃除は行き届いているか? ・ゴミ捨て場はキレイに使われているか? ・駐輪場やバイク置き場は整理整頓されているか?→住民の質を図る指標 |
□ | 室内のニオイ | ・キッチンなどで下水のニオイはしないか? ・雨漏りなどによるカビのニオイはしないか? ・そのほか、何か異臭はしないか? |
□ | 窓・扉 | ・扉の立て付けはしっかりしているか? ・日当たりはいいか? ・雨戸、網戸はあるか? |
□ | 防音 | ・壁を叩くと乾いた音がしたり、部屋全体に反響したりしないか? ・上下階からの足音は響いてこないか? |
□ | 家具の寸法 | ・冷蔵庫や洗濯機などを設置する場所の寸法を測っているか? |
□ | 周囲の環境 | ・とんこつラーメン屋やお墓などはないか?近隣施設の音は気にならないか? |
□ | 写真、メモ | ・問題と思う箇所があれば写真を撮りメモを残しているか? |
契約時のチェックリスト | ||
項目 | 内容 | |
□ | 内見件数 | ・複数(できれば10件以上)の物件を内見し、十分に比較検討したか? |
□ | 前の住民の退去理由 | ・退去理由は近隣住民や大家とのトラブルではないか?もし理由がトラブルであれば、その内容を確認したか? |
□ | 担当者の態度 | ・「他にも検討者がいるのですぐ決めた方がいい」「他の不動産屋でも一緒」など契約を急かすような態度ではないか? |
※大島氏の話と「事故物件サイト・大島てるの絶対に借りてはいけない物件」を参考に作成。
<上記、物件選びのチェックリストのダウンロードはこちらから>
物件選びのチェックリスト
この中で特に重要なポイントなどはあるのでしょうか?
ニオイです。いくら技術が進歩した現代でも、これだけは現場に行かないと絶対にわからないですから。
また、最近では内見をせずに契約する人もいるようですが、私としては
- 必ず複数軒内見する
というのは物件選びで失敗しないためにとても重要だと思っています。
たしかにそうですね。
ちなみに前の居住者が自殺などした「事故物件」はこちらから確認する必要はないのでしょうか?
事故物件については「告知義務」があり、契約前にその事実を教えてもらえることになっています。そのため、こちらから確認する必要は本来ないはずです。
ただ、まれに事故物件であることを隠す悪徳業者もいますので、裁判になったときのことを考え念のために聞いておいてもいいでしょう。
なるほど、本当にヤバい物件は契約前に教えてもらえる決まりになっているんですね。
ただ、契約前に「実は事故物件でした」と言われるのもちょっと無駄が多いというか……。そうした無駄を防ぐ意味でも、ネット検索の段階で「事故物件かどうか」を見分ける方法はあるのでしょうか?
あくまで参考程度になりますが、チェックリストにもある通り下記のような特徴があれば事故物件の可能性が高いでしょう。
・家賃が周辺の相場より3〜5割安い
・契約更新できない(=定期借家)
・部屋の特定の部分だけリフォームされている
・物件名が変更されたことがある
・告知「事項」ありと記載されている
内見の時間的ロスを確実に防ぐのであれば、事前に電話で問い合わせ確認しておくのがいいでしょうね。
内見、スル。ゼッタイ。
そもそも告知義務、事故物件とは一体何なのか?
先ほどの話で気になったのですが、そもそも「告知義務」とは何なのでしょうか?
一言でいうと「ハンコを押すかどうか決めるのに影響することは言いなさい」ということです。
例えば、前の住民がその物件で殺されていたことを知ったら、ほとんどの人は契約しないでしょう。そうした重要な事実を伝える義務が告知義務です。
明確な定義はないんですね。それだと不動産業者によって告知義務の判断が異なるのでしょうか?
明確な定義はないものの、業界の慣習のようなものはあります。
例えば、前の住民が自殺したり殺害されたりしていた場合だと告知するのが一般的ですが、自然死の場合だと逆に告知しないのが一般的です。
また、事故物件になったあと誰か1人住んだら、その次に住む人には告知しないのが慣習になっています。
ただ、事故が発生してからの期間、死因などによって多少の差はあります。
ルールはないものの、実際はどの業者もほとんど同じ認識。ただ、期間や死因なども関連するのでこまかい内容はケースバイケース、ということですね。
事故物件以外にも告知義務の対象となるケースはあるのでしょうか?
