再建築不可物件が倒壊する前に知っておくべきリスク
建て替えができない
再建築不可物件は、ご存知の方も多いと思いますが、建て替えや増築を行うことはできません。
再建築不可については、自然災害による倒壊の場合でも建て替えを行うことはできませんので、倒壊した場合に考えられる選択肢は、売却・土地活用・継続保有の3つの選択になりますが、いずれも難しいのが実態です。
土地を売りに出したところで、建物を新たに建てることはできませんので、居住用途・事業用途などの実需向けに販売することは難しく、買い手がつかない可能性が高いと考えられます。仮に買い手がついたとしても価格は低く抑えられてしまうでしょう。
賃貸物件を建てるなどの活用も、建物を建てることができませんので、駐車場や資材置き場などの限られた選択肢となりますが、そのいずれも接道義務を満たしていないことがネックとなりますので、やはり用途を変更しての活用も難しいと言わざるをえません。
売却・土地活用のいずれにおいても、土地に建物があることが前提条件となりますので、再建築不可は大きなハンデを抱えていることになるのです。
更地になると固定資産税が高い
土地の売却・活用ともに難しいとなると、更地にして管理せざるをえないという結論にならざるをえませんが、更地にしてしまうと、固定資産税の負担が大きくなります。
固定資産税の特例では、住宅やアパートなどの「人が居住するための家屋の敷地」として利用されている土地(住宅用地)については、固定資産税の特例が適用され、税率が軽減されます。
敷地200㎡以下の小規模住宅用地であれば、固定資産税率は1/6に軽減されます。ちなみに都市計画税も同様に1/3に軽減されます。
つまり、建物が倒壊した再建築不可の土地を更地にして所有していると、翌年から固定資産税は6倍になるということです。更地として管理することは、お子さんやお孫さんにとって負債となってしまう可能性があります。
更地になった場合、かなり売りにくくなってしまう
ここまで述べてきた内容を総括すると、再建築不可物件で建物が倒壊してしまうと、打てる手はかなり限られてしまうということがお分かりいただけたかと思います。
これは言い換えると、建物がある状態で手を打っておくことが、リスクを最小化するのにあたって最重要であるということになります。
自然災害の激甚化による倒壊リスクの高まり
再建築不可物件は度重なる法改正によって生み出されたものというのは冒頭でも述べた通りです。
そういった背景もあって、再建築不可物件の多くは、現行の建築基準法下で建てられた建物よりも強度が保証されていないことに加えて、築年数の経過による老朽化も進んでいますので、自然災害による倒壊の可能性が比較的高いと考えられます。
– 近年激甚化する自然災害への備え
近年、自然災害による被害の激甚化を体感されている方も多いと思います。総務省消防庁の災害情報によれば、歴代の台風による住家被害の上位は以下のようになりました。
1.1959年台風15号:833,965
2.1961年台風18号:499,444
3.1951年台風15号:221,118
4.1954年台風15号:207,542
5.1991年台風19号:170,447
6.2018年台風21号:97,910
7.1953年台風13号:86,398
8.1955年台風22号:85,554
9.2019年台風15号:76,874
10.1959年台風7号:76,199
住家被害とは、全壊・半壊・一部損壊の住戸数の合算となります。被害が大きかった台風の大半は1950年〜60年代に集中しています。これは、治山治水や河岸防備などの災害対策が十分に進んでいなかったこと、現代に比べると住宅性能が劣っていたことなどが要因として挙げられます。
そういった背景を踏まえると、2018年の台風21号、2019年の台風15号が上位に入っているということは特筆すべき事例と言えるでしょう。ゲリラ豪雨や爆弾低気圧などがメディアで取り沙汰されるようになって久しいですが、自然災害による建物の倒壊リスクの高まりに留意しておく必要性があると言えそうです。
また、自然災害ということでは、日本が地震大国であることも老朽化した住宅の倒壊リスクの一つとして考えておく必要があります。
文部科学省地震調査研究推進本部の調査(2019年)によれば、マグニチュード8〜9クラスとされる南海トラフ地震は10年以内の発生確率が30%程度、30年以内では70〜80%程度となっており、かなりの確率で大規模な地震が発生することが予想されています。
自然災害による倒壊、そうでなくても老朽化で倒壊の恐れのある空き家対策を早期に講じる必要があります。
再建築不可物件の建物が倒壊しないようにするためのポイント
ここまで、再建築不可物件が倒壊した場合のリスク、および建物自体の倒壊リスクが高まっていることについて論じてきました。再建築不可物件は、通常の建物よりも倒壊したときの影響が大きく、倒壊する確率も比較的高いということがご理解いただけたかと思います。
ここからは、これらのリスクを回避するためのポイントについて考えていきたいと思います。
倒壊を防ぐためには?
・耐震/耐火基準を満たすようにリフォームする
倒壊を防ぐためには、建物の耐震強度を補強工事によって高めていくことが重要です。主に柱や梁などの構造部を補強し、設備を入れ直すなどのリフォーム工事で対応が可能です。これにより、現行法に即した耐震基準を備えることもできます。近年では、リフォームによって最高耐震基準である「耐震等級3」にまで引き上げることも可能となっています。
また、もう一点の懸念事項である耐火についても耐火性能を高めておく必要があります。特に密集地に多く立地する再建築不可物件では、隣家との距離がほとんどないというケースも多いかと思います。所有物件で火災を発生させないことはもとより、隣家の火事が延焼することで全焼することも防止策を講じておきたいところです。
耐火性能の向上においても、耐火性能の高い外壁材への張り替え、屋根の補修、下地材の交換、設備やサッシの入れ替えなどのリフォーム工事によって、耐火性能を現代の水準にまで引き上げることは可能です。
倒壊リスクの軽減のためには?
・隣地を買い取って再建築可能にする
再建築不可であることが一番のリスクであることは冒頭で述べた通りですので、隣地を買い取るなどの対応で再建築可にすることができれば、リスクを軽減することができます。
再建築不可物件は、建築基準法第42条で規定している道路(道路幅4m以上)に2m以上の間口で接していない敷地のことを指します。現状の土地が接道していなくても、隣地が接道要件を満たしていれば、隣地を賃借・買い取ることで再建築可とすることは可能です。
また、道路幅4m未満で再建築不可となっている場合、道路の中心線から2メートルの位置まで敷地(土地)を後退させることで接道要件を満たし、再建築可とすることも可能です。これをセットバックと言います。
再建築不可を可にする方法はいくつかありますが、いずれも法律の要件によってできるできないが決まってきますので、専門家への相談が必須と言えるでしょう。

