「農地タダであげます」が難しい3つの理由
相続した農地を「タダでいいから手放したい」と考える人は少なくありません。
しかし実際には以下の理由によって、農地を手放すことは大変難しいのが事実です。
農地を少しでも早く手放せるよう、まずは農地の権利移転の基本を押さえておきましょう。
農地を手放すには「農業委員会」の許可が必要
「農地法」という法律により、農地の譲渡には宅地にはない特殊な規制が設けられています。
たとえば、農地を譲渡する際には「農業委員会」の許可を受けなければならないと定められていることもその1つです。
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
※農業委員会とは
各市区町村に設置され、農地法に基づく権利移動の許可や農地転用への意見具申を行う行政委員会のこと。公的には、農業従事者への農地の集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入の促進などの役割を担う。
参照元:農林水産省「農業委員会について」
国が農地の譲渡に規制を設ける背景には、40%程度しかない日本の食糧自給率を改善するために、国内の優良な農地を確保しなければならない事情があります。
農業が国の食糧政策によって保護されているため、農地の利用や権利移動にはさまざまな制限が設けられているのです。
なお、農地を相続した際にも農業委員会への届出は必要です。
農地相続の届出は相続から10カ月以内に行う必要があり、手続きを怠ると10万円以下の過料の対象となるため、注意しましょう。
農地は農業従事者にしか譲渡できない
さらに農地法では、農地の譲渡先(売却先)を農業従事者のみに制限しています。
農業従事者でないサラリーマンなどの一般の人には、原則農地を売却できないため、売却先を見つけるのは非常に困難です。
なお2023年(令和5年)4月1日より、農地法第3条の下限面積(50a以上)の規制が撤廃されたことにより、以前よりは個人や一般法人が農地を購入しやすくなりました。
農業への新規参入が可能な要件
- 農地を効率的に利用できる営農計画を持っていること
- 50a(北海道は2ha)の原則にかかわらず、地域の実情に応じ面積を自由に設定が可能
- 地域の水利調整や無農薬栽培などに従い、周辺の農業に支障をきたさないこと
参照元:農林水産省「改正農地法の概要」
引用元:農林水産省「改正農地法の概要」
就農後の明確な事業計画を持ち、地域のルールに従って農業を運営できると判断されれば、農業従事者以外にも農地の所有が認められるというものです。
とはいえ、譲渡の対象はあくまで現在農業に従事する人と今後就農する人のみであり、やはり農地の売却先は限定的です。
農地以外への転用にも許可が必要
農地を売却する場合だけでなく、農地以外の用途へ転用する場合にも、農業委員会と都道府県知事への転用許可申請が必要です。
農地転用とは、農地を宅地など農業以外の用途に変更することです。
農地を売却するケースでは、宅地や工場、倉庫、公園などさまざまな用途が考えられますが、農地を用途変更するためには、他の地目への変更手続き(農地転用)が必要です。
農地転用の許可を得るには、以下の書類をそろえて農業委員会経由で都道府県知事に届出しなければなりません。
- 許可申請書類
- 土地の登記事項証明書
- 事業計画書 など
しかし許可申請を出したからと言って、農地転用が認められるとは限らず、むしろ認められないケースの方が圧倒的に多いのです。
もし無許可で農地を転用し建物等の工事をした場合、工事停止や原状復旧を命じられるので注意しましょう。
転用可否は「農地区分」によっても変わる
農地が他の用途(地目)に転用できるかどうかは「農地区分※」によって異なります。
※農地区分とは
位置、自然条件、都市環境などにより農地を分類する5種類の区分のこと。
農地区分ごとの農地転用可否(行政の許可方針)は以下のとおりです。
農地区分 | 概要 | 農地転用許可方針 |
---|---|---|
農振農用地区域内農地 | 「農業振興地域整備計画」で農用地区域に指定された場所にある農地 | 原則不許可 |
甲種農地 | 市街化調整区域内にあり、良好な営農条件を備えた農地 | 原則不許可 |
第1種農地 | 土地改良事業の対象となっている、良好な営農条件を備えた大規模農地 | 原則不許可 ※公共性が高い場合は転用可能 |
第2種農地 | 駅から500m以内にある、今後市街化が進む農地 | 他の土地が転用できない場合のみ許可 |
