「農地を宅地にして売る」とは農地転用して売却すること
「農地を宅地にして売る」とは、農地を宅地に転用する「農地転用」と売却行為を同時に行うことです。
最初に、農地転用と売却のいずれも「農地法」で厳しく規制されていることを押さえておかなければなりません。
農地法によって農地売却と農地転用がどのように規制されているのか、農地法の基本を解説します。
農地の売却には許可申請が必要
農地は国にとって食料自給率を決める重要な資源であるため、農地の売買には厳しい規制が設けられています。
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
農地は宅地を売買するように、自分の都合で勝手に売買することが原則認められておらず、農地の売却には農業委員会※への許可申請が必要です。
※農業委員会とは
農地法や農業経営基盤強化促進法などの法律に基づいて各市町村に設置され、農地に関する事務を執行する行政委員会。
農業委員と農地利用最適化推進委員で構成されている。
さらに農地は農地のまま譲渡することが原則のため、農地の売却先も原則農業従事者に制限されています。
では農家なら誰でも無条件で譲渡できるかというと、そうとは限りません。
譲渡先が兼業農家などの場合は農業の持続可能性が懸念され、許可が下りない可能性もあるからです。
さらに、もし農地を宅地などへ用途を変更したい場合は、「農地」を別の土地へと用途変更する手続きをしなければなりません。
農地を宅地に転用するにも許可が必要
農地を宅地など、農地以外の用途に「農地転用※」する場合も、許可が必要です。
※農地転用とは
農地を農業以外の目的で使用すること。農業委員会や都道府県知事の許可が必要。
農地売買の許可権者は原則農業委員会でしたが、農地転用の許可審査は一段と厳しく、許可権者が都道府県知事となります。
ここでいう農業以外の用途とは、具体的には以下のようなものです。
- 宅地造成
- 太陽光パネルの設置
- 道路
- 駐車場(自家用も含め)
- 資材置き場 など
農地は一度転用されてしまうと、農地へ戻すことが大変困難です。
先述したように、国民の食糧生産を確保するために、計画的・合理的に土地を利用することで優良な農地を保全する必要があるため、農地転用に許可制度を設けているのです。
(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。
例外として、市街化区域においては農業委員会への届出のみで農地を宅地に転用できますが、それ以外の地域では、農地転用を申請しても許可が下りないケースも少なくありません。
所有する農地が転用可能かどうかは、各自治体の農業委員会に個別に確認が必要です。
農地かどうかは「現況」で判断される
土地の権利移転や転用の際に、登記簿上の「地目」によって制限を受けると思われがちですが、実は規制の対象は地目でなく「現況」によって決まる点に注意が必要です。
農業委員会が「農地」かどうかを判断する基準は、あくまで「どう使われているか」「耕作可能か」であり、地目は関係ありません。
たとえ地目が「原野」であっても、現状が「耕作目的の土地」であれば「農地」として扱われ、売却や転用には許可申請が必要です。
また、しばらく耕作されていない休耕地であっても、農地と判断される可能性があり、処分に制限が加わるケースがあります。
登記簿では現況がわからないため、もし土地を売却・転用する際に、宅地か原野か農地か判断に迷う場合は、市町村の農業委員会で確認するほうが安全です。
なお、農地法の許可が必要な農地には、牧草地、果樹園なども含まれ、「地目」とは必ずしも一致しない点にも注意しましょう。
宅地にして売れる農地の2つの条件
農地転用ができるのは、基本的に「転用しても差支えのない土地」のみと定められており、具体的には以下の両方の条件をクリアする必要があります。
参照元:農林水産省「農地転用許可制度の概要ー農地法(昭和27年制定)ー」
「立地基準」で転用可能な農地
農地の「立地基準」とは、農地の営農条件や周辺の市街地化の状況などに応じて農地を区分し、その区分に従って農地転用の可否を判断する基準のことです。
農地区分は以下のとおりで、区分ごとに転用の可否が分かれています。
農地区分 | 営農条件・市街化の状況 | 転用許可の可否 |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 農業振興地域整備計画で「農用地区域」に指定された区域にある農地 | 原則不許可 |