告知義務の対象となる物件は「瑕疵(かし)物件」と呼ばれ、大きくわけて4種類あります。
告知義務の種類 | 内容 | 具体例 |
心理的瑕疵物件 | 心理的に住み心地の悪い事情を抱えた物件 | 前の住民が自殺した・他殺された・火災死した、発見の遅れた自然死など |
物理的瑕疵物件 | 物理的な問題のある物件 | 雨漏り、シロアリの被害など |
環境的瑕疵物件 | 物件自体ではなく周囲の環境に問題がある物件 | 異臭がする、騒音がひどい、近隣に暴力団事務所があるなど |
法的瑕疵物件 | 法律など何らかの制限がある物件 | 文化財の指定地域など |
※大島氏の話と「事故物件サイト・大島てるの絶対に借りてはいけない物件」を元に作成
僕は「告知義務が発生するのは、自殺や殺人があった事故物件だけ」と勝手に決めてつけていたんですが、こんなに種類があるとは……。
たしかに家の近くにヤクザの事務所が会ったら絶対住みたくないですね。
はい。告知義務といってもその種類はさまざまです。
例えば、事故物件は「心理的瑕疵物件」の一種として分類され、その中でも「他殺、自殺、火災死(場合によっては発見の遅れた自然死も含む)などが起こった物件」を指す、かなり範囲の狭い言葉なんです。
ほかにも、
・目の前に電車が通っている
などは環境的瑕疵物件に当たりますが、こうした「言わなくても明らかにわかる場合」はわざわざ告知されないこともあります。
こう聞くと、やはり現場での内見は必須ですね。
あとは、ネット検索の時点で「告知事項あり」と表示されている場合があります。
しかし、告知事項は告知義務とは違い、単に「契約前にお知らせすることがある」という意味なので、必ずしも事故物件などの瑕疵物件とは限りません。
ややこしや
事故物件に住むメリットはあるの?住みたい場合はどうしたらいい?
ちなみにですが、あえて事故物件に住むメリットはあるのでしょうか?
経済的な負担の軽減ですね。事故物件は相場よりも家賃が安くなる傾向にありますから。あとは大家さんや不動産屋さんが正直者だということがハッキリします。
逆に言えば、それ以外のメリットはないでしょう。
海外には「事故物件になって運が底をついているからあとは上がるだけ。だから事故物件を借りた方がいい」といったところもあるようですが、本当かどうかわかりません(笑)
ポジティブがすぎる
もし、経済的な負担軽減を目的として事故物件に住みたい場合、どのような方法で調べればいいのでしょうか?
弊社の「大島てる」以外にも、
・URの「特別募集住宅」
・不動産競売物件情報サイトBIT ※購入の専門場合のみ
・事故物件専門業者
などのサイト・業者を活用すればある程度見つけることができるはずです。
ただ、問い合わせるときには「事故物件に住みたい」と言わない方がいいでしょう。
というのも、単なる冷やかしと思われる可能性が高いからです。
そのため、予算や駅からの距離、希望路線などの条件を提示したあとで「事故物件でもOK」と伝えるのがよいでしょう。
あと超個人的な話なんですが、僕前に引越したとき隣に住んでる人が割とやばめの人だったんですよ。
これって告知義務になりませんか?
どうでしょうね
ありがとうございました
まとめ
事故物件をはじめとした「本当にヤバい物件」は告知義務といって契約前に知らせてくれるルールになっています。ただ、中にはあえて隠している悪徳業者や、大家だけが知っていて仲介不動産業者は本当に知らないケースもまれにあります。
また、告知義務の対象とならない「人によって判断がわかれる微秒な騒音や異臭」などについてはこちら側でチェックするしかありません。そのため、この記事のチェックリストを持参して内見に行き、お部屋探しのリスクを最小限に抑えてみてください。
なお、「節約できるのであれば事故物件でもOK」という方は紹介したサイトから検索してみるのもひとつの選択肢。
中編となる次回は「事故物件を貸し出す・売るときに押さえておくべきコツ」についてお聞きします!
<物件選びのチェックリストのダウンロードはこちらから>
物件選びのチェックリスト