第3種農地 | 駅から300m以内にある、すでに市街化が進んでいる市街地区域内の農地 | 原則許可 |
第一種農地(いわゆる青地)や甲種農地(市街化調整区域内の農地)については国による厳しい規制があり、農地転用は原則認められません。
「農振除外」の手続きを行えば第一種農地でも転用できる場合がありますが、手続きが複雑なうえ年単位の時間がかかるため、現実的ではないでしょう。
一方で、市街化区域内にある農地は届出だけで農地転用が可能です。
基本的に農地転用が認められるのは、第二種農地と第三種農地のみと考えましょう。
参照元:農林水産省「農地転用許可制度について」
なお、所有する農地の農地区分は以下の方法で調べられます。
- 問い合わせたい農業委員会を調べる
- 固定資産税の納税通知書などで地番を確認
- 農業委員会に電話・書面で確認する
農業委員会を探すには「自治体名 農業委員会」で検索するか、市町村役場に電話を架け、農業委員会に回してもらうとよいでしょう。
もしくは「eMAFF農地ナビ」でもおおまかな農地区分を検索可能です。
なお市街化調整区域かどうかの調べ方と、市街化調整区域の不動産(甲種農地)を売却する方法については、以下の記事を参考にしてください。
荒れた農地は「非農地証明」で地目を変える必要がある
農地が放置され、耕作に適さないほど荒れた場合には、農地の地目では処分ができません。
農地が荒れた場合は「非農地証明」を発行してもらい、地目を農地から山林に変える必要があります。
非農地証明を取得できたら、農地法上の譲渡規制の縛りから外れるため、宅地や山林と同様に土地の売却が可能です。
ただし農地でなくなるため、農地としての税制優遇がなくなる点に注意しましょう。
通常、農地を譲渡した場合には以下の金額を譲渡所得金額(売却金額)から控除できます。
- 農業従事者への譲渡:800万円
- 農地中間管理機構または農地利用集積円滑化団体への譲渡:1,500万円
しかし非農地証明を取得すると控除を受けられません。
また宅地に転用した場合、売却できずにいると宅地並みの高い固定資産税がかかることにも注意しましょう。
「農地あげます」の前に検討すべき3つの農地活用方法
いらない農地を手放す前に、農地を活用する方法についても検討してみる価値はあるでしょう。
農地を耕作せずにいると、非農地証明の手続きが生じるだけでなく、荒れた土地が原因で後述するさまざまなトラブルにもつながります。
対策として、農地を他者に貸して活用する方法を紹介します。
近隣農家や知人へ農地を貸す
相続した農地が遠方で耕作する予定がない場合には、近隣の農家や知人へ貸し、賃料を得るのも1つの方法です。
農家や知人に農地を借りてもらえれば、農地の管理から解放され、賃料も入ります。
ただし譲渡と同様、農地を他者へ貸す場合には農業委員会に連絡し許可(農地法第3条許可)を得る必要があります。
以下の手順で農業委員会へ許可申請を行いましょう 。
- 農業委員会に事前相談
- 貸す側と借りる側で条件交渉 契約内容の仮決定
- 農業委員会に本格相談
- 許可申請
- 許可取得と契約の有効化
なお農業委員会を通さない賃貸借契約(いわゆるヤミ小作)は、契約書面の有無にかかわらず無効となります。
将来返却してもらいたくても権利を主張できなくなるので注意しましょう。
市民農園を開設する
農地が市街化区域内の「生産緑地」にある場合には、土地を小さく区画し市民農園として貸し出すことも可能です。
引用元:
市民農園を開設すれば、耕作できない農地の荒廃を防ぐことができ、賃料も得られます。
市民農園を開設する方法は以下の3つです。
開設方法 | 開設場所・区域の規定 | 許可・申請の要否 |
---|---|---|
①特定農地貸付法に基づく方法 | 規定なし | 農業委員会への申請 |
②農園利用方式に基づく方法 | 規定なし | 許可・申請は不要 ※管理は自身で行う |
③市民農園整備促進法に基づく方法 |
|
|
①は貸付期間5年以内、10アール未満の農地を貸付ける方法です。
②はいわゆる体験農園のことで、いちご狩り・なし狩りのような単なる収穫体験ではなく、植え付けから収穫まで行うタイプの農園を指し、経営管理・農業指導は所有者自ら行う必要があります。
③は「整備運営計画」を作成し、市町村に提出して認定を受ける必要がありますが、農業委員会の承認は不要です。
地域に市民農園のニーズがある場合は、①~③のいずれかで農地を活用するとよいでしょう。
ただし立地によっては必ずしも借り手がいるとは限らず、民間企業が運営する貸し農園と競合する可能性もあるので注意が必要です。