甲種農地 | 市街化調整区域内にあり、営農条件の良好な農地 | 原則不許可 |
第1種農地 | 土地改良事業の対象となった生産性の高い農地(10ha以上など) | 原則不許可 (公共事業のみ転用可) |
第2種農地 | 駅から500m以内にあり、今後市街化が見込まれる農地 | 他の土地が転用できない場合は許可 |
第3種農地 | 駅から300m以内にあり、すでに市街化が進められているエリアの農地 | 原則許可 |
参照元:農林水産省「振興地域制度、農地転用許可制度等について」
立地基準で転用が許可される農地の区分は、原則として以下の2種類のみです。
- 第3種農地:原則許可
- 第2種農地:近くに転用可能な土地がない場合のみ許可
「第三種農地」とは、市街地の区域内または市街地化の傾向が著しい、以下のような区域内にある農地のことです。
- 上水道管・下水道管・ガス管のうち2つ以上が埋設された道路の沿道の区域、かつ500m以内に2つ以上の教育施設、医療施設等の公共公益施設がある
- 駅、市町村役場等の公共施設から300m以内の地域内
- 都市計画法上の用途地域が定められている区域内にある
- 土地区画整理事業の施行区域にある
- 街区の面積に占める宅地化率40%以上の区画内にある
- 住宅や事業施設、公共施設等が連なる区域内にある
参照元:熊本市「農地区分ってなに? 農地転用について、説明します。」
第三種農地の地域は、都市計画で市街化を推進している地域でもあるため、農地転用に許可は不要で、農業委員会への「届出」のみで済みます。
もう1つの「第二種農地」とは、農用地区域外の農地、かつ農地・農業の公共投資の対象となっていない、小規模で生産力の低い農地のことです。
今後市街地化が見込まれる区域にあたり、具体的には以下のような農地を指します。
- 街路が普遍的に配置されている地域内にある
- 市街化の傾向が著しい区域に近接する区域にあり、農地規模が10ha未満である
- 駅、市町村役場等の公共施設から近距離(500m以内)にある地域内にある
参照元:熊本市「農地区分ってなに? 農地転用について、説明します。」
第二種農地を転用する場合は都道府県知事の許可が必要で、条件次第で許可が下りる可能性があります。
なお、所有する農地の農地区分を調べるには、農地所在地の農業委員会の事務局に問い合わせるのが確実です。
または、インターネットの「eMAFF農地ナビ」でもおおまかな農地区分や都市計画法区分を調べられますが、リアルタイムで反映されていない可能性もあるので注意しましょう。
「農用地区域内農地」の場合はほとんど転用できない
農地の転用規制には、農業転用許可制度の「農地区分」とは別に「農業振興地域制度」があり、農業振興地域の中の「農用地区域(青地)※」に指定されている場合は、原則転用が禁止されています。
※農用地区域(青地)とは
農業振興地域内の集団的農地や土地改良事業の施行区域内の農地など、生産性が高く、今後10年以上にわたり農地として利用すべきと指定された区域のこと。
農用地区域内の農地である場合、農用地区域からの除外手続き(農振除外)を行わないと宅地へ転用できず、農振除外は農振法に定められた以下の要件をすべて満たさなければ、容認されません。
~農地転用のための農用地区域からの除外~
○ 道路等や地域の農業振興に関する市町村の計画に基づく施設等の公益性が特に高いと認められる事業の用に供する土地
○ 上記以外の場合は、次の要件を満たす場合に限り除外が可能。
ア 農用地以外の土地とすることが必要かつ適当で、農用地区域
以外に代替すべき土地がないことイ 農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれが
ないことウ 効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利
用集積に支障を及ぼすおそれがないことエ 土地改良施設の機能に支障を及ぼすおそれがないこと
オ 農業生産基盤整備事業完了後8年を経過していること
上記をすべて満たし、農振除外の手続きを行う場合は、市町村の農林課や農政課へ申請します(代理は不可)。
申請から結果通知までには6カ月~1年程度かかる可能性があり、申請の受付は半年に1度程度しか行っていないので、手続きは余裕をもって行いましょう。
