故人名義の土地は「相続登記」で名義変更すれば売却できる
故人の名義になっている土地は、「相続登記」により相続人の名義にすれば売却することが可能になります。
逆に言えば、相続登記をしないでいきなり「故人→買主」の順番に名義変更することはできません。
ただし、売買契約が故人の生前に行われており、単に売買による所有権移転登記だけを怠っていたという場合は「故人→買主」と名義変更することが可能です。
その際は故人に代わって法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員が「登記義務者(登記簿上権利を失う側)」として買主への所有権移転登記を行います。
【法定相続人の範囲】
なお、相続登記の手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
故人名義の土地を相続する際の注意点
故人名義の土地を相続登記する際に注意すべき点を確認してみましょう。
相続税が発生する
不動産を含む被相続人の財産を相続すると、相続税が発生する可能性があります。
相続税は「被相続人が死亡したことを知ってから10カ月以内に申告、納税」と、申告期限も非常にタイトであるため、相続開始したら(=死亡したら)すぐに準備にかからないと間に合わなくなってしまいます。
ただ、相続発生件数全体に対して相続税がかかる割合自体は非常に低くなっています。
なぜなら、相続税を課すにあたって「基礎控除」が設けられており、以下の金額を超えなければそもそも相続税申告自体が必要ないからです。
相続税の基礎控除=相続財産すべて合算して「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」
※不動産だけでなく預貯金や有価証券、現金等、あらゆる相続財産および税法上の「みなし相続財産(死亡保険金など)」を含めた金額
例えば、法定相続人が妻と子供2人の合計3人だとしたら「3000万円+1800万円=4800万円」が基礎控除となるため、相続財産を合算して4800万円を超えた場合のみ相続税の申告が必要です。
国税庁のデータによれば、令和2年における全相続開始数(死亡者数)に対する相続税課税の割合は8.8%でした。(令和3年12月発表の国税庁「令和2年分相続税の申告実績の概要」より)
つまり相続全体のうち、相続税が発生するケースは1割にも満たないということになります。
しかし、当然のことながら、東京や大阪等の大都市と地方では地価に大きな開きがあるため、相続税課税の割合も地域格差が激しいといえます。
特に平成27年に法改正がされて相続税の基礎控除額が大幅に下げられたため、東京23区など特に地価が高い地域に土地を持っているだけでもすぐに基礎控除を超えやすい状況になっています。
相続税の計算は次のように行われます。
1.相続財産を調べて合計を算出する。
不動産、預貯金、有価証券、現金、車両等。また、受取人指定の保険金など「みなし相続財産」とよばれる部分や「相続開始前3年以内の贈与金額」も加算する。
上記金額から負債等を引く。
2.相続税の対象となる金額を算出する。
1から基礎控除額(上記参照)を引く。
3.相続税総額を算出する。
2の金額を法定相続分で分け、税率を掛けて各人の仮の相続税額を算出し、さらに各人の相続税額を合計する。
4.各相続人の相続税額を算出する。
具体的には、3の相続税総額を実際の相続割合に従って各相続人に分け、各相続人の控除額などを差し引いて最終的な納税額を算出する。
実際には配偶者の税額軽減等の利用するか否かでかなり金額に開きが出るといった事情があるため、相続税額がどのくらいになるか予想をすることは困難です。
基礎控除を超えそうな見込みがある人は、相続発生後なるべくすみやかに税理士に相談することをおすすめします。
相続税については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
共有名義で相続するとトラブルのもとに
不動産の名義を相続人のうち誰にするかというのは非常に大きな問題であり、安易に共有名義にすると後々のトラブルにつながります。
とにかく少しでも早く遺産分割協議(法定相続人全員での話し合い)を行うべきであり、話し合いがまとまらないからとりあえず法定相続分(民法で定められた相続分)で登記するというのは避けるべきです。
