この記事では借地権に関するお悩みに触れながら、売却方法についても分かりやすく解説していきます。
こんなお悩みをお持ちの方が多いのではないでしょうか ?
―売却しようと地主に相談したが譲渡を認めてくれない
―借地権の相続を受けたが必要ないので処分したい
―借地上の建物が老朽化してきて引っ越しを考えている
いずれにしても借地権の買取りは、法的な権利関係を理解したうえですすめていくことが最大のポイントです。
実際の取引は専門家に任せるのが一般的ですが、自分でも借地権買取りの知識や流れを把握しておきましょう。
借地権を売却する4つの方法
売却しにくいイメージの借地権ですが、状況に応じて柔軟に売却方法を考えていけば、決して難しいことではありません。
借地権を売却する4つの方法についてご説明します。
地主に買い戻してもらう
借地権を「地主に買い戻してもらう」つまり、地主に借地権を買い取ってもらう方法は、もともと地主が持っていたものなので交渉がスムーズな面もあり、借地権の売却ではよくおこなわれる方法です。
また地主には、優先的に借地権を買い戻せる権利(介入権)があるため、ごく自然な流れといえます。
地主に借地権を買い取ってもらう場合、2つのパターンが考えられます。
建物も買い取ってもらう
建物がまだ新しく価値がある状態であれば、建物ごと買い取ってもらう交渉も検討できるでしょう。
不動産業者に査定をしてもらった適正な価格で交渉をすることが大切です。
自己判断による的外れな金額交渉は、信頼関係を損ないかねません。
更地にして借地権だけ買い取ってもらう
借地に建てた建物が老朽化している場合は、更地にして借地権のみ買い取ってもらうのが一般的です。
通常、借地権者が建物の解体費用を負担して更地に戻しますが、何か特別な理由によって解体費用を地主が負担するケースもあるので、「誰が解体費用を負担するのか」土地の賃貸借契約書の記載を確認しましょう。
第三者に売却する(個人・不動産業者など)
地主が借地権の買戻しに応じない場合、第三者に売却することになります。
注意が必要な点は、第三者に売却できるのはあくまでも地主から買戻しを断られた場合(介入権の放棄)に限ります。
このプロセスを間違えると、法的なトラブルになりかねません。
また、第三者に売却する前には、地主の承諾を得なければならない以下のような項目があります。
・譲渡の承諾(名義書き換え承諾)・・・売却すること自体を承諾してもらうこと。
・建物建て替えの承諾・・・売却により建て替え・増改築がある場合、事前に承諾をもらう。
・抵当権設定の承諾 ・・・借地権の新しい買主が金融機関の融資で購入する場合、建物に抵当権を設定するため金融機関の承諾書に地主の記名・実印が必要になります。
買取業者に相談する際には、地主の承諾の有無を確認されるのが一般的です。
事前に地主に承諾の意思を確認しておくことで借地権買取りがスムーズに進みます。
等価交換後、所有権化した土地を売却する
等価交換は、借地の賃借関係をなくすためにおこなう方法です。
簡単にいうと、借地権者と地主が借地権の一部と底地の一部を交換するというイメージです。
借地権者:借地権100%保有
地主:底地100%保有
等価交換前
借地権者40%保有
地主60%保有
等価交換後
上の図は等価交換によって、借地権者が40%、地主が60%の割合で土地を保有したことを意味します。保有割合を決めるには土地の評価額などを基にしますが、両者間での話し合いで決めることが多いようです。
土地の割合を多く保有したい場合は、「交換差金」(金銭)を支払い、相手に承諾を得る方法があります。
しかし、この場合は等価交換とならないため、譲渡所得税などの課税対象となります。
等価交換によって両者ともに完全所有権の土地を保有することになれば、賃借関係は解消されます。
これで「所有権のある土地と建物を売却する」つまり、一般的な中古住宅として売却ができるようになります。
借地権と底地を一緒に売却する
借地権や底地は単独で売却をする場合、不完全所有権の不動産のため資産価値が低く、通常の売買よりも安くなる傾向があります。
しかし、借地権と底地を一緒に売却できれば、一般の中古住宅と同様に完全所有権の不動産になるため、相場価格での売却ができます。
借地権者にも地主にも大きなメリットがあります。
このケースは、地主に土地の売却意思があることが大前提になり、借地権者と地主が協力して売却していかなければ成り立ちません。
借地契約の更新時や相続が発生したときなどは、借地権と底地を一緒に売却するには良いタイミングといえます。
地主に交渉の際には、借地権と底地を一緒に売却することが「お互いに得をする方法」であることを、具体的に説明するといいでしょう。
借地権売却は地主意向により大きく変わる
まずは地主の意向を確認
借地権の売却は、何といっても地主の意向が第一優先です。
借地権者が希望する売却方法も、地主の同意がなければどうすることもできません。
借地権売却を検討し始めたら、まず地主に「借地権の買取りは可能か?」「底地の売却意思があるか?手放したくないのか?」という点をしっかりと確認することが大切です。
地主の意向によって売却方法や準備が全く違ってくるからです。
また、借地の売却には法的な権利関係も絡んでくるので、確認が曖昧なまま売却準備を進めてトラブルになる例もあり、注意すべき点です。
地主の承諾が得られない場合は?