「一般基準」で目的や信用等の許可基準を満たした農地
農地転用が認められるには、先述の立地要件に加え、以下の「一般基準」の要件も満たさなければなりません。
- 転用の目的・利用計画が明確であること
- 資金力や信用があること
- 関係権利者(隣地所有者など)からの同意があること
- 転用により周辺農地へ支障を生じさせないこと
- (一時転用の場合)確実に農地へ復元できること
具体的な転用目的がなく、投機や資産保有のみが目的の場合は、農地取得が認められません。
例えば「とりあえず宅地に転用して後々高く売却したい」のような曖昧な目的では、農地転用を申請できないということです。
申請の時点で「何を建てて、何の目的でどういう風に使うのか」が明確であり、そのための資金も十分であると証明されなければ、許可が下りないと考えましょう。
農地を宅地に転用して売る6つのステップ
農地を宅地にして売却する場合、農地の「売買」「転用」「地目変更」「所有権移転」の4つの手続きを行うため、プロセスが大変複雑になります。
手順を間違えないよう、以下の項でしっかり押さえておきましょう。
不動産会社に売却を依頼する
まず、農地の売却に強い不動産会社を選び、農地売却の相談をします。
先述のように、農地の売却や転用には複雑な手続きが必要です。
農地売買の実績が豊富な不動産会社であれば、農地転用の手続きや市場動向などを熟知しているので、手続きをスムーズに進めることが可能です。
さらに、農地の潜在的な買い手の発掘や、適切な価格設定などのサポートも得られるでしょう。
ただし、農地転用の許可が下りるかどうかは、依頼する不動産会社の実力にかかっているので、農地の売買実績が豊富な不動産業者を選ぶことが肝心です。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)も、農地や山林などの買取・再販実績が豊富な不動産買取業者です。
農地転用の可否調査や手続きなどのサポートも実施しているので、農地転用・売却を検討されている方はお気軽にご相談ください。
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許可を条件とした売買契約を締結する
買い手が見つかったら、農地転用の許可を停止条件とする売買契約、つまり「転用の許可が下りたときに初めて効力を発する売買契約(停止条件特約付契約)」を締結します。
もし農業委員会の農地転用許可申請が下りなかった場合に、トラブルにならないようにするためです。
【Q. なぜ転用より先に売買契約をするのか?】
A. 前提として、農地転用をする際、農地は耕作以外の目的で使用した後に売却することは認められていません。
つまり売主側が「宅地化(整地・造成)してから売却する」ことは不可能で、転用許可が下りないのです。
農業委員会から見て「買主が誰なのかわからず、売買契約が成立するのかわからない」場合、申請が通りにくいでしょう。
そのため、農地転用の許可申請を出す前に「停止条件特約付き」で売買契約を結んでおく必要があるのです。
農業委員会で都道府県知事等の「転用許可申請」を行う
売買契約を結んだら、農業委員会に出向いて都道府県知事宛ての「転用許可申請」を行います。
※転用許可申請は、次の「仮登記」の後でも順番的には問題ありません。
転用許可申請は売主と買主の連名で行い、郵送やオンライン申請はないため、窓口へ出向くことが必要です。
なお、後述する「分筆」が必要な場合(「宅地造成できる面積に制限がある」を参照)は、分筆が完了してからでないと申請できないので注意しましょう。
転用許可が下りるまでには6週間前後かかるため、余裕をもって申請する必要があります。
許可前に所有者移転の「仮登記」を行う
続いて、宅地転用の許可を停止条件とする「所有権移転の仮登録」を行います。
仮登記を行う理由は、農地転用の許可が下りないと売買契約の効力が生じない状況にあっても、買主が安心して売買契約できるようにするためです。
なお仮登記の時点では、まだ買主の土地に対する所有権は発生していません。
登記の順位を守るための効力しかないので、農地転用の許可が下りてから改めて本登記が必要です。
許可後に「地目変更登記」を行う
農地の転用許可が下りたら「地目変更登記」を行う必要があります。
農地転用許可が下りた時点で、自動的に地目が切り替わるわけではないので注意しましょう。