「農地バンク」に借り手探しを依頼する
いらない農地を活用するには、「農地バンク※」に借主を探してもらって貸し出す方法もあります。
※農地バンクとは
都道府県や市町村、農業団体などで組織される「農地中間管理機構」のこと。農地の適正な活用と集約化を目的として、農林水産省が農地の貸し借りサポート事業を行っている。
引用元:農林水産省「農地バンクを活用しましょう!」
農地を農地バンクに登録しておくと、農地中間管理機構が農地を借りたい農家を探してくれます。
さらに借主が不在になった場合でも次の借り手を探し転貸してくれるため、賃貸住宅のように賃料が途切れる心配がありません。
また個人で貸し借りする場合と異なり、10年間の貸出期間が終わると確実に返却されることもメリットです。
ただし農地を10年以内に返却してもらうことは難しいため、必ずしも自由な運用ができるわけではない点に注意しましょう。
「農地あげます」を可能にする3つの方法
農地を貸すことが現実的でない場合、無料でもいいから農地を手放したいと考える方も多いでしょう。
実際、活用できない農地は無料でも手放すほうが得策です。
ここではいらない農地を無償で譲渡できる具体的な方法を紹介します。
相続を放棄する
まだ農地の相続手続きが終わっていない場合は、相続自体を放棄することで農地を手放せます。
※相続放棄とは
被相続人の財産を一切相続せず、すべて放棄すること。借金など負の遺産が多い場合に行われるケースが多い。
相続放棄をすれば農地を受け継ぐ必要がなくなるため、農地転用や譲渡手などの面倒な手続きを免れられます。
相続を放棄する場合の流れは以下のとおりです。
- 相続人を漏れなく調べる
- 被相続人の相続財産をすべて調べる
- 相続放棄手続きに必要な戸籍謄本などを市区町村役場で取得する
- 「相続放棄申述書」を作成し、家庭裁判所へ郵送または直接提出する
- 家庭裁判所から「照会書」が届いたら「回答書」に記入し返送する
- 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く
- 相続放棄完了
※ここまでを相続開始から3カ月以内に行う
3カ月の手続き期限を過ぎると「相続を承認」したとみなされ、相続放棄が認められなくなるので注意が必要です。
なお全財産の相続を放棄する必要があるため、農地だけを放棄することはできず、プラスの財産も放棄しなければなりません。
また、自分が相続放棄したことによって、他の相続人が負の遺産を相続することになる点にも注意しましょう。
4~7で家庭裁判所に申請が受理されると、農地は裁判所の管理下に収められます。
ただしタダで農地を引き取ってくれるわけではなく、農地が国庫に帰属されるまでに裁判所で管理・整備・売却処分するための費用(整備費用・固定資産税相当額など)は、依頼者が支払うのが一般的です。
農地の状況にもよりますが、通常依頼者が裁判所に支払う管理費は50万~100万円程度のため、相続放棄を決めたら早めに用意しておきましょう。
ちなみに「遺品整理業者の支払いに故人のタンス預金を使った」など、少額でも財産の一部を処分してしまった場合も相続放棄できなくなるので注意してください。
なお農地を相続放棄するメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
近所の農家に引き取り交渉をする
いらない農地は、近隣の農家に引き取り交渉をしてみましょう。
農地の隣接した農家であれば、以下の理由で他の人よりも農地を引き取ってくれる可能性が高いです。
- 生産量を増やせる
- 大型機械を導入しやすくなる
- 設備導入の融資が受けやすくなる
近隣農家が土地を引き継いでくれれば、農地の固定資産税や管理費用を支払わずに済みます。
とはいえ、農地を引き取ってくれそうな現役農家の数は、以下のように減少し続けていることも事実です。
高齢化が進む農村エリアほど、農地の引き取り手が見つかりにくいといえそうです。
また、土地を無償譲渡した場合には、譲渡を受けた側に贈与税が課税される点にも注意しましょう。
「相続土地国庫帰属制度」で国へ返す
相続した農地をタダで手放すには、「相続国庫帰属制度」を利用するのも1つの方法です。
※相続土地国庫帰属制度とは
相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を国に引き渡せる(国庫に帰属させる)制度。
この制度は相続により発生する所有者不明の土地を減らす目的で制定され、2023年4月27日に施行されました。
