かぼちゃの馬車問題とは?
そもそもかぼちゃの馬車問題とはどういった事件だったのか、簡単におさらいしておきましょう。
かぼちゃの馬車への投資の仕組み~サブリース~
かぼちゃの馬車は、女性向けシェアハウス物件のシリーズ名です。
運営者は「株式会社スマートデイズ」という会社でした。
スマートデイズ社は不動産投資家に物件を取得させ、自身は「サブリース会社」という形で物件運営に関わっていました。
サブリースとは、サブリース会社が物件を一括で借り上げて具体的な賃貸管理業を行い、物件所有者にはサブリース料を支払うビジネスモデルです。
かぼちゃの馬車物件を買い取ったオーナーたちは、賃貸管理をすべてスマートデイズ社に任せていたら自動的にサブリース賃料が支払われる仕組みでした。
多くの不動産投資家たちがかぼちゃの馬車物件に投資しました。
物件価格は1億円を超えるものも多く、ローンの融資元は「スルガ銀行」でした。
スマートデイズの破綻
ところが2018年、スマートデイズ社は破綻してしまいます。
実はスマートデイズ社は各物件について非常にずさんな管理をしており、空室なども目立っていて収入が少額になっていたのです。
入ってくるお金が少ないと、スマートデイズ社の経営は赤字となり、当然オーナーたちにサブリース料を支払えなくなります。
実際、スマートデイズ社は不動産投資家たちに「経営が苦しいのでサブリース料を払えない」と一方的に通知を送り、民事再生法を適用します。
その後破産手続きに移行したので、オーナーたちがスマートデイズ社からサブリース料を受け取ることは絶望的になりました。
窮地に立たされたかぼちゃの馬車のオーナーたち
困ったオーナーたちが賃借人たちとの直接契約に切り替えようにも、スマートデイズ社がずさんな管理を行っていたために空き室が目立つ物件も多く、直接の家賃も入ってこないケースが多々ありました。
そのままではオーナーがかぼちゃの馬車物件を購入する際に組んだ不動産投資ローンを支払えません。
またオーナーたちが1億円を超える金額で購入した物件も、実際には5,000万円程度の価値しかなかったというオーバーローン状態となっているケースもありました。
そうなると毎月の100万円を超えるローンを支払えず、かといって物件を手放しても5,000万円以上の残債が残るので、多くの不動産投資家たちが真剣に自己破産を検討せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
スルガ銀行の責任
かぼちゃの馬車事業でスマートデイズ社と提携し、不動産投資家たちに融資を行っていたのは「スルガ銀行」です。
実はこのスルガ銀行の対応にも非常に大きな問題がありました。
かぼちゃの馬車オーナーに対する不正融資
本来、銀行が不動産投資ローンなどを融資する際にはリスクを考えてきちんと申込者の収入や資産状況、物件の担保価値などを評価して審査をしなければなりません。
基準を満たしていない人には融資をしないのが鉄則です。
しかしかぼちゃの馬車のオーナーの中には不動産投資の経験のない一般サラリーマンなど、1億円を超える高額な融資を受けるべきでない人もたくさん含まれていました。
なぜこのような人が高額な融資を受けられたのでしょうか?