なお、地目変更登記の申請期限は、地目の変更が発生してから1カ月以内です。
その際、現況が「宅地」であること、つまり近い将来建物の敷地に供されることが確実に見込まれる状態(以下)であることが要件です。
- 整地され道路、側溝、擁壁等の工事が完了している
- 建物の基礎工事が完了している
上記が終われば地目移転登記へと駒を進められます。
ただ、実際には建物の物理的状況(所在、床面積、階数、構造など)を登記する「建物の新築時」に、地目変更鵜も同時に登記申請するケースが多いようです。
とはいえ転用許可から1カ月以内の期限があることと、登記地目が農地のままだと、買主への所有権移転登記もできないので、速やかな地目変更登記が必要です。
所有者移転の「本登記」と代金精算を行う
農地から宅地への「転用許可書」などを法務局に提出し、所有権移転の「本登記」を行います。
そして買主が代金を精算すれば、元農地の所有権は完全に買主へと移行し、一連の農地の転用・売却は完了です。
なお、仮に転用許可が下りなかった場合は、売買契約の特約によって契約自体が無効となるので、売買は白紙に戻ります。
農地を宅地に転用して売る際の税金と費用
農地を宅地に転用して売却する手続きを確認したところで、転用・売却にかかる税金とその他の費用をチェックしましょう。
売却にかかる税金
農地を売却した際にかかる税金は以下のとおりです。
税金 | 概要 |
---|---|
譲渡所得税 +復興特別所得税 |
売却利益に対して課税される ※所有5年以上と5年未満で税率が異なる |
住民税 | 売却利益に対して課税される ※所有5年以上と5年未満で税率が異なる |
印紙税 | 売買契約書の作成時などにかかる |
登録免許税 | 所有権移転登記時にかかる ※固定資産評価額の1.5% |
譲渡所得税と住民税は、売却価格から農地を取得したときの購入価格と、仲介手数料などの売却時の経費を差し引いた額にかかります。
農地の購入価格が不明の場合は、諸経費を売却価格の5%として計算します。
なお、上記のうち譲渡所得税・住民税・復興特別所得税は、売却翌年2月~3月の確定申告で申告・納税が必要です。
確定申告書は、以下のどの方法で作成しても構いません。
- 確定申告書類に手書きする
- 税務署窓口で作成する
- e-tax上で入力する
- 税務処理ソフトを利用して自動入力する
- 税理士に代行してもらう
もし課税対象額や評価額、税額の計算に自信がない場合は、税理士や行政書士に相談することをおすすめします。
ちなみに、農地を国や農業関連の公共団体が買い取った場合に、税金が控除される場合があります。
例えば、国に指定された業者が土地収用法に基づいて、公共事業のために農地を買い取った場合は、5,000万円以下の税金控除を受けられます。
参照元:国税庁「No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例」
また、各自治体の「農地中間管理機構」が農地を買い取った場合も、1,500万円・2,000万円などの控除を受けられるケースがあります。
というのも、農地中間管理機構は国の農地集約化を担っており、農地規模を拡大したい農家に農地を売却するために、農地の買取を行っているからです。
個人や民間へ売却する場合は特に税制優遇はないので、その分なるべく高値で売却できる先を探しましょう。
その他の費用
農地の売却時には、税金以外にも各方面の専門家へ支払う以下の費用が生じます。
- 仲介手数料:売却価格に応じた金額
- 行政書士費用:7万〜10万円程度
- 測量費:約35万円〜80万円程度
仲介手数料とは、不動産業者が売主・買主を仲介した際の手数料として支払う報酬のことで、売却金額に応じて上限が以下のように定められています。
売却金額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売却金額の5%以内 |
200万円〜400万円以下 | 売却金額の4%+2万円以内 |
400万円以上 | 売却金額の3%+6万円以内 |
もし農地を500万円で売却した場合、以下が不動産業者に支払う仲介手数料となります。
その他、行政書士費用は農地転用にかかわる手続きを依頼する場合にかかります。
農地転用手続きは自分で行うことも可能ですが、先述のとおり手続きが大変複雑なため、行政書士に依頼することが一般的です。
最後の測量費は、隣地との境界確定や、宅地造成にともなう分筆時にかかります。
