借地権の月々の地代は種類によって異なる
地主から土地を借りる際には毎月地代を支払う必要がありますが、借地契約を交わしたときに権利金を支払っているかどうかで、以下2種類のどちらが設定されるのかが異なります。
なお、権利金とは地主が所有する土地に借地権を設定する対価として支払うお金のことで、以下の計算式で求めます。
借地権割合とは、土地全体の権利のうち、借地人が持っている権利の割合のことです。
国税庁のサイト「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で調べることができ、住宅地では60~70%に設定されるのが一般的です。
たとえば、地主が所有している土地の更地価格が2,000万円、借地権割合が60%のときには、土地を借りるにあたって以下の権利金の支払いが必要になることがあります。
権利金=2,000万円×70%=1,400万円
借地契約時に権利金を支払っているかによって地代は大きく異なってくるため、相場を知りたいのなら、まずは自分がどちらのケースに該当するのかを確認することが大切です。
それでは、2種類の地代の計算方法について、詳しく見ていきましょう。
通常の地代(権利金を支払っているとき)
通常の地代とは、底地を利用する対価として支払うお金です。
借地契約時に地主へ権利金を支払っているとき、借地人はすでに底地上に建物を建てられる借地権を持っています。
しかし底地の権利は地主側が持っているため、その底地を使わせてもらう意味合いで地代を支払う必要があるのです。
通常の地代を求める計算方法は、以下の通りです。
自用地価額とは、その土地を自分で使用する場合の評価額です。
たとえば自用地価額が2,000万円、借地権割合が70%のときの通常の地代は以下の通りです。
通常の地代(年額)=2,000万円×(100%-70%)×6%=36万円
月々の地代=36万円÷12か月=3万円
つまり上記のケースでは、借地契約時に支払う権利金とは別に、月々3万円の地代を支払う必要があります。
相当の地代(権利金を支払っていないとき)
相当の地代とは、借地契約時に権利金の支払いがないときに設定される地代です。
通常の地代のケースとは異なり、権利金のやりとりがないために借地人は借地権を有していません。
そのため、地主から土地を借りる際には借地権と底地の使用料を地代として支払う必要があります。
相当の地代は、以下の計算式で求めます。
たとえば自用地価額が2,000万円の底地を借りるときに発生する相当の地代は、以下の通りです。
相当の地代(年額)=2,000万円×6%=120万円
月々の地代=120万円÷12か月=10万円
借地契約時に権利金の支払いがない分、相当の地代は通常の地代よりも高くなる傾向です。
借地権の月々の地代相場を計算する5つの方法
借地権の月々の地代相場は法律で定められているわけではないため、地主と借地人の合意があればいくらに設定しても問題ありません。
しかし、相場観をつかんでおかないと地主から提示された地代が適正かどうかの判断ができないため、あらかじめ自分でも計算できるようになっておくことをおすすめします。
借地権の月々の地代相場を計算する主な方法は、以下の5つです。
上記のように地代の相場を計算する方法はさまざまあるため、複数の方法で調べたうえで総合的に判断することが大切です。
それでは、借地権の地代相場を計算する方法について詳しく見ていきましょう。
公租公課倍率法
公租公課倍率法は、底地に課される固定資産税や都市計画税をもとに地代を算出する方法です。
具体的には、納税額に以下の倍率をかけて求めます。
商業地:固定資産税・都市計画税の総額×5~8倍
固定資産税と都市計画税は、それぞれ以下の計算式で算出可能です。
都市計画税=固定資産税評価額×0.3%(制限税率)
たとえば、住宅地にある底地の固定資産税評価額が1,000万円の場合、公租公課倍率法による地代の相場は以下の通りです。
「固定資産税=固定資産税評価額×1.4%」「都市計画税=固定資産税評価額×0.3%」の計算式より、
固定資産税=1,000万円×1.4%=14万円
都市計画税=1,000万円×0.3%=3万円
地代相場(年間)=17万円×3~5倍=51~85万円
積算法(利回り法)
積算法は土地を運用したときに得られる期待利回りから地代を計算する方法で、以下の計算式で求められます。
投資金額に対して得られると予測される年間の利益の割合。
借地権では2%に設定するケースが一般的。
たとえば底地の更地価格が1000万円、期待利回りが2%、諸経費が30万円のときの地代相場は以下の通りです。
地代相場(年間)=1,000万円×2%+30万円=50万円
収益分析法
収益分析法は底地上に店舗などを建てるときに使用される計算方法で、年間の収益や経費などをもとに地代を算出します。
立地条件がよく、利益を多く生み出せる土地であるほど地代も高く設定される傾向です。
ただしあくまでも底地に事業用の建物を建てるときに用いられる方法であり、一般的な住居を建築する際には使用できません。
賃貸事例比較法
賃貸事例比較法は、底地周辺に存在している土地の地代と比較して地代を設定する方法です。
たとえば土地の面積や形状、立地条件などが似ている土地の月々の地代が10万円だったら、借りている土地の地代も10万円ほどが相場と推測できます。
ただし、土地の条件があまりにも違いすぎるときには参考にできないため、その場合はほかの計算方法を用いて相場を算出する必要があります。
更地価格をもとに計算する方法
更地価格から地代の相場を計算する方法もあります。
具体的な計算式は、以下の通りです。
更地価格は、国税庁が公表している路線価の80%ほどが目安とされています。
道路に面する土地1㎡あたりの価格のこと。
たとえば土地の面積が100㎡、路線価が1㎡20万円の土地における地代相場は以下の通りです。
地代の相場(年額)=(100㎡×20万円÷0.8)×1~1.5%=25~37万5,000円