それは本人が審査用に提出した源泉徴収票や資産状況などに関する書類が何者かによって改変されたりすり替えられたりしたからです。
ローン審査用にスルガ銀行へ提出された資料は、申込者の資産や収入が実際よりも高額な表示になっており、これらの偽造・変造された資料をもとに融資の決済が下りて、1億円を超える高額な融資がどんどん行われました。
申込者本人には改変の事実は知らされておらず、完全にスマートデイズ社とスルガ銀行の内部で不正が行われていました。
スルガ銀行は、当初自行は資料の不正作出に関わっていないと説明していましたが、現実にはスルガ銀行自身が不正融資にかかわっていた疑いが強いとされ、行政処分を受ける結果となりました。
破綻寸前となっても追加融資
スルガ銀行はスマートデイズ社と大変密接な関係にあり、かぼちゃの馬車事業が破綻寸前となっても追加融資を積極的に続けました。
来であれば、取引先が破綻しそうになったら銀行としては融資を引き上げるべきであり、ずさんな運営を続ける事業に追加融資すべきではありません。
そのようなことをしていると、銀行も共倒れとなってしまうからです。
それにもかかわらずかぼちゃの馬車事業に追加融資し続けたスルガ銀行は、お金を預けてくれた預金者を裏切る行為をしていたといってもよいでしょう。
また早期にスルガ銀行が融資を打ち切っていれば、これほどまでに被害者が増えることもなかったといえます。
かぼちゃの馬車トラブルでは、スマートデイズだけではなく融資元となったスルガ銀行の対応にも大いに問題があったことは明らかでしょう。
スルガ銀行が「ローン帳消し」にすると打ち出した
スルガ銀行は、当初「自行は不正に関わっていない、被害者である」などと主張していましたが、内部告発があったりスルガ銀行の行員とおぼしき人物の声が入った録音データが発見されたり金融庁による立入検査を受けたりして、だんだんと態度が変わってきました。
スルガ銀行の「徳政令」とは
かぼちゃの馬車オーナーたちへ「ローン返済の猶予」などの対応をとってきたのですが、今回なんと「かぼちゃの馬車の物件を手放せば、残ローンを免除する」方針を打ち出したのです。
かぼちゃの馬車の物件の多くは、購入金額が1億円を超えるものでも現状の売却価値が4,000~5,000万円程度といわれています。
5,000万円を超える残ローンが発生する見込みですが、スルガ銀行はこれを全部免除する可能性があるのです。
もしも免除を受けられたら、不動産オーナーたちは残ローンの負担なくかぼちゃの馬車トラブルから解放されます。
スルガ銀行が残債の免除方針を打ち出した理由
1人あたり5,000万円超の残ローン免除というのは、銀行としては非常に珍しい太っ腹な対応です。
いったいなぜスルガ銀行はそこまでかぼちゃの馬車オーナーを保護する対応を打ち出したのでしょうか?
そこには、スルガ銀行に対して行われた行政処分が非常に大きく影響しています。
スルガ銀行自身は不正融資への関与を否定していましたが、2018年に金融庁による調査が入り、10月5日には一部業務停止をも含む行政処分が下りました。
業務停止は行政処分の中でも非常に重いものです。
また金融庁からスルガ銀行に対し、以下のような対応が求められました。
- シェアハウスオーナーに対する金利引下げや返済条件を見直す
- 元本の一部減免を含めて適切に対応する
このように、行政処分で「一部または全部の債務免除を含む具体的な対応策」が求められたのです。
金融機関への処分命令で具体的に「債権の一部放棄」を命じられるのは極めて異例で、金融庁としても非常にこの問題を重く受け止めていることがわかります。
業務停止処分を受けたスルガ銀行が処分命令に適切に対応しないと今後の存続にもかかわります。
そこで今回、思い切って「物件を手放せば残債を全額免除」というドラスティックな方針を打ち出すに至ったと考えられます。
注意点 全額免除されるとは限らない
スルガ銀行は「物件を手放したオーナーについては残債を免除する」案を検討していますが、確定したわけではありません。
今後検討を重ねる中で、変更されたり実現しなかったりする可能性も充分にあります。
また実際に債務免除が行われるとしても、全額免除されるとは限りません。