ちなみに、詳細は後述しますが、農地専門の買取業者に農地を売却する場合は、行政書士費用や測量費用は不要です。
なお以下の記事では、土地売却時に相談すべき専門家をケース別に解説しているので、参考にしてください。
土地を宅地に転用して売るときの8つの注意点
ここまで農地の転用・売却の手順や費用について見てきましたが、一筋縄ではいかないことがお分かりいただけたかと思います。
ここでは農地転用と売却における注意点を解説します。
農地転用には時間がかかる
農地の転用・売却における最大の注意点の1つは、農地転用には時間がかかることです。
市街化区域内であれば認可まで1週間~数カ月、市街化調整区域や農地区分によっては数カ月~1年単位の時間を見ておく必要があります。
手続きにかかる期間を見越しておかないと、申請先からの返信が遅い場合に、焦って手続きの手順を間違えたり、買主が工事を先走ったりしてしまうかもしれません。
手続きを前倒ししようと手順を誤ると、次項で解説する処罰の対象となる恐れがあるので注意しましょう。
農地転用の計画は、申請にかかる時間を考慮して立てることが大切です。
なお、以下の記事では農地から宅地にするまでにかかる期間について解説しているので、参考にしてください。
許可なく転用すると罰則の対象となる
農地転用の許可なく勝手に転用すると、原状回復や最悪3年以下の懲役、または300万円以下の罰金などの対象となる場合があるので注意が必要です。
罰則に処される違反の内容は以下のとおりです。
- 農地を転用
- 転用目的で権利の設定・移転を行う
- 転用許可の条件に違反
- 違反転用者から工事を請け負う
- 許可自体を虚偽等の不正な方法で受けている
違法転用は故意で行った場合に限らず、先述した売却・転用・地目変更登記・所有権移転登記の手順を誤った場合にも起こり得ます。
例えば、農地転用の許可を待てずに造成工事を始めてしまったような場合、原状回復命令を受ける恐れもあるので、注意が必要です。
違反者には以下のステップで指導・勧告が行われます。
- 通報や農地パトロールで違反を発見
- 調査を受け都道府県知事へ報告が行く
- 是正指導※原状回復
- 是正に従わない場合、工事等の停止勧告、または刑事告発の検討
- 勧告に従わない場合、許可の取り消し・原状回復命令・許可条件の変更など
- 場合によっては行政代執行
違反が悪質だった場合、刑事告発され、裁判にかけられるケースもあるので注意しましょう。
宅地に転用する前に売却はできない
前の売却手順を読まれた方はお分かりのように、農地を宅地に転用する前に農地の売却はできません。
農地転用の許可がなく、地目が「田」「畑」などの農地のままでは、一般の非農家の方へ所有権移転登記ができないためです。
そのため、売却前に農地転用の許可申請を行い、許可を得てから地目を変更しておかなければなりません。
これまでの話を遡ってまとめると、以下のようになります。
- 所有権移転登記の前に「地目変更登記」が必要(かつ許可認定から1カ月以内)
- 地目変更登記の前に「現況を宅地に」することが必要
- 現況を宅地にする前に「農地転用の許可」が必要
- 農地転用の許可申請をする前に「売買契約(条件付き)」が必要
大変ややこしいので、なるべく専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
一定規模以上の土地の造成には開発許可が必要
一定規模以上の土地で開発行為※を行う場合には、農地転用の申請の他に開発許可の申請も必要となるケースがあります。
※開発行為とは
建物の建築を行う場合や、特定工作物の建設を行う場合に「土地の区画形質(地形)の変更」をすること。
都市計画法に基づき、無秩序な開発を規制するために「開発許可」の制度が設けられている。
参照元:e-Gov法令検索「都市計画法第4条12項、第29条」
開発行為を行う場合、工事の着手前に都道府県知事の許可を受ける必要があります。
開発許可が必要な開発の規模は以下のとおりです。
都市計画法の区域 | 許可が必要な開発規模 |
---|---|
市街化区域 | 1,000㎡以上または500㎡以上 |
市街化調整区域 | 面積にかかわらずすべて |
非線引き都市計画区域、 準都市計画区域 |
3,000㎡以上 |
都市計画区域、 準都市計画区域外 |
10,000㎡以上 |
市街化調整区域内では、開発の規模を問わず許可を受けなければなりません。
