「相続した建物が登記されていなかった」
「建物の所有者がわかっていなくて困る」
「購入した物件が未登記だった」
中古の物件を購入したり相続した場合に建物が未登記だったというケースがあります。昔は借入せずに建物を建てていたことも多くので登記されていない建物が残ってしまっています。その場合、物件所有者としてはきちんと登記をしておきたいと言う気持ちがあるでしょう。また未登記の不動産は売却が困難なので、資産運用の観点からも登記をすることが重要です。
しかし、未登記建物の所有者が分からなければ登記を行うことが困難です。今回の記事では、未登記建物の所有者をどのように調べればよいかご紹介していきます。
目次
未登記建物の所有者の調べ方
未登記建物の所有者を調べるためにはどのような方法があるでしょうか。まずは所有者を調べる方法をご紹介します。
法務局で土地の謄本を調べる
法務局で登記簿謄本(登記事項証明書を取得すると、該当する物件や土地が誰の名義なのか調べることができます。法務局では誰でも登記簿謄本や、登記事項証明書の取得が可能です。
全国どこの法務局であっても登記簿謄本の取得は可能です。他の市町村や都道府県にある土地の登記簿謄本でも最寄りの法務局で取得することができます。
登記簿謄本を取得するのに必要な資料はありませんが、土地であれば地番、建物であれば家屋番号が分かるとスムーズに登記簿謄本を取得することができます。
ただし、登記簿謄本に記載された名義人が現在の土地の所有者であるとは限りません。例えば、土地を相続した人が登記を行わずに、過去の所有者の名義のままになっていると言うケースはよくあります。これは、名義変更の義務がないために起こることです。
相続人へのヒアリング
法務局で登記簿謄本を取得し、名義人が判明した場合にはその名義人に登記の状況を確認しましょう。名義人が相続人と違う場合には相続人に現状を確認し、物件の登記をどのように扱うかをヒアリングしましょう。
建物の登記がなければどうなるのか
これまで、登記されていなかった建物には大きな問題がなかったのかもしれませんが、土地や建物の登記がない場合、どのような問題が出るのでしょうか。土地や建物を登記しない場合の問題点があるのかをご紹介していきます。
相続時に問題になる
未登記不動産が問題になるのは不動産の所有者や権利関係が変更になる場合です。特に相続の場合には、相続人がどのような考えで登記をしていなかったか、該当する物件が誰に相続されるのかを把握することが困難です。
未登記不動産を放置しておくと被相続人が複数の場合に紛争に発展する可能性もあります。また、被相続人が相続放棄をしたとしても、固定資産税を課税されてしまう可能性があります。
売却ができない
未登記建物のままでは物件の売買が難しくなります。売りに出すこと自体は可能ですが、買手から見た場合に本当にその土地の所有者か証明できないまま売却を行うことになります。
未登記建物を購入することは買主にとって大きなリスクとなります。未登記ということは、建物の所有者が明示されていない状態で購入するということです。不動産のような大きな金額のものを購入する際に、所有権が明確ではない物件を購入するリスクを負う買主は多くありません。結果的に、建物の売却ができなくなるのが未登記建物の問題の一つです。
また、不動産を担保に融資を受けることができないのも問題です。融資を受ける際に不動産を担保に充てる場合がありますが、登記していない場合は物件所有者として担保権を主張できないので、金融機関から融資を受けることができません。
未登記建物を購入する場合にも住宅ローンを借りることができません。未登記建物には住宅ローンを組む上で必要な抵当権が設定できないため、資金計画を立てる上でも建物を登記することは重要です。

第三者が権利を主張してくる場合がある
建物が未登記の場合に考えられる最悪のケースは第三者が権利を主張してくるケースです。不動産の権利は登記によって決定します。契約や代金の支払いが済んでいたとしても、第三者が登記を済ませてしまうと買主であっても権利を主張できなくなる可能性があります。
これは民法第177条に記載されており、不動産を登記することが第三者に対抗する要件として重要な要件とされています。例えば1つの建物を2人の被相続人に相続した場合、正式な所有権は先に登記した側に渡ります。
第三者の権利主張を防ぎ所有している建物を守るためにも、未登記建物の登記を行うことをお勧めします。
何があれば建物の所有者と証明することができるのか
登記以外で、何があれば建物の所有者であることを証明できるのでしょうか。登記以外の方法で建物の所有者を証明できる方法をご紹介していきます。
固定資産税明細
固定資産税明細は、地方自治体から建物の固定資産税を課税された場合に発行される明細書です。固定資産税を請求されるということは、自治体からは所有者の物件であると認知されて納税通知が届くということです。
固定資産税通知があれば公的機関からの通知を持っているということで、建物の所有者としての権利を主張できる一つの証明となります。
売買契約書
住宅の売買契約書を所持していることも所有者としての証明の一つです。売買契約書の作成は不動産会社が売買を仲介する場合には記載内容が宅地建物取引業法で定められており、売買の対象物に関しても所在地や家屋番号が記されています。
建築確認申請書
建築確認申請書は物件を建築する際に特定行政庁に提出する書類です。建築確認申請が通らないと建物の建築を開始することができません。竣工後には建築主に引き渡される書類で、改築の際にも必要になる書類です。
建築確認申請書を所有しているということは、売買や相続において正当な所有者としての権利を持っている証明の一つといえるでしょう。
未登記建物が発覚した場合、誰に相談すれば良い?
入手した建物が未登記建物だった場合、どのような対処法があるでしょうか。内容によって相談する専門家が違いますのでそれぞれご紹介していきましょう。
土地家屋調査士に相談する
土地家屋調査士は、不動産の登記に必要な調査や測量を行う専門家です。物件の現地の状況を確認し、隣接所有者の立会い等を経て筆界を確認したり、境界を確定させるための地積測量図を作成するなどの業務を行います。
一般的に登記は所有者が登記申請をする義務を課されていますが、土地家屋調査士は所有者に代わって登記を行うこともできます。
土地家屋調査士に未登記建物をどのように取り扱うかを相談すれば、現地調査や所有者証明に関して案内してくれますので、現地の調査に関する資料などが不足している場合には土地家屋調査士に相談すると良いでしょう。
司法書士に相談する
司法書士は依頼によって裁判所や検察庁、法務局に提出する書類を作成したり、登記手続きに関して業務を行うことができます。土地を売買したり、子供や孫などの相続人に贈与した場合の所有権移転登記や、建物を建てた時の所有権保存登記など、登記に関する業務を行います。
未登記物件の権利移転を行う場合には、司法書士にどのような対応が必要かを相談すると良いでしょう。
不動産買取業者に相談する
不動産買取業者は不動産売買を仲介している性質上、未登記建物の対応に関しても豊富な実績を持っています。司法書士などに相談すると相談料が発生する場合もありますので、未登記建物についてまず相談したい場合には不動産買取業者に相談するのも良いでしょう。
まとめ
未登記建物はご紹介した通り、物件の相続や売買、融資を受ける際などに制約が発生し、最悪の場合は第三者に所有権を主張され、物件の所有権を失ってしまうリスクがあります。
物件所有者の義務としては、所有権が移転した場合に登記を行うことが義務付けられていますので、コンプライアンスの観点からも、放置をせずに問題を解決する必要があります。
最も確実なのは、未登記建物を登記することですが、まずは未登記建物の権利関係を調査し、どのような対応方法があるかを探していきましょう。
実際の対応策を決定していくためにも、まずは未登記建物に対する経験が豊富な不動産買取の専門業者に相談することをお勧めします。