ただし農地をタダで国へ返せるわけではなく、制度を利用するには10年分の管理費相当の負担金を支払う必要があります。
負担金額は都市計画法の区分や農地区分によっても異なりますが、原則20万円ほどかかり、その他に審査手数料が1万4,000円かかります。
また土地に対する要件も厳しく、相続した農地が以下に該当する場合は制度を利用できません。
(1)申請の段階で却下となる土地
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2)該当すると判断された場合に不承認となる土地
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
たとえば、手放したい土地に家屋や納屋などが立っている場合は、引き取りの対象外です。
また、地目が農地なのに農耕に適さないほど荒れていると、「管理費がかかる」と却下される傾向にあります。
条件に当てはまれば相続土地国庫帰属制度は便利かもしれませんが、実際に使えるケースは多くないでしょう。
なお相続土地国庫帰属制度を利用する方法については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
自治体によっては農地を寄付できる場合もある
自治体によっては要件を満たした場合に農地の寄付を受け付けているところもあるので、農地の地元の自治体をチェックしてみましょう。
自治体が農地を引き取ってくれれば、農地の相続者は管理費や固定資産税の負担から解放されます。
ただし自治体は必ずしも農地を引き取ってくれるとは限りません。
なぜなら土地の寄付を受け入れると、自治体としては固定資産税収入が減るうえに、用途のない農地の管理負担が増えるだけだからです。
実際に土地の寄付を受け付けている自治体(新潟市)を例にとると、「農地の場合は宅地への転用許可が受けられる」ことが条件となっています。
自治体が寄付を受け付けるのは管理コストがかからず、転用・活用がしやすいなどの条件がそろった農地のみと考えてよいでしょう。
いらない土地を自治体に寄付する方法や、寄付できなかったときの対策については以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
ネット掲示板で無料譲渡先を探す
国や自治体にも農地を引き取ってもらえない場合には、ネット掲示板で無料譲渡先を探してみましょう。
インターネット掲示板やスマホアプリを活用すれば、スマホやパソコンで自宅から手軽に譲渡先を見つけられる可能性があります。
農地をタダでもらってくれる先を探すには、以下の掲示板・アプリがおすすめです。
掲示板・アプリ | 特徴 |
---|---|
家いちば |
|
みんなの0円物件 |
|
フィールドマッチング |
|
負動産の掲示板 |
|
ジモティー |
|
上記のネット掲示板やアプリに所有する農地の情報を掲載し、農地を欲しい農家から連絡が来るのを待ちます。
そしてマッチングが成立すれば、農地を欲しい人と直接契約が可能です。
ただし上記のサービスは基本的に仲介するわけではないので、いつまでも引き取り手が現れない可能性があります。
また掲載する写真の撮影や本文作成、購入希望者との交渉もすべて自分で行わなければなりません。
トラブルも自己責任となるので、無償譲渡でも法的効力のある契約書面を交わし、農業委員会への手続きなどを怠らないことが大切です。
「農地あげます」以外に農地を処分する5つの方法
実は、無料で譲渡ができない農地でも、売却できる場合があります。
有償で売却する場合は、プロに媒介してもらう形になるので、無償譲渡よりもかえって農地を手放せる可能性が高いのです。
農地の具体的な売却方法は以下の5つです。
農協に買主を探してもらう
いらない農地を売却する1つ目の方法は、農地の地元の農協(JA・農業協同組合)に買主を探してもらうことです。
農協では全国・地域の農家情報を管理しており、不動産部では農地を譲渡したい人のために買主を探してあっせんするサポートも提供しています。
さらに、農業委員会へ提出する申請書作成のサポートも依頼できます。
農協へ買主のあっせんを依頼する流れは以下のとおりです。
- 農協に相談し、買主探しを始める
- 先に農協と農地の売買契約を締結する
- 農地売却の許可申請書類を農業委員会に提出する
- 農業委員会と都道府県知事から申請の許可を得る
- 買主に農地を引き渡して売却完了
農協にあっせんを依頼するメリットは、農地取引のプロに面倒を見てもらえること、地域に根付いているため農業従事者に利用されやすいことです。