さらに、4ha(40,000㎡、東京ドームよりやや小さい面積)を超える農地を転用する場合、農業委員会や都道府県知事だけでなく、許可認定に農林水産大臣も関わります。
特に市街化調整区域内の優良農地や、農用地区域内農地(青地)の大規模開発は、協議にかなり時間がかかるでしょう。
ちなみに、工業団地などを開発する場合、国との協議が2~3年かかるケースもあるようです。
宅地造成できる面積に制限がある
農地が必要以上に転用されることを防ぐため、大規模開発でなくても、農地転用する面積は「転用事業に必要な最低限」の面積に制限されています。
具体的には、建てる住宅に対して面積が以下のように制限されているのです。
- 建ぺい率:22%以上であること
- 最大面積:500㎡まで(一般住宅の場合)
実際に宅地造成できる面積を計算してみましょう。
【建築面積90㎡の住宅を建てる場合に転用可能な面積】
90㎡÷22%=約409.09㎡
この場合、宅地転用する面積を約409㎡以内に抑える必要があります。
もし処分したい農地が上記よりも広い場合、元の農地を宅地造成する分だけ分筆してから、農地転用申請を行う必要があるということです。
したがって、分筆した残りの土地については別途処分を考えなければなりません。
なお、分筆にかかる費用は、土地の広さによって変わりますが、測量と境界確定で35万~80万円ほど必要です。
他の手続きとの兼ね合いもあるので、分筆登記がいつ完了するのか、土地家屋調査士に十分確認しておきましょう。
「土地改良区域」の場合は除外申請と除外金が必要
売却したい農地が「土地改良区域」にある場合は、除外申請と除外金の支払いが必要です。
※土地改良区とは
土地改良法に基づいて設立された法人団体で、農地の有効活用や農地の整備、農業用水路の新設工事などを行う団体のこと。
土地改良区域に農地がある場合、農地の所有者は必然的に「組合員」となっており、土地改良区が整備した水路や設備の維持管理費用(賦課金)を納めなければなりません。
土地改良区内の農地を転用する場合は「土地改良区の除外」を受ける必要があります。
そのためには、農地転用をしても支障がないという趣旨の「意見書」をもらい、土地改良区の同意を得なければなりません。
また、土地改良区から外れると他の組合員の負担が増えるため、転用面積に応じた金額の「除外金」の支払いも必要です。
なお、他の組合員との兼ね合いにより、除外申請が受理されるとは限らない点にも注意が必要です。
土地改良区の除外には1週間~2週間ほどかかるため、農地転用申請の締切に遅れないようにしましょう。
地目変更が済むまで買主が住宅ローンを借りられない
土地が農地のままでは、買主が住宅ローンを借りることができません。
住宅ローンはあくまで住宅を建てる目的で資金を融資するものであり、地目が農地(田や畑)の土地を購入する目的では融資を受け付けないからです。
住宅ローンの審査では、登記簿謄本で地目と現況が合致しているかどうかをチェックします。
また、一般に金融機関は地目が畑の土地に抵当権を設定しないため、買主は地目変更するために自己資金で宅地造成を行う必要が出てきます。
それでは買い手が資金に余裕のある方に限られてしまうでしょう。
もっとも資金に余裕のある方なら、そもそも農地よりも立地や条件の良い宅地を選択する可能性が高いです。
ちなみに宅地造成・地盤改良にかかる費用の相場は100万円~数百万円です。
農地転用できても売却価格はそれほど上がらない
仮に農地転用できたとしても、農地の売却価格は宅地のように上がることはありません。
確かに農地転用できない場合と比べれば、活用範囲が広がる分価値が上がるでしょう。
しかし農地転用するまでの手間や造成などの諸費用、転用許可待ちといった負担感やマイナスイメージにより、もともと宅地の土地よりもニーズが低いことには変わりがありません。
それどころか、農地価格は今後下落する見込みで、実際、直近の14年間は以下のように価格が下落を続けています。
農業従事者が減少し続けていることから、今後も農地価格は下落すると考えられます。
そのため、農地転用の可否にかかわらず、使わない農地は少しでも早く手放す方が得策といえそうです。
ちなみに農地専門の買取業者である弊社AlbaLink(アルバリンク)は、農地転用できない農地でも適正な価格で買い取ってきました。