共有状態になっている不動産というのは、処分や管理にさまざまな制限を受けることになります。
共有者の一人が自分だけの判断でできることは共有物の妨害排除など「保存行為」とよばれる、ごく限られたものだけです。
そのため、極力不動産は共有名義にせず、相続人一人の名義に寄せることをおすすめします。
また、相続税がかかる場合で、遺産分割協議がきちんとまとまらないままに申告期限を迎えてしまうと、法定相続分で分けたとみなして申告しなければならなくなります。
その場合は「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」など、相続人にとって有利な軽減措置が適用できません。
そのような意味でもとにかく遺産分割協議を早期に、正式な形でまとめることが大切なのです。
相続税の軽減に役立つ小規模宅地等の特例については、以下の記事で詳しく解説しています。
代々相続登記が未了の可能性がある
故人名義といっても、親の代であればまだ良いのですが、祖父母や曾祖父母の名義のまま放置されている不動産もあります。
例えば、祖父の代は単有であったとしても、祖父の相続人が2人いて、さらに相続人の相続人が2人ずついたら、最終的に4人で遺産分割協議をしなくてはならなくなります。
遺産分割協議というのは、法定相続人(民法で指定された相続人)全員が話し合いの結果をまとめた「遺産分割協議書」に実印を押して印鑑証明書を添付しなくてはなりません。
よって、2代、3代前の名義になっている場合は非常に相続人同士の関係が遠くなっていることも考えられるため、今回の相続の状況を説明した手紙を送り、全員の相続人に理解してもらう必要が出てくるケースもあります。
相続した建物が未登記だった場合の対処法は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
相続登記が終わる前に売買契約することは避ける
相続した不動産を売却する予定がある場合は、購入希望者が現れたとしても相続登記前に慌てて売買契約してはなりません。
上記のとおり、被相続人からいきなり買主名義にすることはできず、必ずいったん相続人(=売主)名義にしておかなければならないためです。
仮に相続人が「今回の父の相続人は自分たち兄弟だけだから、相続登記はすぐにできる」と考えていても、実際に戸籍を調査したら「父が実は再婚であり前妻との子がいた」などのケースもあります。
そうなると、父の前妻との間の子供に連絡を取らなくてはならず、遺産分割協議がすぐには成立しないといった状況になります。
早まって売買契約してしまうと、結局相続登記ができなかった場合に買主への違約金が発生するなど、思わぬ事態に発展することがあります。
司法書士に戸籍や遺産分割協議書など、相続登記に必要な書類が完全に揃っていることを確認してもらったような場合でない限り、相続登記を終えてから売買契約を行う流れの方が安全です。
相続した故人の土地を売却するなら買取業者へ相談
故人の土地を相続したが、売却できる条件なのかどうか不安な場合は「自社で自ら買取を行っている不動産業者」に相談する方法があります。
もちろん、どのような悪条件の土地でも買い取るというわけにはいきませんが、一般的に見てあまり買い手がつきそうにない土地であっても、不動産業者になら売却できることもあります。
例えばこのような土地はなかなか一般個人に売却しづらい条件ですが、不動産業者であれば買い取り可能なことがあります。
- 他者と共有名義になっていて売却の同意が得られない土地
- 建物所有のため他者に貸している土地(いわゆる「底地」)
- 道路付けに問題があり建物の再建築ができない土地
相続から時間が経つと、相続人の一人が死亡したり認知症になるなど、また別の問題が生じるリスクがありますので、実際に売却するかどうかは別として、早めに不動産業者に相談してみましょう。
当サイトを運営する株式会社Albalinkは、一般の不動産市場で売買が成立しにくい「訳あり物件」を専門に取り扱う不動産買取業者です。無料で査定を承っておりますので、気兼ねなくご連絡ください。
>>【故人名義の不動産もそのまま高額売却!】無料で買取査定を依頼する
なお、売れない土地の手放し方については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
