再建築不可物件でも火災保険に加入できる
そもそも再建築不可物件とは、建築基準法で定められた建物を建築するための基準を満たしていない物件を指しており、主に建築基準法第43条の「接道義務」を満たしていないことから建て替えなどの再建築を認めない物件を指します。
接道義務とは、物件が法律上で定められた「道路」に2メートル以上の間口で接していなければならない。という義務です。
接道義務が建築基準法に明記されているのは、その物件で火災や緊急事態が発生した場合に消防車や救急車が進入するための経路確保が目的であり、再建築不可物件はこの要件を満たしていないといえます。
つまり、再建築不可物件は災害などの非常時の経路確保ができないことが建物の再建築を認めない要因となっているのです。
再建築不可物件はこのような背景を持つので、火災保険に加入できないのではないか。と思われる可能性もあります。
また、再建築不可物件の多くは耐震や耐火基準ができるまえに建築された建物も多く、建物の性能や老朽化を考えると火災保険に加入できないと考える方もいるでしょう。
しかし実際には、再建築不可物件であっても問題無く火災保険に加入することができます。
再建築不可物件でも、火災保険に加入して万一に備えておくのが良いでしょう。
再建築不可物件の抱える注意点
火災や地震などのリスクに対して、再建築不可物件が抱える注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。順にご紹介していきます。
火災保険に加入していない場合のリスク
火災保険に加入していない場合のリスクとして「失火責任法」が挙げられます。この法律は民法で定められており、明治32年から現代まで続いている法律です。
失火責任法は「失火ノ責任ニ関スル法律」とも呼ばれており、故意や重大な過失でない限り、他人に損害を与えた場合でも損害賠償責任が発生しないという法律です。
これは木造家屋が密集している日本の都市開発の歴史と住宅事情を鑑みた法律ですが、火災保険に加入していないとこの法律が大きなリスクとなります。
失火責任法は自分が火元の場合は責任を免除されますが、火元が他者であっても責任を追及することができず、燃え移った場合には自分で修理や建て替えをしなければなりません。
このような場合でも火災保険に加入しておけば保険金が下りるので、そのお金を原資に建て替えなどが可能になります。
また火元になってしまった場合に、迷惑を損害を与えてしまった近隣への補償を行う際にも火災保険の「類焼損害補償特約」や「失火見舞費用保険金」などに加入しておけば保険金でこれらの費用を支払うことができます。
火災保険に加入しないと、このような補償を含めて火災が発生した際の費用負担をすべて自己負担で行う必要があります。火災発生時のリスクを少しでも減らすために火災保険に加入しておくのが良いでしょう。
再建築不可物件は火災リスクが高い
再建築不可物件は火災リスクが高い物件といえます。再建築不可物件の多くは昭和25年の建築基準法制定よりも前に建築された建物が多いですが、そのほぼ全てが木造住宅です。
近年の住宅は木造住宅でも耐火構造が施されており、鉄よりも火に強い木造建材も存在しています。しかし昭和25年以前に建築された建物は耐火構造が施されている訳ではないので、非常に火災リスクの高い物件であるといえるでしょう。
再建築不可物件は全焼・全倒壊の場合、保険金が出るが建替えできない
再建築不可物件は火災保険や地震保険に加入していた場合、火災で全焼した場合や地震で倒壊した際に保険金が出ますが、建物自体は建て替えを行うことができません。
再建築不可物件を購入すると建物が全焼や全倒壊した場合にそのまま同じ土地で建物を建てることができなくなるのが大きなリスクとして残ります。
半焼・半壊であれば保険金で修繕可能
建物が火災や震災で住めなくなった場合でも、半焼・半壊であれば保険金で修繕を行うことができます。また全焼・全壊と違い建て替えではなく修繕であれば再建築不可物件でも可能です。
半焼という概念は一般的に用いられる概念であり、消防庁も「建物の20%が焼失した場合を半焼とする」と規定しています。
しかし火災保険における保険会社の支払い基準は全焼のみとされており、半焼という概念はありません。
保険会社が火災保険を支払うには下記いずれかの要件を満たす必要があります。