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農地を宅地に転用して売れない場合の4つの売却方法
ここまで農地を宅地に転用して売却する手順や注意点を解説してきました。
農地区分や用途地域などによって農地転用が難しかったり、そもそも買い手が見つからないという方もいるでしょう。
そのような方のために、転用できない農地を売却する4つの裏ワザを紹介します。
参考までに、以下の記事では農地をタダで手放す方法を紹介していますが、実際にはタダよりもスムーズかつお得に手放せる方法があるので、このあとじっくり解説します。
近隣農家に買取を依頼する
まず、近隣の農家に農地の買取を依頼してみましょう。
近隣農家、特に隣の農地を持っている農家だと、他と比べて農地の譲渡がスムーズな場合が多いです。
特に隣の農家が農業を拡大したいと思っていた場合は、すぐに農地を買い取ってくれる確率が高いだけでなく、隣地なら周辺住人との問題も起こりにくいので、万事円滑に手続きを進めやすいでしょう。
隣の農家を調べる方法は、法務局で公図を取って農地を見て、登記簿を取ると持ち主がわかります。
また、必ずしも隣地でなくても、隣接した市町村ぐらいまでなら、買い手を探してみる価値はあるかもしれません。
基本、地元の農家以外では下りない農業委員会の許可ですが、隣の市町村くらいなら下りるケースもあるからです。
目安としてはGoogle Mapで車で30分~1時間以内など、農業を営むうえで現実性のある範囲で探すとよいでしょう。
ただし、農業委員会の許可が下りるのは、買い手の営農計画がしっかりしていることが要件です。
また、広いエリアで買い手を探すとなると根気がいるので、覚悟が必要です。
農協に買い手をあっせんしてもらう
個人で農地の買い手を見つけられなければ、農協(JA)に買い手をあっせんしてもらうのも方法の1つです。
農協は全国や地域の農地情報を管理しており、農地の取引に詳しい専門家もいる農地売買のプロフェッショナルでもあります。
買い手のあっせんだけでなく、売買許可の申請書作成のサポートも依頼できるので、農地売買の知識がなくても安心して手続きが可能です。
農協は農業従事者の利用率が高い機関でもあるので、広く買主候補者を探してもらえるでしょう。
ただし、サポートが有料のため、手数料が売却金額から引かれる点はデメリットといえるかもしれません。
仲介業者に売却の仲介を依頼する
不動産仲介業者に売却の仲介を依頼し、買主を探してもらうこともできます。
不動産仲介業者とは、不動産を売りたい人と買いたい人を仲介し、売買契約成立をサポートする業者のことです。
農地の売却を依頼すると、仲介業者は農地の情報を「レインズ」というサイトに登録し、広告活動を行うなど、広く買主を募集してくれます。
仲介では多くの購入希望者の中から、農地を高く購入してくれる買主を選べるため、高値で売却できる可能性があります。
ただし、仲介業者が得意とするのは基本的にマイホーム用の宅地で、主なターゲットもマイホームを探している一般の買主です。
宅地に農地転用できる見込みの薄い農地は、一般の買主のニーズがないため、取り扱いを断られる可能性が高いでしょう。
売却したい農地が、宅地へ転用しやすい市街化区域にある農地か第三種農地ならば、仲介業者へ売却を依頼してもよいかもしれません。
それ以外の農地は、次項で紹介する方法で売却するほうが確実です。
農地専門の買取業者に買取を依頼する
農地転用が難しい農地の場合は、農地専門の買取業者に買取を依頼するのがおすすめです。
農地専門の買取業者は、農地の活用ノウハウと再販先が豊富にあるので、宅地に転用できる農地もできない農地も、そのまま売却が可能です。
さらに、土地や法律、税金など、各方面の専門家と連携しているので、面倒な農地転用などの手続きもすべて依頼できます。
また、仲介業者で売却を依頼すると、司法書士費用・仲介手数料・測量費は売主が負担しますが、専門の買取業者なら費用負担がありません。
ただし先述したように、農地転用の可否は不動産業者の手腕にかかっています。
優良な買取業者は以下の基準で選びましょう。
- 農地の買い取り実績が豊富である
- 査定額の根拠が明確である
- 良い口コミが豊富である
なお、農地を高く売却するためのポイントは、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
アルバリンクなら農地を宅地に転用できなくても高く売却できる!