ただしサポート依頼は有料のため、売却金額から相談料を引かれる点がデメリットといえます。
また近隣に農協がない場合には、依頼時の手間が増える点にも注意しましょう。
家屋がある場合は「農地付き空き家」として売却する
手放したい農地に家屋が残っている場合は「農地付き空き家」として、空き家バンクなどで売却する方法もあります。
先述した相続土地国庫帰属制度では更地でないと引き取ってもらえませんが、移住して新規就農する買主候補者にとっては、家屋や納屋があるほうが魅力的かもしれません。
なお空き家バンクとは自治体が運営する、空き家を売りたい人と買いたい人をマッチングさせるシステムのことです。
空き家バンクでは前述のネット掲示板と同様、物件情報の掲載やマッチング後の買主との交渉は自分で行う必要があり、契約時や売却後のトラブルも自己責任です。
また、農地の購入希望者の動向にも注意しましょう。
以下のグラフでは、他業種から農家に転身する新規就農者数が減少していることがおわかりいただけるかと思います。
農地付き空き家の買い手を募りたくても、就農希望者自体が年々減っているため、今後は買い手が見つからなくなる可能性が高いです。
太陽光発電業者に売却する
いらない農地は太陽光発電業者に売却するのも1つの方法です。
再生可能エネルギーの需要増加にともない、相続した不要な農地など、地目を問わず土地を買い取ってくれる太陽光発電業者は年々増えています。
太陽光発電業者への農地売却には以下のメリットがあります。
- 不動産会社に断られた農地でも売却できる可能性がある
- 活用が難しい土地でも比較的高額で売却できる
- 売却が困難な土地は賃貸契約も可能
ただし注意点もあり、農地転用の手続きが必要で、売買契約から引き渡しまでに時間がかかることです。
また「停止条件付売買」が前提となるため、もし太陽光発電事業への転用許可が下りなかった場合は、せっかく締結した売買契約が無効になってしまいます。
さらに太陽光発電の設備設置には、農地が以下の条件に当てはまらないと難しいといわれるため、所有する農地が当てはまるか確認しましょう 。
- おおむね300坪(990㎡)以上
- 40m以内に電柱がある
- 4m道路に接している
- 敷地内に建物がある土地・斜面が急な土地はNG
太陽光発電業者の買取にもさまざまな条件があり、どんな農地でも買い取ってもらえるわけではない点に注意が必要です。
不動産仲介業者に売却依頼をする
いらない農地を売却するには、不動産仲介業者への売却依頼をする方法もあります。
不動産仲介業者とは、不動産を売りたい人と買いたい人を媒介し、売買契約のサポートをしてくれる業者のことです。
宅地に転用した農地を仲介業者に仲介依頼すれば、農業従事者以外にも土地を売り込めるので、買主を探しやすくなるでしょう。
仲介業者は複数の購入希望者の中から、もっとも条件の良い買主を選んで仲介してくれるため、農地を高く売却できる可能性もあります。
ただし仲介業者に依頼する場合は、事前に自分で農地転用手続きが必要です。
また、仲介業者はすぐに売却できる物件だけを扱うため、農地転用ができない場合は仲介を断られる可能性が高いです。
所有する農地が転用可能な第二種農地・第三種農地の場合にはであれば、仲介業者への売却依頼を検討してもよいでしょう。
専門の買取業者に買取を依頼する
農地を手放す方法をいろいろ探ってみたものの、解決策が見つからない場合には、農地専門の買取業者に買取を依頼するのがおすすめです。
不動産業者による不動産の売却方法には、先述した「仲介」と「買取」の2種類があります。 仲介と買取の主な違いは「売却方法」「売却期間」「売却価格」の3つです。
【仲介での売却】
- 売主と買主を業者が仲介する売却方法
- 仲介業者は売買成立の報酬として売主・買主から仲介手数料を得る
- 買手を探す必要があるため、売却期間は平均3カ月~半年ほどかかる
- 需要と供給がマッチすれば希望価格で売却できる可能性がある
【買取での売却】
- 買取業者自ら買主となり、売主から直接物件を買い取る方法
- 買取業者は買い取った物件を運用・再販することで利益を得る
- 買手を探す必要がないため売却期間は平均1カ月程度
- 買取業者が代行する諸費用を差し引いた買取価格は、仲介での売却価格より安くなる
売却の制約が多い農地に関して言えば、仲介よりも買取のほうが適しています。
理由は農地専門の買取業者なら、農地を転用せず農地のままで売却が可能なためです。
農地転用手続きは買取業者が農地を買い取ってから行うため、所有者が行う必要はありません。