故人名義の土地を相続登記する流れ
故人名義の土地を相続登記する流れを説明します。
大まかな流れを知っておけばいざという時に迅速に動けるため、するべき手続きをあらかじめ知っておきたいものです。
専門家に相談
相続手続きの最初にやるべきことは「専門家への相談」ですが、誰に相談すればよいのか迷う人も多いものです。
相続財産である「不動産、預貯金、現金」などあらゆるプラス財産を合わせて相続税の基礎控除(上記)を超えそうな見込みがある人は、まず相談すべきは「税理士」です。
相続税申告は相続発生してから10カ月以内に行わなければならず、非常にタイトなスケジュールであるため、早急に相談することが大切です。
さらに、遺産分割協議がうまくいかない見込みの人は併せて「弁護士」への相談もしておくべきでしょう。
相続税がかかる見込みが全くない、遺産分割協議もスムーズにいく人は最初から登記手続きのみでよいため「司法書士」への相談がベストです。
なお、税理士や弁護士に相談したケースでも、そのまま提携の司法書士を紹介してもらえることが多いのであらためて自分で探す必要はないことが大半です。
相続人と遺産の調査
最初にやるべきことは「相続人全員の特定」「遺産の調査」です。
法定相続人を特定するためには「戸籍調査」を行わなくてはなりません。
戸籍調査というのは、被相続人の死亡から出生までの戸籍をすべて遡ることから始まり、相続人全員の現在の戸籍など、かなりの通数を取り寄せなくてはなりません。
戸籍というのは婚姻、離婚、転籍、戸籍法改正などさまざまな理由で新しく作られたり、構成員が戸籍に出入りしたりするものです。
よって、個人差はあるものの、80代くらいで亡くなった人は被相続人の分だけでも大体5~6通くらいになるのが普通です。
また、遺産調査についても非常に手間がかかるケースもあります。
例えば、預貯金の口座数が多い、有価証券の種類が多い、保有不動産が全国に散らばっているなどです。
財産総額だけではなく種類が多いケースでも、相続人だけで調べきるのが難しいこともあるため、税理士や司法書士などの専門家にアドバイスを求めながら調査する方がよいでしょう。
遺言書の有無を確認
法定相続人と相続財産が特定できたら、今度は「遺言書が作成されていないかどうか」を調査します。
遺言書のよく使われる形式として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。
- 自筆証書遺言
- 自宅などで被相続人が自ら執筆した遺言書。基本的に全文自書となるが、財産目録だけはパソコン等で作成したものでもよい。
日付、署名、押印などの要件を一つでも欠くと「無効」となってしまう。 - 【自筆証書遺言書の見本】
- 公正証書遺言
- 公証役場で公証人と証人立会のもとに作成された遺言書。本人の意思を公証人が確認しているため、証拠能力が高い。
遺言書がある場合は基本的には遺言内容に従って遺産を分配しますが、相続人全員が合意すれば遺言内容と異なる遺産分割も可能です。
ただ、やはりわざわざ遺言書まで作成した故人の遺志と大幅に異なる遺産分割をすることは、あまりおすすめできる方法ではありません。
遺産分割協議
遺言書がない場合には法定相続人全員で「遺産分割協議」を行い、合意した内容を「遺産分割協議書」にまとめます。
上記のとおり、遺言がある場合でも法定相続人全員が合意すれば別途遺産分割協議を行うことも可能です。
遺産分割協議書には法定相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書の作成方法を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
相続登記
遺産分割協議の内容に従って相続登記を行います。
相続登記は司法書士が代理する他、相続人自ら申請することも可能ですが、申請書の記載や添付書類などに細かい決まり事があるため、個人で行うことが難しいケースも多いものです。
特に数次相続(祖父死亡の次に父死亡など、2回以上の相続が発生していること)のケースでは、登記を個人で行うことがかなり困難です。
特に売却前提の場合は買い受け希望者との関係もあって代金決済や引き渡しをいつまでに終えなければならない、と決まっていることもあります。
