不動産の個人間売買とは
不動産の個人間売買とは、不動産取引に際し不動産会社に仲介せず、個人である買主及び売主の双方によって不動産取引を行う形態を指します。
個人間売買はどんな場面で発生するのか
通常、不動産会社が仲介して売買取引を締結させることが一般的ですが、どんな場面で個人間売買が発生するのでしょうか。
個人間売買が発生する具体的なケースは、以下のような場面が想定されます。
○親子や親族間で売買を行うとき
○所有地を隣人に売却するとき
○借地権者を相手に底地を売却するとき
不動産の個人間売買は、親子や兄弟姉妹、親族等の比較的親しい間柄で行われることが一般的です。
また近年では、インターネットを用いて個人が物件情報を公開し買主を探す手法や、物件調査や書面作成といった専門性を有するプロセスを代行サービス企業に委託するといった取引形態もあります。
不動産を個人間売買するメリット
ここからは不動産を個人間売買で行うメリットについて解説します。
仲介手数料が不要
不動産を個人間で売買するメリットの一つに仲介手数料が不要な点が挙げられます。
通常、不動産会社に不動産取引の仲介を依頼した場合、不動産売買を締結させた報酬として仲介手数料を支払うことが一般的です。
不動産会社が受け取る仲介手数料は、宅地建物取引業法によって定められた上限金額があります。
取引物件価格 | 仲介手数料の条件 |
200万円以下 | 物件価格(税抜)×5%+消費税 |
200万円〜400万円以下 | 物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
しかし、個人間売買であれば不動産会社を介さない取引になるため、仲介手数料を支払う必要がなく、その分金銭的なメリットを享受することが可能です。
契約条件や価格を自由に決められる
不動産を個人間取引で行うことで、契約条件や価格を自由に設定することが可能です。
一般的に不動産会社に不動産売買を依頼すると、不動産相場や時価、過去の売買状況等、あらゆる要素を加味して契約条件や価格を決定します。
しかし、不動産会社は一つの物件だけを扱っているわけではないので、当然良い条件でない限り、売買が成立するまでに時間がかかってしまいます。
個人間売買であれば、契約条件や価格を自由に決めることができるだけだなく、制約がない中で取引を行えるため、自由度が高い売買をすることが可能です。
不動産を個人間売買するデメリット
不動産を個人間売買で行うメリットがある一方、あらかじめ把握しておくべきデメリットも存在します。
買い手が付きづらく、時間がかかる
不動産を個人間売買するデメリットに、買い手が付きづらく時間がかかってしまう点が挙げられます。
不動産会社に仲介を依頼すれば、不動産会社のブランドやネットワークを駆使して、不特定多数の買い手を探すことが可能です。
また買い手との交渉についても、不動産取引の知識や経験を有する担当者に任せることができるため、安心して取引を進めることができます。
しかし個人売買の場合、両者とも不動産取引の素人であることも想定されるため、価格交渉や契約書においてトラブルや問題が発生し、かえって時間がかかってしまいます。
そのため、個人間で取引する際は、時間的余裕を持って取り組むようにしましょう。
売買契約書の作成が難しい
不動産取引を個人間で売買するデメリットの一つに、売買契約書の作成が難しい点が挙げられます。
宅地建物取引業法において、不動産を売買契約を締結させるためには、売買契約書を作成し取り交わす必要があります。
しかし、売買契約書には不動産や法律に関する専門用語が多く記載されているため、内容を理解しないまま書類を作成すると、かえって問題やトラブルに発展しかねません。
売買契約書を作成する上では以下の項目を契約書内に記載することが一般的です。
○売買の目的物及び売買代金
○手付金
○売買代金の支払い期間及び方法等
○売買対象の実測、代金精算の単価、
○境界の明示及び確定測量図の作成
○所有権の移転時期及び引渡し時期
○抵当権等の抹消
○物件状況等報告
○付帯設備の引渡し
○瑕疵担保責任
○印紙代の負担
○公租・公課の分担
○手付解除
○引渡前の滅失・毀損
○契約違反による解除・違約金
○融資利用の特約
○各種特約について
○協議事項
売買契約書の作成は、あくまで宅地建物取引業法に対して課せられた義務になるため、個人間売買においてはこのような義務は発生しません。