・全焼した場合
・修理、再建築、再取得のための金額が保険金額を上回った場合
・延面積の80%以上が損失または流失した場合
・損害額が再取得額(保険金額)の80%以上になった場合
ただし全く支払われない訳ではなく、損害の状況によって支払額が変動します。火災の被害に遭った場合には保険会社に現状を確認してもらうようにしましょう。
また、半壊の判断は半焼よりも判断が複雑になります。
地震保険の半壊は、建物の主要構造物の20%-50%が損壊するか、延床面積の20%-70%が損壊した場合を半損といいます。
地震が発生して家屋が損壊したら保険会社に相談しましょう。
必要な補償内容について
再建築不可物件を火災保険に加入させる場合、どのような補償を付けると良いのかをご紹介していきます。
火災保険でカバーできる災害・できない災害
「火災保険」といっても、オプションをつけると台風や洪水、土砂崩れなどの自然災害だけでなく車の衝突や空き巣被害、デモ発生時の家屋の損害も補償対象となります。
しかし、これらのオプションが付いているかどうかは保険会社の商品によって異なるので、加入時にしっかりと確認しておきましょう。
また、地震は火災保険では補償されず、多くの保険会社では地震保険に加入する場合には火災保険とセットで加入するのが必須とされているので、地震保険に加入することを検討する必要もあります。
次に、火災保険に加入する場合のおすすめのオプションをご紹介していきます。
火災・落雷
火災保険のメインの補償が火災と落雷です。火災によって建物や家財道具が焼失した場合に保険金が支払われます。オプションで「類焼損害補償特約」や「失火見舞費用保険金」を契約しておくと、自宅のみならず火災が周囲の建物に類焼した場合の建物の補償や見舞金の支払いを保険で賄うことができます。
雹・霰・雪害
雹(ひょう)や霰(あられ)、雪などによって建物が破損した場合にも保険金を受け取ることができます。特に雪の補償は降雪地域の再建築不可物件を購入する場合に必須の補償といえるでしょう。
爆発・破裂
ガス爆発やボイラーの破損などで建物が損壊した場合にも保険金を受け取ることができます。カセットコンロやスプレー缶の破裂による損害にも対応している場合があります。
風災・衝突
近年の台風は大型化しており、年々必要性の高まっている補償です。台風や爆弾低気圧などの強風による家屋の破損や飛来物による破損は「風災」で対応します。
またペダルの踏み間違いなどで車が突っ込んできた場合の破損は「衝突」のオプションで補償されます。
水災
洪水や高潮、土砂崩れが発生した場合に保険金が支払われます。家屋は水に浸かると消毒や家財道具の処分など、想像以上に大きな損害が発生します。最近は豪雨で洪水が発生しているケースが増えています。河川や海岸沿い、急傾斜地に物件がある場合にはこの保険には必ず加入するようにしましょう。
破損や汚損
自宅内で荷物などの運搬によって壁や床など傷をつけた場合や、調味料や塗料などで汚損した場合にも補償を受け取ることができます。
盗難や空き巣
自宅が盗難や空き巣に遭った場合にも補償を受け取ることができます。この際、盗まれた物の補償だけでなく、侵入時の窓ガラスやドアの破損にも対応しています。
地震
地震による破損全般を補償します。地震が原因の火災や津波の補償は火災保険では行われないので、全国各地で地震が発生していることを考えると耐震性能の低い再建築不可物件は地震保険にも加入することを強くお勧めします。
地震保険に加入しておくと、地震による火災や津波からの補償や、家財の補償も受け取ることができます。
前述した通り、地震保険と火災保険では補償の範囲や損害の算定方法が違います。地震保険に加入する場合にはあらかじめ、補償範囲の違いを把握しておきましょう。
火災保険には必ず加入しましょう
再建築不可物件の多くは昭和25年以前に建築されていることから、リフォームされていない場合には建物が老朽化しています。耐火性能や耐震性能は最新技術の建物に比べると非常に弱く、自然災害に対するリスクが高い物件なので、保険に加入して災害発生時の損害を減らす対策が必要です。
再建築不可物件が災害によって倒壊したとしても、同じ場所に再度建物を建築することはできません。そのような場合でも倒壊した建物の処理に費用が掛かります。こういった処理費用を賄うためにも必ず火災保険に加入するようにしましょう。