また、用途を太陽光発電などに限定せず、さまざまな方法で農地を再生・収益化するため、農地転用の可否に関わらず買取が可能です。
そして優良な専門買取業者ほど豊富な再生ノウハウと再販ルートを持っているため、他で売れない農地でもスピーディーかつ高額で買い取ってくれる可能性が高いです。
アルバリンクにはいらない農地を売却できる
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、農地のような売れにくい不動産を専門に買い取る買取業者です。
土地売買取引だけでなく、法律や税金など各方面の専門家と連携しているので、農地転用などの売却に必要なすべての手続きを代行できます。
弊社は訳アリ物件専門の買取業者として、これまで他社では断られるような処分に困る相続不動産を多数買い取ってきました。
実際、地方の不動産の相続が発生し、弊社でその不動産を買い取らせていただいたお客様からは、以下のような感謝のお言葉を頂いています。
かねてより悩みの種であった地方にある不動産をいよいよ相続することとなり、相続人全員で話し合い、買取業者様にお願いすることにしました。 譲渡益は見込んでおらず、とにかく早い段階での現状渡しが実現しそうな業者様を探し、口コミや実績からAlbaLink様にご相談いたしました。 断られてしまうのでは、と不安が募りましたが、担当の方が当初より親身に寄り添って下さり、難しい条件の不動産ではありましたが、何とかお引き受けいただけることになりました。 やり取りも非常にスムーズ且つ迅速で、相続発生から短期間での契約締結となり、長年の肩の荷が下りてホッといたしました。 AlbaLink様にご相談して本当に良かったです。また、ご担当いただいた方にも心より感謝申し上げます。
上記は信憑性の高いGoogleの口コミにお客様が書き込まれたものですが、その他にも弊社はGoogleの口コミで多数の好意的な評価を頂いております。
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
いわゆる負動産の買取・再販のノウハウと実績も豊富なため、他では売却できない農地でも高値で買い取ることが可能です。
「田舎の農地を相続したけどどうしたらいいかわからない」「相続した畑を売却できず困っている」そういった方はぜひ一度下記無料買取査定フォームから弊社にご相談ください(売却前提の問い合わせでなくても構いません)。
>>【農地転用できない農地でも高額売却!】無料の買取査定を依頼する
「農地あげます」をせず放置する4つのリスク
いらない農地を手放すには、さまざまな方法があることがおわかりいただけたでしょう。
とはいえ、相続した農地が遠方にあったり、もともと行く機会が少なかったりすると、処分を後回しにして放置しがちです。
しかし農地を手放さず放置していると、以下の負担やリスクが増える一方のため、紹介した方法で少しでも早く処分することをおすすめします。
将来子や孫にまで負担がかかる
耕作も譲渡もできない農地を自分の代で処分できなければ、子や孫にまで負の財産を残してしまいます。
自分の代ではどうにか固定資産税や管理費を支払えたとしても、自分の相続が発生したときに子どもに農地を維持・管理する余力があるとは限りません。
さらに代が替わるごとに農地との関係性も薄れていくため、子や孫の代になると農地の所在地すら知らない状態になる可能性が高いです。
子や孫が突然見ず知らずの農地を相続することになったら、自分以上に維持管理に苦労するでしょう。
自分の生活で精一杯の子どもや孫たちに「負動産があるなんて聞いてないよ」と恨まれないためにも、使わない農地は自分の代で処分してしまいましょう。
固定資産税や管理費がかかり続ける
いらない農地を手放さずに放置していると、固定資産税などの維持管理費がかかり続けてしまいます。
以下は農地の維持・管理に必要な費用の一例です。
- 固定資産税
- 水利費
- 土地改良区の賦課金
- 共済掛金
- 草刈り費用
- 獣害対策費用
固定資産税はどの地目にも発生しますが、農地にはさらに水利費や地域の賦課金といった特有の費用がかかります。
土地改良区の賦課金は相続人にも支払い義務があり、支払いを免除してもらいたい場合は農地を売却もしくは貸借して、土地改良区を退会しなければなりません。
参照元:総務省「土地改良区の賦課金とは?」
さらに、農地の維持には草刈りなどの整備費用がかかります。
ちなみに業者による農地の草刈り料金は、1坪(約3.3㎡)あたり300円~600円程度が相場です。