なお、借地権の月々の地代の計算方法については以下の記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
借地権の地代に関してよくあるトラブル2選
地主から借りた土地に建物を建てて暮らしていると、以下のようなトラブルに見舞われる恐れがある点に注意が必要です。
それぞれのトラブル事例について、詳しく見ていきましょう。
地主から値上げを請求される
借地契約の更新をきっかけとし、地主から地代の値上げを要求されることがあります。
ただし、地主が地代の値上げをするには「周辺の地代相場が上がっている」「税制改正に伴い固定資産税の負担が増えた」などといった正当な理由が必要です。
また、地代の値上げは地主と借地人双方の合意がないと成立しません。
そのため、地主から地代の値上げを要求されたときには、まず明確な根拠があるかを確かめることが大切です。
正当な理由があれば地代の減額要求は可能
一方で、地代が高すぎるために減額してもらいたいと思うことがあるかもしれません。
そのようなときには、借地人側に正当な理由があれば地代の減額を請求することが可能です。
具体的には、「土地の価格が下がっている」「周辺の土地と比べて地代が不相当に高い」などのケースです。
ただし地代の減額についても地主側の合意がないと成立しないため、交渉に際してはデータなどを用意して明確な根拠を地主へ示せるようにしましょう。
地代を見直すときの計算式については、後述の「地代を見直すときに用いられる3つの計算方法」の章で解説しています。
なお、地主から地代の値上げを要求されたときの交渉のポイントは以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
地代を滞納すると地主から立ち退きを要求される
借地契約期間中であるにもかかわらず、地主から立ち退きを要求されることもあります。
ただし、地主が借地人に立ち退きを要求できるのは、「地主側に土地を使用する事情がある」「立ち退き料の支払いを申し出ている」などの正当な理由があるときのみです。
したがって地主から立ち退きを求められても、基本的にそれに応じる必要はありません。
ただし、借地人側が「地代を滞納している」など契約違反に該当する行為をしているときには、地主側に正当事由がなくても借地人に立ち退きを求められる点に注意が必要です。
なお、地主が借地人に立ち退きを要求できる正当事由については以下の記事で詳しく解説しています。
地代を見直すときに用いられる3つの計算方法
地代を値上げ、あるいは減額するときには「差額配分法」「利回り法」「スライド法」の3つの計算方法が用いられます。
差額配分法は現在の地代と新たな地代との差額をもとに改訂地代を求める方法、利回り法は現在の地代に継続賃料利回りをかけて適正な地代を求める方法です。
現在の賃料を設定した時点における不動産の時価に対する純賃料(賃料から必要諸経費を差し引いた額)の割合。
またスライド法は、物価の変動率をもとに地代を改定する方法を指します。
ただしいずれの計算方法も複雑であり、不動産に詳しくない方が適正な地代を算出するのは難しいといわざるを得ません。
そのため、地代を見直したいと考えているのなら、不動産のプロに相談して適正地代を算出してもらうことをおすすめします。
弊社でも借地権の適正地代に関するご相談を受けつけております。
売却前提でなくても問題ありませんので、借地権の地代に関するお悩みを抱えているのなら、お気軽にご相談ください。
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月々の地代負担から解放されたいなら借地権付き建物を売却するのも手
ここまで借地権の月々の地代を計算する方法について解説してきましたが、地主から土地を借りている限り、地代は支払い続けなければなりません。
加えて、地主から地代の値上げや立ち退きを要求される可能性もあります。
もし月々の地代負担から解放されたい、地主とのトラブルを避けたいと考えているのなら、借地権付き建物を売却するのはひとつの方法です。
弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、地主と借地人がトラブルになっているなど、他社では断られるような底地・借地を多数買い取ってきました。
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なお、以下の記事では借地権価格の相場について詳しく解説しています。
これから借地権付き建物を売却したいとお考えの方が参考となる情報が掲載されておりますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
借地権の月々の地代相場を計算する方法は「公租公課倍率法」「積算法」「収益分析法」「賃貸事例比較法」「更地価格をもとに計算する方法」などさまざまです。
地主から地代の値上げを要求された、もしくは地代の減額を要求したいときには、複数の計算方法を用いて導き出した適正相場を根拠に交渉することがポイントです。
一方で、借地権を巡っては、地主からの値上げ請求や立ち退き要求といったトラブルが起こることも珍しくありません。
これらのトラブルを未然に回避したいのなら、借地権付き建物を専門の買取業者に売却することをおすすめします。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、借地権付き建物をはじめ、全国の訳あり物件を専門に買い取っている買取業者です。
過去には、フジテレビの「newsイット!」にも、訳あり物件専門の買取業者として紹介された実績もあります。
借地権付き建物を売却して地主とのトラブルから解放されたい方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。