残ローンの半額など割合的な免除となる可能性もありますし、免除額に限度がもうけられる可能性もあります。
かぼちゃの馬車被害オーナーにとっては、まだまだ安心できる状況とはいえません。
本当に安心して眠れるのは、スルガ銀行による債務の全額あるいはほとんどの免除が確定したときになるでしょう。
不公平という指摘もある
スルガ銀行がかぼちゃの馬車事業の責任をとる形でオーナーたちへの債務免除をすることは、一見まっとうな対応であるように思えます。
事実、金融庁が直々に債務の減免を促したのですから、間違った対応でないことは明らかです。
しかし一部の不動産投資家からは「不公平」という指摘も出ています。
一般の不動産投資の場面では「購入金額と実際の物件の価値が大きく異なる」事例は多々あります。
高額な代金で劣った物件をつかまされ、その後の賃貸経営に悩む方は少なくありません。
そんな方も、他の優良物件をまわして何とかやりくり工夫しながら不動産投資を続けています。
劣悪物件についてローンを免除してもらえることなどありえませんし、返済猶予すら受けられないのが通常です。
また賃貸経営では空き室が増えて経営が苦しくなるのも普通にあることです。
それにもかかわらず「かぼちゃの馬車のオーナーだけが全額の債務免除という大幅な優遇策を受けられる」のは不公平という意見です。
この批判によってスルガ銀行の対応が変わるかどうかは不明ですが、そういった考えもあることは理解しておく必要があるでしょう。
スルガ銀行を動かしたもの
スルガ銀行が「徳政令」ともいえるかぼちゃの馬車被害者への救済策(債務免除)を打ち出したことは、金融機関としては極めて異例です。
なぜこのような状況が実現したのでしょうか?
そこには、かぼちゃの馬車の被害オーナーたちが積極的に動いたことが大きく影響しています。
スマートデイズ社の破綻から始まった今回のかぼちゃの馬車トラブルですが、被害者オーナーたちは当初から以下のような積極的な対応をしていました。
- 被害者の会を結成
全国でかぼちゃの馬車の被害者の会が多数結成されました。 - かぼちゃの馬車の弁護団が結成される
かぼちゃの馬車の被害状況を重く見た弁護士が多数いたこと、かぼちゃの馬車被害者の会が積極的にはたらきかけたことなどもあり、弁護団が結成されて被害者に対する法的サポートが行われました。 - スルガ銀行を刑事告発
スルガ銀行が「融資資料の偽造、変造にかかわっていない」などと弁明を繰り返す中、被害者の会は弁護団などを通じて同行を刑事告発しました。
このことも金融庁を動かすきっかけとなったと考えられます。
以上のように、かぼちゃの馬車オーナーたちは今回のトラブルを「指をくわえてみていただけ」ではありません。
今回の徳政令も、本人たちが積極的に活動した結果得られたものといえるでしょう。
泣き寝入りして破産していたら、今回のような有利な結果にはつながっていませんでした。
このことは、今後不動産投資をしていくときの姿勢・スタンスを決める参考になりそうです。
まとめ
今回のかぼちゃの馬車・スマートデイズ・スルガ銀行の一連のトラブルほどの大きなものでなくても、不動産投資をするときには常に危険がつきまといます。
まずは怪しげな話に乗らないこと、きちんと担保価値や収益シミュレーションなどを行ってから投資することなど、事前の対策が重要です。
そして実際に被害に遭ってしまったら、すぐに諦めずに今回のかぼちゃの馬車の被害者のように仲間や援助者を探して戦うことも大切です。
今後不動産投資を続ける際、かぼちゃの馬車の問題は学びの題材とすることができるでしょう。
また実際にかぼちゃの馬車の被害に遭われたオーナー様たちは、不動産投資への思いを裏切られ、大変辛く経済的にも不安を抱えていることとお察しいたします。
まずは一旦落ち着いて、残債、家賃収入、返済額などを確認してください。
また今後残債が免除されれば一気に状況が改善されるので、様子を見守っていきましょう。
当社は難しい案件を専門に扱う不動産会社で、不動産に関して日本屈指の顧問弁護士もついております。
不動産絡みでお困りの方がおられたらお力になれることがきっとあると思います。
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まずは一度ご相談下さい。