たとえ自分では耕作する予定がなくても、雑草が生い茂れば周囲の田畑へ悪影響を及ぼす恐れがあるため、業者に依頼してでも草刈りは行わなければなりません。
耕作放棄地は固定資産税が1.8倍になる恐れがある
荒れた農地や十分に管理されていない農地(耕作放棄地・遊休農地※)は、固定資産税が通常の農地と比べて約1.8倍高くなる可能性があります。
※遊休農地とは
現在使用されておらず今後も耕作の予定がない農地、または農地として周辺より著しく使用頻度が低い農地のこと。
参照元:e-Gov法令検索「農地法」
※耕作放棄地とは
過去1年以上作付けされておらず、今後も作付けの意思のない土地のこと。
参照元:農林水産省「農林業センサス等に用いる用語の解説」
2016年(平成28年)の税制改正によって、耕作放棄地・遊休農地には通常の農地とは異なる課税方法が取られるようになりました。
通常の農地の固定資産税は、一定の収益率をもとに計算されますが、耕作が困難なほど放置された耕作放棄地に対しては、収益率を考慮しない不利な税率が適用され、税額が通常の1.8倍になります。
つまり使わない農地を放置していると、ある日突然固定資産税が1.8倍に跳ね上がる恐れがあるのです。
以下の記事では、農地の固定資産税と課税を免除される方法について解説しているので、参考にしてください。
近隣の農地へ損害を与える恐れがある
いらない農地を放置し続けると、近隣の農地へ迷惑をかけ、損害を与えるリスクが増加します。
農地の管理を怠ったことで生じる主なリスクは以下のとおりです。
- 雑草の種子が周辺の田畑に飛び散る
- 害虫・害獣が繁殖しやすい
- 火災や不法投棄を招きやすくなる
相続した農地に雑草が生い茂った場合、種子が周辺の田畑へ飛び散り作物に悪影響を与える恐れがあります。
また、繁殖した害虫や害獣によって周辺農地の収穫量を減少させてしまった場合、近隣の農家から損害賠償を請求される可能性が高いです。
さらに雑草の生い茂った農地は人の目が届きにくく、不法投棄や放火を招きやすくなります。
農地の放棄は周辺の環境を大きく悪化させ、生じた損失は最終的に管理責任者に降りかかってくるため、たとえ自分で耕作する予定がなくても管理を怠るのはNGです。
農地価格相場が下落し売却が困難になる
農地価格の下落により、所有する農地を放置し続けると今後ますます売却が困難になると考えられます。
1994年(平成6年)から2023年までの準農業地域の農地平均価格の推移を見ると、直近30年間の農地価格相場が下落を続けていることがわかります。
※「中田」「中畑」とは標準的な水田や畑を指す言葉です。
農地価格が下落を続けている要因には、農業の後継者不足や農地購入者の減少が挙げられます。
今後農業人口が増える見込みがあれば、まだ価格が維持される可能性もありますが、これまで解説してきたとおり、あまり期待できそうにありません。
このまま農業の担い手が減り続けると、農地価格がさらに下落してしまうため、農地の売却を検討しているなら今のうちに手を打つべきです。
まとめ
農地法の規制により、農地は宅地のように自由な売却ができません。
農地は他の用途への転用が原則認められず、売却先も農業従事者に限られるため、特に規制の厳しい甲種農地や農振地域内の農地は手放すことが大変困難です。
そもそも農業従事者自体が減少しているため、「農地あげます」と無償譲渡をしようにも引き取り手が現れる保証はありません。
また農地を他者に貸すことも可能ですが、今農地を手放さなければ、負の財産を子や孫の代に先送りすることにもなるため、あまりおすすめできません。
他の用途に転用できず、譲渡の見込みも先細りの農地は、維持するだけで生涯あなたに負担をかけ続けるでしょう。
もし農地を他の用途に転用できず、売却も管理もできないのであれば、専門の買取業者に買い取ってもらうのが最善策です。
農地専門の買取業者なら、仲介業者や太陽光発電業者に断られた農地でもスムーズに買い取ってくれます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、農地転用できない農地などの訳あり不動産に特化した買取業者です。
これまでも多数の訳あり物件を買い取っており、その実績が数々のメディアでも紹介されています。
弊社は買い取った物件を再生・再販する豊富なノウハウを持っているので、他社で買取を断られたような農地転用不可の農地でも、高値で買い取ることが可能です。
「『農地あげます』と無償譲渡に出しても引き取り手がいない」とお困りの方は、ぜひ弊社の無料査定でご相談ください。