・火災保険に入っておく
所有されている物件の火災保険の加入状況を念の為ご確認ください。期限が切れている、未加入などの場合は保険に加入しておきましょう。保険金が入っても建て替え不可だから意味がないとお考えになるかもしれませんが、倒壊後の処理費用や更地にするための費用は必要になりますので、万が一に備えておくことは重要です。
再建築不可だから火災保険に加入できないのでは?と懸念される向きもあるかもしれませんが、そのようなことはありません。また、加入する保険会社やプランによって保証内容は異なりますので、契約内容を確認した上で、必要に応じた保証を受けられるようにしましょう。
加えて、火災保険は、火災だけでなく自然災害による被害についても保証されます。上述した台風による風災や水災による洪水・土砂災害なども適用されるケースがありますので、保険の適用範囲を再度確認しておくことも重要です。
火災保険については以下にまとめています。

・買取業者に売却しリスクを排除する
ここまで述べてきたことを踏まえると、再建築不可物件の倒壊の可能性およびそのリスクは思いのほか大きく、倒壊の回避および倒壊してしまった場合に必要な時間とコストが大きいということがご理解いただけたかと思います。
手間暇をかけずにリスクを回避する方法は無いのかとお考えかもしれませんが、その場合は再建築不可物件を専門に買取を行っている不動産業者に買取を依頼することが近道となります。
なぜ再建築不可物件を専門に買取を行っている業者が好ましいのでしょうか?
それは、一般的な不動産売買仲介業者に依頼しても、再建築不可という特殊性から買取に応じてもらえなかったり、相場価格よりも安い査定額を提示されることが多いからです。
また、仲介業者を通じて売主と購入希望者をマッチングしてもらうと時間がかかることも考慮しておく必要があります。再建築不可物件なので、買い手がなかなかつかない可能性が高いと言えるでしょう。
その点、専門業者による買取であれば、査定額で両者の合意が取れれば、数週間程度で買い取りが完了します。スピーディーにプロセスを完了させることができます。
その他、再建築不可物件のトラブルについては以下も参考にして下さい。

株式会社AlbaLinkにおける再建築不可物件の買取事例
当社はさまざまな再建築不可物件の買取実績があり、今回はその中から茨城県水戸市の買取事例をご紹介いたします。
当該物件は、オーナー様が相続で取得された築年数40年を超える築古物件で、倒壊リスクを懸念されて早期の売却を希望されていました。
実際に物件を訪れてみると、過去に当社が取り扱った物件の中でも特に老朽化による室内のダメージ(雨漏り)が激しく、残置物も多いことが特徴の物件でした。
買取後の再生プランは、まずはリフォームを行い、建物を補強することで居住用賃貸物件として投資家に売却する方向でプランニングをまとめ、プランニングに基づいて、買取額の査定結果をオーナー様に提示しました。
オーナー様からは、最終的に当社をお選びいただいた理由として、「複数の不動産会社に査定依頼していたが、貴社の査定額の提示額が最も早かった」ことを挙げてくださいました。
このように、当社では物件再生・活用のさまざまなノウハウ・実績を持っているため、オーナー様が売却をあきらめる・ためらってしまうような物件であっても、最適なプランニングに基づいた買取金額を素早くご提示させていただくことが可能です。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

まとめ
ここまで、再建築不可物件が倒壊した場合のリスクについて、事前の対応策も含めて検証しましたが最後に、倒壊してしまった場合の近隣に被害を与えてしまうリスクについても触れておきたいと思います。
建物が倒壊して、近隣に被害を与えてしまった場合、近隣とのそれまでの関係性を維持することが難しくなります。実害が出れば損害賠償請求なども起こり、訴訟に発展する可能性もあるでしょう。
倒壊した再建築不可の土地の売却は、上述したように困難なケースが多く、隣地の所有者か買取業者への売却することが多くなりますが、関係性が悪化すると隣地への売却交渉が困難になりますし、それによって買取価格が下落する可能性もありますので、倒壊による近隣との関係性の毀損もリスクの一つとして考えておく必要があります。
このように、再建築不可物件の倒壊リスクに関する回避方法を把握しておくことで、所有を続けるのか、できるだけ速やかに売却するのか、オーナー様ご自身の状況に合った選択肢を見極めることができます。そして、選択を実行に移す際は、再建築不可物件の特殊性も踏まえて、そのノウハウや実績に定評のある不動産会社への相談やアドバイスを受けながら進めていくことが望ましいです。