しかし、数百万から数千万円という金銭の授受や資産の取引が行われるため、あらかじめ売買契約書をしっかり作成しておくことが重要です。
瑕疵担保責任の問題
不動産を個人間で売買する際に問題になりがちなのが瑕疵担保責任の有無です。
瑕疵担保責任とは、本来備わっているべき機能や品質、性能、状態が備わっておらず、これらの欠陥に対して売主が責任を負うことを言います。
具体的な瑕疵とは、建物の雨漏りやシロアリによる躯体の損傷や腐食、土壌汚染、売買契約の際に買主に対し説明がなかった不具合等が該当し、購入した不動産に瑕疵があったと認められた場合、民放の原則では1年以内に申し出れば、売主は瑕疵担保責任を負わなければならないとされています。
(不動産会社が売主の場合、宅地建物取引業法により瑕疵担保責任を2年以上とする)
しかし、個人間売買は宅地建物取引業法とは異なり、売主の負担を軽減するために、瑕疵担保責任を負わない、または引渡し後2〜3ヶ月間は責任を負うといった特約を付帯することも可能です。
したがって、個人間で不動産を取引する場合は、瑕疵担保責任の有無や請求できる期間などは、利用者の協議によって合意形成をするようにしましょう。

不動産の個人間売買でかかる税金
ここからは、不動産の個人間売買でかかる税金についてみていきます。
不動産の個人間売買で発生する税金
印紙税
不動産の売買契約書に貼付する印紙代の税金です。
記載金額 | 不動産の売買契約書 |
100万円以下のもの | 500円 |
500万円以下のもの | 1,000円 |
1,000万円以下のもの | 5,000円 |
5,000万円以下のもの | 10,000円 |
1億円以下のもの | 30,000円 |
5億円以下のもの | 60,000円 |
登録免許税
不動産の売買によって土地や建物の所有者が移転する場合、所有権を変更する登記手続きが必要になります。
この登記をする際にかかる税金が登録免許税です。
不動産譲渡所得税
所有している土地や建物等を売却して利益が出たら、その利益に対して所得税が発生します。
税率はその不動産を所有していた時期によって異なります。
○所有期間5年以下「短期譲渡所得」
譲渡所得×39.63%
○所有期間5年超「長期譲渡所得」
譲渡所得×20.315%
その他
固定資産税の日割り計算についてもあらかじめ検討するとよいでしょう。
不動産の個人間売買で不要な税金
消費税
不動産売買の場合、物件そのものには消費税はかからず、手数料部分に対して消費税が発生します。
したがって、手数料が発生しない個人間売買では消費税を支払うことはありません。
不動産の個人間売買での注意点
不動産を個人間売買で取引する際は、メリット及びデメリットのほかにも注意しておくべき項目があります。
以下では、あらかじめ押さえておきたい注意点について解説します。
適切な価格設定ができているか
個人間売買をスムーズに行うためには、適切な価格設定が重要です。
不動産の価格を大まかに決めてしまったり、相場からかけ離れた価格設定をしてしまうと売買が成立しない恐れがあります。
したがって、不動産の売却金額は相場をもとに適切な価格設定を行うようにしましょう。
協議が難航し、人間関係のトラブルに発生してしまう可能性がある
個人間売買では、協議が難航し、人間関係のトラブルに発展してしまうリスクがあります。
個人間取引は不動産会社を仲介しない分、適正価格が設定できていなかったり、売買契約書の内容に記載漏れがあったりと、言った言わないのトラブルになりがちです。
したがって、金銭の授受があるがゆえに、あらかじめしっかりと契約内容を取り決めるようにしましょう。
個人間売買以外に不動産を売却する方法
不動産を個人間売買で取引するのはハードルが高い。
そんな時は、個人間売買以外にもプロの買取業者に売却をする方法もあります。
プロの買取業者に依頼することで、個人間取引に不可欠な手間や労力をかけることなく売却することができますし、個人間のトラブルや問題に発展するリスクもないため、安心して売買取引を進めることが可能です。
まとめ
不動産を個人間売買することで、仲介手数料が不要になったり、契約条件や価格を自由に決められる一方、買い手がつきにくかったり、契約のプロセスが煩雑で難しいなどのデメリットが存在します。
また適切な価格設定の有無や、協議の度合いによっては親しい間柄の人間関係に亀裂が入ってしまうことも想定できます。
個人間取引にかかる税金も把握しておくことで、税金の支払いについてもしっかり行うことが可能です。