時間的に制限がある場合は、必ず司法書士に依頼して早期に、確実に終えるようにしましょう。
なお、相続登記自体は今まで期間の制限などはなかったのですが、2024年4月1日より法改正が施行され、「相続登記が義務化」されています。
大まかにはこのようなものです。
- 相続発生から3年以内に、「相続登記」もしくは「相続人申告登記」を行う。
- 上記の施行日よりも前に発生していた相続についても相続登記義務があるが、期限が「施行日より3年以内」となる。
- 正当な理由なく上記を守らなかった場合は、相続人に10万円以下の過料が科せられる。
相続人申告登記とは、法務局に対して「私が相続人です」と申し出る手続きのことで、正式な相続登記とは異なります。
何らかの事情ですぐに相続登記ができない人が、相続登記の義務を免れるために行っておくという意味があります。
相続登記義務化の法改正についてはいまだに細かい部分が決まっていないため、数年のうちに相続が発生する可能性がある人は報道などを注視しておかなくてはなりません。
相続登記に必要な書類と費用
相続登記に必要な書類および、かかる費用を確認してみましょう。
必要書類
相続登記に必要な書類は以下の通りですが、印鑑証明書以外は司法書士が職権取得することが認められています。
戸籍収集は一番時間がかかる部分でもあるため、極力司法書士に依頼するようにしましょう。
- 被相続人の死亡~出生まで全ての戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本
- 法定相続人全員の現在の戸籍謄本(抄本)
- 被相続人の住民票除票もしくは戸籍の附票(または除附票、事案による)
- 遺産分割協議書 (※司法書士に依頼すると作成してもらえる。)
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 不動産を相続する人の住民票
- 司法書士への委任状 (※司法書士に依頼すると作成してもらえる。)
- 登記する物件の固定資産税評価証明書(最新のもの)
費用
相続登記にかかる費用は大きく分けて以下の3種類です。
まとめると、「司法書士報酬」「登録免許税」「書類取得費等の実費」を合わせて、5,000万円の土地一筆の相続なら登記にかかる費用は30万円程度が相場と考えられます。
ただ、相続人の数や物件の条件に応じて費用にはかなり開きがあります。
後日のトラブルを防ぐためにも、概算であっても見積もりを提示してもらうべきであることを覚えておきましょう。
司法書士報酬
司法書士への報酬は現在自由化されているため、事務所によってまちまちです。
大体、物件1つにつき3万円~7万円程度が相場です。
ただ、物件が2つになると報酬が2倍になるわけではなく、「筆数加算」といって、一筆ごとに数千円程度を足していくという計算方法になる事務所が多いのが実情です(「旧報酬規程」の考え方を踏襲しているため)。
なお、相続人の数が多い、権利関係が複雑、2回以上の相続が発生しているなどさまざまな要素で報酬は変動します。
事前に見積もりを依頼して確認するようにしましょう。
登録免許税
相続登記の登録免許税は「固定資産税評価証明額の4/1000」です。
具体例を挙げると、評価額5,000万円の土地一筆を相続登記した場合の登録免許税は「20万円」となります。
書類取得費
登記簿の事前閲覧や事後の確認、戸籍収集を依頼された場合の実費、郵送費など細かい諸費用です。
物件の数や戸籍の取得数によってかなり異なりますが、一般的には2、3万円程度で済むことが多いでしょう。
まとめ
この記事では、亡くなった家族や親族などの故人名義になっている土地を売却する方法をご説明しました。
記事内でお伝えした通り、故人名義の土地を売却するには、相続登記で自分名義に名義変更する必要があります。
相続登記は、土地を相続する人が自ら手続きを行うこともできますが、万が一、提出書類に不備や誤りがあると、法務局から修正を求められ二度手間になります。
そのほかにも、代々土地の相続登記がされておらず、相続登記に必要な書類が簡単に手に入らないというケースも少なくありません。
故人名義の土地を売却する際は、専門知識を持っている不動産業者や司法書士に相談し、正しい手続きを心がけてください。
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