万が一、地主から売却の承諾が得られない場合でも、借地借家法で定められた、「借地権譲渡承諾に代わる許可制度」によって、裁判所が地主に代わって許可を与えることができます。
借地権者が裁判所に申立てをおこない、裁判所が諸条件を精査して問題がないと判断されれば、借地権の譲渡承諾許可がおります。
この場合も譲渡承諾料の支払いは必要です。
契約条件・譲渡承諾料の有無
売却の承諾を得ることができた場合、地主に承諾料を支払うことが定められています。
譲渡の承諾料は借地権価格の10%程度、建物増改築の承諾には借地権の5%程度が相場となっています。ただ、相場はあくまでも参考金額なので、承諾料をいくら払えばいいか地主に確認が必要です。
また売却後、新しい借地権者が支払っていく地代や更新料などの契約内容についても取り決めをおこないます。
借地権の買取りの流れ
不動産会社を介して借地権を一般ユーザーへ売却するのは、買い手を探す時間がかかる、融資がおりにくいといったデメリットがあります。
借地権を専門的に扱う不動産会社に直接買い取ってもらう方法なら、時間や手間がかからりません。
また、仲介手数料がかからないのもメリットです。
では、買取りの流れについて具体的にお伝えしていきましょう。
1.不動産会社に借地権の買取りの相談
買取りの相談をするには、借地権を専門的に取り扱っている不動産会社を選びましょう。
前述したように、借地権は複雑な権利関係が絡むので借地権に精通している不動産会社なら、トラブルなくスムーズな買取りをしてもらえます。
また、買い取り後の借地権の活用方法にも慣れているため、物件によっては高値で買取りされるケースもあります。
2.地主との事前交渉、売却の同意を得る
借地権買取りで要となるのは、地主の同意を得ることです。気持ちよく承諾をもらうには順序や礼儀をわきまえて接することが大切です。
借地権者から何の相談もなく、不動産会社が突然査定に来て険悪な状態になるケースもあります。
不動産会社に相談にいく前に、地主に借地権を売却したい希望を伝え、意向を確認してから行動を起こしましょう。
3.借地権の査定
地主に同意が得られたら、買い取り額を決めるための現地の調査や査定をおこないます。
そもそも、借地権は通常の不動産物件よりも資産価値が低いので査定額・売却価格も安くなります。
そういった不動産事情を知らない地主の場合、「買いたたかれているのではないか?」と、不信感を持つ可能性もあります。
しかし、借地権買取りの経験が豊富な不動産会社なら、地主が納得のいく価格の根拠や説明をしてもらえます。
4.地主との譲渡条件の交渉
地主に支払う譲渡承諾料の金額を決めます。
買取った不動産会社が借地権をどのように活用するかによりますが、建物の建替えが発生する場合には建替え承諾も含めた話し合いと交渉をおこないます。
5.売買契約
地主との交渉で譲渡条件が決まったら、借地権者と不動産会社の間で借地権の売買契約を結びます。
6.決済・引き渡し
不動産会社と締結した売買契約、地主との譲渡条件に基づいて、買い取り代金の受け渡し(決済)、引き渡しをします。
借地権買取りの相場
借地権者が一番気になるのが借地権の買取り相場はどれくらいか?という点でしょう。
一般的に、借地権は標準的な不動産の50%程度といわれています。
明確な相場はない
結論からいうと、借地権には明確な相場というものはありません。
地主との契約内容によって金額は変わります。
まず、一般的な所有権のある不動産物件とは権利関係が別ものだからです。
建て替えなどの際には地主の承諾が必須になり、費用もかかります。
また、地代は値上がりなど変動の可能性もあります。借地権は地主との契約内容によって1物件ごとに条件が異なるのです。
また、専門業者の借地権買取りは、有効な再利用をすることが前提です。
そのため、再利用による収益に見合った価格で買取りをするので取引相場などで一律に買取り価格が決められないのです。
借地権割合を基準に計算
一般的で大まかな価値(価格)を知りたい場合は、「借地権割合」を基にした方法で算出できます。
借地権割合は「一つの土地の権利のうち借地が何割占めているか」を示す数字で、相続税や贈与税を算出する際に利用されます。
各地の借地権割合は国税庁のwebサイト、「路線価図・評価倍率表」から検索できます。
<国税庁HP>
<計算方法>
更地評価-(更地評価×借地権割合)
例)土地の評価額が3,000万円・借地権割合が60%の場合
3000万-( 3000万×0.6)=1200万円
あくまでも参考程度にみておきましょう。
まとめ
一般的な不動産と借地権は、権利関係の複雑さや地主との関係性など、注意すべきポイントが異なります。
ある意味、通常の不動産取引とは別のものと考えた方がいいでしょう。
そのため、不動産取引実績が多い大手の不動産会社でも、借地権のノウハウに長けているとは言えません。
スムーズな買い取りは、借地権の知識と取引き経験豊富な専門会社に任せれば安心です。
まずは、アルバリンクにご相談ください。