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、農地や山林、原野といった特殊な不動産を専門に扱う買取業者です。
これまでも多くの農地や山林、原野などの訳あり不動産を買取・再販しており、例えば、群馬県片品村の農地を400万円で買い取った実績もあります。
農地に付加価値を付けて転用する実績や、豊富な知見があるため、物件の潜在価値を最大限に引き出し、高値で取引できることが弊社の強みです。
さらに弊社は、お客様からの評価も高く、以下のような良い口コミも多数いただいております。
例えば、地方の不動産の相続が発生し、弊社でその不動産を買い取らせていただいたお客様からは、以下のような感謝のお言葉を頂きました。
かねてより悩みの種であった地方にある不動産をいよいよ相続することとなり、相続人全員で話し合い、買取業者様にお願いすることにしました。 譲渡益は見込んでおらず、とにかく早い段階での現状渡しが実現しそうな業者様を探し、口コミや実績からAlbaLink様にご相談いたしました。 断られてしまうのでは、と不安が募りましたが、担当の方が当初より親身に寄り添って下さり、難しい条件の不動産ではありましたが、何とかお引き受けいただけることになりました。 やり取りも非常にスムーズ且つ迅速で、相続発生から短期間での契約締結となり、長年の肩の荷が下りてホッといたしました。 AlbaLink様にご相談して本当に良かったです。また、ご担当いただいた方にも心より感謝申し上げます。
上記は信憑性の高いGoogleの口コミにお客様が書き込んでくださったものですが、その他にも弊社はGoogleの口コミで多数の好意的な評価を頂いております。
さらに弊社はお客様からの評判だけでなく、以下の理由で高い社会的信用も得ています。
「宅地への農地転用を断念した」「他の不動産業者に売却を断られた」といった方は、ぜひ一度下記無料買取査定フォームから弊社にご相談ください(売却前提の問い合わせでなくても構いません)。
>>「価格のつかない農地も高額売却!」無料の買取査定を依頼する
まとめ
農地を宅地に転用して売却することは不可能ではありませんが、大変複雑で難易度が高いです。
手続きは農地の売買契約と転用、地目変更、所有権移転を正しい手順で手際よく、期限内に終わらせなければなりません。
もし手順を誤ると違法転用で罰則の対象となったり、転用できず、売買契約が白紙撤回されてしまう可能性もあります。
複雑な手続きを個人で行うにはリスクが大きく、専門家に依頼すれば高額な費用負担を免れられません。
それならば、農地を転用・地目変更・登記もせず、そのまま売却してしまいましょう。
農地専門の買取業者なら、難しい農地転用や地目変更、投棄もすべて丸投げし、高値で売却できます。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、農地や山林などの流通しづらい物件を専門に買い取る不動産買取業者です。
多くの訳あり物件を買取・再販してきた実績は、以下のように多くのメディアでも紹介されてきました。
弊社には農地の豊富な買い取り実績があるので、あなたの農地も高く買い取ることが可能です。
「相続した農地を手放せず困っている」「農地転用できず売却できない」とお悩みの方は、ぜひ弊社の無料査定からご相談ください。